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本編
夕食での討論 1
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一本道の廊下を抜けるとロウソクの明かりが灯る食卓へと続く。その食卓テーブルではイザベラがいつになく誇らしげな声を上げているのが静かな廊下に響いていた。ダイニングに着くとそんな様子のイザベラの隣でマルガリータは鼻を高々としながら、部屋に入ってきたマーガレットを蔑むように視線を投げた。
「あら、マーガレット」
一瞬ぞくりと背中に悪寒が走る。なぜだか理由は分からないが、マルガリータが向ける表情に嫌な感じがしたのだ。マルガリータの表情を見て嫌な感じを思うのは今回に限ったことではないが、今日は特に勝ち誇ったように母親に似た鷲鼻を振り上げ、まるでマーガレットを見下すみたいに見ている。
「マーガレットもこっちへ来て見てごらん」
イザベラに呼ばれてテーブルの上を見てみると、スープをテーブルの脇に寄せ、代わりに置かれているのは丸い刺繍枠の中で咲き誇る、真っ赤な赤い薔薇の花だった。
「これは……」
まさかマルガリータではないだろう。そう思うが、この状況から見て明らかに彼女が刺繍したものの様子。
「マルガリータが刺繍したものだよ」
ちゃんとごらんと言いたげに、イザベラはマーガレットへと刺繍を手渡した。そんな様子を鼻高々に見ているマルガリータにマーガレットは至って冷静に見ていた。
「これ、本当にマルガリータお姉様が刺繍なさったのでしょうか……?」
うーん、なんて声を漏らしながら、思わず頬に手を当てた。するとマルガリータは堰を切ったように席を立ち、鬼の形相でマーガレットの意見に異論を唱えた。
「当たり前でしょう。私でなければ誰がこれを刺繍したと言うの」
「それはそうですわよね。失礼いたしましたわ、お姉様。ですが以前お姉様の裁縫の腕前を拝見したところ、驚くほどに腕が上がっておいでなので驚いてしまいましたの。まるで誰かが代わりに刺繍したかのようではございませんか」
マーガレットは気づいていた。これを誰が刺繍したのかを。リュセットがマーガレットとの裁縫を延期し、引きこもっていたはずなのに疲れた様子でいるのかも。この薔薇の刺繍を見た瞬間、全てのパズルのピースがここに繋がった。
「そう言うマーガレットこそ、お母様に裁縫の練習をするように言われたにも関わらず、こっそり外に出ていたんですって?」
マルガリータはシフトチェンジし、マーガレットを攻撃する姿勢を見せている。それを見て、きたか……と、マーガレットは身構えた。
「私は毎日のように裁縫と向き合っていた結果がこれなのよ。それに比べてマーガレット、あんたはいつまでたっても子供のように……」
扇を開いて口元を隠した。扇の上から覗く瞳はマーガレットを射抜くように、視線を投げつけている。
「ええ、きっとそうだと思いますわ。でなければミミズが這った跡のような裁縫からこのように美しい刺繍技術を得れるとは到底思えませんもの。まるでリュセットが刺繍したようですわよ」
一瞬マルガリータの眉がピクリと動いたのをマーガレットは見逃さなかった。やはりこれはリュセットがしたものなのだろう。マーガレットが横目でリュセットに視線を投げると、リュセットもどこか気まずそうだ。
「あら、このタッチや技術、リュセットのものにそっくりではございませんか……もしかして……?」
正直なところ、リュセットのタッチや技術などマーガレットは知る由もない。そもそもリュセットのもの以前に一般的な技術をマーガレットは知らないのだ。半ば半分あてずっぽうにそう言いながら、今度はマーガレットが疑うような眼差しでマルガリータに視線を投げた。するとマルガリータはマーガレットの嘘にかかった。扇を閉じ、歯を噛み締めながら毒々しい視線を投げながら、こう言い返す。
「侮辱するのはおやめ! 一緒の家に住んでいれば似るのは当たり前でしょう。人のことを言う前に、マーガレットこそ裁縫の練習をきちんとしているのかしら?」
「私はこれからです。リュセットにお願いして裁縫を一から教えてもらおうと思っているのですから」
「はん、どーだか。お母様、きっとマーガレットはこんなことを言ってあの灰かぶりにやらせるつもりかもしれませんわ。なにせお母様の言いつけを守らず、外に飛び出すようなおてんばなのですから」
(はぁー!? 自分のしたことを棚に上げて、なんてふてぶてしい奴……!)
マーガレットは腸が煮えくり返りそうなほど、この図々しい姉に苛立ちを感じていた。眉間にシワをふんだんに刻み、再び口を開いたその時だった。
「あら、マーガレット」
一瞬ぞくりと背中に悪寒が走る。なぜだか理由は分からないが、マルガリータが向ける表情に嫌な感じがしたのだ。マルガリータの表情を見て嫌な感じを思うのは今回に限ったことではないが、今日は特に勝ち誇ったように母親に似た鷲鼻を振り上げ、まるでマーガレットを見下すみたいに見ている。
「マーガレットもこっちへ来て見てごらん」
イザベラに呼ばれてテーブルの上を見てみると、スープをテーブルの脇に寄せ、代わりに置かれているのは丸い刺繍枠の中で咲き誇る、真っ赤な赤い薔薇の花だった。
「これは……」
まさかマルガリータではないだろう。そう思うが、この状況から見て明らかに彼女が刺繍したものの様子。
「マルガリータが刺繍したものだよ」
ちゃんとごらんと言いたげに、イザベラはマーガレットへと刺繍を手渡した。そんな様子を鼻高々に見ているマルガリータにマーガレットは至って冷静に見ていた。
「これ、本当にマルガリータお姉様が刺繍なさったのでしょうか……?」
うーん、なんて声を漏らしながら、思わず頬に手を当てた。するとマルガリータは堰を切ったように席を立ち、鬼の形相でマーガレットの意見に異論を唱えた。
「当たり前でしょう。私でなければ誰がこれを刺繍したと言うの」
「それはそうですわよね。失礼いたしましたわ、お姉様。ですが以前お姉様の裁縫の腕前を拝見したところ、驚くほどに腕が上がっておいでなので驚いてしまいましたの。まるで誰かが代わりに刺繍したかのようではございませんか」
マーガレットは気づいていた。これを誰が刺繍したのかを。リュセットがマーガレットとの裁縫を延期し、引きこもっていたはずなのに疲れた様子でいるのかも。この薔薇の刺繍を見た瞬間、全てのパズルのピースがここに繋がった。
「そう言うマーガレットこそ、お母様に裁縫の練習をするように言われたにも関わらず、こっそり外に出ていたんですって?」
マルガリータはシフトチェンジし、マーガレットを攻撃する姿勢を見せている。それを見て、きたか……と、マーガレットは身構えた。
「私は毎日のように裁縫と向き合っていた結果がこれなのよ。それに比べてマーガレット、あんたはいつまでたっても子供のように……」
扇を開いて口元を隠した。扇の上から覗く瞳はマーガレットを射抜くように、視線を投げつけている。
「ええ、きっとそうだと思いますわ。でなければミミズが這った跡のような裁縫からこのように美しい刺繍技術を得れるとは到底思えませんもの。まるでリュセットが刺繍したようですわよ」
一瞬マルガリータの眉がピクリと動いたのをマーガレットは見逃さなかった。やはりこれはリュセットがしたものなのだろう。マーガレットが横目でリュセットに視線を投げると、リュセットもどこか気まずそうだ。
「あら、このタッチや技術、リュセットのものにそっくりではございませんか……もしかして……?」
正直なところ、リュセットのタッチや技術などマーガレットは知る由もない。そもそもリュセットのもの以前に一般的な技術をマーガレットは知らないのだ。半ば半分あてずっぽうにそう言いながら、今度はマーガレットが疑うような眼差しでマルガリータに視線を投げた。するとマルガリータはマーガレットの嘘にかかった。扇を閉じ、歯を噛み締めながら毒々しい視線を投げながら、こう言い返す。
「侮辱するのはおやめ! 一緒の家に住んでいれば似るのは当たり前でしょう。人のことを言う前に、マーガレットこそ裁縫の練習をきちんとしているのかしら?」
「私はこれからです。リュセットにお願いして裁縫を一から教えてもらおうと思っているのですから」
「はん、どーだか。お母様、きっとマーガレットはこんなことを言ってあの灰かぶりにやらせるつもりかもしれませんわ。なにせお母様の言いつけを守らず、外に飛び出すようなおてんばなのですから」
(はぁー!? 自分のしたことを棚に上げて、なんてふてぶてしい奴……!)
マーガレットは腸が煮えくり返りそうなほど、この図々しい姉に苛立ちを感じていた。眉間にシワをふんだんに刻み、再び口を開いたその時だった。
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