17 / 23
2章-少しずつ前へ
16話-やられる前にやります
しおりを挟む
私はパン屋さんへ戻り、ロイさんに仕事でしばらく街を離れると伝えました。
まだお店が開いていたのですが、ロイさんはお店をほっぽりだして屋根裏まで来ました。
「いやいや、シンドリって、なんだってそんなとこへ……一人でか?」
「いえ、ナザックさんと二人です」
「ナザック……? まさか男か?」
私は荷物を纏めながら……と言ってもほとんどありませんが、石鹸やタオルを大きい目の布で大事に包みます。
「男の人です」
私は正直に答えます。
ロイさんが腐敗したゴミを見つけてしまった様な時の顔をしていました。
「リエちゃん、仕事だろうから止めはしない。だが、気を付けろよ。同僚だとしても隙を見せるんじゃない」
今回の仕事……はじめてのフレイアさんからのゴミ掃除の依頼。
しかもフレイアさんの命を狙おうとした超級の粗大ゴミです。
いつでも見つけ次第処分できる様に隙を見せない様にしなくてはいけません。
「はい、いつでも殺せる様にしておきます」
私は宣言の様にロイさんへ胸を張って答えます。
だって私がフレイアさんの役に立てるのです。
こんな名誉なことはありません。
「い、いや! 流石にそこまでしなくても良いと思うが……まぁリエちゃん、気をつけるに越したことはない。男は狼だからな」
「ダメです。その時はキュッと息の根を止めて静かにさせてからきっちり身体も各素材に分けなければなりません」
「そんな危ねえ奴なのか……ナザック……か」
私は小さな包みを両手で持って、ロイさんに頭を下げてパン屋さんを後にしました。
ロイさんが最後まで「ナザック……」と呟いていたのが気になります。
しかしそろそろ日も傾いてきました。
待ち合わせの北門へと急がなくてはなりません。
私はいつもとは反対の道へ進み、遠くに見える城壁に向かって駆け出しました。
――――――――――――――――――――
「リエ様」
私が北門へとたどり着くと、シンシアさんトラマーガレットさんが待っていました。
「シンシアさん……マーガレットさん?」
シンシアさんが小さなリュックの様なものを、マーガレットさんが小さめのスーツケースの様なものを持っていました。
ナザックさんの姿はまだありません。
もしかして既にナザックさんはバラされてあのスーツケースに入っているのかもしれません。
「リエ様、私の趣味で申し訳ありませんがこちら下着や日用品が入っています。これはリエ様に差し上げるので旅の間使ってください」
「こちらは着替えの服とか寝袋が入っています! 持てますか? 一応背負える様になっているのでナザック様に持ってもらってください」
どうやら私の予想は外れた様です。
「えっと……あの……」
小さなリュックを受け取ると新品のような布の香りがします。
まさか私が服とかを持っていないのを知って、二人で買ってきてくれたのでしょうか。
私なんかのために……。
その辺のゴミ箱から拾ったもので事足りるというのに。
こういう時、お礼の伝え方を私は一つしか知りません。
「シンシアさん、マーガレットさん……ありがとうございます。大事にします」
「――っ!」
「せ、せ、せんぱいっ! リエ様可愛い……なにこの小動物……可愛すぎますっっ!」
マーガレットさんに小動物と言われてしまいました。
確かに身体はかなり小さいですが……。
しかし私なんかより可愛い人は沢山います。
むしろマーガレットさんの方が可愛らしいです。
抱きつくときっと良い匂いがするでしょう。
女性らしい感じも、すごく柔らかそうです。
どちらにせよ、感謝が少しでも伝わったので良かったです。
「先輩……? 先輩っ?」
「あ、鼻血……尊死するところでした」
「そんし? 尊師? 先輩たまに意味不明なこと言いますけれど大丈夫ですか? やはり最近の連日勤務辛いのでは?」
「な、なんでもありません。それより来ましたね」
シンシアさんがハンカチで口元を隠しながら通りの方へ視線を向けました。
そこにはスーツ姿の黒髪短髪のちょい垂れ目の男が向かってきていました。
「おまたせ致しました」
「本当です。ナザック様、リエ様がずっとお待ちでしたよ」
そんなに待ってません。
むしろ来たばかりです。
「あぁ、すいませんでした。ちょっと寄り道していたもので」
「……ナザック様? 道中、リエ様のことよろしくお願いいたしますね?」
「もちろんです、リエにとっては初仕事ですしね。リエ、よろしくね」
また呼び捨てにされました。
しかも手を差し出されました。
上下関係をはっきりさせておこうということでしょうか。
しかし一緒に仕事をする以上は大事なことです。
ナザックさんからすれば私は新人で使い物になるかもわからない小娘です。
私はナザックさんの掌に手を置くと頭を下げました。
しかしその瞬間、手をギュッと握られました。
「きゃっ……」
なんですか今の声は。
私から出たのですか?
ナザックさんが驚いた顔をしていました。
いきなり手を引いてしまってびっくりさせてしまったようです。
「…………リエ?」
「すいません……『お手』をしたのに握られてびっくりしました」
「お手…………」
「お手って犬じゃあるまいし……」
「いや、マーガレットそこじゃありませんよ」
「いやっリエ、握手だよ、握手」
「悪手……? すいません、私はどうすれば……」
「いや、こうやって普通に……」
ナザックさんがマーガレットさんと手を握り合いました。
お手本でしょうか。
悪手……いえ、握手ですか。
シェイクハンド……。
そういえばそんな挨拶もありました。
15年生きて初めてのような気がします。
私は恐る恐るナザックさんへ手を差し出します。
シンシアさんがハラハラとした顔をしていますが……。
ナザックさんは先ほどと同じように手を差し出し、私の手をキュッと優しく握ってきました。
「リエ、よろしくね」
「…………あたたかい」
他人の手……男の人の手ってこんなに大きくて暖かいんですね。
初めて知りました。
「まぁまぁ……リエ様、何度も言うようですが、お気をつけください」
「そーですよー。一週間も二人旅……何かあってからでは遅いですからね」
先ほどもロイさんに散々言われました。
分かっています。
気を抜くことはありません。
気を抜くと殺されるのは私の方です。
そうなるとフレイアさんからの命令に逆らうことになります。
そんなことになる前に、先制攻撃はいつでもできる様にしておきます。
しかしそうは言っても『分別』さえしてしまえばどうとでもなります。
あとはいたぶるなり『焼却』するなり、こちらのものです。
「分かっています。ヤられるまえにヤります」
「…………っっ!?」
「ちょ、ちょ、ちょ、リエ様っっ!?」
シンシアさんがすごい動きでナザックさんの首に腕を回し、門の向こうへと連れて行ってしまいました。
もう出発でしょうか?
マーガレットさんは両手を口元に当てて真っ赤な顔をしていました。
「…………大丈夫ですか?」
「いや、いやいやっ、それ私のセリフですよ。ヤりますってなんですかっ!」
「……? あ、すいませんでした。はしたない言葉でした」
私はペコリと頭を下げます。
良家のお嬢様方が多いお城の侍女さんたちです。
汚い言葉を使ってしまいました。
「言いなおします。何かあったら殺します」
「リエ様っっ!?」
私はマーガレットさんに改めて頭を下げました。
ちょうどシンシアさんも戻ってきたので、改めてお礼と感謝を伝えます。
私なんかのためにありがとうございます――と。
「リエ様、ご自分を卑下するお考えはそろそろ卒業いたしましょう。リエ様は陛下とナザック様がお認めになった力をお持ちです。そんなリエ様が自分を卑下されると、お二方のことも卑下しているのと同じことです」
そんなシンシアさんの言葉は、なぜか心にスッと染みるように入っていきました。
自分がダメだと考えると、自分を良いと言ってくれた人のこともダメだと言っているのと同じこと……。
それは考えたことがありませんでした。
「ではお気をつけて、無事に戻ってきてくださいね」
そう言ってシンシアさんとマーガレットさんは街へと戻って行きました。
ありがとうございます。
シンシアさんの言葉、よく考えて少しずつ直していきます。
「ほら、受付終わったから行くぞ、リエ」
「…………はい」
そうして私はナザックさんと二人、門を出て街の外へと出ました。
初めての外の世界。
大きな外壁で守られていた街とは違います。
この世界には魔獣と呼ばれる、突然変異した野生生物がゴロゴロしているのです。
奴らは淡々と自分のテリトリーから獲物を狙っています。
普通、街の外へ出る時は傭兵の人や冒険者と呼ばれる人たちを雇うのが普通だと聞きました。
こんなにも良い夕暮れなのに、背筋がゾクゾクとします。
一瞬たりとも気を抜けない。
そう思うと足がうまく動きません。
「リエ? いきなりか……はぁ……ほれ手、貸しな」
私がゆっくりとおっかなびっくり足を動かしていると、ナザックさんが隣に来て手を握ってくれました。
「あ…………」
不思議なことにそれだけで街中にいる様な気持ちになりました。
大きな壁に守ってもらえている。
そんな気持ちになりました。
「日が暮れるまえに北の森だけは抜けておきたい。少し早足で歩けるか?」
「は、はい……大丈夫です」
「今日はそこで野営せずに、小休止を繰り返してなるべく進みたい。行けそうか?」
今朝はフレイアさんのベッドで朝ごはんの時間まで眠ってしまいました。
だから、少しぐらい眠らなくても大丈夫な気がします。
「はい」
「その代わりキツくなったらすぐに言えよ? いつでも休憩はするからな」
そうして、親子連れの様にも見えなくない私はナザックさんと二人、王都を出て北の森へと向かったのです。
まだお店が開いていたのですが、ロイさんはお店をほっぽりだして屋根裏まで来ました。
「いやいや、シンドリって、なんだってそんなとこへ……一人でか?」
「いえ、ナザックさんと二人です」
「ナザック……? まさか男か?」
私は荷物を纏めながら……と言ってもほとんどありませんが、石鹸やタオルを大きい目の布で大事に包みます。
「男の人です」
私は正直に答えます。
ロイさんが腐敗したゴミを見つけてしまった様な時の顔をしていました。
「リエちゃん、仕事だろうから止めはしない。だが、気を付けろよ。同僚だとしても隙を見せるんじゃない」
今回の仕事……はじめてのフレイアさんからのゴミ掃除の依頼。
しかもフレイアさんの命を狙おうとした超級の粗大ゴミです。
いつでも見つけ次第処分できる様に隙を見せない様にしなくてはいけません。
「はい、いつでも殺せる様にしておきます」
私は宣言の様にロイさんへ胸を張って答えます。
だって私がフレイアさんの役に立てるのです。
こんな名誉なことはありません。
「い、いや! 流石にそこまでしなくても良いと思うが……まぁリエちゃん、気をつけるに越したことはない。男は狼だからな」
「ダメです。その時はキュッと息の根を止めて静かにさせてからきっちり身体も各素材に分けなければなりません」
「そんな危ねえ奴なのか……ナザック……か」
私は小さな包みを両手で持って、ロイさんに頭を下げてパン屋さんを後にしました。
ロイさんが最後まで「ナザック……」と呟いていたのが気になります。
しかしそろそろ日も傾いてきました。
待ち合わせの北門へと急がなくてはなりません。
私はいつもとは反対の道へ進み、遠くに見える城壁に向かって駆け出しました。
――――――――――――――――――――
「リエ様」
私が北門へとたどり着くと、シンシアさんトラマーガレットさんが待っていました。
「シンシアさん……マーガレットさん?」
シンシアさんが小さなリュックの様なものを、マーガレットさんが小さめのスーツケースの様なものを持っていました。
ナザックさんの姿はまだありません。
もしかして既にナザックさんはバラされてあのスーツケースに入っているのかもしれません。
「リエ様、私の趣味で申し訳ありませんがこちら下着や日用品が入っています。これはリエ様に差し上げるので旅の間使ってください」
「こちらは着替えの服とか寝袋が入っています! 持てますか? 一応背負える様になっているのでナザック様に持ってもらってください」
どうやら私の予想は外れた様です。
「えっと……あの……」
小さなリュックを受け取ると新品のような布の香りがします。
まさか私が服とかを持っていないのを知って、二人で買ってきてくれたのでしょうか。
私なんかのために……。
その辺のゴミ箱から拾ったもので事足りるというのに。
こういう時、お礼の伝え方を私は一つしか知りません。
「シンシアさん、マーガレットさん……ありがとうございます。大事にします」
「――っ!」
「せ、せ、せんぱいっ! リエ様可愛い……なにこの小動物……可愛すぎますっっ!」
マーガレットさんに小動物と言われてしまいました。
確かに身体はかなり小さいですが……。
しかし私なんかより可愛い人は沢山います。
むしろマーガレットさんの方が可愛らしいです。
抱きつくときっと良い匂いがするでしょう。
女性らしい感じも、すごく柔らかそうです。
どちらにせよ、感謝が少しでも伝わったので良かったです。
「先輩……? 先輩っ?」
「あ、鼻血……尊死するところでした」
「そんし? 尊師? 先輩たまに意味不明なこと言いますけれど大丈夫ですか? やはり最近の連日勤務辛いのでは?」
「な、なんでもありません。それより来ましたね」
シンシアさんがハンカチで口元を隠しながら通りの方へ視線を向けました。
そこにはスーツ姿の黒髪短髪のちょい垂れ目の男が向かってきていました。
「おまたせ致しました」
「本当です。ナザック様、リエ様がずっとお待ちでしたよ」
そんなに待ってません。
むしろ来たばかりです。
「あぁ、すいませんでした。ちょっと寄り道していたもので」
「……ナザック様? 道中、リエ様のことよろしくお願いいたしますね?」
「もちろんです、リエにとっては初仕事ですしね。リエ、よろしくね」
また呼び捨てにされました。
しかも手を差し出されました。
上下関係をはっきりさせておこうということでしょうか。
しかし一緒に仕事をする以上は大事なことです。
ナザックさんからすれば私は新人で使い物になるかもわからない小娘です。
私はナザックさんの掌に手を置くと頭を下げました。
しかしその瞬間、手をギュッと握られました。
「きゃっ……」
なんですか今の声は。
私から出たのですか?
ナザックさんが驚いた顔をしていました。
いきなり手を引いてしまってびっくりさせてしまったようです。
「…………リエ?」
「すいません……『お手』をしたのに握られてびっくりしました」
「お手…………」
「お手って犬じゃあるまいし……」
「いや、マーガレットそこじゃありませんよ」
「いやっリエ、握手だよ、握手」
「悪手……? すいません、私はどうすれば……」
「いや、こうやって普通に……」
ナザックさんがマーガレットさんと手を握り合いました。
お手本でしょうか。
悪手……いえ、握手ですか。
シェイクハンド……。
そういえばそんな挨拶もありました。
15年生きて初めてのような気がします。
私は恐る恐るナザックさんへ手を差し出します。
シンシアさんがハラハラとした顔をしていますが……。
ナザックさんは先ほどと同じように手を差し出し、私の手をキュッと優しく握ってきました。
「リエ、よろしくね」
「…………あたたかい」
他人の手……男の人の手ってこんなに大きくて暖かいんですね。
初めて知りました。
「まぁまぁ……リエ様、何度も言うようですが、お気をつけください」
「そーですよー。一週間も二人旅……何かあってからでは遅いですからね」
先ほどもロイさんに散々言われました。
分かっています。
気を抜くことはありません。
気を抜くと殺されるのは私の方です。
そうなるとフレイアさんからの命令に逆らうことになります。
そんなことになる前に、先制攻撃はいつでもできる様にしておきます。
しかしそうは言っても『分別』さえしてしまえばどうとでもなります。
あとはいたぶるなり『焼却』するなり、こちらのものです。
「分かっています。ヤられるまえにヤります」
「…………っっ!?」
「ちょ、ちょ、ちょ、リエ様っっ!?」
シンシアさんがすごい動きでナザックさんの首に腕を回し、門の向こうへと連れて行ってしまいました。
もう出発でしょうか?
マーガレットさんは両手を口元に当てて真っ赤な顔をしていました。
「…………大丈夫ですか?」
「いや、いやいやっ、それ私のセリフですよ。ヤりますってなんですかっ!」
「……? あ、すいませんでした。はしたない言葉でした」
私はペコリと頭を下げます。
良家のお嬢様方が多いお城の侍女さんたちです。
汚い言葉を使ってしまいました。
「言いなおします。何かあったら殺します」
「リエ様っっ!?」
私はマーガレットさんに改めて頭を下げました。
ちょうどシンシアさんも戻ってきたので、改めてお礼と感謝を伝えます。
私なんかのためにありがとうございます――と。
「リエ様、ご自分を卑下するお考えはそろそろ卒業いたしましょう。リエ様は陛下とナザック様がお認めになった力をお持ちです。そんなリエ様が自分を卑下されると、お二方のことも卑下しているのと同じことです」
そんなシンシアさんの言葉は、なぜか心にスッと染みるように入っていきました。
自分がダメだと考えると、自分を良いと言ってくれた人のこともダメだと言っているのと同じこと……。
それは考えたことがありませんでした。
「ではお気をつけて、無事に戻ってきてくださいね」
そう言ってシンシアさんとマーガレットさんは街へと戻って行きました。
ありがとうございます。
シンシアさんの言葉、よく考えて少しずつ直していきます。
「ほら、受付終わったから行くぞ、リエ」
「…………はい」
そうして私はナザックさんと二人、門を出て街の外へと出ました。
初めての外の世界。
大きな外壁で守られていた街とは違います。
この世界には魔獣と呼ばれる、突然変異した野生生物がゴロゴロしているのです。
奴らは淡々と自分のテリトリーから獲物を狙っています。
普通、街の外へ出る時は傭兵の人や冒険者と呼ばれる人たちを雇うのが普通だと聞きました。
こんなにも良い夕暮れなのに、背筋がゾクゾクとします。
一瞬たりとも気を抜けない。
そう思うと足がうまく動きません。
「リエ? いきなりか……はぁ……ほれ手、貸しな」
私がゆっくりとおっかなびっくり足を動かしていると、ナザックさんが隣に来て手を握ってくれました。
「あ…………」
不思議なことにそれだけで街中にいる様な気持ちになりました。
大きな壁に守ってもらえている。
そんな気持ちになりました。
「日が暮れるまえに北の森だけは抜けておきたい。少し早足で歩けるか?」
「は、はい……大丈夫です」
「今日はそこで野営せずに、小休止を繰り返してなるべく進みたい。行けそうか?」
今朝はフレイアさんのベッドで朝ごはんの時間まで眠ってしまいました。
だから、少しぐらい眠らなくても大丈夫な気がします。
「はい」
「その代わりキツくなったらすぐに言えよ? いつでも休憩はするからな」
そうして、親子連れの様にも見えなくない私はナザックさんと二人、王都を出て北の森へと向かったのです。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる