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第二幕

[ヒマリside]ロミオの反乱・3編(鈴鹿歌音)

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 再びヒマリたちは、イザベラの屋敷に戻ってきた。最初に来た頃のキャンプの風景は、地獄絵図になってしまった。イザベラの落ち込みも相当酷い。


「ヒマリちゃんたちに話すわね。あたいのお父さんとお母さんが何故いないのか、を」
   
 イザベラは、ポツリポツリと今までに自分の身に何が起きたのか話し始めた。

「あたいは、お父さんとお母さんと一緒にこのイザベラ・キャンプを運営していたの。この時は、長《おさ》では無かったし、裕福な暮らしはお父さんが作り出してくれていたの。でも2年前、あの男にこのキャンプを襲撃されたの。その時、お父さんとお母さんがあの男の異能を受けてしまって……」
「その後、どうなったの?」
「狂ってそのまま崖から飛び降りて死んでしまったの」
「それは、惨《むご》い話だわ……」

 ハートも言葉が出てこない。

「でも、それと引き換《か》えにあたいは、とある女神様の贈り物ギフトを手にしてしまったの」
「「「 とある女神様の贈り物ギフト? 」」」

 ヒマリたちは、その言葉にくいついた。

「うーん、よく分からないんだけど……。その時は、あたいも必死だったし……。でも、確かに感じたの。あたいの中で何か弾けたような気がしたわ。その時まであたいは、贈り物ギフトが何か分からなかったけど、いきなり贈り物ギフトが使えるようになった感じかな」
「何かがトリガーになるのかもしれないわね」

 ガタン、と物音がした。シフォンが一番驚いていたかもしれない。ロミオが近くに迫ってきている。

「時間がないわ」
「あたいが『マリア様の祈りマリア・プレイヤー』を使うわ。この贈り物ギフトがあれば、ヒマリちゃんたちを守りながら戦うことが出来るわ」
「じゃあ、あたしたちの背後はイザベラに任せるね」

 話をしている時だった。

「遂に見つけたぞ!! 冥土めいどに行く前の準備は済ませたか?」
「いいえ、冥土めいどに行くのはあなたよ、ロミオ!!」

 ハートの怒りをこめた言葉にロミオは顔を歪《ゆが》める。

「『ハート様』がこの僕を冥土めいどに送ると……。今は、何の権力もない女にこの僕を?」
「ハートを侮辱するならあたしが相手になるわ」

 ハートの前にヒマリが立つ。ロミオは、気にくわない表情を浮かべる。

「子供の癖にこの僕に楯突たてつくと痛い目見るぞ」
「いいえ、あたしたちは勝てるわ」

 ロミオは、嘲笑うかのようにヒマリを見つめると、

「面白い……。ここは、1つ戦争クリークを始めよう。精神をも崩壊させる狂気の戦争クリークを……」

 本当の戦いが始まる。ヒマリたちは、ロミオを怒りをこめた視線で見つめた。


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