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4章 新しい生活から魔法学校の日常まで
28話 クラス分けと金髪の少年
しおりを挟む「おはよう、アレン
配布された道具の確認は、どれくらい進んだんだ? 」
朝日の差し込む、明るいダイニングで
魔法士ライルは、弟子のアレンに対し、そのような言葉を投げかけました。
魔法学校、最初の登校日であった昨日
学校側が、研究会勧誘を兼ね開催した配布物スタンプラリー。
そんな、慌ただしかった一日を何とか乗り切り
人形アレンも、本日からやっと
はれて、魔法職養成学校 〈ログリウム〉 の一生徒となったのです。
二階にある彼の部屋のハンガーラックに掛けられた
学校指定の夏用ローブと学生手帳はその証の一つ。
「はい、全てくまなく中身を確認し
配られた教科書や貰って来た無料冊子も既に読破済みです
朝までかかってしまいましたが
そのかわり、今できる準備は万全になっています」
「おまっ、また寝なかったのか!?
いくら人形の体が
長時間の不眠不休状態でも、問題なく活動出来ちゃうからって
それを過信しすぎて、無理しちゃだめだろ?
体は確かに人形だけど、中に入れてる魂自体は
紛れもなく、人間産の代物なんだからな
……たしかに、アレンの中に入れた魂は
俺が捜し歩いてやっと見つけた、いろんな浮遊魂や地縛霊なんかの類を
つなぎ合わせたり、くっ付けたりして作った、まがい物かつ違法な物だけど
元々、人間だった物を材料にしている事には変わりない
つまり、お前の魂は間違いなく、人間のそれに近い形だって事
いくら継ぎ接ぎでも作り物でも、人間を材料にしている以上
その性質が、人間側に寄る可能性はいくらでも考えられる
だから、あまりに無理をしすぎれば、過度なストレスや記憶情報の未整理とかで
どんな不具合起こすか分からないんだし、あまり無茶な事はしちゃだめだぞ?
そりゃ俺だって、無理してでも進めたい作業とか、急ぎの案件とかで
夜通し起きてちゃう気持ちは、分からなくも無いけどさ……
一番に優先しなくちゃいけないのは
アレンの無事と健やかな成長なんだから
栄養ある食事と十分な休息
これらを、出来るだけ心掛けながら日々を過ごしほしい
出来そうか? 」
「はい、わかりました師匠
ではまずはじめに、今日一回目の栄養ある食事を摂取です
最近、ノッポさんのメニュー内容が少し変化しています
以前のままでも、充分に美味しかったのですが
今では、前まで師匠とよく食べに行っていた
早朝のカフェで提供されるような豪華な食事に似た雰囲気すら感じます
味ももちろん、とても美味しいです、モグモグ」
「言われてみれば、なんだか最近やたらと豪勢になった気がするな
特に何か設定方法の変更をしようとしたわけじゃないけど……
気が付かないうちに、どこかでいじっちゃったのかな?
まあ、なんにせよ
この屋敷や魔女のまじないについては、まだ分かってない事の方が多いから
休みの日を利用して色々と調べて回ろうか」
「はい! ところで師匠
こうして、パンと卵とベーコンを
一緒にして食べると、個別に食べる時とはまた違った美味しさです
食べ物の可能性は未知数です」
「口の端にパンくずが付いてるぞ」
穏やかな朝、古時計の音、お皿に乗ったベーコンとスクランブルエック。
この屋敷の使い魔のであるノッポさんが
最近、台所の棚に置かれはじめた
ライルが参考資料として、時折使用している料理本の中から
『手軽で簡単お家飯』と
『見栄えも栄養もバッチリ!簡単プレートカフェご飯』をはじめとする
数冊の本をこっそりと抜き取り、隠れて読んでいる事実にすら
住民であるライルもアレンもまったく気が付く事も無いままに。
訪問者の一人すら来ない、街の片隅に変わらず佇む小さなお屋敷で
彼らの朝は、今日ものんびりと過ぎていきました。
しかし、誰にも邪魔されない、安らかな時間という物は
限られた空間、限れた人と共にあるからこそ成立する物。
人形アレンがこれから通う
広い敷地内に、不特定多数の様々な生徒がお互いに関わり合わなければいけない
学校という新たな学びの場では、それらの安らぎは縁遠き物となるでしょう。
そんな事などいざ知らず
指定のコートを身にまとい、大きめなリュックを背負ったアレンは
お屋敷に残り、魔法士団長としての事務仕事を行う予定のライルと
使い魔のノッポさん達に手を振って
意気揚々と登校して行くのでした。
数度目になる、気の長い通学路を通い
アレンが魔法学校の金色の正門を抜ける頃には
学校前の正門広場から学校のメイン校舎へと続くメインストリートにかけて
新入生や在校生を含む、多くの生徒達が
学校側から指定された場所である
中央のメイン校舎一階部分に設置された、掲示板広場を目指して進んでいます。
吹き抜けを利用し、開放的な大空間として設計されたはずの屋内広場は
ひしめき合う生徒達の波でごった返し
普段の広々とした光景からは、とても想像すら出来ない程のすし詰め状態。
なぜ、一学期の初日から
メイン校舎内にあるこの広場が、このような惨状になっているのかというと
それは、新学期ならではの小さな恒例行事が原因でした。
「皆さんが群がっている真ん中の巨大掲示板に
何か、大きくてやたらと長い紙が貼り付けられているようです
ここにいる生徒の皆さんは
あの紙に記載された内容を、確認したがっているみたいですが
内容は………個人の名前と、何かしらの数字が書かれていますね
あれはどういった意味なのでしょうか?
数字、ということは
入学時に受けた学科試験の点数発表、とかですかね? 」
「う~ん、点数の優劣はともかくとして
先生や友人以外の、親しくない人達とかにも、自分の点数がバレちゃうのは
……なんかちょっと嫌かも
恥ずかしいし、プライベートなことでもあるから
そういうのは内々で、こっそり見せ合いっことかの方が、僕は好きだな~
ちなみに、あの張り紙は試験結果の点数発表じゃないみたいだよ」
人混みに紛れて、いつの間にやらアレンの隣へと移動していた人物。
それは、昨晩の待ち合わせの約束を無事に果たし、合流できた彼らが
学校の近くにある、とあるカフェの店内にて
再会できた喜びに浸りながら、互いの近況をそれぞれ話していた最中
スタンプラリー中の器物爆発事件を筆頭に
過度な勧誘や強引な案内から、散々ひどい目にあったと悲痛な嘆きを零していた
長く鮮やかな緑髪をまとめた一つ結びの髪型と
有名な貴族ならではの魔力の多さが特徴の、テトラ・アクエリオスその人でした。
「おはようございます、テトラ
昨日の夜よりは顔色が回復しているように見受けられます
ゆっくりと休めたようで何よりです
それはそうと
テトラは既に、あの紙に記入された内容を確認されたのですか? 」
「おはよう、アレン君
いや、内容自体は僕もまだ見れてはいないよ
だってこんな人の量だし
今ここで前に進んで、強引に掲示板を見ようとしたら
人に押しつぶされてとても痛そうだもん
だから僕は、さっきからそこら辺の壁にもたれかかって
少しでも人が少なくなるのを待ってたんだ
けど……これはちょっと難しそうかも
かれこれ既に30分くらいは、この状態が続いてるからね
規模の大きい国立の学校だし、生徒数も多いから仕方いのかもだけど
ここまで朝の大渋滞が起きるっていうのは、さすがに想定外だったな~
で、なんでそんな状況で
僕があの掲示板に張り出された内容を知っているのかというと
立って待っている間、すごく暇だったから
周りの人に、挨拶がてら話しかけて聞いてたんだ~
挨拶って大切だし、便利だね!
あそこに張り出されている内容は
今年度の学年別クラス分け表らしい
それでアレン君
僕はさっき、ここで人が少なくなるのを待っていたって話したけど
実はもう一つ、アレン君がここに来るのも待ってたんだ
君に頼みたいことがあってね」
「頼みたいこと、ですか?
僕にできることであれば、是非協力させてもらいたいですが……
それは何ですか? 」
相変わらず、掲示板へと群がる生徒達の大群を横目に
アレンは、これからテトラが話してくれる、頼み事の詳細な説明を待ちます。
しかし、その話の内容は
彼がそんなに改まって耳を傾ける程、重大かつ重要な内容でも無かったのです。
「アレン君、目がすごくよかったよね?
お願い!! この距離から、あの掲示板に書いてある
アレン君や僕のクラス分けを確認してほしいんだ!
頼むよ~かれこれ、もう30分はここで待ちぼうけしちゃってるんだよ!
30分、掲示板の近くに全然寄り付けないまま
周りのいろんな人と立ち話して情報を集めるばっかりで
登校して早々、もうだいぶ精神的に疲れちゃったんだよ~!
助けて、アレン君!! 」
まるで、いつぞやお世話になった
不動産屋の青年を思い出してしまいそうな程
情けなくも悲痛な叫びをあげるテトラ。
そんな彼の頼みを、アレンは特に断る理由も
持ち合わせてはいませんでしたので
当然、突っぱねる事も意地悪をする事もせず
快く引き受けるのでした。
「確認出来ました
残念ながら、僕らはそれぞれ違うクラスに配属されたようです
僕は1-2、テトラは1-5という番号分けです
エレラのクラスも確認しようとしたのですが
彼女の名前は、掲示板の下の方に書かれているみたいで
今の状態では、人の頭や肩で隠れて確認できませんでした
テトラ、踏み台になってくれてありがとうございます
背中や手足など、身体への影響は大丈夫でしたか? 」
「う、うん、大丈夫だよ
本当は、高さ的にも肩車とかの方が理想的だったんだけど……
ごめん、アレン君の体重が、その、そんなにあるとは思わなくて
全然、浮きもしなかったね、肩車……
実技試験の時、僕はどうやって
60㎏もある君を、正門までおんぶして運んだんだろう?
全くもって謎だよ
でも、四つん這いになって
ちょっとは高さの足しになれたから良かった!
アレン君、あらためて
僕の代わりに掲示板を確認してくれたり
四つん這いの僕の上に立つ時、靴を脱いでくれてありがとう!
お互い、バラバラの組にはなっちゃったけど
まあ、同じ学校の中にいるわけだし
全く会えないなんてことは無いと思うから、きっと大丈夫だよ!
……そうだ、アレン君
お昼ご飯は学食を利用する? それともお弁当とか持ってきた? 」
「屋敷の使い魔であるノッポさんから、お弁当を頂きました
でも、師匠が
足りなかったら何か買って食べなさいと
お小遣いを多めにくれたので、学食にも行ってみたいのです
スタンプラリーの時に食べた牛すじカレー、とても美味しかったですし
きっと他のメニューも美味しいはずです、そうに決まってます」
「そ、そうなんだ、アハハ………
僕はその、その日は
時間が無さ過ぎて、食堂には寄れなかったから、今日がはじめて……
で、でもでも! それならなおさら、お昼にはまた会えるよ!
購買部とかは沢山あるみたいだけど
食堂自体は、この学校に一つしかないみたいだし
エレラちゃんも、この学校の女子寮に住んでるって言ってたから
たぶん食堂を利用するんじゃないかな?
学生寮っていう物が、どんな所なのか、いまいち想像はできないけど
学生同士の共同生活空間ってことだし
そんなに、ちゃんとした料理が出来るような大きな台所が
各個人の部屋に設置されてるかって言ったら、難しそうだよね
だから、お昼休みは
また皆で会ってお話しできるかも! 楽しみだね、アレン君」
「はい、今からすでに、お昼休みが待ち遠しいです
お弁当も、きっとお昼までには食べてしまうでしょうし
僕はこれから、あの大きな食堂のメニュー攻略を目指そうかと思っています」
「あ、あははは……アレン君らしいね」
そうして、お昼の待ち合わせを交わしたアレンは
腰をさすりながら去っていくテトラを見送り
彼もまた、自らに割り振られたクラス番号の教室へと移動します。
メイン校舎の高台までは、専用のエレベーターで上へと上がり
そこから校舎外、見晴らしの良い上空に架けられた
空中に浮遊する、高所恐怖症の人には大変厳しい渡り廊下を
案内看板の指示に従いながら進み
彼はお目当ての教室である、1-2組の教室へとたどり着きました。
ただの一クラス分に割り振られた建物としては
えらく立派な、どんぐり型の空飛ぶ教室。
彼は、そんな建物の扉を開けて
ためらう事無く、室内へと入室します。
大きなドーム状の建物
その特徴的な形状の理由については、建物の内部構造を目にする事で
ある程度理解する事ができました。
「教室の1階部分の中央に、ドーナツ状にくり抜かれた円形の教卓
そして、その上空にあるのは、大型の機械類が一式
あれによく似た形の機械を
師匠と一緒に見に行った、プラネタリウムという場所で見た気がします
ということは、授業に使う教材か何かを
あの大きな機械で映し出す、ということでしょうか?
そして、その教卓や真ん中の機械を囲む形で並ぶ
円を描くように続く長い机の列
前側の席は低い位置で、後ろ側の席は高い位置
これでは、後ろ側の席の方は、中央の先生の姿や声が認識しずらいのでは……
……あぁ! そっか、そのための、あの上空の投影機なのですね
きっと、空中に先生や図形などの映像を映し出すのでしょう
よく見たら、教卓には小さなマイクスタンド
教室の天井付近には、ちゃんとスピーカーらしき物も付けられています
よく考えられているのですね、すごいです
それで、ドームの上側
半円状になった屋根部分はどうなっているのでしょう?
吹き抜けになっているので、半円になっている天井自体は
1階からでも確認できますが、その他にも床や階段らしき物も見えますし
あの空間、まだ何かあるのでは? 」
「上の空間は自主学習スペースになっていて
いくつもの机や椅子に古い参考書、学校内の案内冊子などがあった
部屋の壁に書かれていた説明書きによれば
あの場所は、休み時間や放課後などに
生徒がある程度、自由に使っても良い場所という事らしい」
教室の入り口付近にある、クラス掲示板の前にて
ドーム状の教室内の全容を把握しようと、あたりを見渡していたアレンに
一人の生徒が話しかけてきます。
所々に赤色の鮮やかなメッシュが入り混じる
短くスッキリと切りそろえた金髪ヘアー。
アレンよりも少しだけ、身長も高く、大人っぽい雰囲気はありますが
それでも、まだまだ歳の若い部類に入る、眼鏡を掛けた偉そうな少年。
吊り上がったその鋭い目つきの奥には、レンズ越しでもよく分かる程の
見事な赤色の瞳が見え隠れしています。
金髪と赤い瞳という色の組み合わせもあいまって
なんだかケーキのような色合いに見えなくもないな、なんて
そんな、まったく関係の無い、馬鹿馬鹿しい事を考えながら
アレンはふと、目の前の少年に関する、ある事実に気が付きました。
どうして忘れていたのでしょうか?
明るく特徴的な金髪、眼鏡を掛けた赤い瞳
そして上から喋るような威圧的な話し方。
何を隠そう、人形アレンは既に
この少年と一度、この学校内で対面を果たしているのです。
「あなたは、たしか………」
それも遠い過去の日でも何でもなく
まだ一晩明けたばかりのつい最近、昨日の夕方の真新し出会い。
「あ! 思い出しました!
紙袋が破けて、配布物をメインストリートにぶちまけた
言葉強めの金髪メガネさんです」
「だれが金髪メガネさんだ
昨日、俺と一緒に
落ちた配布物を拾い集めてくれた事には
その……、なんだ、感謝はしているが
だからと言って、そんな面白メガネさんみたいな
ふざけたニックネームを許すつもりはないぞ
俺の名前は、……あ、あぁ、そうか、そうだった
昨日は紙袋の件が恥ずかしすぎて
名乗るのも忘れて、急いでその場を後にしてしまったのだった
まさか……わざわざ同じクラスになってしまうなんて
幸先が悪いな」
「僕の名前はアレン・フォートレスです
これからよろしくお願いします
ラズベリーチーズケーキさん」
「おい、あだ名がいきなり長くなったぞ
しかもなんなんだ、俺と、その
なんちゃらチーズケーキとやらに、なんの関係性があるというんだ」
金髪メガネさんとの、思わぬ再開を果たし
教室の入り口付近でやいのやいのと言い合う
彼らの面白おかしい内容の押し問答は、しばしの間続きました。
具体的に言うと、このクラスの担任を務める教師が教室に到着し
言い合うを続ける彼らを
教卓の一番前にある、最前列の席へと押し込むまで続きました。
「ふん、また変わった奴と隣になったな
アレン、とか言っていたな、君
この教室の机はどうも、誰がどこに座るか、という事が
あらかじめ決められてはいない、自由席タイプの物らしい
たまたま、先程の流れで隣同士の席になってしまったが
君が俺の隣の席に座っている事実は、今更変える事は出来ないのだから
だからこそ、俺のそばにいる間、君は私語を慎み、静粛にしているように
君が騒いで、俺が授業を聞き取れないなんて事になったら最悪だからな
分かったか? 」
「分かりました、僕はセイシュクにしています
そして筆記用具やノートの準備もばっちりです
師匠が、メモや記録は大切なことだとおっしゃっていたので
僕はこれから、目の前の先生がお話する内容を記録します」
「こいつ……俺の話した事、本当に理解したのか? 」
「一学期早々、仲の良いクラスメイトを見付けられたようで何よりです
それでは皆様、このクラスの最初のホームルームをはじめます
お好きな席にご着席ください
私は、このクラスの担任を担当する事となりました
サウロ・リボーンと言う者です
これからの一年間、どうぞよろしくお願いしますね」
整った身なりと背筋の伸びた綺麗な姿勢
それに相反するかのように、素顔や素肌を白い仮面や手袋にて
全て覆い隠した異質な教師は
表情の一切を伺えない姿のまま、簡潔な自己紹介を手早く済ませると
今日の本題である、この学校の授業システムや
単位取得のメカニズムについての説明をはじめます。
アレンが予想した通りの
投影機や音響設備をたくみに使用した授業内容。
そうして、新学期の授業初日の午前中を丸々使用して説明された内容は
〈ログリウム〉という魔法学校で過ごす上での
重要事項な項目に当たる話ばかりでした。
以下が、その説明された一部分です。
・授業の種類は大きく分けて二つに分類され
共通科目と選択科目に分かれる
・この教室やクラス分け自体は、主に共通科目授業や学校行事の時などに使用し
日々の学習において、お互いに協力し合える良好な関係性を作ってほしい
・一日の授業受講数は最大で7枠、そのうちの2枠は共通科目で埋まる為
残りの5枠が自分で選択する事が出来る、選択科目の受講数になる
・選択科目の種類は、取得したい魔法専門技術の種類により異なり
それぞれの目標に合った物を、自分で選んで受講する必要がある
・この学校で学習を行う上で、最終的な目標の一つとなる
分野別の魔法技術取得修了証明書の発行に挑戦する、修了試験への挑戦権は
当校での2年以上の在籍
取得したい証明書に該当する授業の必要単位取得
上記の二つの条件を満たす事で発生する
この試験に合格すると
受けた試験に該当する内容の、魔法技術取得に関する修了証明書を
発行してもらえる権利が生まれる
・いずれかの魔法技術取得修了証明書の発行権を手に入れたとしても
在学中は、修了証明書を発行する事は出来ない
実際に発行してもらうには、その発行権を持っている生徒が
当校を卒業していなければならない
・当校での在籍期間は最大で15年であり
1年ごとの追加費用を支払いさえすれば、15年までの在籍が可能
在籍期間中の二年目以降は
毎年、5回分の修了試験への挑戦権が発生するようになり
在籍中の間に、複数の魔法技術取得修了証明書の発行権を取得しても良い
・当校では、卒業に必要な条件などは特になく
担任教師との面談、生徒指導での面談を行い
その後に、事務室で手続きを行ってもらえば
いつでも卒業する事が出来る
その為、各々のタイミングで卒業時期を選んでほしい
・卒業後、もう一度入学したい場合は再度入学試験を受ける必要がある
などなど……etc.
その他、単位取得状態を確認する為の専門的な機械や
学生証の役割、目標の単位数さえ取得できれば
他の時間は自由に過ごしてもらって構わない事など
事務的な事から、学業に関する内容まで
担任教師であるサウロ先生は
真っ白な仮面の奥から、淡々と説明し続けました。
そして、お昼も近づき
長時間の説明と膨大な情報量に
生徒達が段々と疲弊してきた頃合いで
サウロ先生は、それまでの静まり返った雰囲気をまるっきり無視した
突飛な指示を生徒達に投げかけます。
「それでは皆さん
近くの人と適当に二人組を作ってみてください
このクラスの人数は現在、ぴったり100人
偶数ですので、誰一人余る事無く、50組のペアが作れるはずです
制限時間は3分
その間は、席の移動も許可しますから
自由に誰かと組んでみてください」
ザワザワ、ガヤガヤ
クラスの生徒達は、突然出された指示に戸惑いながらも
その命令通りに、ペアの相手を手当たり次第に探し始めます。
3分という、あまりにも短い制限では
深く吟味する事も、短い会話やコミュニケーションを通して
相手との相性を確かめる時間的余裕すら、あまりありませんから
近くに座っていた生徒同士でのペアを作るのは
もはや自然な流れであったと、言ってしまっても過言ではありませんでした。
そしてそれは、言い合いにより初日から教室の最前席へと強制連行された
アレンや金髪の少年にも言える事。
というか、彼らの言い合いは
他の98人のクラスメイトにも聞こえていましたから
初日から、不用意にも目立ってしまった彼らは
少し遠巻きにされていたので
お互いに、近くの生徒が他にいなかったのです。
「………まあ、何かの縁というのもあるのだろう
これがなんのペアなのかは、今の段階では不明なままだが
どうだ? 君はこのクラスの中に
すでにペアになりたいと思うくらいに、親しい相手はいるのかい? 」
「いいえ、僕がこれまで交流してきた人は
二人とも異なるクラスになってしまったので
この中に親しい方はいません
金髪さんはいかがですか?
この中に親しい方はいらっしゃいますか? 」
「いいや、あいにくだが俺も同じ状態だ
というか、むしろ他のクラスどころか
この学校に親しい奴は一人もいない
俺の出身は学校もあまり無い程の、山奥にある静かな田舎だったからな
だから、この辺りに知り合いはほとんどいないんだ
あと、俺は金髪さんではない
というか、俺の特徴って金髪とメガネしかないのか? 」
残り時間が1分をきった頃
ハァ、と一つ、大きなため息をついた金髪さんは
「ハンス・シェパードだ
お互い、組む相手も時間も無いようだし
もしよろしければ、二人組の相手になるのはどうだろう? 」
そう言って、青い人形に対して握手を求めてきました。
もちろん、人形にはそれを拒む理由が特に有りませんから
否定する事も無く、当然のようにその申し出を受け入ます。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
彼らがなし崩し的にペアとなったタイミングで
3分の経過を知らせる、けたたましいアラームの音が
広い教室内に鳴り響きました。
手のひらサイズの小さなアラームを
ボタン一つで停止させたサウロ先生は
おつかれさまでした、ペアになれていない生徒はいませんね? と
円形の教室を見渡すように確認し終えると
即席で作った、このなんの意味も無い二人組の使用目的について
自身の自己紹介時と同じく、簡潔な内容で説明します。
「まだ始まったばかりの学生生活、大変な事も多いでしょうから
今作ったペアで、お互いをカバーし合いながら
少しづつ、この魔法学校での生活に慣れて行ってください
あと、お互いの親睦を深めたり
手始めに、様々な授業を体験してもらいたいという考えから
今日から一カ月間の間は
二人で同じ選択科目を選んで、一緒に授業を受講してみてください
一日の最大受講数には限りがありますから
お互いに相談し合いながら、仲良く選んでみてくださいね」
「…………あんな、3分で簡単に選んでいいペアじゃないだろ」
「改めまして、よろしくお願いします、ハンス」
いきなりの呼び捨てに面食らうハンスを置いてけぼりに
午前の授業はこれにて終了。
昼食を挟み、午後へと続くのでした。
(おまけ)
〔アレンの学習ノートより抜粋〕
午前中 学校システムについての説明
学費、1年追加ごとの追加費用
基本額をいろいろ合算して、約300万レペ~350万レペ程が目安
学生寮費や選択科目教材費、食堂利用費などは別途
選択科目の教材は、該当教室の入口にて販売しているので
受ける授業により、個人で購入を行う
技術取得修了証明書の発行を行ってもらう為に受ける試験
修了試験へ挑戦が可能となる条件は二つ
・当校での2年以上の在籍
・取得したい証明書に該当する授業の必要単位取得数の確認証明書
魔法技術取得修了証明書とは
その対応する魔法技術を、該当人物が習得しているという
魔法学校側からの証明書であり
資格試験での試験免除や専門職への優先的な就職が出来たり
技術手当が貰えるようになる代物
また、自身で開業する場合は
該当する分野で必要となる証明書が必要となることが多いので
目指す職業や進路により、選択するべき科目は変化する
詳しくは教室2階の資料や
生徒進路指導室にある参考資料を閲覧するように
修了試験への挑戦は、この学校に2年以上在籍しなければ出来ない
魔法技術の最短での取得年数が
2年と明確な区切りを一つ付けられていたのは、この為だと思われる
必要単位取得数は、狙う修了試験の科目により
取らなければいけない単位数や受講科目が異なる
生活魔法の内容にあたる、支援応用科の必要単位数を後で調べる
土日は、平日に行った授業の記録映像を
各教室で上映しており、都合により授業を受けられなかった生徒が
それを補う為の目的で、予備日という扱いになっている。
なので、土日に新規の授業内容をやることは無いので
必要のない生徒は、休息を取ったり研究会活動に励むことが多い。
(このページはここで終わっている)
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(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
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