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3章 入居から入学まで
19話 真夜中の会話とお説教
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「エコー、君はもしかしたら
俺が何をされても悲しまない様な
血も涙も枯れ果てた人間か、何かだと勘違いしていないか?
俺はこう見えて、泣きもするし笑いもするし
ひどい事を言われたら普通に傷付くし、何なら結構な頻度で泣くぞ
今でも、君の言葉で少し泣いてしまった
聞こえるか、この鼻が詰まったような震える声が」
「そんな事思っても無いし、なんなら泣き虫で神経過敏なのも知ってるから
……いいから、涙も鼻水も拭いてちょうだい
成人した大人がロビーで静かに泣いてたら、キモイを通り越して普通に怖いわよ
不審者極まりないもの、そんなの」
静まり返った深夜のエントランス
その片隅に設けられた、有料の魔導通信機エリア。
音の良く響きそうな、広々とした開放的な空間を占拠して
彼は、受話器越しの彼女、王宮にてライルからの定期連絡をずっと待っていたメイド
エコーとの会話を続けます。
深夜1時過ぎ
この日の晩、ホテルの宿泊室に設置されている
ふかふかの白いベットから、夜な夜なこっそりと抜け出したのは
夜更かしも脱走も常習犯である、人形弟子のアレンではなく
睡眠も休息もたっぷりと必要な、普通の人間である師匠のライルの方でした。
「なら教えてほしい
君が開口一番、俺をバカだと罵る必要があるくらい
俺はまた、いったい何をやらかしたんだ?
確かに、城の自室の掃除を、近頃またさぼり気味になっていて
部屋を散らかしたまま、こっちの町に出てきたのは悪かったと思っているけど……」
「そこはもう半分くらい諦めているから、今回私が怒っている理由はそれじゃないわ
ちなみに、その散らかしたまま出てきたという貴方達の部屋は
ここ数日、ずっと私が片付けています
現在進行形の、今まさに真っ最中で
私、生ごみの処分にだけは気を使え、絶対にため込むなって言わなかった? 」
「……誠に申し訳ありません
で、でも、罵倒された理由がそれじゃないっていうなら
今回、俺はなんでまた怒られてるんだ?
最近では、君にお説教をされる回数も減ってきてたのに
アレンの試験も無事終わって、数日後には、はれて魔法学校に無事入学だっていう時に
何をそんなにめくじら立てるくらい、大きな間違いをしでかしたっていうんだ? 」
「そうね、もう既にやっちゃった間違いと、まだやっちゃう前の間違いがあるから
順番に、一個づつ丁寧に説明してあげます
ちょうど、部屋の掃除にも飽き飽きしてたところだし」
そう言って、受話器の向こうのエコーは
疲れたように溜息を一つこぼすと、会話の本題へと話を移します。
「まずは、そうね、まだ犯してはない、未遂の方の間違いについて教えましょう
貴方ね、前の話で自分で言ってたんでしょ?
アレンに色々教えていくにあたって、これまでのだらしない生活は良くないって
それで、起きる時間も含めて、生活態度とか環境とか、これから整える予定だって
今さっきの私への報告の時にだって、自信満々に言ってたじゃない
なのに、そんな目標を新たに定めた人間が
なんで、新しい町で弟子と生活を共にするであろう新居選びを
家具付きの適当なアパートで済ませちゃおう、なんて
短絡的な考えであっさりまとめちゃうのよ
またお城の自室の二の前になるじゃない!
もっと真剣に考えて! 」
「え、え? ダメ、だったりするのか?
家具付きなら、自分で新しい家具をそろえる必要もないし、楽だぞ?
それに、アパートはこじんまりと必要な部屋がまとまってるわりに、料金も安いし
アレンの体の大きさは、10歳くらいの子供の平均値をもとに設計したから
俺との生活程度なら、広さ的にはそこまで広くなくても……」
「問題だらけでしょ
そんな中でも、大きな問題になってくるのはざっくりと分けて2つ
1つ目は、貴方達は魔法師だから、やたら物も増えるって事と
2つ目、その肝心のアレンが
実は人間の子供じゃなくて、正体は貴方が作った人形だって事
さすがに、こんな事が学校側にばれたら困るでしょ? 忘れてない?
それに、この散らかった部屋を見てもわかるけど
魔法師、特に道具を自作したり、何かしらの実験をする分野の魔法師は
よっぽど気を付けて常日頃から掃除してないと、すぐに部屋が物で溢れかえって
綺麗だった部屋も、物の数日で倉庫の様な有様にしちゃうみたいだし
それに加えて、これからはアレンも本格的に魔法の勉強を始めるんだから
学校の課題をやるにしろ、貴方と実技に即した勉強をするにしろ
賃貸のアパートじゃ、スペースも収納も狭いし少ないし
何より、実験中に失敗して、部屋がまた大破したらどうするの?
アパートって事は、左右はもちろん上下や向かい側にも
他の住民さんが住んでるのよ? 危ないじゃない
貴方、アレンが造形魔法に失敗して
貴方の自室を無数の鉄柱で破壊した事、もう忘れたんじゃないでしょうね? 」
「わ、………忘れて、ないです」
ライルの声がどんどんと小さくなる中
エコーのお説教はまだ続きます。
その意見がなまじ、間違ってもずれてもいないため
通信機を片手に持つライルも、反論せず聞き続ける他、とれる選択肢はありませんでした。
「それに、集合住宅って、他の住人さんと生活する空間が隣り合っている分
プライバシーの漏れる確率だって、一軒家よりも格段に上がるわ
なのに、実は人形でしたっていう
人にばれたら困る事実を隠したいアレンや
魔法師団の団長っていう身分を隠して、その都市に仮住まいする貴方が
そんな、秘密の流出が起こりそうな場所に、なんでわざわざ住もうとするのよ
それに、魔法使いが住む住居って、いわゆる工房みたいな物なんじゃないの?
もっと気を使って、環境を考えて、慎重に選んでよね
あと、家具選ぶのが面倒くさいとか
どれ選んでいいか分からないから適当でいいやとか
そんないい加減な考え方も癖も、今回を機会に改めておきなさい
まだ成長途中のアレンに
生活を通しながら、いろんな事を教えていくんでしょ?
なのに、師匠の貴方がはじめから
そんなだらしのない姿をお手本として見せていいわけないでしょ
ライルはもう、彼の師匠になったんだから
今までの、一人暮らしだったから何とかなっていた
ずぼらな生活をこれからも続けていくなんて無茶なんだから
そんな考え、早めに捨てなさいよ
アレンが規則正しい、健康的な人間の生活を
これが理想の形なんだなって、ちゃんと学習できるよう、ライルも心がけなきゃ
ライル、最近はちゃんと食事取ってるんでしょうね?
また面倒くさいからって、一日の食事を丸パン三個で済ませたりなんて事は………」
「それは大丈夫!! アレンもいるから! 毎日三食しっかり色々食べてるよ!
その辺は大丈夫だ、まかせてくれ!! 」
「……な、なら、まあ良かったけど」
はあぁ……
受話器から少し顔をそらし、ライルは小さくため息を漏らします。
こんな真夜中に、ここまでド直球の耳に痛いお説教
反論の余地すらも存在しない、魔法師ライルの今後の課題。
弟子に健康的な、普通の生活を教える為の
ライル本人の生活改善という、彼が今まで散々ないがしろにしてきた、大きな課題です。
付けが回ってきたのでしょう。
はじめから、人の世に住むと決めた限り
そうそう逃げられるような現実ではありませんでしたが
直面した難題に対して、流石の彼も頭を抱えました。
やれるかな、でもやらなきゃな
今まで散々出来なかった事が、今ここになって出来るようになれるかな。
突き付けられた、目の前の試練の数々に対して
すかっり気落ちしてしまったライルの気配を察知したのか
長時間にわたる、ライルの自室の清掃でイライラしていたエコーも
少し言い過ぎたかも、と気を使ってくれたのか
先程のお説教の時よりも、わずかに声のトーンを柔らかくして
途方に暮れている、通信機越しのライルに内容のまとめを伝えます。
「とにかく、最初は貴方も大変だろうけど
生活の基礎になる家選びと、それを支える家の中の家具選び
とりあえず、今回はこの2個だけ、ちょっと頑張ってみて
服とかの類は、私がまた適当なの選んで、そっちに送ってあげるから
家も、一軒家である程度の広さがある
敷地内での魔法の実験や研究が可能な物件を選ぶの
そこが貴方達の、その街での拠点になるんだから
適当な選び方はしちゃダメだからね?
そっちの不動産関係に、私の知り合いもいたはずだから
ちょっと電話して、家選びとか家具の購入とかも
手助けしてくれたり、アドバイスしてもらえるよう頼んでおいてあげる
さすがの私も、貴方が城を離れて忙しい今の時期に
一緒にそっちについて行ってあげるのは難しかったの
だから悪いけど、ちょっと自分達で頑張ってみてね」
「……いや、こっちこそ、本当にいつもいつも、悪いな
今度こそ、あまりエコーには頼らず、俺がしっかりしようと思ってたんだけど
初っ端から、こんなに頼りっぱなしになっちゃって
うん、せっかくの機会だし
俺も色々頑張ってみるよ、アレンに俺のずぼらさが移ったら大変だしな
こんな真夜中に通信して悪かったな
部屋の掃除もありがとう、せめてこっちの家は
物だらけのゴミ屋敷にしないよう、掃除とか整理整頓とかも頑張っみる
………あれ? そういえば、エコー
君はたしか、話の最初の方に
俺は、もう既にやっちゃった間違いと
まだやっちゃう前の間違いがある、みたいな話をしてなかったか?
やる前の間違いは、今の話でよく分かったけど
結局、城を離れてのこの数日で
俺が既に、やっちゃってた間違いって何だったんだ? 」
「あぁ、そうだった、忘れてた
それもあって私、最初の方であんなに怒ってたんだった
思い出した、思い出した
えっとね、ライル、貴方……」
怒りも腹立たしさも本人にぶつけまくった事で、少し落ち着きを取り戻したエコーは
そんな彼女からの励ましの言葉を受け、少しだけ持ち直していたライルに対し
最後の最後で、とどめの一手を彼に伝えました。
「実技試験の最終日、たぶんアレンのお迎えの時とかじゃないかしら?
慌てたのか、取り乱したのかは知らないけど
目くらまし用の、変装魔法
掛けずにそのまま外出しちゃったんじゃない?
魔法職養成学校の正門前広場に
あの魔法士団長様によく似た姿を見かけた、弟子でも入学させるんじゃないかって
噂として一部の間で出回り始めてたわよ?
せっかく名前も戸籍も偽造して、団長だっていう役職も隠してそっちに行ってるのに
素顔を丸出しで歩いてたら意味ないじゃない
ただでさえ、国内初の平民出身の魔法士団長だって事で少し有名なんだから
一応、認識阻害系や記憶妨害系の魔法で
使い魔も使って、今回は何とか丸く収まりそうだけど
そこは気を付けなくちゃ…… ん? ライル?
返事がないけど、聞いてる? おーい、ラーイールー? 」
「……………………………………………」
空中鉄道でも、入口の厳重な検査の時でも
毎日あんなに心掛けて、しっかりと気を付けて魔法をかけていたのに
実技試験の最終日、弟子のアレンではなく
師匠である自分が、そんなケアレスミスを今更してしまうだなんて。
あまりの情けなさに、涙も枯れ果て、笑いがこみ上げてきてしまいそうな程です。
ロビーで立ち尽くす彼を置き去りに、今日もいつも通りの夜が過ぎていきました。
そして翌日の朝
「おはようございます
……あれ?
師匠の方が、先に目を覚ましているのは珍しいです
それに、師匠
その、目元に付けている、不思議な形の板は何ですか? 」
「あぁ、おはようアレン
これはな、俺自身への戒めなんだよ
改めて気合を入れなおす為にも、肌身離さずつけておける形にしたんだ」
「おぉ~、いましめ? や気合、を入れなおす時に
人々は、そのような板を、ご自身の顔に装着するのですね
なるほど、僕もいつかそれ付けてみたいです」
二度と同じミスを繰り返さぬように。
ライルは、たった一晩で作り上げた
認識阻害魔法付きの、お手製仮面を目元に装着し
手には財布、懐に預金通帳
肩から斜めに下げる鞄の中には、近くの本屋さんで急遽購入した
〈必読!! 魔法師のための家選び 住居と工房の分離化がオススメ!〉というタイトルの本を入れて
気合十分、やる気満々で、宿泊室の玄関へと向かいます。
「さぁ、行こうかアレン!
住む家っていうのは生活の基盤
言わばこの町で過ごす、俺たちの新たな拠点みたいなものだ
特に魔法師にとっては工房としての役割もある為
適当な判断では決められない
心していこうぜ! 」
「おぉ! すごいです
師匠が、気合とか、そういうのでいっぱいになっています」
どこかで聞いた言葉を、そのまま使い回したようなセリフではありますが
朝から元気いっぱいの彼らには、きっとそんな言葉の一つも届く事は無いでしょう。
階段を下り、エントランスを抜け
目指すはエコーの話していた、知り合いの人がいるという話の不動産会社。
さあ、向かおうか と
ライル達は部屋を出て、簡単な朝食を手早く済ませ
エントランス入り口に設けられた、ガラス製の自動ドアへと進みます。
透明なガラスの扉をくぐり抜け
彼らがまず、目にしたものは……
「あ! お待ちしてました~
えーと、ライル様とそのお弟子さんのアレン君っすよね~
エコーさんから夜中に通信かかってきた時は、いったい何事かと思っちゃいましたけど
上客だっていうから、居ても立ってもいられず
思わずお迎えに上がっちゃいましたよ~
いや~、これからよろしくお願いしますね、ライルの旦那」
「あぇっ!?? あ、えっと、ここ、こちらこそ、お願いいたします
………あの、わざわざ迎えにまで来てもらって、申し訳ないな~」
「いいんすよ、これくらい
聞けば働き盛りの稼ぎ盛りらしいじゃないですか、ライルの旦那
俺も、リッチなお客さん掴めて嬉しいですし、これくらいのサービスどうって事ないっす!
ささ、車を用意してきたんで乗っちゃって下さい
本日は当社のおすすめの超優良物件、じゃんじゃん紹介しちゃいますからね~
時間がいくらあっても足りないっす! 」
「え、ぇぇ……ソンナニミルンデスカ」
「? 師匠、先ほどの気合的なものが、どんどん消失していますよ?
体調不良なのですか? 」
既に昨晩、エコーから連絡を受けたであろう
まだライルよりも少し若そうな
賑やかでよくしゃべる、お気楽そうな青年が迎えに来ていました。
不動産会社の営業担当であると名乗る彼は
少しだけ塗装のはげかかった、貫禄のある車に
戸惑いを隠せない彼らをせっせと詰め込んで、意気揚々と車を発進させます。
こうして、彼らの家探しはスタートする事となりました。
昨晩から情緒の起伏が激しすぎて
家を見る前から、既に疲れ気味になってしまっているライルは
はたして、無事、アレンと住まう新たな家を、見つけられるのでしょうか?
(おまけ)
〔とあるメイドの日記帳より抜粋〕
●月◇日 晴れ
先月より調べていた
詐欺組織の幹部に当たる人物らを、やっと確保する事が出来た。
長かった、本当に長かった。
最初予想していたよりも、組織が複雑な構造になっていたのが原因だろう。
何はともあれ、これで今回の私の仕事はお終いだ。
後は捜査班の奴らに情報を渡して任せよう。
私の魔法の性能上、どうしても探し物や情報収集の仕事が増えるのは仕方がないけど
最近は流石に、働きづめで疲れてきた。
もう少し落ち着いたら、王女様に頼んで
数日間の休暇でも貰い、旅行にでも行ってみようか。
このような遊びの時も、私の魔法はとても便利なのだから。
●月×日 晴れ
今日、買い出しで城下町に出た際に
妙な奴が話しかけてきた。
責任を取ってほしい、だなんて
いきなり何のことかと思って聞き返してみれば、先週捕まえた詐欺組織の一人だったと言う
腹が立って、捕まえて騎士連中の前に突き出してやろうとしたら
思いの他、かくれんぼが上手で驚いた。
鏡の行き来が可能な私から、逃げられるなんて大したものだ。
また来る、と言っていたので、そのうちまた仕掛けてくるかもしれない。
具体的な目的が何かは知らないが、次は逃がさない。
〇月●日 曇り
久しぶりに、例のかくれんぼ野郎が私を訪ねてきた。
話があるというので、聞くだけ聞いてやろうと思い、しばらく付き合ったが
内容がとんでもなくて、さすがの私も驚いた。
まず、そいつが私の目の前に差し出して来た
何枚もの紙の束に書かれていたのは
この城下町に住む住民の何割か
数にして、ざっと 500人 を超える
住民達の個人情報がまとめられたものだった。
国に登録されている住民番号から、現在の住所の記載だけでは飽き足らず
その人物のこれまでの経歴や勤め先、銀行口座の暗証番号や今彼らが抱えるトラブルまで
集められた数々の個人情報の種類は多岐にわたっている。
手広く、様々な条件に当てはまる人の情報が、数多く記載された紙の束を目の当たりにして
この人物を、これ以上このままにしておくのはまずいと、そう判断した直後
そいつは思いもしなかった内容を続けて述べた。
「アンタがこのまま俺を捕まえようとしたり、騎士連中に突き出そうとするなら
俺はここから死に物狂いで逃げ出して、裏ルートでここにある情報全てを売り払うっす
その後、俺が捕まろうが、逃げ延びようが、この際そこはどうでもいいっす
だから、もし、アンタがこの情報を守りたいっていうなら
これから俺を養ってほしいっす
今までは、アンタが潰しちゃった組織で生活してたのに
このままじゃ、俺のこれからの食いぶちが無いっす
人生も老い先もその先も、真っ暗パーのアッパラパーっす、やべーっす
責任取って、今度はアンタが俺を飼うっす
ごらんの通り、俺は戸籍も学も何一つ無いけど
芸だけはみっちり仕込まれて、ウルトラ完璧の超一流マンっす
愛玩用でも雑用係でも、一通りこなせる優良物件
どうっすか? けっこうお買い得じゃないっすか? 今が狙い時っすよ! 」
放っておくには、危険すぎる問題人物。
さて、これからどうしたものか。
(このページはここで終わっている)
俺が何をされても悲しまない様な
血も涙も枯れ果てた人間か、何かだと勘違いしていないか?
俺はこう見えて、泣きもするし笑いもするし
ひどい事を言われたら普通に傷付くし、何なら結構な頻度で泣くぞ
今でも、君の言葉で少し泣いてしまった
聞こえるか、この鼻が詰まったような震える声が」
「そんな事思っても無いし、なんなら泣き虫で神経過敏なのも知ってるから
……いいから、涙も鼻水も拭いてちょうだい
成人した大人がロビーで静かに泣いてたら、キモイを通り越して普通に怖いわよ
不審者極まりないもの、そんなの」
静まり返った深夜のエントランス
その片隅に設けられた、有料の魔導通信機エリア。
音の良く響きそうな、広々とした開放的な空間を占拠して
彼は、受話器越しの彼女、王宮にてライルからの定期連絡をずっと待っていたメイド
エコーとの会話を続けます。
深夜1時過ぎ
この日の晩、ホテルの宿泊室に設置されている
ふかふかの白いベットから、夜な夜なこっそりと抜け出したのは
夜更かしも脱走も常習犯である、人形弟子のアレンではなく
睡眠も休息もたっぷりと必要な、普通の人間である師匠のライルの方でした。
「なら教えてほしい
君が開口一番、俺をバカだと罵る必要があるくらい
俺はまた、いったい何をやらかしたんだ?
確かに、城の自室の掃除を、近頃またさぼり気味になっていて
部屋を散らかしたまま、こっちの町に出てきたのは悪かったと思っているけど……」
「そこはもう半分くらい諦めているから、今回私が怒っている理由はそれじゃないわ
ちなみに、その散らかしたまま出てきたという貴方達の部屋は
ここ数日、ずっと私が片付けています
現在進行形の、今まさに真っ最中で
私、生ごみの処分にだけは気を使え、絶対にため込むなって言わなかった? 」
「……誠に申し訳ありません
で、でも、罵倒された理由がそれじゃないっていうなら
今回、俺はなんでまた怒られてるんだ?
最近では、君にお説教をされる回数も減ってきてたのに
アレンの試験も無事終わって、数日後には、はれて魔法学校に無事入学だっていう時に
何をそんなにめくじら立てるくらい、大きな間違いをしでかしたっていうんだ? 」
「そうね、もう既にやっちゃった間違いと、まだやっちゃう前の間違いがあるから
順番に、一個づつ丁寧に説明してあげます
ちょうど、部屋の掃除にも飽き飽きしてたところだし」
そう言って、受話器の向こうのエコーは
疲れたように溜息を一つこぼすと、会話の本題へと話を移します。
「まずは、そうね、まだ犯してはない、未遂の方の間違いについて教えましょう
貴方ね、前の話で自分で言ってたんでしょ?
アレンに色々教えていくにあたって、これまでのだらしない生活は良くないって
それで、起きる時間も含めて、生活態度とか環境とか、これから整える予定だって
今さっきの私への報告の時にだって、自信満々に言ってたじゃない
なのに、そんな目標を新たに定めた人間が
なんで、新しい町で弟子と生活を共にするであろう新居選びを
家具付きの適当なアパートで済ませちゃおう、なんて
短絡的な考えであっさりまとめちゃうのよ
またお城の自室の二の前になるじゃない!
もっと真剣に考えて! 」
「え、え? ダメ、だったりするのか?
家具付きなら、自分で新しい家具をそろえる必要もないし、楽だぞ?
それに、アパートはこじんまりと必要な部屋がまとまってるわりに、料金も安いし
アレンの体の大きさは、10歳くらいの子供の平均値をもとに設計したから
俺との生活程度なら、広さ的にはそこまで広くなくても……」
「問題だらけでしょ
そんな中でも、大きな問題になってくるのはざっくりと分けて2つ
1つ目は、貴方達は魔法師だから、やたら物も増えるって事と
2つ目、その肝心のアレンが
実は人間の子供じゃなくて、正体は貴方が作った人形だって事
さすがに、こんな事が学校側にばれたら困るでしょ? 忘れてない?
それに、この散らかった部屋を見てもわかるけど
魔法師、特に道具を自作したり、何かしらの実験をする分野の魔法師は
よっぽど気を付けて常日頃から掃除してないと、すぐに部屋が物で溢れかえって
綺麗だった部屋も、物の数日で倉庫の様な有様にしちゃうみたいだし
それに加えて、これからはアレンも本格的に魔法の勉強を始めるんだから
学校の課題をやるにしろ、貴方と実技に即した勉強をするにしろ
賃貸のアパートじゃ、スペースも収納も狭いし少ないし
何より、実験中に失敗して、部屋がまた大破したらどうするの?
アパートって事は、左右はもちろん上下や向かい側にも
他の住民さんが住んでるのよ? 危ないじゃない
貴方、アレンが造形魔法に失敗して
貴方の自室を無数の鉄柱で破壊した事、もう忘れたんじゃないでしょうね? 」
「わ、………忘れて、ないです」
ライルの声がどんどんと小さくなる中
エコーのお説教はまだ続きます。
その意見がなまじ、間違ってもずれてもいないため
通信機を片手に持つライルも、反論せず聞き続ける他、とれる選択肢はありませんでした。
「それに、集合住宅って、他の住人さんと生活する空間が隣り合っている分
プライバシーの漏れる確率だって、一軒家よりも格段に上がるわ
なのに、実は人形でしたっていう
人にばれたら困る事実を隠したいアレンや
魔法師団の団長っていう身分を隠して、その都市に仮住まいする貴方が
そんな、秘密の流出が起こりそうな場所に、なんでわざわざ住もうとするのよ
それに、魔法使いが住む住居って、いわゆる工房みたいな物なんじゃないの?
もっと気を使って、環境を考えて、慎重に選んでよね
あと、家具選ぶのが面倒くさいとか
どれ選んでいいか分からないから適当でいいやとか
そんないい加減な考え方も癖も、今回を機会に改めておきなさい
まだ成長途中のアレンに
生活を通しながら、いろんな事を教えていくんでしょ?
なのに、師匠の貴方がはじめから
そんなだらしのない姿をお手本として見せていいわけないでしょ
ライルはもう、彼の師匠になったんだから
今までの、一人暮らしだったから何とかなっていた
ずぼらな生活をこれからも続けていくなんて無茶なんだから
そんな考え、早めに捨てなさいよ
アレンが規則正しい、健康的な人間の生活を
これが理想の形なんだなって、ちゃんと学習できるよう、ライルも心がけなきゃ
ライル、最近はちゃんと食事取ってるんでしょうね?
また面倒くさいからって、一日の食事を丸パン三個で済ませたりなんて事は………」
「それは大丈夫!! アレンもいるから! 毎日三食しっかり色々食べてるよ!
その辺は大丈夫だ、まかせてくれ!! 」
「……な、なら、まあ良かったけど」
はあぁ……
受話器から少し顔をそらし、ライルは小さくため息を漏らします。
こんな真夜中に、ここまでド直球の耳に痛いお説教
反論の余地すらも存在しない、魔法師ライルの今後の課題。
弟子に健康的な、普通の生活を教える為の
ライル本人の生活改善という、彼が今まで散々ないがしろにしてきた、大きな課題です。
付けが回ってきたのでしょう。
はじめから、人の世に住むと決めた限り
そうそう逃げられるような現実ではありませんでしたが
直面した難題に対して、流石の彼も頭を抱えました。
やれるかな、でもやらなきゃな
今まで散々出来なかった事が、今ここになって出来るようになれるかな。
突き付けられた、目の前の試練の数々に対して
すかっり気落ちしてしまったライルの気配を察知したのか
長時間にわたる、ライルの自室の清掃でイライラしていたエコーも
少し言い過ぎたかも、と気を使ってくれたのか
先程のお説教の時よりも、わずかに声のトーンを柔らかくして
途方に暮れている、通信機越しのライルに内容のまとめを伝えます。
「とにかく、最初は貴方も大変だろうけど
生活の基礎になる家選びと、それを支える家の中の家具選び
とりあえず、今回はこの2個だけ、ちょっと頑張ってみて
服とかの類は、私がまた適当なの選んで、そっちに送ってあげるから
家も、一軒家である程度の広さがある
敷地内での魔法の実験や研究が可能な物件を選ぶの
そこが貴方達の、その街での拠点になるんだから
適当な選び方はしちゃダメだからね?
そっちの不動産関係に、私の知り合いもいたはずだから
ちょっと電話して、家選びとか家具の購入とかも
手助けしてくれたり、アドバイスしてもらえるよう頼んでおいてあげる
さすがの私も、貴方が城を離れて忙しい今の時期に
一緒にそっちについて行ってあげるのは難しかったの
だから悪いけど、ちょっと自分達で頑張ってみてね」
「……いや、こっちこそ、本当にいつもいつも、悪いな
今度こそ、あまりエコーには頼らず、俺がしっかりしようと思ってたんだけど
初っ端から、こんなに頼りっぱなしになっちゃって
うん、せっかくの機会だし
俺も色々頑張ってみるよ、アレンに俺のずぼらさが移ったら大変だしな
こんな真夜中に通信して悪かったな
部屋の掃除もありがとう、せめてこっちの家は
物だらけのゴミ屋敷にしないよう、掃除とか整理整頓とかも頑張っみる
………あれ? そういえば、エコー
君はたしか、話の最初の方に
俺は、もう既にやっちゃった間違いと
まだやっちゃう前の間違いがある、みたいな話をしてなかったか?
やる前の間違いは、今の話でよく分かったけど
結局、城を離れてのこの数日で
俺が既に、やっちゃってた間違いって何だったんだ? 」
「あぁ、そうだった、忘れてた
それもあって私、最初の方であんなに怒ってたんだった
思い出した、思い出した
えっとね、ライル、貴方……」
怒りも腹立たしさも本人にぶつけまくった事で、少し落ち着きを取り戻したエコーは
そんな彼女からの励ましの言葉を受け、少しだけ持ち直していたライルに対し
最後の最後で、とどめの一手を彼に伝えました。
「実技試験の最終日、たぶんアレンのお迎えの時とかじゃないかしら?
慌てたのか、取り乱したのかは知らないけど
目くらまし用の、変装魔法
掛けずにそのまま外出しちゃったんじゃない?
魔法職養成学校の正門前広場に
あの魔法士団長様によく似た姿を見かけた、弟子でも入学させるんじゃないかって
噂として一部の間で出回り始めてたわよ?
せっかく名前も戸籍も偽造して、団長だっていう役職も隠してそっちに行ってるのに
素顔を丸出しで歩いてたら意味ないじゃない
ただでさえ、国内初の平民出身の魔法士団長だって事で少し有名なんだから
一応、認識阻害系や記憶妨害系の魔法で
使い魔も使って、今回は何とか丸く収まりそうだけど
そこは気を付けなくちゃ…… ん? ライル?
返事がないけど、聞いてる? おーい、ラーイールー? 」
「……………………………………………」
空中鉄道でも、入口の厳重な検査の時でも
毎日あんなに心掛けて、しっかりと気を付けて魔法をかけていたのに
実技試験の最終日、弟子のアレンではなく
師匠である自分が、そんなケアレスミスを今更してしまうだなんて。
あまりの情けなさに、涙も枯れ果て、笑いがこみ上げてきてしまいそうな程です。
ロビーで立ち尽くす彼を置き去りに、今日もいつも通りの夜が過ぎていきました。
そして翌日の朝
「おはようございます
……あれ?
師匠の方が、先に目を覚ましているのは珍しいです
それに、師匠
その、目元に付けている、不思議な形の板は何ですか? 」
「あぁ、おはようアレン
これはな、俺自身への戒めなんだよ
改めて気合を入れなおす為にも、肌身離さずつけておける形にしたんだ」
「おぉ~、いましめ? や気合、を入れなおす時に
人々は、そのような板を、ご自身の顔に装着するのですね
なるほど、僕もいつかそれ付けてみたいです」
二度と同じミスを繰り返さぬように。
ライルは、たった一晩で作り上げた
認識阻害魔法付きの、お手製仮面を目元に装着し
手には財布、懐に預金通帳
肩から斜めに下げる鞄の中には、近くの本屋さんで急遽購入した
〈必読!! 魔法師のための家選び 住居と工房の分離化がオススメ!〉というタイトルの本を入れて
気合十分、やる気満々で、宿泊室の玄関へと向かいます。
「さぁ、行こうかアレン!
住む家っていうのは生活の基盤
言わばこの町で過ごす、俺たちの新たな拠点みたいなものだ
特に魔法師にとっては工房としての役割もある為
適当な判断では決められない
心していこうぜ! 」
「おぉ! すごいです
師匠が、気合とか、そういうのでいっぱいになっています」
どこかで聞いた言葉を、そのまま使い回したようなセリフではありますが
朝から元気いっぱいの彼らには、きっとそんな言葉の一つも届く事は無いでしょう。
階段を下り、エントランスを抜け
目指すはエコーの話していた、知り合いの人がいるという話の不動産会社。
さあ、向かおうか と
ライル達は部屋を出て、簡単な朝食を手早く済ませ
エントランス入り口に設けられた、ガラス製の自動ドアへと進みます。
透明なガラスの扉をくぐり抜け
彼らがまず、目にしたものは……
「あ! お待ちしてました~
えーと、ライル様とそのお弟子さんのアレン君っすよね~
エコーさんから夜中に通信かかってきた時は、いったい何事かと思っちゃいましたけど
上客だっていうから、居ても立ってもいられず
思わずお迎えに上がっちゃいましたよ~
いや~、これからよろしくお願いしますね、ライルの旦那」
「あぇっ!?? あ、えっと、ここ、こちらこそ、お願いいたします
………あの、わざわざ迎えにまで来てもらって、申し訳ないな~」
「いいんすよ、これくらい
聞けば働き盛りの稼ぎ盛りらしいじゃないですか、ライルの旦那
俺も、リッチなお客さん掴めて嬉しいですし、これくらいのサービスどうって事ないっす!
ささ、車を用意してきたんで乗っちゃって下さい
本日は当社のおすすめの超優良物件、じゃんじゃん紹介しちゃいますからね~
時間がいくらあっても足りないっす! 」
「え、ぇぇ……ソンナニミルンデスカ」
「? 師匠、先ほどの気合的なものが、どんどん消失していますよ?
体調不良なのですか? 」
既に昨晩、エコーから連絡を受けたであろう
まだライルよりも少し若そうな
賑やかでよくしゃべる、お気楽そうな青年が迎えに来ていました。
不動産会社の営業担当であると名乗る彼は
少しだけ塗装のはげかかった、貫禄のある車に
戸惑いを隠せない彼らをせっせと詰め込んで、意気揚々と車を発進させます。
こうして、彼らの家探しはスタートする事となりました。
昨晩から情緒の起伏が激しすぎて
家を見る前から、既に疲れ気味になってしまっているライルは
はたして、無事、アレンと住まう新たな家を、見つけられるのでしょうか?
(おまけ)
〔とあるメイドの日記帳より抜粋〕
●月◇日 晴れ
先月より調べていた
詐欺組織の幹部に当たる人物らを、やっと確保する事が出来た。
長かった、本当に長かった。
最初予想していたよりも、組織が複雑な構造になっていたのが原因だろう。
何はともあれ、これで今回の私の仕事はお終いだ。
後は捜査班の奴らに情報を渡して任せよう。
私の魔法の性能上、どうしても探し物や情報収集の仕事が増えるのは仕方がないけど
最近は流石に、働きづめで疲れてきた。
もう少し落ち着いたら、王女様に頼んで
数日間の休暇でも貰い、旅行にでも行ってみようか。
このような遊びの時も、私の魔法はとても便利なのだから。
●月×日 晴れ
今日、買い出しで城下町に出た際に
妙な奴が話しかけてきた。
責任を取ってほしい、だなんて
いきなり何のことかと思って聞き返してみれば、先週捕まえた詐欺組織の一人だったと言う
腹が立って、捕まえて騎士連中の前に突き出してやろうとしたら
思いの他、かくれんぼが上手で驚いた。
鏡の行き来が可能な私から、逃げられるなんて大したものだ。
また来る、と言っていたので、そのうちまた仕掛けてくるかもしれない。
具体的な目的が何かは知らないが、次は逃がさない。
〇月●日 曇り
久しぶりに、例のかくれんぼ野郎が私を訪ねてきた。
話があるというので、聞くだけ聞いてやろうと思い、しばらく付き合ったが
内容がとんでもなくて、さすがの私も驚いた。
まず、そいつが私の目の前に差し出して来た
何枚もの紙の束に書かれていたのは
この城下町に住む住民の何割か
数にして、ざっと 500人 を超える
住民達の個人情報がまとめられたものだった。
国に登録されている住民番号から、現在の住所の記載だけでは飽き足らず
その人物のこれまでの経歴や勤め先、銀行口座の暗証番号や今彼らが抱えるトラブルまで
集められた数々の個人情報の種類は多岐にわたっている。
手広く、様々な条件に当てはまる人の情報が、数多く記載された紙の束を目の当たりにして
この人物を、これ以上このままにしておくのはまずいと、そう判断した直後
そいつは思いもしなかった内容を続けて述べた。
「アンタがこのまま俺を捕まえようとしたり、騎士連中に突き出そうとするなら
俺はここから死に物狂いで逃げ出して、裏ルートでここにある情報全てを売り払うっす
その後、俺が捕まろうが、逃げ延びようが、この際そこはどうでもいいっす
だから、もし、アンタがこの情報を守りたいっていうなら
これから俺を養ってほしいっす
今までは、アンタが潰しちゃった組織で生活してたのに
このままじゃ、俺のこれからの食いぶちが無いっす
人生も老い先もその先も、真っ暗パーのアッパラパーっす、やべーっす
責任取って、今度はアンタが俺を飼うっす
ごらんの通り、俺は戸籍も学も何一つ無いけど
芸だけはみっちり仕込まれて、ウルトラ完璧の超一流マンっす
愛玩用でも雑用係でも、一通りこなせる優良物件
どうっすか? けっこうお買い得じゃないっすか? 今が狙い時っすよ! 」
放っておくには、危険すぎる問題人物。
さて、これからどうしたものか。
(このページはここで終わっている)
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