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2章 旅行から入学試験まで
10話 青い人形と宿泊ホテル
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「………」
人形アレンは天井を見つめています。
「…………」
ベットやソファの上ではなく
学校側が受験者用に手配された、ホテルの床のフローリングの上で
「…………………」
大の字になって大胆に手足を伸ばしながら、それはそれは堂々と寝転がっておりました。
「…………………………」
先程まで、アレンが使用していた白いテーブルの上には
何度も繰り返し、解き続けられた過去問集と参考書、文字だらけのノートなどが山のように
ずらりと無造作に、積み重ねられて置かれています。
白を基調とした、清潔感のある広い室内で
アレンはただ床に寝そべりながら、天井を見つめ、途方もない考え事にふけっています。
「………、僕、本当に合格できるのでしょうか」
受験勉強あるある
合格への強い不安から、陥ることの多い負のスパイラル
受験スランプ、というものに
人形アレンも、はまってしまっている真っ最中なのでした。
時は数日程前にさかのぼり、魔法師団長ライルと人形のアレンが
魔法職学校が位置する浮遊都市に、足を踏み入れた日からはじまります。
厳重な身体検査と身分証の確認
そして、この浮遊都市での注意点などの説明を、一通り聞き終えた一人と一体は
「………すまん、アレン
俺はなんだか既に疲れてしまった、ホテルにたどり着く前に力尽きそうだ」
「大丈夫です、師匠
師匠が動けなくなったとしても、僕が師匠を抱っこして運べますので
師匠は安心して力尽きてください」
無事、魔法師団に所属する、一人の魔法師とその弟子として
身分や素性の一切を隠しきり
何とか、国内最大の浮遊都市ゆえの、厳しめな検査を突破していました。
綺麗に整列された
高くそびえ建つ、ガラス張りの建造物が並ぶ、巨大な空中都市の街並み。
町を区切るように張り巡らされた、線路の上を
ガタンゴトンと進んで行く、色とりどりの路面電車
伝統的な造形の多かった、趣ある城下町での景観とは対称的に
近代的な街づくりを積極的に取り入れたであろう、都会的な街の光景に目を奪われながらも
ライルとアレンは、配布されている地図と電車を活用しつつ
学校が予約してくれているであろう、受験者用の宿泊施設を目指します。
「ようこそお越しくださいました
当ホテルは、国立魔法職養成学校<ログリウム>との協力関係に基づき
入学試験期間をはじめとした、特別期間中などに限り
対象の方々のみご利用可能な、貸し切り営業を行わせて頂いております
当ホテルは、受験者様方が試験当日まで、万全な体制を整えられますよう
様々なサポート用設備やサービスを取り揃えております
詳しくは、ホテル内に掲示されている案内表や
各室内に置かせて頂いている、館内案内をご確認下さい
それでは、ごゆっくりとお過ごしくださいませ」
白を基調としたシンプルかつ、上品なデザインでで設計されている
宿泊施設での受付と案内を終えた後、部屋に荷物を置いたライルとアレンは
息抜きがてら、室内のテーブルに置かれていたパンプレットを頼りに
現在、受験者のみの貸し切り状態となっている
この大きなホテルを、一通り散策してみる事にしました。
普段であれば、観光目的の旅行者や締め切りの為に自身を追い込みにやって来た作家などで
思い思いの賑わいを見せてくれるているはずの館内は
入試当日に向けて、最後の追い込みをかける受験者たちの、殺気や緊張感で満たされています。
洗練された美しい吹抜空間も
リラックス効果をもたらすであろう、エントランスに面して設けられたガラス張りの中庭も
部屋に籠り、一次試験である学科試験に向け、知識を詰め込み続ける受験生達にとっては
あっても無くても同じような物、受験にとっては不必要なものなのでしょう。
その為か、広く、新しい造りをした
ホテルの一階に位置する、タイル張りの広々としたエントランスホールには
ライルとアレンとホテルのスタッフを除き、一人たりとも他の利用者はいなかったのです。
「みんな、部屋の中で勉強してるんだろうな
館内には入試勉強用に設けられた、特別な施設もあるみたいだし
そっちの方も見てまわってみようか」
「はい、師匠
……師匠、なんだかこの場所、少し変ですね」
「ん? そうか?
呪いや霊障とかの類は、今のところ見当たらないけど
まあ、それらの確認を含めて、一通り見てみよう」
こうして、ライルとアレンは手に持ったパンフレットと館内の表示に従いながら
受験期間特別貸し切り営業中の、ホテル内を歩きはじめました。
一階のエントランスホールから入って正面に、ガラス張りの美しい中庭と吹抜の天窓
そして左手側の廊下を進んで、ビュッフェ会場となるレストランも営業中
しかし、相変わらず利用客の姿は見当たりません。
続いて右手側の廊下を進むと、冠婚葬祭時に使用するであろう大型ホール
こちらは普段のきらびやかな装飾は、全て一時撤去されており
受験者が、魔法の練習や肉体的な練習を行えるように、大規模な改造が施された
本格的な稽古用体育館へと、姿を変えていました。
こちらでは、数人程の受験者が見受けられましたが、鬼気迫るような空気感と雰囲気を察して
ライル達は、早々にその場を後にします。
二階の渡り廊下に移動し、奥の廊下をまっすぐ進むと大浴場
屋内の大型浴場をメインに、露天風呂、サウナ、壺湯、ジャグジーなどなど
娯楽目的の多目的浴場も含めた数多くのお風呂が、朝は5時~昼の10時まで
夜は夕方の5時~夜中の1時まで開放されているようです。
また上の階に上がり、三階はランドリーをはじめ自動販売機、売店が並ぶ
どこのホテルにでもよく見かける、ごく普通の共用エリア
ではありましたが
廊下の中央には、専門業者と提携した
魔法材料や筆記用具の、簡易販売所が設置されており
受験者側への配慮と、金銭的な営業側の利益、両方を満足させられる配置となっていました。
そして、四階~十三階の宿泊エリアを通り抜け
屋上のテラススペースにたどり着いた一人と一体は
屋上テラスで営業されていた、小さなカフェでカフェオレとオレンジジュースを購入し
設置されていたベンチのうちの1つを陣取り、ほっと一息をつきます。
「普通のホテルの一部を
受験対策用に改造してあったりなんかして、割と面白かったな
大型ホールの魔改造には参ったよ
パーテーションで区切ったり、マットを置くぐらいならまだしも
一般客向けのパンフレットを見るに、元々の内装は、小さな教会みたいな感じだったんだろうけど
その面影も感じさせない程、防護魔法と幻覚魔法の合わせ技で大改造されてた
森や草原なんかの屋外の環境を、簡易的にではあるが再現してあったりなんかして
全く同じとはいかなくても、実際のそれと近い環境で練習できるのは、ありがたいだろうな
俺たちも今度使ってみよう
あとあれだ、大浴場
城下町にある浴場施設なんかには、俺も先輩たちによく連れてってもらったから
そんなに驚くようなものじゃないだろうと、たかをくくっていたんだが
あれは全く別物だな
この浮遊都市が、ただの学園都市としてではなく
観光地としての方面にも、力を入れているというのは
ここの様子を見るからに、本当の事だっていうのが一目でわかる
これは、町の方の探索も楽しみだな
ただ、販売所の方はやはり魔法材料の取り扱いが少し難しかったんだろう
あんまり種類が無かったし、あればっかりは専門店に行くか、自分で用意した方がいい
少し落ち着いたら、町の方にも顔を出しておこう、な? アレン」
「はい、ししょう」
チュー、ズズズズズッ
先程から様子のおかしいアレンは
すでに液体が消え失せ、氷だけとなったオレンジジュースのカップを、無意味に吸い続けています。
「…………俺も注意しながら見ていたけど
何か心配する必要があるような、呪詛の類や害意のある魔法は見当たらなかったと思う
アレン、他に何か気になる点があったのか?
俺も一緒に調べるから、言ってみろ」
「いえ、そういったものは無かったと、僕も思います、大丈夫です」
「……そうか、まあアレンにとっちゃ、初めての旅行でもあるわけだしな
疲れたんだろう、今日はまだ到着して初日だし
部屋に戻って、ゆっくり休もうか」
「………はい」
いつもと変わらぬ、無表情の整った顔立ち、ではあるものの
少しばかり、その端整な顔には、暗い影が差しているように見えます。
それもそのはず、アレンはすでに気が付いていました。
彼自身が先ほどから
具体的に言うと、ホテルに入ってから感じつづけている、この得体の知れない不可解な感覚が
呪いや幽霊、ましてや魔法という存在の類ではなく
このホテルを利用している人間たち
受験を控えた彼らから発せられる、緊張感や焦りの様な物の集合体なのではないか、という事に。
(……城下町や、ホテルの外の人たちとは全然違う
どちらかというと、列車内で見かけた、こわいやつ、とすれ違った時に感じたような
強くて冷たくて、ひりつくみたいな、この感覚は
僕が人形だから感じてしまうものなのでしょうか?
一緒に見て回った師匠は、いつもと変わった様子は特にないし
人間の皆さんが、こんなに得体のしれない何かを
無意識に体から発する事は、普通の事なのでしょうか?)
先程、屋上へ向かう際に見かけた、宿泊室の扉の1つ
丁度、アレンたちが屋上に出るための扉に、手を掛けた時に
たまたま出て来た、一人の受験者を見た記憶を、人形アレンは思い起こします。
うつろな瞳をした、肌の白い、少しやつれた若い男性の様子は
アレンが今まで見る機会の多かった、町行く人々にはあまり見かけないような
暗く重い雰囲気を感じたのです。
あの、夜の列車で出会った
こわいやつや、白い女に似たような 生きた人間のくたびれた姿。
はじめて目にした、鬼気迫る、追い込まれた人の様子に
アレンは、無機質な体で感じる寒気と、言い知れぬ不安や焦りを覚えました。
(入学試験、周りが先程の様な、怖い人間の皆さんばかりだったとしたら……
人形であり、人間でない僕が
果たして、本当に合格することは出来るのでしょうか? )
ホテル内に渦巻く、受験者たちのプレッシャーを敏感に感じてしまった
まだ幼い人形である、アレン・フォートレスは
その晩、言い知れぬ不安に頭を悩ませながら
眠れぬ夜を過していきます。
しかし、時間とは無情なもので
彼らの気持ちとは何ら関係なく、ただただ時は、刻一刻と進んでゆきました。
大きな仕事をいくつか片付け、休暇の扱いでアレンに同行して来た
魔法師団の団長ライルによる、直々の指導を受けながら
部屋の中では、学科に向けた反復学習とライルの魔法講座
昼食を挟んで、午後からは稽古用体育館の一部を予約し
様々な環境下での活動を意識した、実技訓練をこなしていきます。
朝起きてから、夜の消灯が過ぎてなお
アレンは持ち前の人形の体を、フル活用して勉学に励みました。
しかし、どんなに何度も問題集を解いたところで、一度まとわりついた不安は
そう簡単に、彼の体からは離れてはくれません。
そうこうする間に
着々と進みゆく時間は、時計の針を規則正しく、押し進め続けて
「………、僕、本当に合格できるのでしょうか」
第一次試験、学科試験まで残す所あと三日
冒頭の、フローリングでの大の字ポーズを行うアレンへと
場面は戻ってくるのです。
「ただいまー、おーのびてるのびてる
おつかれさま、アレン
よしよし、やっぱ受験とか決戦前ってのは、追い詰められるもんだよな
そこは人間も人形も変わらないんだろう
よく頑張ってるな、えらいぞ、あとちょっとだ
買い出しついでに、アイスクリームも買ってきたから
とりあえず一回、休憩を挟もうぜ、ほら~チョコミントだぞ~」
食べてみろ、スース―するから
買い物から帰った魔法士ライルはそういうと
フローリングでのびている人形の口元に、棒状に固められたアイスクリームの先を差し出します。
淡く爽やかなミントグリーンに、まだらなチョコチップが食欲を誘いました。
「~~~っ、ししょっ~~!!」
我慢に耐えかねたアレンは、床から力なく飛び上がり
涼し気な見た目の、その甘い棒に噛り付きます。
アイスの冷たさと、ハッカの涼しさに交じり
チョコレートの甘さが、ジワリと口の中に溶けてゆく
アレンは、久しぶりの食べ物の美味しさという物をひしひしと感じながら
束の間の安らぎを得るのでした。
「アレン、これ見てみろ」
「? ひひょー、はんですか、ほれは?」
ミニキッチンの横に備え付けられた、白いダイニングテーブルに腰を落ち着け
彼らは温かいお茶と、お徳用のアイスクリームのカップを机に並べて
楽しいおやつ時間を堪能しています。
大きなスプーンで、これまた一口にしては多すぎる量のストロベリーアイスを掬い取り
次から次へと、甘いアイスクリームで、口とお腹を満たしていくアレンに対して
ライルはお茶をすすりながら、いくつかの綺麗な紙の束を、目の前の人形に見せつけてきました。
「これらすべて、この町にある博物館や美術館、水族館といった大型施設のパンフレットだ
映画館やショッピングモールも含めると、総数はざっと700をゆうに超えるだろう
こんな数の、しかもどれも高水準な娯楽施設の密集具合、そう見れたものじゃない
これは、この都市が、学園都市としての役割だけではなく
観光地、ひいてはこの国最大の浮遊都市として、国の目玉になるための
莫大な資金を投入して計画された、都市開発による集大成なのだろう
というわけで、アレンさん」
「ゴクッ、はひ、ししょう」
アイスクリームで冷えた口を
白い湯気の立つ、香ばしいお茶でゆっくりと温めるアレンは
楽しげに、しかして怪しく笑みを浮かべる
己の師匠からの返答を、大人しく待ちました。
ライルは、横に並ぶ溶け始めたアイスクリームの山々から
チョコレートアイスのカップを選び、小さな蛍光色のスプーンで一口分だけすくい取ります。
そして迷うことなく、アレンの口に、そのアイスクリームを突っ込むと
「受かっても、そしてたとえそうでなくても
この受験が終わったら、二人でここにある施設を遊び倒そう
美術館も、天文博物館も、水族館も、映画館も
時間の許す限り、ここにある楽しい所、全部回るんだ
だからアレン、あとちょっと
苦しいだろうが、もうちょっとがんばれ
大丈夫だ、アレンならきっとできるから」
そういって、ライルはアレンの頭を、ぐりぐりと撫でくりまわしてから
机に並べられたパンフレットを、一人と一体で順番に眺めてゆくのでした。
時間は無慈悲に、されど平等に過ぎてゆきます。
魔法士ライルと人形アレンは
久しぶりに感じた、穏やかなひと時を
綺麗に清掃の行き届いた、白く清潔な室内で
和気あいあいと楽しむのでした。
(おまけ)
〔アレンの学習ノートより抜粋〕
いつもであれば、この時間は学科試験に向けた学習を行う予定ではあるのですが
今晩だけは、遊びで消費しようと考えました。
師匠から頂いた、数多くのパンフレットには
この空中都市にある、様々な目的で建設されたであろう
数多くの施設に関する情報がたくさん記載されていました。
なので今晩は、師匠が目を覚ますまでの時間を利用して
その中でも強く興味をひかれた箇所や内容をまとめておこうと思います。
・魔法学博物館…魔法と結びつきの深いこの国の歴史をはじめ
進化を続けてきた魔法道具の記録や、体験型の施設があるそうです
・大型ショッピングモール…本屋さん、服屋さん、雑貨屋さんをはじめとした数多くのお店が入っているのだとか
フードコートという美味しい物がひしめき合う場所もあるとの事です
・海の上に浮かぶ水族館…パンフレットに印刷されていたアザラシやペンギンという生き物の形状が気になりました
・空中庭園を保有する美術館…屋外を模したデザインの室内に美術品が飾られているそうです
記載だけでは全く想像が出来ませんので、ぜひ自分の目で見てみたいです
・空中都市運営施設の見学体験…この町の技術や歴史、構造などを紹介してくれる施設だそうです
これだけの規模の都市を浮かせられる魔法とはいったいどんなものでしょうか?
・フルスクリーン映画館…映画、という動く物語を、大きな壁に映して楽しむ娯楽施設との事でした
本に書かれている物語もとても面白かったので、こちらもきっと面白いのでしょう
まだまだ書ききれてはいませんが、朝が近づき、師匠の眠りも次第に浅くなってきたため
今日はここまでにしておこうと思います。
入学試験に向けて、また頑張ります。
必ず受かります。
(このページはここで終わっている)
人形アレンは天井を見つめています。
「…………」
ベットやソファの上ではなく
学校側が受験者用に手配された、ホテルの床のフローリングの上で
「…………………」
大の字になって大胆に手足を伸ばしながら、それはそれは堂々と寝転がっておりました。
「…………………………」
先程まで、アレンが使用していた白いテーブルの上には
何度も繰り返し、解き続けられた過去問集と参考書、文字だらけのノートなどが山のように
ずらりと無造作に、積み重ねられて置かれています。
白を基調とした、清潔感のある広い室内で
アレンはただ床に寝そべりながら、天井を見つめ、途方もない考え事にふけっています。
「………、僕、本当に合格できるのでしょうか」
受験勉強あるある
合格への強い不安から、陥ることの多い負のスパイラル
受験スランプ、というものに
人形アレンも、はまってしまっている真っ最中なのでした。
時は数日程前にさかのぼり、魔法師団長ライルと人形のアレンが
魔法職学校が位置する浮遊都市に、足を踏み入れた日からはじまります。
厳重な身体検査と身分証の確認
そして、この浮遊都市での注意点などの説明を、一通り聞き終えた一人と一体は
「………すまん、アレン
俺はなんだか既に疲れてしまった、ホテルにたどり着く前に力尽きそうだ」
「大丈夫です、師匠
師匠が動けなくなったとしても、僕が師匠を抱っこして運べますので
師匠は安心して力尽きてください」
無事、魔法師団に所属する、一人の魔法師とその弟子として
身分や素性の一切を隠しきり
何とか、国内最大の浮遊都市ゆえの、厳しめな検査を突破していました。
綺麗に整列された
高くそびえ建つ、ガラス張りの建造物が並ぶ、巨大な空中都市の街並み。
町を区切るように張り巡らされた、線路の上を
ガタンゴトンと進んで行く、色とりどりの路面電車
伝統的な造形の多かった、趣ある城下町での景観とは対称的に
近代的な街づくりを積極的に取り入れたであろう、都会的な街の光景に目を奪われながらも
ライルとアレンは、配布されている地図と電車を活用しつつ
学校が予約してくれているであろう、受験者用の宿泊施設を目指します。
「ようこそお越しくださいました
当ホテルは、国立魔法職養成学校<ログリウム>との協力関係に基づき
入学試験期間をはじめとした、特別期間中などに限り
対象の方々のみご利用可能な、貸し切り営業を行わせて頂いております
当ホテルは、受験者様方が試験当日まで、万全な体制を整えられますよう
様々なサポート用設備やサービスを取り揃えております
詳しくは、ホテル内に掲示されている案内表や
各室内に置かせて頂いている、館内案内をご確認下さい
それでは、ごゆっくりとお過ごしくださいませ」
白を基調としたシンプルかつ、上品なデザインでで設計されている
宿泊施設での受付と案内を終えた後、部屋に荷物を置いたライルとアレンは
息抜きがてら、室内のテーブルに置かれていたパンプレットを頼りに
現在、受験者のみの貸し切り状態となっている
この大きなホテルを、一通り散策してみる事にしました。
普段であれば、観光目的の旅行者や締め切りの為に自身を追い込みにやって来た作家などで
思い思いの賑わいを見せてくれるているはずの館内は
入試当日に向けて、最後の追い込みをかける受験者たちの、殺気や緊張感で満たされています。
洗練された美しい吹抜空間も
リラックス効果をもたらすであろう、エントランスに面して設けられたガラス張りの中庭も
部屋に籠り、一次試験である学科試験に向け、知識を詰め込み続ける受験生達にとっては
あっても無くても同じような物、受験にとっては不必要なものなのでしょう。
その為か、広く、新しい造りをした
ホテルの一階に位置する、タイル張りの広々としたエントランスホールには
ライルとアレンとホテルのスタッフを除き、一人たりとも他の利用者はいなかったのです。
「みんな、部屋の中で勉強してるんだろうな
館内には入試勉強用に設けられた、特別な施設もあるみたいだし
そっちの方も見てまわってみようか」
「はい、師匠
……師匠、なんだかこの場所、少し変ですね」
「ん? そうか?
呪いや霊障とかの類は、今のところ見当たらないけど
まあ、それらの確認を含めて、一通り見てみよう」
こうして、ライルとアレンは手に持ったパンフレットと館内の表示に従いながら
受験期間特別貸し切り営業中の、ホテル内を歩きはじめました。
一階のエントランスホールから入って正面に、ガラス張りの美しい中庭と吹抜の天窓
そして左手側の廊下を進んで、ビュッフェ会場となるレストランも営業中
しかし、相変わらず利用客の姿は見当たりません。
続いて右手側の廊下を進むと、冠婚葬祭時に使用するであろう大型ホール
こちらは普段のきらびやかな装飾は、全て一時撤去されており
受験者が、魔法の練習や肉体的な練習を行えるように、大規模な改造が施された
本格的な稽古用体育館へと、姿を変えていました。
こちらでは、数人程の受験者が見受けられましたが、鬼気迫るような空気感と雰囲気を察して
ライル達は、早々にその場を後にします。
二階の渡り廊下に移動し、奥の廊下をまっすぐ進むと大浴場
屋内の大型浴場をメインに、露天風呂、サウナ、壺湯、ジャグジーなどなど
娯楽目的の多目的浴場も含めた数多くのお風呂が、朝は5時~昼の10時まで
夜は夕方の5時~夜中の1時まで開放されているようです。
また上の階に上がり、三階はランドリーをはじめ自動販売機、売店が並ぶ
どこのホテルにでもよく見かける、ごく普通の共用エリア
ではありましたが
廊下の中央には、専門業者と提携した
魔法材料や筆記用具の、簡易販売所が設置されており
受験者側への配慮と、金銭的な営業側の利益、両方を満足させられる配置となっていました。
そして、四階~十三階の宿泊エリアを通り抜け
屋上のテラススペースにたどり着いた一人と一体は
屋上テラスで営業されていた、小さなカフェでカフェオレとオレンジジュースを購入し
設置されていたベンチのうちの1つを陣取り、ほっと一息をつきます。
「普通のホテルの一部を
受験対策用に改造してあったりなんかして、割と面白かったな
大型ホールの魔改造には参ったよ
パーテーションで区切ったり、マットを置くぐらいならまだしも
一般客向けのパンフレットを見るに、元々の内装は、小さな教会みたいな感じだったんだろうけど
その面影も感じさせない程、防護魔法と幻覚魔法の合わせ技で大改造されてた
森や草原なんかの屋外の環境を、簡易的にではあるが再現してあったりなんかして
全く同じとはいかなくても、実際のそれと近い環境で練習できるのは、ありがたいだろうな
俺たちも今度使ってみよう
あとあれだ、大浴場
城下町にある浴場施設なんかには、俺も先輩たちによく連れてってもらったから
そんなに驚くようなものじゃないだろうと、たかをくくっていたんだが
あれは全く別物だな
この浮遊都市が、ただの学園都市としてではなく
観光地としての方面にも、力を入れているというのは
ここの様子を見るからに、本当の事だっていうのが一目でわかる
これは、町の方の探索も楽しみだな
ただ、販売所の方はやはり魔法材料の取り扱いが少し難しかったんだろう
あんまり種類が無かったし、あればっかりは専門店に行くか、自分で用意した方がいい
少し落ち着いたら、町の方にも顔を出しておこう、な? アレン」
「はい、ししょう」
チュー、ズズズズズッ
先程から様子のおかしいアレンは
すでに液体が消え失せ、氷だけとなったオレンジジュースのカップを、無意味に吸い続けています。
「…………俺も注意しながら見ていたけど
何か心配する必要があるような、呪詛の類や害意のある魔法は見当たらなかったと思う
アレン、他に何か気になる点があったのか?
俺も一緒に調べるから、言ってみろ」
「いえ、そういったものは無かったと、僕も思います、大丈夫です」
「……そうか、まあアレンにとっちゃ、初めての旅行でもあるわけだしな
疲れたんだろう、今日はまだ到着して初日だし
部屋に戻って、ゆっくり休もうか」
「………はい」
いつもと変わらぬ、無表情の整った顔立ち、ではあるものの
少しばかり、その端整な顔には、暗い影が差しているように見えます。
それもそのはず、アレンはすでに気が付いていました。
彼自身が先ほどから
具体的に言うと、ホテルに入ってから感じつづけている、この得体の知れない不可解な感覚が
呪いや幽霊、ましてや魔法という存在の類ではなく
このホテルを利用している人間たち
受験を控えた彼らから発せられる、緊張感や焦りの様な物の集合体なのではないか、という事に。
(……城下町や、ホテルの外の人たちとは全然違う
どちらかというと、列車内で見かけた、こわいやつ、とすれ違った時に感じたような
強くて冷たくて、ひりつくみたいな、この感覚は
僕が人形だから感じてしまうものなのでしょうか?
一緒に見て回った師匠は、いつもと変わった様子は特にないし
人間の皆さんが、こんなに得体のしれない何かを
無意識に体から発する事は、普通の事なのでしょうか?)
先程、屋上へ向かう際に見かけた、宿泊室の扉の1つ
丁度、アレンたちが屋上に出るための扉に、手を掛けた時に
たまたま出て来た、一人の受験者を見た記憶を、人形アレンは思い起こします。
うつろな瞳をした、肌の白い、少しやつれた若い男性の様子は
アレンが今まで見る機会の多かった、町行く人々にはあまり見かけないような
暗く重い雰囲気を感じたのです。
あの、夜の列車で出会った
こわいやつや、白い女に似たような 生きた人間のくたびれた姿。
はじめて目にした、鬼気迫る、追い込まれた人の様子に
アレンは、無機質な体で感じる寒気と、言い知れぬ不安や焦りを覚えました。
(入学試験、周りが先程の様な、怖い人間の皆さんばかりだったとしたら……
人形であり、人間でない僕が
果たして、本当に合格することは出来るのでしょうか? )
ホテル内に渦巻く、受験者たちのプレッシャーを敏感に感じてしまった
まだ幼い人形である、アレン・フォートレスは
その晩、言い知れぬ不安に頭を悩ませながら
眠れぬ夜を過していきます。
しかし、時間とは無情なもので
彼らの気持ちとは何ら関係なく、ただただ時は、刻一刻と進んでゆきました。
大きな仕事をいくつか片付け、休暇の扱いでアレンに同行して来た
魔法師団の団長ライルによる、直々の指導を受けながら
部屋の中では、学科に向けた反復学習とライルの魔法講座
昼食を挟んで、午後からは稽古用体育館の一部を予約し
様々な環境下での活動を意識した、実技訓練をこなしていきます。
朝起きてから、夜の消灯が過ぎてなお
アレンは持ち前の人形の体を、フル活用して勉学に励みました。
しかし、どんなに何度も問題集を解いたところで、一度まとわりついた不安は
そう簡単に、彼の体からは離れてはくれません。
そうこうする間に
着々と進みゆく時間は、時計の針を規則正しく、押し進め続けて
「………、僕、本当に合格できるのでしょうか」
第一次試験、学科試験まで残す所あと三日
冒頭の、フローリングでの大の字ポーズを行うアレンへと
場面は戻ってくるのです。
「ただいまー、おーのびてるのびてる
おつかれさま、アレン
よしよし、やっぱ受験とか決戦前ってのは、追い詰められるもんだよな
そこは人間も人形も変わらないんだろう
よく頑張ってるな、えらいぞ、あとちょっとだ
買い出しついでに、アイスクリームも買ってきたから
とりあえず一回、休憩を挟もうぜ、ほら~チョコミントだぞ~」
食べてみろ、スース―するから
買い物から帰った魔法士ライルはそういうと
フローリングでのびている人形の口元に、棒状に固められたアイスクリームの先を差し出します。
淡く爽やかなミントグリーンに、まだらなチョコチップが食欲を誘いました。
「~~~っ、ししょっ~~!!」
我慢に耐えかねたアレンは、床から力なく飛び上がり
涼し気な見た目の、その甘い棒に噛り付きます。
アイスの冷たさと、ハッカの涼しさに交じり
チョコレートの甘さが、ジワリと口の中に溶けてゆく
アレンは、久しぶりの食べ物の美味しさという物をひしひしと感じながら
束の間の安らぎを得るのでした。
「アレン、これ見てみろ」
「? ひひょー、はんですか、ほれは?」
ミニキッチンの横に備え付けられた、白いダイニングテーブルに腰を落ち着け
彼らは温かいお茶と、お徳用のアイスクリームのカップを机に並べて
楽しいおやつ時間を堪能しています。
大きなスプーンで、これまた一口にしては多すぎる量のストロベリーアイスを掬い取り
次から次へと、甘いアイスクリームで、口とお腹を満たしていくアレンに対して
ライルはお茶をすすりながら、いくつかの綺麗な紙の束を、目の前の人形に見せつけてきました。
「これらすべて、この町にある博物館や美術館、水族館といった大型施設のパンフレットだ
映画館やショッピングモールも含めると、総数はざっと700をゆうに超えるだろう
こんな数の、しかもどれも高水準な娯楽施設の密集具合、そう見れたものじゃない
これは、この都市が、学園都市としての役割だけではなく
観光地、ひいてはこの国最大の浮遊都市として、国の目玉になるための
莫大な資金を投入して計画された、都市開発による集大成なのだろう
というわけで、アレンさん」
「ゴクッ、はひ、ししょう」
アイスクリームで冷えた口を
白い湯気の立つ、香ばしいお茶でゆっくりと温めるアレンは
楽しげに、しかして怪しく笑みを浮かべる
己の師匠からの返答を、大人しく待ちました。
ライルは、横に並ぶ溶け始めたアイスクリームの山々から
チョコレートアイスのカップを選び、小さな蛍光色のスプーンで一口分だけすくい取ります。
そして迷うことなく、アレンの口に、そのアイスクリームを突っ込むと
「受かっても、そしてたとえそうでなくても
この受験が終わったら、二人でここにある施設を遊び倒そう
美術館も、天文博物館も、水族館も、映画館も
時間の許す限り、ここにある楽しい所、全部回るんだ
だからアレン、あとちょっと
苦しいだろうが、もうちょっとがんばれ
大丈夫だ、アレンならきっとできるから」
そういって、ライルはアレンの頭を、ぐりぐりと撫でくりまわしてから
机に並べられたパンフレットを、一人と一体で順番に眺めてゆくのでした。
時間は無慈悲に、されど平等に過ぎてゆきます。
魔法士ライルと人形アレンは
久しぶりに感じた、穏やかなひと時を
綺麗に清掃の行き届いた、白く清潔な室内で
和気あいあいと楽しむのでした。
(おまけ)
〔アレンの学習ノートより抜粋〕
いつもであれば、この時間は学科試験に向けた学習を行う予定ではあるのですが
今晩だけは、遊びで消費しようと考えました。
師匠から頂いた、数多くのパンフレットには
この空中都市にある、様々な目的で建設されたであろう
数多くの施設に関する情報がたくさん記載されていました。
なので今晩は、師匠が目を覚ますまでの時間を利用して
その中でも強く興味をひかれた箇所や内容をまとめておこうと思います。
・魔法学博物館…魔法と結びつきの深いこの国の歴史をはじめ
進化を続けてきた魔法道具の記録や、体験型の施設があるそうです
・大型ショッピングモール…本屋さん、服屋さん、雑貨屋さんをはじめとした数多くのお店が入っているのだとか
フードコートという美味しい物がひしめき合う場所もあるとの事です
・海の上に浮かぶ水族館…パンフレットに印刷されていたアザラシやペンギンという生き物の形状が気になりました
・空中庭園を保有する美術館…屋外を模したデザインの室内に美術品が飾られているそうです
記載だけでは全く想像が出来ませんので、ぜひ自分の目で見てみたいです
・空中都市運営施設の見学体験…この町の技術や歴史、構造などを紹介してくれる施設だそうです
これだけの規模の都市を浮かせられる魔法とはいったいどんなものでしょうか?
・フルスクリーン映画館…映画、という動く物語を、大きな壁に映して楽しむ娯楽施設との事でした
本に書かれている物語もとても面白かったので、こちらもきっと面白いのでしょう
まだまだ書ききれてはいませんが、朝が近づき、師匠の眠りも次第に浅くなってきたため
今日はここまでにしておこうと思います。
入学試験に向けて、また頑張ります。
必ず受かります。
(このページはここで終わっている)
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