異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ

文字の大きさ
上 下
22 / 34

第21話 別の種族たち 前編

しおりを挟む
3日後、昼過ぎに騎士団のラルフとイザークが訪ねて来た

「こんにちは、カスミさん。一昨日の聴取に来ました。っと言っても聴取する程でもないのですが」
「そうなんですよ。ラルフの場合はカスミさんに会いたくて本来、僕と部下が来る予定だったけど、ラルフが部下に無理言って代わってもらいカスミさんに会いに来たんですよ」
「イザーク!おま!」

ラルフは顔を真っ赤にしながらイザークを睨む

「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。今はお茶と羊羹ぐらいしか出せないけど、ゆっくりして行きな」  

カスミは2人に『お茶』と『羊羹』を出した
ラルフとイザークはティーカップに入っている『お茶』と小皿に乗っている『羊羹』を見て目が点になっていた

「カスミさん、このカップに入っている緑色の液体はなんですか?あとこの黒くて中に黄色いものが入ってるんですが・・・」
「何って言われても、ただの『緑茶』と『栗羊羹』だよ。アンタらは緑茶や栗羊羹を知らないのかい?」
「緑茶は日本の『お茶』で栗羊羹は『和菓子』ですから、異世界には存在しませんよ。ロメロさんだって知らなかったじゃないですか」

初めて見る栗羊羹を困惑しながらラルフは口に運ぶ

「美味い!このクリヨウカンと言うお菓子は凄く美味しいです!そして、このリョクチャも渋いですがヨウカンを食べた後に飲むと格別ですね!イザークも食べて見ろよ!」
「うむ。確かに美味ですね。このリョクチャとヨウカンは何処で買ってきたんですか?」
「この2つは私の固有・・・って、そんなことよりこの間の聴取だろ?」 

2人は本来の要件を思い出し、咳払いをしながら一昨日の聴取を始める

「おおよその話(省略》は領主のスレイさんと執事のモンシアさんから聞きましたが間違いありませんか?」
「ああ。間違いないよ。それでクリフとスコットはどうなったんだい?全部、罪を認めたんだろ?」
「ええ。特にクリフは洗いざらい自供しましたよ。ホント、洗いざらいにね」

イザークが含みのある言い方に何かを察したワタルが問い詰めた

「それって、もしかして『魔族』の事ですか?クリフさんは魔族と繋がってるみたいですけど・・・」 
「そういえば言ってたね。魔族て言うのは何者なんだい?」
「魔族はこの大陸とは、別次元に存在する世界で魔族は他の種族と敵対関係にある種族です。魔族はこの大陸全土を制圧しようと目論んでいて、各国で勢力を上げて戦っています」

ラルフが魔方陣の描かれた黒い紙を差し出した
 
「コレってこの間のクリフさんが使った悪魔を呼び出した黒い紙じゃないですか?確かこの紙から下級悪魔のデーモンが召喚されましたよね?」
ラルフが困った表情で黒い紙の事について話し出した

「この紙から召喚された悪魔が『普通のデーモン』だったらよかったのですが・・・この紙に描かれている魔法陣は最強クラスの『アビスデーモン』だったです。まさかと思うんですけど、このアビスデーモンはカスミさんが倒したんですよね?かなり苦労されたんじゃないですか?」

この話にいつの間にかアスナが割り込んでいて栗羊羹を食べている

「ラルフ隊長さん、あんたはカスミの事を何もわかってないよね。カスミはね、そのアビスデーモンをワンパンチで倒したのよ。アビスデーモンがカスミの作ったオムライスを粗末にしたからカスミがぶち切れてね」

《xbig》「ワ、ワンパン!?」ラルフ&イザーク《/xbig》

カスミがアビスデーモンをワンパンチで倒した事実を聞かされたラルフとイザークは思わず椅子から立ち上がりお互いカスミを見て放心状態となる

「当然のリアクションね。ゲームでも最強クラスで異世界と言うか最早、現実において上級悪魔の最強種とうたわれるアビスデーモンをワンパンだものね」
「多分、ひと月前に倒した『ダムド』が裸足しで逃げ出すくらいの強さかも・・・」

放心状態のラルフとイザークが我に帰ったと思ったら、急に笑い出した

「あっはっはっは!噂には聞いていましたが、まさかここまで強いとはね。でも、カスミさんなら必ずやってくれるって思ってました。あなたは、不思議と期待のできる人だ。・・・・・そして・・・とてもみ、みりょ・・・」

ヒヒーン!
ガチャ!

「カスミお母さん!お客さんだよ!しかもイケメンと執事っぽい人!」

外から馬車の馬の鳴き声が聞こえて、外で遊んでいたメリッサが家に入ってきて訪問者が来たと報告に来た
そのイケメンと紹介された訪問者は領主のスレイと執事のモンシアだった

「こんにちはカスミさん。2日ぶりですね」
「スレイかい。なんだか一昨日あった時よりも顔つきが良くなってるね。良い顔してるよ」

カスミに褒められてポッと顔を赤らめたスレイが照れながら持っていた菓子折りを差し出した

「ありがとうございます。これもあの時、カスミさんが叱ってくれたからですよ。そのおかげで、俺は生まれ変われたんですから」
「カスミ様、ご無沙汰しています。これつまらない物ですが子供達と食べてください」

モンシアが菓子折りをカスミに差し出すとアスナが掠め取る様に菓子折りを受け取り、その場で開封する

「これはこれはご丁寧にありがとうございます♪わぉ、この匂いはチョコレートじゃない♪」
「チョコレート!?わーい!」

チョコレートと聞いて、子供たちが一斉に集まりワイワイと賑わう

「こら!アンタ達!食べる前にちゃんとこの人にお礼を言わなくちゃだめだろ!」

カスミの一喝されて子供たちが慌ててスレイの前に立ちお辞儀をしながらお礼を言った

「スレイのおじさん、どうもありがとうございます」
「お、おじさんって・・・俺まだ26歳なんだけど・・・」

子供たちに、おじさんと呼ばれたのがショックだったのかスレイがガクッと肩を落とす。その姿を見たラルフが笑いを堪えている

「《b》《xsmall》ぷぷぷっ。26歳は充分おじさんだと思うぞ《/xsmall》《/b》」
「・・・聞こえたよ♪ラルフ団長様♪あなたはここに来て菓子折りの1つも持ってこなかったのですかな?『団長様』とあろう人が、失礼なことで・・・クスッ♪」

ラルフに笑われたことに頭にきたのかスレイもラルフに嫌味っぽく言い返した
その言葉にカチンと来てラルフはスレイと向き合い睨みつけるとスレイも負けじと睨み返す

「生憎だけど我々は遊びに来たのではなく『聴取』に来たんですよ。この間のあなたの屋敷で起こった事件のことで!早い話が『仕事』でここに来たんですよ!」
「おやおや?おかしいなぁ?ここに来る途中、知り合いの団員に聞いたんだけど、本来ここに来るのは副団長イザーク君と別の団員だったのに君が半ば強引に変わってもらったって聞いたけど、なんでだろうねぇ」 

スレイの含みのある言葉にヒートアップしたのかラルフがスレイに強い口調で言い返す

「そんなことよりも、随分と雰囲気が変わりましたね。あの頼りない『お飾り領主様』がねぇ」
「『男子三日会わざれば刮目してみよ』って言うでしょ?俺もいつまでも情けない姿を見せるつもりはないよ。ねぇ?『朴念仁のラルフ団長様』!」

お互いの激しい衝突は一向に収まる気配がなく仕方なくカスミが仲裁に入る

「いい加減にしな!子供たちの前でみっともない言い合いしてるんじゃないよ!」
「はっ!カスミさん、すいませんでした。そうだ!今度、家に来て食事なんかどうですか?もちろん子供たちと一緒に来てください」

カスミに叱られて謝罪すると即座に食事の誘いをしたスレイにラルフが食ってかかる

「スレイさん!?何、勝手にカスミさんに食事の誘いをしてるんですか?」
「おや?ラルフ君、何でキミに許可を得なくちゃいけないのかな?」
「ベ、別にそういうわけでは・・・って言うか随分とナンパになりましたね。ついこの間まで女性とまともに話すことすらできないと言われた領主のスレイ男爵様」
「こ、この!・・・何を偉そうに人のことを言える立場かな?堅物で朴念仁が災いして、女性と付き合ったことがないと有名なラルフ団長様!」

お互いが引かずに再び口論となろうとしていた2人をカスミがげんこつで黙らした

「だから、やめろって言ってるだろ!いい歳した大人がみっともない!」
(あーあ。遂にカスミのカミナリが落ちた。本当にカスミは誰であろうと容赦ないわね)
(まあ、元が『肝っ玉母さん』だからね。ある意味『最強の生物』だよ)
「ところで、スレイは何か話が合ってきたんじゃないのかい?」

げんこつを食らって悶え苦しむラルフとスレイ
カスミの問いに頭をさすりながら真面目な顔になり、おとついの件の話をする
 
「さっき留置所に行って来て父と兄に会ってきました。特に兄は随分と清々しい顔をしていて、カスミさんに感謝していました。『叱ってくれてありがとうございました』っと・・・あの日、あなたに面と向かって叱られた兄は死んだ母のことを思い出したそうです。母はカスミさんの様な性格の人で曲がった事を嫌い悪さをすれば、容赦なく兄や私達兄弟を叱ってきました。兄はそんな母が大好きで母の期待に応えるべく、勉学に一生懸命励んでいましたが、母が急な病に倒れ帰らなぬ人となってから兄は変わってしまいあのようなことに・・・・」

スレイはカスミに向かって深々と頭を下げて謝罪とお礼を言った

「カスミさん、あの時のあなたの『叱り』のおかげで兄のみならず父も改心する事ができました。そして、私も変わることができました。本当にありがとうございました」

殊勝な態度と感謝の言葉を聞いてカスミはそっと肩を叩く

「そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。それに私はちょっと背中を押しただけで、アンタが変われたのはアンタ自身が自分で変わりたいと思ったからだ。要は『己の気持ち次第』ってところさね。これから色々と大変だろうけど頑張りな!」

《b》《xbig》「は、はい!頑張ります!」《/xbig》《/b》

背筋を伸ばし気合の入った返事に気を良くしたのかカスミがスレイの背中を勢いよく叩いた

「良い返事だ!領主ってのはそんな感じでどっしりと構えるもんだからね!」
(それは少し違う気が・・・)ワタル&アスナ&イザーク&モンシア
(わかる気がする!スレイさんが羨ましいぞ!俺もカスミさんに激励してほしい!)
 
モンシアがスレイの隣に立ち耳元で話し掛ける

「旦那様、そろそろお屋敷に戻る時間です」
「もうそんな時間か?カスミさんすいません。名残惜しいですが私はそろそろおいとまします」
「ああ。お菓子ありがとうね。また来るといいよ」
「はい!喜んで!この次はもう少しゆっくりしていきますね。では失礼します」

スレイとモンシアが馬車に乗りファミリアを後にするとラルフも立ち上がり、別れの挨拶をする

「それでは我々も次の仕事があるので、これで失礼しますね。あっ!そうだギルドマスターが話があるそうで、近いうちに来て欲しいそうです」
「アンドレが?わかったよ」
「確かにお伝えしてました。おい!イザーク何やってるんだ?帰るぞ」

ラルフが帰ろうとするとイザークはメリッサが雑談していた

「おっと!ごめんごめん!それじゃあメリッサちゃんまた今度ね」
「はい。ごきげんよう、イザークさん。また今度」

お互いが笑顔で手を振りながら挨拶をしている
その姿を見てラルフは少々、怪訝そうな顔をしながらファミリアを後にする

「お前、何、子供を口説こうとしてるんだ?まさか!」
「何バカな事言ってるんだ。メリッサちゃんは12歳だぞ。18歳とかならともかく、ただ、単に恋愛相談を乗ってただけだよ。あの中に好きな子がいるみたい」
「・・・・なるほどね。なんとなくわかった。俺がいた頃も同じ娘がいたっけ」

それから1時間後

「さて、そろそろ夕飯の買い出しに行くとするよ」
「スーパーマーケットの召喚ですね?」

カスミは少し呆れた表情でワタルを見て話す

「いつも、あんな便利なもの買わないよ。外にある店で買い物するんだよ。ちゃんと街の住人達との交流も深めないといけないからね。この街には人間だけじゃなくて他の種族もいるから特に交流を深めないといけないよ」
「確かにこの街にはゴブリン族やオーク族やドワーフ族、他にも色んな種族が住んでるって聞きますからね。ちょうどいい機会だからそうしましょう」
「いってら~♪お土産よろ~♪」

アスナが手を振って見送ってくるがカスミはニコニコしながらかアスナの首につかみながら強引に引きずっていったのである

「アンタも一緒に買い物の手伝いをするんだよ!いつものタダ飯はさせないからね!働かざるもの食うべからずだ!」
「うにゃあああああ!働きたくない!働きたくないでござるー!」
「ばかだなぁアスナちゃんはカスミさんがいつまでもタダ飯を許すわけないじゃない」

そして、3人は街の商店街に行くのである

NEXT   「別の種族たち 後編」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

Retry 異世界生活記

ダース
ファンタジー
突然異世界に転生してしまった男の物語。 とある鉄工所で働いていた佐藤宗則。 しかし、弱小企業であった会社は年々業績が悪化。 ある日宗則が出社したら、会社をたたむと社長が宣言。 途方に暮れた宗則は手持ちのお金でビールと少しのつまみを買い家に帰るが、何者かに殺されてしまう。 ・・・その後目覚めるとなんと異世界!? 新たな生を受けたその先にはどんなことが!? ほのぼの異世界ファンタジーを目指します。 ぬるぬる進めます。 だんだんと成長するような感じです。 モフモフお付き合いおねがいします。 主人公は普通からスタートするのでゆっくり進行です。 大きな内容修正や投稿ペースの変動などがある場合は近況ボードに投稿しています。 よろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

流行りの異世界転生だけど、ストーリーは捨てて幸せになりたい

さくらもち
恋愛
今流行りの転生をした春奈はアラフォーにさしかかろうとしていた独身フリーランスのイラストレーターだった。 初めての大型案件である新作乙女ゲームのキャラ原案の世界に転生していたのだが、当て馬的な悪役令息に転生していた。 性別の違いやゲームとは違う現実に戸惑いつつストーリーは無視で幸せになる事を目指す。

処理中です...