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第21話 別の種族たち 前編
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3日後、昼過ぎに騎士団のラルフとイザークが訪ねて来た
「こんにちは、カスミさん。一昨日の聴取に来ました。っと言っても聴取する程でもないのですが」
「そうなんですよ。ラルフの場合はカスミさんに会いたくて本来、僕と部下が来る予定だったけど、ラルフが部下に無理言って代わってもらいカスミさんに会いに来たんですよ」
「イザーク!おま!」
ラルフは顔を真っ赤にしながらイザークを睨む
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。今はお茶と羊羹ぐらいしか出せないけど、ゆっくりして行きな」
カスミは2人に『お茶』と『羊羹』を出した
ラルフとイザークはティーカップに入っている『お茶』と小皿に乗っている『羊羹』を見て目が点になっていた
「カスミさん、このカップに入っている緑色の液体はなんですか?あとこの黒くて中に黄色いものが入ってるんですが・・・」
「何って言われても、ただの『緑茶』と『栗羊羹』だよ。アンタらは緑茶や栗羊羹を知らないのかい?」
「緑茶は日本の『お茶』で栗羊羹は『和菓子』ですから、異世界には存在しませんよ。ロメロさんだって知らなかったじゃないですか」
初めて見る栗羊羹を困惑しながらラルフは口に運ぶ
「美味い!このクリヨウカンと言うお菓子は凄く美味しいです!そして、このリョクチャも渋いですがヨウカンを食べた後に飲むと格別ですね!イザークも食べて見ろよ!」
「うむ。確かに美味ですね。このリョクチャとヨウカンは何処で買ってきたんですか?」
「この2つは私の固有・・・って、そんなことよりこの間の聴取だろ?」
2人は本来の要件を思い出し、咳払いをしながら一昨日の聴取を始める
「おおよその話(省略》は領主のスレイさんと執事のモンシアさんから聞きましたが間違いありませんか?」
「ああ。間違いないよ。それでクリフとスコットはどうなったんだい?全部、罪を認めたんだろ?」
「ええ。特にクリフは洗いざらい自供しましたよ。ホント、洗いざらいにね」
イザークが含みのある言い方に何かを察したワタルが問い詰めた
「それって、もしかして『魔族』の事ですか?クリフさんは魔族と繋がってるみたいですけど・・・」
「そういえば言ってたね。魔族て言うのは何者なんだい?」
「魔族はこの大陸とは、別次元に存在する世界で魔族は他の種族と敵対関係にある種族です。魔族はこの大陸全土を制圧しようと目論んでいて、各国で勢力を上げて戦っています」
ラルフが魔方陣の描かれた黒い紙を差し出した
「コレってこの間のクリフさんが使った悪魔を呼び出した黒い紙じゃないですか?確かこの紙から下級悪魔のデーモンが召喚されましたよね?」
ラルフが困った表情で黒い紙の事について話し出した
「この紙から召喚された悪魔が『普通のデーモン』だったらよかったのですが・・・この紙に描かれている魔法陣は最強クラスの『アビスデーモン』だったです。まさかと思うんですけど、このアビスデーモンはカスミさんが倒したんですよね?かなり苦労されたんじゃないですか?」
この話にいつの間にかアスナが割り込んでいて栗羊羹を食べている
「ラルフ隊長さん、あんたはカスミの事を何もわかってないよね。カスミはね、そのアビスデーモンをワンパンチで倒したのよ。アビスデーモンがカスミの作ったオムライスを粗末にしたからカスミがぶち切れてね」
《xbig》「ワ、ワンパン!?」ラルフ&イザーク《/xbig》
カスミがアビスデーモンをワンパンチで倒した事実を聞かされたラルフとイザークは思わず椅子から立ち上がりお互いカスミを見て放心状態となる
「当然のリアクションね。ゲームでも最強クラスで異世界と言うか最早、現実において上級悪魔の最強種とうたわれるアビスデーモンをワンパンだものね」
「多分、ひと月前に倒した『ダムド』が裸足しで逃げ出すくらいの強さかも・・・」
放心状態のラルフとイザークが我に帰ったと思ったら、急に笑い出した
「あっはっはっは!噂には聞いていましたが、まさかここまで強いとはね。でも、カスミさんなら必ずやってくれるって思ってました。あなたは、不思議と期待のできる人だ。・・・・・そして・・・とてもみ、みりょ・・・」
ヒヒーン!
ガチャ!
「カスミお母さん!お客さんだよ!しかもイケメンと執事っぽい人!」
外から馬車の馬の鳴き声が聞こえて、外で遊んでいたメリッサが家に入ってきて訪問者が来たと報告に来た
そのイケメンと紹介された訪問者は領主のスレイと執事のモンシアだった
「こんにちはカスミさん。2日ぶりですね」
「スレイかい。なんだか一昨日あった時よりも顔つきが良くなってるね。良い顔してるよ」
カスミに褒められてポッと顔を赤らめたスレイが照れながら持っていた菓子折りを差し出した
「ありがとうございます。これもあの時、カスミさんが叱ってくれたからですよ。そのおかげで、俺は生まれ変われたんですから」
「カスミ様、ご無沙汰しています。これつまらない物ですが子供達と食べてください」
モンシアが菓子折りをカスミに差し出すとアスナが掠め取る様に菓子折りを受け取り、その場で開封する
「これはこれはご丁寧にありがとうございます♪わぉ、この匂いはチョコレートじゃない♪」
「チョコレート!?わーい!」
チョコレートと聞いて、子供たちが一斉に集まりワイワイと賑わう
「こら!アンタ達!食べる前にちゃんとこの人にお礼を言わなくちゃだめだろ!」
カスミの一喝されて子供たちが慌ててスレイの前に立ちお辞儀をしながらお礼を言った
「スレイのおじさん、どうもありがとうございます」
「お、おじさんって・・・俺まだ26歳なんだけど・・・」
子供たちに、おじさんと呼ばれたのがショックだったのかスレイがガクッと肩を落とす。その姿を見たラルフが笑いを堪えている
「《b》《xsmall》ぷぷぷっ。26歳は充分おじさんだと思うぞ《/xsmall》《/b》」
「・・・聞こえたよ♪ラルフ団長様♪あなたはここに来て菓子折りの1つも持ってこなかったのですかな?『団長様』とあろう人が、失礼なことで・・・クスッ♪」
ラルフに笑われたことに頭にきたのかスレイもラルフに嫌味っぽく言い返した
その言葉にカチンと来てラルフはスレイと向き合い睨みつけるとスレイも負けじと睨み返す
「生憎だけど我々は遊びに来たのではなく『聴取』に来たんですよ。この間のあなたの屋敷で起こった事件のことで!早い話が『仕事』でここに来たんですよ!」
「おやおや?おかしいなぁ?ここに来る途中、知り合いの団員に聞いたんだけど、本来ここに来るのは副団長イザーク君と別の団員だったのに君が半ば強引に変わってもらったって聞いたけど、なんでだろうねぇ」
スレイの含みのある言葉にヒートアップしたのかラルフがスレイに強い口調で言い返す
「そんなことよりも、随分と雰囲気が変わりましたね。あの頼りない『お飾り領主様』がねぇ」
「『男子三日会わざれば刮目してみよ』って言うでしょ?俺もいつまでも情けない姿を見せるつもりはないよ。ねぇ?『朴念仁のラルフ団長様』!」
お互いの激しい衝突は一向に収まる気配がなく仕方なくカスミが仲裁に入る
「いい加減にしな!子供たちの前でみっともない言い合いしてるんじゃないよ!」
「はっ!カスミさん、すいませんでした。そうだ!今度、家に来て食事なんかどうですか?もちろん子供たちと一緒に来てください」
カスミに叱られて謝罪すると即座に食事の誘いをしたスレイにラルフが食ってかかる
「スレイさん!?何、勝手にカスミさんに食事の誘いをしてるんですか?」
「おや?ラルフ君、何でキミに許可を得なくちゃいけないのかな?」
「ベ、別にそういうわけでは・・・って言うか随分とナンパになりましたね。ついこの間まで女性とまともに話すことすらできないと言われた領主のスレイ男爵様」
「こ、この!・・・何を偉そうに人のことを言える立場かな?堅物で朴念仁が災いして、女性と付き合ったことがないと有名なラルフ団長様!」
お互いが引かずに再び口論となろうとしていた2人をカスミがげんこつで黙らした
「だから、やめろって言ってるだろ!いい歳した大人がみっともない!」
(あーあ。遂にカスミのカミナリが落ちた。本当にカスミは誰であろうと容赦ないわね)
(まあ、元が『肝っ玉母さん』だからね。ある意味『最強の生物』だよ)
「ところで、スレイは何か話が合ってきたんじゃないのかい?」
げんこつを食らって悶え苦しむラルフとスレイ
カスミの問いに頭をさすりながら真面目な顔になり、おとついの件の話をする
「さっき留置所に行って来て父と兄に会ってきました。特に兄は随分と清々しい顔をしていて、カスミさんに感謝していました。『叱ってくれてありがとうございました』っと・・・あの日、あなたに面と向かって叱られた兄は死んだ母のことを思い出したそうです。母はカスミさんの様な性格の人で曲がった事を嫌い悪さをすれば、容赦なく兄や私達兄弟を叱ってきました。兄はそんな母が大好きで母の期待に応えるべく、勉学に一生懸命励んでいましたが、母が急な病に倒れ帰らなぬ人となってから兄は変わってしまいあのようなことに・・・・」
スレイはカスミに向かって深々と頭を下げて謝罪とお礼を言った
「カスミさん、あの時のあなたの『叱り』のおかげで兄のみならず父も改心する事ができました。そして、私も変わることができました。本当にありがとうございました」
殊勝な態度と感謝の言葉を聞いてカスミはそっと肩を叩く
「そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。それに私はちょっと背中を押しただけで、アンタが変われたのはアンタ自身が自分で変わりたいと思ったからだ。要は『己の気持ち次第』ってところさね。これから色々と大変だろうけど頑張りな!」
《b》《xbig》「は、はい!頑張ります!」《/xbig》《/b》
背筋を伸ばし気合の入った返事に気を良くしたのかカスミがスレイの背中を勢いよく叩いた
「良い返事だ!領主ってのはそんな感じでどっしりと構えるもんだからね!」
(それは少し違う気が・・・)ワタル&アスナ&イザーク&モンシア
(わかる気がする!スレイさんが羨ましいぞ!俺もカスミさんに激励してほしい!)
モンシアがスレイの隣に立ち耳元で話し掛ける
「旦那様、そろそろお屋敷に戻る時間です」
「もうそんな時間か?カスミさんすいません。名残惜しいですが私はそろそろおいとまします」
「ああ。お菓子ありがとうね。また来るといいよ」
「はい!喜んで!この次はもう少しゆっくりしていきますね。では失礼します」
スレイとモンシアが馬車に乗りファミリアを後にするとラルフも立ち上がり、別れの挨拶をする
「それでは我々も次の仕事があるので、これで失礼しますね。あっ!そうだギルドマスターが話があるそうで、近いうちに来て欲しいそうです」
「アンドレが?わかったよ」
「確かにお伝えしてました。おい!イザーク何やってるんだ?帰るぞ」
ラルフが帰ろうとするとイザークはメリッサが雑談していた
「おっと!ごめんごめん!それじゃあメリッサちゃんまた今度ね」
「はい。ごきげんよう、イザークさん。また今度」
お互いが笑顔で手を振りながら挨拶をしている
その姿を見てラルフは少々、怪訝そうな顔をしながらファミリアを後にする
「お前、何、子供を口説こうとしてるんだ?まさか!」
「何バカな事言ってるんだ。メリッサちゃんは12歳だぞ。18歳とかならともかく、ただ、単に恋愛相談を乗ってただけだよ。あの中に好きな子がいるみたい」
「・・・・なるほどね。なんとなくわかった。俺がいた頃も同じ娘がいたっけ」
それから1時間後
「さて、そろそろ夕飯の買い出しに行くとするよ」
「スーパーマーケットの召喚ですね?」
カスミは少し呆れた表情でワタルを見て話す
「いつも、あんな便利なもの買わないよ。外にある店で買い物するんだよ。ちゃんと街の住人達との交流も深めないといけないからね。この街には人間だけじゃなくて他の種族もいるから特に交流を深めないといけないよ」
「確かにこの街にはゴブリン族やオーク族やドワーフ族、他にも色んな種族が住んでるって聞きますからね。ちょうどいい機会だからそうしましょう」
「いってら~♪お土産よろ~♪」
アスナが手を振って見送ってくるがカスミはニコニコしながらかアスナの首につかみながら強引に引きずっていったのである
「アンタも一緒に買い物の手伝いをするんだよ!いつものタダ飯はさせないからね!働かざるもの食うべからずだ!」
「うにゃあああああ!働きたくない!働きたくないでござるー!」
「ばかだなぁアスナちゃんはカスミさんがいつまでもタダ飯を許すわけないじゃない」
そして、3人は街の商店街に行くのである
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「こんにちは、カスミさん。一昨日の聴取に来ました。っと言っても聴取する程でもないのですが」
「そうなんですよ。ラルフの場合はカスミさんに会いたくて本来、僕と部下が来る予定だったけど、ラルフが部下に無理言って代わってもらいカスミさんに会いに来たんですよ」
「イザーク!おま!」
ラルフは顔を真っ赤にしながらイザークを睨む
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。今はお茶と羊羹ぐらいしか出せないけど、ゆっくりして行きな」
カスミは2人に『お茶』と『羊羹』を出した
ラルフとイザークはティーカップに入っている『お茶』と小皿に乗っている『羊羹』を見て目が点になっていた
「カスミさん、このカップに入っている緑色の液体はなんですか?あとこの黒くて中に黄色いものが入ってるんですが・・・」
「何って言われても、ただの『緑茶』と『栗羊羹』だよ。アンタらは緑茶や栗羊羹を知らないのかい?」
「緑茶は日本の『お茶』で栗羊羹は『和菓子』ですから、異世界には存在しませんよ。ロメロさんだって知らなかったじゃないですか」
初めて見る栗羊羹を困惑しながらラルフは口に運ぶ
「美味い!このクリヨウカンと言うお菓子は凄く美味しいです!そして、このリョクチャも渋いですがヨウカンを食べた後に飲むと格別ですね!イザークも食べて見ろよ!」
「うむ。確かに美味ですね。このリョクチャとヨウカンは何処で買ってきたんですか?」
「この2つは私の固有・・・って、そんなことよりこの間の聴取だろ?」
2人は本来の要件を思い出し、咳払いをしながら一昨日の聴取を始める
「おおよその話(省略》は領主のスレイさんと執事のモンシアさんから聞きましたが間違いありませんか?」
「ああ。間違いないよ。それでクリフとスコットはどうなったんだい?全部、罪を認めたんだろ?」
「ええ。特にクリフは洗いざらい自供しましたよ。ホント、洗いざらいにね」
イザークが含みのある言い方に何かを察したワタルが問い詰めた
「それって、もしかして『魔族』の事ですか?クリフさんは魔族と繋がってるみたいですけど・・・」
「そういえば言ってたね。魔族て言うのは何者なんだい?」
「魔族はこの大陸とは、別次元に存在する世界で魔族は他の種族と敵対関係にある種族です。魔族はこの大陸全土を制圧しようと目論んでいて、各国で勢力を上げて戦っています」
ラルフが魔方陣の描かれた黒い紙を差し出した
「コレってこの間のクリフさんが使った悪魔を呼び出した黒い紙じゃないですか?確かこの紙から下級悪魔のデーモンが召喚されましたよね?」
ラルフが困った表情で黒い紙の事について話し出した
「この紙から召喚された悪魔が『普通のデーモン』だったらよかったのですが・・・この紙に描かれている魔法陣は最強クラスの『アビスデーモン』だったです。まさかと思うんですけど、このアビスデーモンはカスミさんが倒したんですよね?かなり苦労されたんじゃないですか?」
この話にいつの間にかアスナが割り込んでいて栗羊羹を食べている
「ラルフ隊長さん、あんたはカスミの事を何もわかってないよね。カスミはね、そのアビスデーモンをワンパンチで倒したのよ。アビスデーモンがカスミの作ったオムライスを粗末にしたからカスミがぶち切れてね」
《xbig》「ワ、ワンパン!?」ラルフ&イザーク《/xbig》
カスミがアビスデーモンをワンパンチで倒した事実を聞かされたラルフとイザークは思わず椅子から立ち上がりお互いカスミを見て放心状態となる
「当然のリアクションね。ゲームでも最強クラスで異世界と言うか最早、現実において上級悪魔の最強種とうたわれるアビスデーモンをワンパンだものね」
「多分、ひと月前に倒した『ダムド』が裸足しで逃げ出すくらいの強さかも・・・」
放心状態のラルフとイザークが我に帰ったと思ったら、急に笑い出した
「あっはっはっは!噂には聞いていましたが、まさかここまで強いとはね。でも、カスミさんなら必ずやってくれるって思ってました。あなたは、不思議と期待のできる人だ。・・・・・そして・・・とてもみ、みりょ・・・」
ヒヒーン!
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「カスミお母さん!お客さんだよ!しかもイケメンと執事っぽい人!」
外から馬車の馬の鳴き声が聞こえて、外で遊んでいたメリッサが家に入ってきて訪問者が来たと報告に来た
そのイケメンと紹介された訪問者は領主のスレイと執事のモンシアだった
「こんにちはカスミさん。2日ぶりですね」
「スレイかい。なんだか一昨日あった時よりも顔つきが良くなってるね。良い顔してるよ」
カスミに褒められてポッと顔を赤らめたスレイが照れながら持っていた菓子折りを差し出した
「ありがとうございます。これもあの時、カスミさんが叱ってくれたからですよ。そのおかげで、俺は生まれ変われたんですから」
「カスミ様、ご無沙汰しています。これつまらない物ですが子供達と食べてください」
モンシアが菓子折りをカスミに差し出すとアスナが掠め取る様に菓子折りを受け取り、その場で開封する
「これはこれはご丁寧にありがとうございます♪わぉ、この匂いはチョコレートじゃない♪」
「チョコレート!?わーい!」
チョコレートと聞いて、子供たちが一斉に集まりワイワイと賑わう
「こら!アンタ達!食べる前にちゃんとこの人にお礼を言わなくちゃだめだろ!」
カスミの一喝されて子供たちが慌ててスレイの前に立ちお辞儀をしながらお礼を言った
「スレイのおじさん、どうもありがとうございます」
「お、おじさんって・・・俺まだ26歳なんだけど・・・」
子供たちに、おじさんと呼ばれたのがショックだったのかスレイがガクッと肩を落とす。その姿を見たラルフが笑いを堪えている
「《b》《xsmall》ぷぷぷっ。26歳は充分おじさんだと思うぞ《/xsmall》《/b》」
「・・・聞こえたよ♪ラルフ団長様♪あなたはここに来て菓子折りの1つも持ってこなかったのですかな?『団長様』とあろう人が、失礼なことで・・・クスッ♪」
ラルフに笑われたことに頭にきたのかスレイもラルフに嫌味っぽく言い返した
その言葉にカチンと来てラルフはスレイと向き合い睨みつけるとスレイも負けじと睨み返す
「生憎だけど我々は遊びに来たのではなく『聴取』に来たんですよ。この間のあなたの屋敷で起こった事件のことで!早い話が『仕事』でここに来たんですよ!」
「おやおや?おかしいなぁ?ここに来る途中、知り合いの団員に聞いたんだけど、本来ここに来るのは副団長イザーク君と別の団員だったのに君が半ば強引に変わってもらったって聞いたけど、なんでだろうねぇ」
スレイの含みのある言葉にヒートアップしたのかラルフがスレイに強い口調で言い返す
「そんなことよりも、随分と雰囲気が変わりましたね。あの頼りない『お飾り領主様』がねぇ」
「『男子三日会わざれば刮目してみよ』って言うでしょ?俺もいつまでも情けない姿を見せるつもりはないよ。ねぇ?『朴念仁のラルフ団長様』!」
お互いの激しい衝突は一向に収まる気配がなく仕方なくカスミが仲裁に入る
「いい加減にしな!子供たちの前でみっともない言い合いしてるんじゃないよ!」
「はっ!カスミさん、すいませんでした。そうだ!今度、家に来て食事なんかどうですか?もちろん子供たちと一緒に来てください」
カスミに叱られて謝罪すると即座に食事の誘いをしたスレイにラルフが食ってかかる
「スレイさん!?何、勝手にカスミさんに食事の誘いをしてるんですか?」
「おや?ラルフ君、何でキミに許可を得なくちゃいけないのかな?」
「ベ、別にそういうわけでは・・・って言うか随分とナンパになりましたね。ついこの間まで女性とまともに話すことすらできないと言われた領主のスレイ男爵様」
「こ、この!・・・何を偉そうに人のことを言える立場かな?堅物で朴念仁が災いして、女性と付き合ったことがないと有名なラルフ団長様!」
お互いが引かずに再び口論となろうとしていた2人をカスミがげんこつで黙らした
「だから、やめろって言ってるだろ!いい歳した大人がみっともない!」
(あーあ。遂にカスミのカミナリが落ちた。本当にカスミは誰であろうと容赦ないわね)
(まあ、元が『肝っ玉母さん』だからね。ある意味『最強の生物』だよ)
「ところで、スレイは何か話が合ってきたんじゃないのかい?」
げんこつを食らって悶え苦しむラルフとスレイ
カスミの問いに頭をさすりながら真面目な顔になり、おとついの件の話をする
「さっき留置所に行って来て父と兄に会ってきました。特に兄は随分と清々しい顔をしていて、カスミさんに感謝していました。『叱ってくれてありがとうございました』っと・・・あの日、あなたに面と向かって叱られた兄は死んだ母のことを思い出したそうです。母はカスミさんの様な性格の人で曲がった事を嫌い悪さをすれば、容赦なく兄や私達兄弟を叱ってきました。兄はそんな母が大好きで母の期待に応えるべく、勉学に一生懸命励んでいましたが、母が急な病に倒れ帰らなぬ人となってから兄は変わってしまいあのようなことに・・・・」
スレイはカスミに向かって深々と頭を下げて謝罪とお礼を言った
「カスミさん、あの時のあなたの『叱り』のおかげで兄のみならず父も改心する事ができました。そして、私も変わることができました。本当にありがとうございました」
殊勝な態度と感謝の言葉を聞いてカスミはそっと肩を叩く
「そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。それに私はちょっと背中を押しただけで、アンタが変われたのはアンタ自身が自分で変わりたいと思ったからだ。要は『己の気持ち次第』ってところさね。これから色々と大変だろうけど頑張りな!」
《b》《xbig》「は、はい!頑張ります!」《/xbig》《/b》
背筋を伸ばし気合の入った返事に気を良くしたのかカスミがスレイの背中を勢いよく叩いた
「良い返事だ!領主ってのはそんな感じでどっしりと構えるもんだからね!」
(それは少し違う気が・・・)ワタル&アスナ&イザーク&モンシア
(わかる気がする!スレイさんが羨ましいぞ!俺もカスミさんに激励してほしい!)
モンシアがスレイの隣に立ち耳元で話し掛ける
「旦那様、そろそろお屋敷に戻る時間です」
「もうそんな時間か?カスミさんすいません。名残惜しいですが私はそろそろおいとまします」
「ああ。お菓子ありがとうね。また来るといいよ」
「はい!喜んで!この次はもう少しゆっくりしていきますね。では失礼します」
スレイとモンシアが馬車に乗りファミリアを後にするとラルフも立ち上がり、別れの挨拶をする
「それでは我々も次の仕事があるので、これで失礼しますね。あっ!そうだギルドマスターが話があるそうで、近いうちに来て欲しいそうです」
「アンドレが?わかったよ」
「確かにお伝えしてました。おい!イザーク何やってるんだ?帰るぞ」
ラルフが帰ろうとするとイザークはメリッサが雑談していた
「おっと!ごめんごめん!それじゃあメリッサちゃんまた今度ね」
「はい。ごきげんよう、イザークさん。また今度」
お互いが笑顔で手を振りながら挨拶をしている
その姿を見てラルフは少々、怪訝そうな顔をしながらファミリアを後にする
「お前、何、子供を口説こうとしてるんだ?まさか!」
「何バカな事言ってるんだ。メリッサちゃんは12歳だぞ。18歳とかならともかく、ただ、単に恋愛相談を乗ってただけだよ。あの中に好きな子がいるみたい」
「・・・・なるほどね。なんとなくわかった。俺がいた頃も同じ娘がいたっけ」
それから1時間後
「さて、そろそろ夕飯の買い出しに行くとするよ」
「スーパーマーケットの召喚ですね?」
カスミは少し呆れた表情でワタルを見て話す
「いつも、あんな便利なもの買わないよ。外にある店で買い物するんだよ。ちゃんと街の住人達との交流も深めないといけないからね。この街には人間だけじゃなくて他の種族もいるから特に交流を深めないといけないよ」
「確かにこの街にはゴブリン族やオーク族やドワーフ族、他にも色んな種族が住んでるって聞きますからね。ちょうどいい機会だからそうしましょう」
「いってら~♪お土産よろ~♪」
アスナが手を振って見送ってくるがカスミはニコニコしながらかアスナの首につかみながら強引に引きずっていったのである
「アンタも一緒に買い物の手伝いをするんだよ!いつものタダ飯はさせないからね!働かざるもの食うべからずだ!」
「うにゃあああああ!働きたくない!働きたくないでござるー!」
「ばかだなぁアスナちゃんはカスミさんがいつまでもタダ飯を許すわけないじゃない」
そして、3人は街の商店街に行くのである
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