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第8話 今日から私がアンタ達のお母さんだ! 完結編

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カスミは愕然としている 
「あのーカスミさんどうかしたんですか?」
「ちょいとロメロ!これはどういうことだい?」
何かあったのかカスミがロメロに質問をしてきた
「どういうことと言いますと?」
「どうもこうもあるかい!ここにはIHコンロは?炊飯器はないのかい?」
カスミは台所に指をさしながらロメロに問いただす
そこには流し台と釜戸が2つあるだけだった
「待ってください!カスミさん実はですね・・・」
そんなカスミとロメロの間にワタルが慌てて割って入り、この世界にIHコンロ等の家電製品が存在しな事とガスや電気が通ってない事を説明した
 
「家電製品が電気がガスが通ってない?!・・・だと!」
 
異世界に家電製品がないことにショックを受けているカスミ
「もしかして、あなた方が言っているコンロと言うのは『魔導コンロ』の事ですか?」
「!!!、その何とかコンロってはどんなものなんだい?」
家電?がある事を知ったカスミが我に返り、ロメロに詰め寄る
「魔力の籠ったコンロですよ」
「まりょく?」
魔力と言う言葉を聞いて目が手になったカスミがワタルの方を見る
ワタルは「待ってました!」と言う顔をしながら、魔力(魔法)の存在を詳しく説明した
 
「つまりアレかい?魔法ってのは手品みたいなもんだろ?」
「いやいや!魔法と手品は根本的に違いますから!(全くこの人は・・・)」
「それはともかく、この家には、その『魔導コンロ』はないのかい?」
カスミの質問に苦笑いしながらロメロは言った
「魔導コンロは高価な物でして、この子たちを食べさせるのが精一杯でコンロを買う余裕がなくて仕方なく釜戸で料理を作ってるんですよ」
「高価と来たかい・・・しょうがないね!ならこの釜戸でご飯を作るよ!」
「いいんですかそれで?」
「別にそのコンロをないとご飯が作れないわけじゃないだろ?だったら家にあるものを上手に活用するもの!それによく言うだろ?」
ワタルとロメロが無言でカスミを見つめるとカスミは腕を組みながら威風堂々と言い放った
 
「うちはうち!よそはよそ!」
 
(ええぇぇっ・・・・)ワタルとロメロ
「さてと、何を作ろうか・・・ってほとんど材料がないじゃないか」
「すみません。今日は色々とあって買いに行く暇がなくて。この時間だと市場はもう閉まっています」
「それなら心配いらないよ。こっちには『スーパー』があるからね」
カスミは早速、『スーパーマーケット』を召喚しスーパーの中に入って行った
「・・・この力はもしかして、あなた達は『転生者』ですか?」
「そうですけど、ロメロさんは『転生者』をご存知なんですか?」
「実は2ヶ月ほど前に1人の女の子が街の外で行き倒れていて、この家の近くにある教会に保護されました。そして、女の子が目を覚ましてから色々と聞いてみると、自分は『転生者』だと言っていました」
「そう言えば、ボク達以外にも『転生者』がいたんだっけ。それでその人は今どうしてるんですか?」
「その子はですね・・・」
2人がもう1人の『転生者』の事を話していると『スーパー』の中から両手に買い物袋を持ったカスミが出て来た
「アンタ達はそんな所で話で何突っ立ってんだい?」
「あのですね・・・って随分沢山と買いましたね。一体、何を作るんですか?」
ワタルの質問に対して、満面の笑みでカスミは言った
「子供達に作る料理って言ったら『アレ』しかないだろ♪子供はみんな大好きな『アレ』だ♪」
「『アレ』って?・・・・ああっ!もしかしてカスミさん『アレ』を作るんですね!はははっ!」
カスミが『アレ』を作ると聞いて最初は何を作るかわからなかったワタルだが、すぐに気がついた
 
それから40分後
 
「さあ、できたよ!ロメロは子供たちを呼んできて!ワタルはテーブルにコップとスプーンを並べな!」
しばらくするとロメロに連れられて子供たちがワイワイとやってきた
「わぁ!良い匂いがする!コレって料理?」
「おいしそう!」
「早く食べたい!」
子供達が初めて見る料理に興味津々な姿を見てカスミは微笑みながら、料理の名前を教える
「コレは『カレーライス』だよ。アンタ達、カレーも知らないのかい?」
「多分、異世界では『カレーライス』が存在してないんですよ。カレー粉もないだろうし」
「ねえ?もう食べてもいい?」
「オイラも早く食いたい!」
早く食べたがる子供達に「まだダメ」と言ってその場から離れた。そして、すぐに戻って来たのだが、そこにはニコルがカスミの後ろに立っていた
「あー!ニコルだー!」
「ニコルこわいよー!お姉ちゃん怖いよ!」
「近づいたら、こいつ暴れるからな」
「安心しな。もうニコルは暴れたりしないよ」
ニコルの姿を見て困惑する子供達をカスミは宥めてニコルをみんなの前に連れて来る
「さあ、ニコル。みんなに言うことがあるだろ?」
「あ、あの・・あ、あ」
ニコルはみんなの前なのか何かを言おうとしても、怖くて言えない状態でいる
「ニコル君、頑張って!勇気を出して!」
「そうだよニコル。ちゃんと謝ればみんなも許してくれるよ」
ワタルとロメロも後で励ましている
すると、ニコルは頭を下げて大声で謝った
「め、迷惑をかけてごめんなさい!」
ビクビクと震えてる、ニコルの前にロジーがやって来てニコルの手を引っ張った
「ほら!こっちの席で一緒に食おうぜ!キースも良いだろ?」
ロジーに手を引っ張られキースの座っている席まで行くと、さっきまで暗い表情だったニコルの顔が笑顔になっていた
みんなが揃ったことを確認するとカスミはみんなに手を合わせ『いただきます』の号令を掛けた
「じゃあ、みんな手を合わせて!」 
 
「いただきます!」
 
食事開始から20分後
「アンタ達、カレーライスは美味しかったかい?」
子供達は初めて食べるカレーライスに大いに喜んでいた
「そいつは作った甲斐があったね。それと今から大切な話をするよ」
大切な話と聞いて、子供達はカスミをジッと見つめた
「今日から私と隣に居るこのワタルはここに住むことになったんだ。それで私の事なんだけど、これからはアンタ達の『親』代わりになるわけだ。私はね親のいないアンタ達に本当の親のように思って欲しいんだよ。だから・・・・」
 
60分程前
カスミ達は外でロジー達が遊んでいる姿を見てなごみながら話していた 
「やっぱり、どこの世界の子供は元気だね。夕方になっても遊び回ってるよ」
「子供の体力は底なしですからね」
2人の話を聞いて、ロメロは少し顔を曇らせていた
「確かにあの子達も他人の子達と変わらない位元気ですよ・・・「表向き」はね」
「表向き?」(カスミとワタル) 
意味深な言葉にカスミとワタルの表情が曇った
「カスミさんの言う通り元気なんですが、それは人前の時だけなんです。人前では元気に振る舞っているんですが、しかし、やっぱりあの子達はまだ親に甘えたい盛りの『子供』なんです。夜になると、あの子達はみんな人知れず泣いているんです」
「かわいそうですね。みんなまだ小さいのに」
「・・・・・・・」
少しの沈黙の後、カスミはキリッと表情を切り替えた
「ロメロ!今日から私をここで働かせてくれないか?!タダ働きでいい!ワタルも付けるよ!」
「ちょ!何勝手に決めてるんですか!ってかオマケみたいに言わんでくださいよ!」 
「いやいや、待ってくださいよ!それは構わないんですが、どうして急に?」
突然のことに慌てるロメロに対してカスミはこう言い放った
「私はね、あの子達の『親』になりたいんだよ!」
「『親』って親代わりなら私が既にやってるんですが?」
「それは知ってるさ!だからね!私はあの子達の『お母さん』になってあげたいんだよ!」
カスミの『お母さん』発言に少し唖然としていた2人は急に笑い出した
「さすがはカスミさん!ボクたちにできない事を平然とやってのける!そこにシビれる!あこがれるぅ!」
「あなたは不思議な方ですね。今日初めて会ったのに思うんです。不可能な事でも可能にしてしまう。そんな人だと・・・良いですよ。いえ、私からお願いします!カスミさん!ワタル君!ここで働いてくれませんか?!そして、あの子達の『母親』になってください!」
 
「喜んで!」(カスミとワタル)
 
そして現在
「私はね親のいないアンタ達に本当の親のように思って欲しいんだよ。だから・・・・」
 
「今日から私がアンタ達のお母さんだ!」
 
今言ったカスミの言葉を聞いた子供達は声を上げて大いに喜んだ
「カスミお母さん!」
「カスミママ!」
「カスミかあちゃん!」
「カスミ母さん!」
ただし、1人を除いて・・・ニコルだ
「どうしたの?ニコル君は『お母さん』って呼ばないの?恥ずかしがらなくていいんだよ」
「で、でも・・・」
ニコルは顔赤くしながらモジモジとしていた
「遠慮しないでいいのよ。頑張って!」
「言っちゃえ!ニコル!」
「かあちゃんだぞ!ニコル!」
下を俯いていたニコルは顔を上げてカスミの方を向いた
「お、お、お母さん!」 
「なんだい?ニコル」
ニコルの呼びかけにカスミは笑顔で返事をした
カスミの気持ちの良い返事にニコルも笑顔で返した
 
『母親』とは女の親と言われ、時には厳しく、時に優しくもある人物である
 
この物語は異世界に転生した馬場香澄がカスミ・ババとなって孤児院を経営しながら周囲に起こる事件を解決する物語である
 
そして、物語が今始まる
 
NEXT 「カスミ冒険者にる 前編」
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