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《┈第二部┈》プロローグ
《霧島》
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ブルルルル
目覚まし時計の震える音が部屋に鳴り響く。
私の耳を、目覚まし時計のけたたましいおとがつく。
起き上がった私は、なれない操作で、目覚まし時計を停めた。
そして、ゆっくりと、布団の中から、手を出そうとする。
バクンバクン
心臓が波打つ。少しづつ、手が現れた。
それは、私のものでは無い。汐梨のそれだ────
私は、やはり汐梨だった。
「戻れてない……」
無力に沈んだその声が、知らず口を着いた。
思い足取りで、立ち上がり、支度を整える。
クローゼットにかかる、汐梨の服を見て、私はもう、汐梨なのだと、思い、絶望する。
ドアを開き、外に出た。
ドアを開ける音は軽やかで、私の心とは対照的だ。
外に出れば、私の心を再び絶望が覆う。
やはり、そこは、私の知る山神十字路ではなく、高層ビルの立ち並ぶ、十字路だ。しかし標識には、山神十字路と書かれ、その文字は、私に、この現実を突きつける。職場の名前は、汐莉が書いていた日記からわかったが、道が分からない。
私は意を決し、道にいる女性に声をかけることにした。
「汐梨さん」
彼女から声がかかった。汐梨の知り合いだろうか。それでも、他に人はいないため、道を聞くなら彼女しかいない。一度、深く呼吸をすると、私は口を開いた。
「佐藤商事はどこですか」
女性は一度大きく目を見開くと、 唖然とした表情を、私に向けた。しばらく口をパクパクさせたあと、口を開く。
「なんで、忘れたの?あっちよ」
私は、今、汐里として暮らしている。知り合いが突然、知っているはずの会社の場所を聞けば、皆驚き、信じられないという様子になるだろう。
「汐梨────。」
後ろから声がかかる。その声は明るいが、少し、震えていた。彼女は、私がこの汐梨に入った時、隣にいた女性だ。私は言う言葉が見つからず、軽く会釈すると、その場を後にした。
先程の女性の指さした先に、歩いていると、汐梨の職場につき、私は中に入った。
席が分からない
そんなことに気がつき、私は戸惑う。
今この職場にいるのは、先程の女性だけだ。彼女に聞けば、さらに怪しまれてしまうだろう。私は、次に出社する人を待つことにし、その場に立ち止まる。
「汐梨さん」
彼女はその場に立ちつくす私を見つけ声をかけた。
その先に続く言葉を想像し、心臓がバクバクと飛び跳ねる。
続きは?一瞬の間なのに、とても長く感じられ、といが私の脳裏を巡る。知らず、ゴクリと喉が上下した。
「座らないの?」
彼女のその言葉に、私は再び戸惑う。席が分からないのだ。今こそ聞くのだ、と自分に言い聞かせるが、それを言おうとすると、喉に何かがつっかえたかのようになる。女性は私の方をじっと見つめ、私が歩き出し、席に向かうのを待つ。
「まさか、汐梨さん────」
彼女が口を開き、私に問おうとして口をパクパクさせる。
ゴクン
知らず喉が上下した。
目覚まし時計の震える音が部屋に鳴り響く。
私の耳を、目覚まし時計のけたたましいおとがつく。
起き上がった私は、なれない操作で、目覚まし時計を停めた。
そして、ゆっくりと、布団の中から、手を出そうとする。
バクンバクン
心臓が波打つ。少しづつ、手が現れた。
それは、私のものでは無い。汐梨のそれだ────
私は、やはり汐梨だった。
「戻れてない……」
無力に沈んだその声が、知らず口を着いた。
思い足取りで、立ち上がり、支度を整える。
クローゼットにかかる、汐梨の服を見て、私はもう、汐梨なのだと、思い、絶望する。
ドアを開き、外に出た。
ドアを開ける音は軽やかで、私の心とは対照的だ。
外に出れば、私の心を再び絶望が覆う。
やはり、そこは、私の知る山神十字路ではなく、高層ビルの立ち並ぶ、十字路だ。しかし標識には、山神十字路と書かれ、その文字は、私に、この現実を突きつける。職場の名前は、汐莉が書いていた日記からわかったが、道が分からない。
私は意を決し、道にいる女性に声をかけることにした。
「汐梨さん」
彼女から声がかかった。汐梨の知り合いだろうか。それでも、他に人はいないため、道を聞くなら彼女しかいない。一度、深く呼吸をすると、私は口を開いた。
「佐藤商事はどこですか」
女性は一度大きく目を見開くと、 唖然とした表情を、私に向けた。しばらく口をパクパクさせたあと、口を開く。
「なんで、忘れたの?あっちよ」
私は、今、汐里として暮らしている。知り合いが突然、知っているはずの会社の場所を聞けば、皆驚き、信じられないという様子になるだろう。
「汐梨────。」
後ろから声がかかる。その声は明るいが、少し、震えていた。彼女は、私がこの汐梨に入った時、隣にいた女性だ。私は言う言葉が見つからず、軽く会釈すると、その場を後にした。
先程の女性の指さした先に、歩いていると、汐梨の職場につき、私は中に入った。
席が分からない
そんなことに気がつき、私は戸惑う。
今この職場にいるのは、先程の女性だけだ。彼女に聞けば、さらに怪しまれてしまうだろう。私は、次に出社する人を待つことにし、その場に立ち止まる。
「汐梨さん」
彼女はその場に立ちつくす私を見つけ声をかけた。
その先に続く言葉を想像し、心臓がバクバクと飛び跳ねる。
続きは?一瞬の間なのに、とても長く感じられ、といが私の脳裏を巡る。知らず、ゴクリと喉が上下した。
「座らないの?」
彼女のその言葉に、私は再び戸惑う。席が分からないのだ。今こそ聞くのだ、と自分に言い聞かせるが、それを言おうとすると、喉に何かがつっかえたかのようになる。女性は私の方をじっと見つめ、私が歩き出し、席に向かうのを待つ。
「まさか、汐梨さん────」
彼女が口を開き、私に問おうとして口をパクパクさせる。
ゴクン
知らず喉が上下した。
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