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予兆
第一話
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梨花はパソコンの画面を食い入るように見ていた。
そこには『奴瘉悲歌の伝説』という文字が大きく映し出されている。
読み進めていく梨花。
染まる。梨花の目はゆっくりと、しかし確実に狂気の色に染まっていく。
サイトの後の方に歌詞を見られるURLが貼り付けてある。
梨花は迷うことなくURLをクリックする。
この世とかの世のたよりに響くあはれがり
こだまするあはれがりがわれときみを支配す。
いかで…など…君はここに
聞きて気の遠くならむわびしき物語。わが涙にあはれがり光る…………
部屋に木霊する梨花の声。梨花はこの詩を知らない。しかし何故か歌えた。
歌い終わる頃には梨花の目には強い狂気が宿っていた。
赤く、今にも叫び出しそうな狂気の目であった。
サイトを読み終えた時、梨花は何故かとても興奮していた。何故だかは分からない。言葉では表せないほどの興奮が梨花を包む。体は熱くなり、またあの歌を歌いた衝動に駆られる。
この歌を口ずさむと…
末尾の文章はそこで途絶えていた。
梨花はその文に気付かず、パソコンを閉じた。
トントントントントントン
梨花の部屋の扉をノックする音がする。
今日、梨花のマンションに泊まる予定の美明だろうか。
しかし、美明はノックなどせず、インターホンを押すはずだ。
叩き壊さんばかりに響くノック音に梨花は違和感を憶えた。
梨花は玄関に向かい覗き穴を覗き込む。
キャーーーー
覗き穴に映るものを見て尻餅をつく。
それは異質なものだった。
吸い込まれるような漆黒の目、ポッカリと空いた口、ボサボサの長い髪、真っ白な体…
そこから梨花は動けずにその場に尻もちを着いていた。
どれくらい経ったのだろうか。
未だノックを続ける女。
扉は歪み、今にも壊れそうになる。
ドン゙!!!ガラ゙ガラ゙ガラ゙ガラ゙
ついに扉は壊され、梨花は逃げるように背後の階段を駆け上がる。
この後どこに逃げよう…まって…私の家ってマンションだよね…階段なんて…ないよね…
梨花は急いで引き返そうと思う。
しかし、背後には女が追いかけてきている。
気が着くと梨花は自宅では無い場所にいた。
はっ…ここはどこ?
気を失っていたようだ…………
そこは梨花のマンションではなく古びた神社の参道であった。
梨花は恐ろしくなり、引き返して鳥居を潜ろうとするが結界があるかのように跳ね返って通れない。
茫然としていると光に包まれた人影たちがこちらに向かって歩いてくる。
光に包まれた人々は奴瘉悲歌の伝説の唄を口ずさんでいた。
梨花はその中の一人に抱えられ神殿に投げ込まれる。
フワーと身体は浮き、次の瞬間背中に衝撃が走る。梨花を神殿に投げ込んだそれはあの時覗き穴から見た女であった。
そのときある言葉が口をつく。
この世とかの世のたよりに響くあはれがり
こだまするあはれがりが……
それはあのうたの歌詞であった。
神殿の中はとてもくらい。梨花は光を探して色々な方向をむく。
後ろを振り返ると遠くに炎のような光が梨花に近づいて来ていた。
梨花に向かって光る影がこの世のものとは思えない速さで近づいてくる。
ヴギャ゙ャ゙ー
雄叫びを上げながら近づいてくるそれに梨花はあっという間に吸い込まれて行く。
ギャ゙ーーー
神域に梨花の悲鳴が余韻を残す……
そこには『奴瘉悲歌の伝説』という文字が大きく映し出されている。
読み進めていく梨花。
染まる。梨花の目はゆっくりと、しかし確実に狂気の色に染まっていく。
サイトの後の方に歌詞を見られるURLが貼り付けてある。
梨花は迷うことなくURLをクリックする。
この世とかの世のたよりに響くあはれがり
こだまするあはれがりがわれときみを支配す。
いかで…など…君はここに
聞きて気の遠くならむわびしき物語。わが涙にあはれがり光る…………
部屋に木霊する梨花の声。梨花はこの詩を知らない。しかし何故か歌えた。
歌い終わる頃には梨花の目には強い狂気が宿っていた。
赤く、今にも叫び出しそうな狂気の目であった。
サイトを読み終えた時、梨花は何故かとても興奮していた。何故だかは分からない。言葉では表せないほどの興奮が梨花を包む。体は熱くなり、またあの歌を歌いた衝動に駆られる。
この歌を口ずさむと…
末尾の文章はそこで途絶えていた。
梨花はその文に気付かず、パソコンを閉じた。
トントントントントントン
梨花の部屋の扉をノックする音がする。
今日、梨花のマンションに泊まる予定の美明だろうか。
しかし、美明はノックなどせず、インターホンを押すはずだ。
叩き壊さんばかりに響くノック音に梨花は違和感を憶えた。
梨花は玄関に向かい覗き穴を覗き込む。
キャーーーー
覗き穴に映るものを見て尻餅をつく。
それは異質なものだった。
吸い込まれるような漆黒の目、ポッカリと空いた口、ボサボサの長い髪、真っ白な体…
そこから梨花は動けずにその場に尻もちを着いていた。
どれくらい経ったのだろうか。
未だノックを続ける女。
扉は歪み、今にも壊れそうになる。
ドン゙!!!ガラ゙ガラ゙ガラ゙ガラ゙
ついに扉は壊され、梨花は逃げるように背後の階段を駆け上がる。
この後どこに逃げよう…まって…私の家ってマンションだよね…階段なんて…ないよね…
梨花は急いで引き返そうと思う。
しかし、背後には女が追いかけてきている。
気が着くと梨花は自宅では無い場所にいた。
はっ…ここはどこ?
気を失っていたようだ…………
そこは梨花のマンションではなく古びた神社の参道であった。
梨花は恐ろしくなり、引き返して鳥居を潜ろうとするが結界があるかのように跳ね返って通れない。
茫然としていると光に包まれた人影たちがこちらに向かって歩いてくる。
光に包まれた人々は奴瘉悲歌の伝説の唄を口ずさんでいた。
梨花はその中の一人に抱えられ神殿に投げ込まれる。
フワーと身体は浮き、次の瞬間背中に衝撃が走る。梨花を神殿に投げ込んだそれはあの時覗き穴から見た女であった。
そのときある言葉が口をつく。
この世とかの世のたよりに響くあはれがり
こだまするあはれがりが……
それはあのうたの歌詞であった。
神殿の中はとてもくらい。梨花は光を探して色々な方向をむく。
後ろを振り返ると遠くに炎のような光が梨花に近づいて来ていた。
梨花に向かって光る影がこの世のものとは思えない速さで近づいてくる。
ヴギャ゙ャ゙ー
雄叫びを上げながら近づいてくるそれに梨花はあっという間に吸い込まれて行く。
ギャ゙ーーー
神域に梨花の悲鳴が余韻を残す……
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