上 下
1 / 1

森の覇者「ベア」

しおりを挟む
自分の森や自然を愛している「ベア」がいた。
ベアは優しく広く物事を見ることができるため、みんなから慕われていた。

鳥や猪、鹿などたくさんの野生動物が困り、行き着く場所はベアの元だったのだ。

ベアは気づいていた。このままの生活を続けていれば安泰であり、皆んなも賛同してくれると言うことを。

その森に住む生き物はみんな言葉を交わさずとも大切なことを通じ合っていた。

ベアが言う。
(何か他に困ったことはないかい?)

みんなは今の生活に大変満足していた。その様子にベアは嬉しく思った。

この森には草食動物しかおらず、仲間同士の喧嘩も少ない。なので天敵の脅威はほとんどないのだ。

それもベアがいてくれるおかげ。長年の努力が身を結んでいる。

昔からいた生物は我が一番という考えであり、他の生き物や将来のことを考えていなかった。

その世代の終わり頃に生まれたベアは疑問でいっぱいだった。お腹は空くし、温もりも少ないようだった。

今の森では一人一人にやりたいことを言ってもらい、その意見を必ず実現させるという施策をとっている。

他の動物の意見を聞き合えるからこそ、森の秩序を保ってきたのである。

家も食料もみんな平等の森はみんな大好きだった。

ただある日、その森に愚かな人間が入ってきた。
その人間はベアに対し、
(この森から食料を月に一定の量納めてくれるのなら、この森をさらに拡大してさらに面白くしてやろう。)

森の生き物達は悪い人に見えなかった。たくさんのものを見てきたベアの目にも悪い人間とは映らなかった。

ベアは了承し、森の2割の食料を納めた。
その日から信用を得るためなのか、ちょくちょく人間がいい施策を提案してきた。

現時点の食料には困っちゃいないが、将来のための貯蓄と言って更に2割、計4割を納めるように言ってきた。

ベア達は少し疑問に持ちながらも、自分たちの為将来のためと思い承諾した。一応何がしたいかを知るために鳥に偵察しててもらうことになった。

ある日から人間は来なくなり、ベアの森より自然と動物が多い森に行っていた。
しかも優雅にベア達が渡した食料をつまみながら。

まあ、違う可能性もあるしそこは見逃そう。
ただ、鳥は見てしまった。その美しい森にベア達の食料を渡していることを。

しかも管理人にカネまでもらっているじゃないか。
その話を聞いてベアはひどく怒った。

ベアは食料を騙し取られたことに対して怒っているのではなく、生き物達の純粋な心を汚してくれたことに対して怒っているのだ。

さて、ここからはこちらもうまく負かすために努力しなければいけないな。

あの人間はどんな表情でここの森に来るんだろうな。あっちは偵察されていることに気づいていないため必ずまたここの森に来るとベアは踏んでいた。

予想通り、月一の食料をもらうためにノコノコきやがった。
その人間はベア達の未来に対してのサムい演説を貼り付けたような顔で始めた。

どうせ、自分のためだし、うちらの援助がなくなったら他の森に食料を送らなくなるからもらうときだけいい事言ってるだけだろう。
ベアは分かっていた。

人間の周りがバカしてボロが出まくっていることも、人間はなぜ、一般の立場で自分のやっていることを見れないのだろうか。

もはや何にでも食料をよこせと言ってきている。流石にベアは嫌だと言った。もう渡す気もサラサラなかったし。

奴の施策には誰も賛同しなくなり、奴は他のところでも手を繋いでもらえなくなるだろう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

学園最弱の僕。成り上がる

さくしゃ
ファンタジー
これは平均魔力値の10分の1しか魔力を持たず学園最弱と呼ばれる僕、ライリーが魔法騎士養成機関「プロミネンス騎士王国騎士学園」にて魔法騎士を目指し成り上がる物語。

処理中です...