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乙女ゲームは始まらない
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魔法使う怪しい少女を捕らえる事となった騒ぎで、パーティーは中止となった。
ただ、中止となったのは、同年代が集う子供達だけのパーティーのみで。
パーティ参加者の兄の婚約者候補や側近候補などのご子息、ご令嬢の保護者たちがいるパーティー会場は警備が強化されたものの、夜会のような雰囲気でその催しは続けられていた。
簡単に言うと、大人たちのパーティーは中止にはならなかったようだ。
そして、その大人たちのパーティーに父であるこの国の陛下がいる。うん。堅苦しい空気を好まない父らしく、普通にパーティーを楽しんでいたようだ。
ぶっちゃけ王族って本当の意味でパーティーは楽しめないんだけどね。
「ここは謁見の間ではない。楽にして構わぬ」
兵を通して、先に父には状況は報告されていた為か、特に大事になっている様子もなく、私と兄からの報告を受ける時点でも、父は毅然とした態度を崩さずにいた。
まあ、子供が紛れ込んできただけの騒ぎなので、現場となった場所以外は中止をする理由はないか………。
「はい! 王太子殿下主催のパーティー会場の庭に、子供の侵入者が紛れ込みました」
とりあえず、一番大事な報告を私の口から伝える。
本来であれば、主催者の兄が報告するのが筋だが、侵入者を捕らえたのが私という事で役目を譲ってもらった。
じゃないと、上手く問題を解決する方向に誘導できないからである。
「進入経路は、どうやら私たちも知らない子供用の隠し通路を通って進入した様子で、実際に少し通路を覗いてみた限り、今回の事が起こるまで利用された形跡はございませんでした。詳しくは調査中です」
とりあえず、一番重要な王城への進入路について報告する。
「うむ。続けよ」
「はい! 続いて、進入してきた子供ですが、城下町の井戸に落ちて、その先に登ろうとした際に横穴を見つけて、そこが王城へ通じていたとの事です」
「そうか、その井戸以外にも同じような場所がないか確認する必要がありそうだな」
長い歴史を持つ王城だから、隠し通路の1つや2つは伝え忘れがあるのだろう………って事だ。まったく面倒な限りだ。
「そして、進入した子供ですが、なにやら聞いた事のない言葉を話し、少量の魔力を感知した為、とっさに取り押さえる事にし、現在は口を塞いだまま拘束中でございます」
「その者は危険なのか?」
「いえ、魔力は確かにございましたが、私自身が追跡して捕縛した際は一度も魔法を使う事はございませんでした」
聞き出さないといけない事があるので、処刑されないように手を打つ。
………例え、子供であったとしても、王城に侵入したら死罪は免れない。隠し通路を通っている間に何を聞いたのかを私たちに知る術がないからだ。
まあ、疑わしきは罰せよ。厳しいがこの世界の現実だ。
「かと言って、そのまま開放する事は難しかろう」
案に処刑は免れないと父は言っている。
「はい。陛下。その事で1つ私に提案がございます」
「良いだろう。申して見よ」
父も少女を処刑するのは、さすがに良い気がしないようで、私の話を聞いてくれるみたいだ。
本当に感謝しろよ? あの人に汚名を着せようとしたクソアマめ。
「その少女の取調べと身柄を私にお任せ頂きたい」
「ほぅ。それはなぜじゃ?」
「我が国の魔法技術を発展させる為でございます」
ここからは、私の口八丁だけで戦わなければいけない。父を含めて、周りの貴族を納得させる事が出来なければ、少女は処刑されるだろう。
さすがに同郷の前世を持つ者だけあって、それだと目覚めが悪い。
「皆様もご存知の通り、私は王位継承権を持っておりますが、野心はございません。それを示す為に、側近も貴族家との繋がりも持たぬようにして参りました」
そう、私には傍付きの侍女すらいない。完全に権力のない第2王子様として振舞っている。
「その分、魔法に関して力を注ぐ事が出来て、魔法の天才などと言われておりますが、最近は1人で魔法の研究をするのに限界を感じておりました」
何を隠そう! いや、別に隠す事でもなく、異世界転生して、一番興味を持ったのが魔法だった。たぶん、異世界転生者の殆どが興味を持つだろう。そのおかげで、自称ではなく、本当にこの世界における魔法の天才の名をほしいままにしている。
そして、その事を理由に普段は魔法研究馬鹿を装っているというのが、私の第2王子としての仮の姿だ。
「うむ。少女が何の権力も持たない魔力を持つ者だから、手伝いに丁度良いという訳だな」
「はい。陛下」
一応、それっぽい理由を述べたが、まだ処刑する者を助命する理由に足りていないのは会場の雰囲気で分かる。
「私は魔法の発展には好奇心こそが最重要と考えておりますので、このような行動を取った少女の好奇心に興味が湧きました」
ついでに、私の婚約者候補はご令嬢のような方々に興味はないと言っておいた。これで私への令嬢たちのアピールも減るだろう。うん。良い事だ。
魔法一筋の馬鹿ですよというアピールも兼ねて、なかなか良い言い訳が出来ていると思う。
「少女を追跡した際にも、薔薇の香りのする庭園の近くでの少女とのやり取りに感銘を覚えまして、是非この少女を私の助手にしたいと思った次第です」
実際に起こったやり取りは、ただのエロトークにしか聞こえないが、あの場にいたものたちは兵たちには内容を口止めしてあるし、隠し通路の周りにいた者たちはある事情でその事を口外する事は出来ない。
あの場所は、薔薇の咲き誇る庭園で、大人たちにとっては暗黙の了解の場所であった。
平たく言えば「逢引場」だ。
私の発言は一見すると、王子である私の我侭を言っているように聞こえるが………。
「おぅおぅ。心当たりのある方々。浮気はいけないぜ? こっちはちゃんとお前達の事を知っているんだよ?」というハッタリというのが、この発言の裏の意味で、私と少女の叫んだやり取りをしても、近づいてくるのではなく、遠ざかっていったのは浮気の密会現場だったという証拠だ。
現に私が薔薇の香りと口にした事で、8人の男女が視線を逸らしていた………。
おいおい、この国のお家事情は本当に大丈夫か?
そう思える程に、視線を逸らした8人はいずれも………ごにょごにょなお方たちだった。
「うむ。さすがに私も何もしていない少女を処刑するのは忍びない」
私の「浮気現場を目撃しちゃったよ」発言の有効性を理解してくれた父が、私をフォローしてくれる。
先ほど、視線を逸らした方々は、かなりの有力者だ。えぇ、それはもうお家事情がドロドロの!
「滅多に我侭を言わなかった息子の気持ちに応えてやりたい父としての気持ちもある。どうだろう? 諸君」
王族としての振る舞いより魔法研究に没頭する息子を我侭と言わない当たり、相当に意地悪である。
父は、「今日は何も起こらなかった」という事を言うついでに、王家に文句があるか?とも言っているように聞こえなくも無い。
まあ、その「何も」には当然、誰かの浮気についても入っているので文句を言える人はいないだろう。
例え、その事実に気付いた人たちがいてもだ………。
有力者と王族を同時に敵に回したい人なんて極少数だ。
そして、本来であれば、反対しなくてはいけない有力貴族たちが揃って沈黙をした事で、何とか少女の助命は何とかなったような雰囲気になる。
王家としても、失態をなかった事にして、関係ない貴族たちからの責任追求は浮気していたであろう方々へと向けられる。
子供の侵入騒ぎなどよりも、浮気の口止めの方が、後々有益なのだから、他に黙っている貴族たちも、中々に損得勘定が上手いようだ。
「うむ。誰も異論はなさそうだな。この件は第2王子ロレンツァへ預ける事とする。危険がないように十分に注意せよ」
「ありがとうございます。陛下」
最終的に、父より浮気現場の事を口止めをしっかりするように釘を刺された事で、表向きはこれで解決だ。浮気現場なんて実際に見ていないんだけどね。
王家特有の………いや、権力のある者たち特有の面倒事はこれからも多少はあるのだが、それ以上に心あたりのある面倒事を回避する為にも、気が抜けない状況が続くだろう。
………それにしても王子様に転生しても、ロマンなんて全くないな。
ただ、中止となったのは、同年代が集う子供達だけのパーティーのみで。
パーティ参加者の兄の婚約者候補や側近候補などのご子息、ご令嬢の保護者たちがいるパーティー会場は警備が強化されたものの、夜会のような雰囲気でその催しは続けられていた。
簡単に言うと、大人たちのパーティーは中止にはならなかったようだ。
そして、その大人たちのパーティーに父であるこの国の陛下がいる。うん。堅苦しい空気を好まない父らしく、普通にパーティーを楽しんでいたようだ。
ぶっちゃけ王族って本当の意味でパーティーは楽しめないんだけどね。
「ここは謁見の間ではない。楽にして構わぬ」
兵を通して、先に父には状況は報告されていた為か、特に大事になっている様子もなく、私と兄からの報告を受ける時点でも、父は毅然とした態度を崩さずにいた。
まあ、子供が紛れ込んできただけの騒ぎなので、現場となった場所以外は中止をする理由はないか………。
「はい! 王太子殿下主催のパーティー会場の庭に、子供の侵入者が紛れ込みました」
とりあえず、一番大事な報告を私の口から伝える。
本来であれば、主催者の兄が報告するのが筋だが、侵入者を捕らえたのが私という事で役目を譲ってもらった。
じゃないと、上手く問題を解決する方向に誘導できないからである。
「進入経路は、どうやら私たちも知らない子供用の隠し通路を通って進入した様子で、実際に少し通路を覗いてみた限り、今回の事が起こるまで利用された形跡はございませんでした。詳しくは調査中です」
とりあえず、一番重要な王城への進入路について報告する。
「うむ。続けよ」
「はい! 続いて、進入してきた子供ですが、城下町の井戸に落ちて、その先に登ろうとした際に横穴を見つけて、そこが王城へ通じていたとの事です」
「そうか、その井戸以外にも同じような場所がないか確認する必要がありそうだな」
長い歴史を持つ王城だから、隠し通路の1つや2つは伝え忘れがあるのだろう………って事だ。まったく面倒な限りだ。
「そして、進入した子供ですが、なにやら聞いた事のない言葉を話し、少量の魔力を感知した為、とっさに取り押さえる事にし、現在は口を塞いだまま拘束中でございます」
「その者は危険なのか?」
「いえ、魔力は確かにございましたが、私自身が追跡して捕縛した際は一度も魔法を使う事はございませんでした」
聞き出さないといけない事があるので、処刑されないように手を打つ。
………例え、子供であったとしても、王城に侵入したら死罪は免れない。隠し通路を通っている間に何を聞いたのかを私たちに知る術がないからだ。
まあ、疑わしきは罰せよ。厳しいがこの世界の現実だ。
「かと言って、そのまま開放する事は難しかろう」
案に処刑は免れないと父は言っている。
「はい。陛下。その事で1つ私に提案がございます」
「良いだろう。申して見よ」
父も少女を処刑するのは、さすがに良い気がしないようで、私の話を聞いてくれるみたいだ。
本当に感謝しろよ? あの人に汚名を着せようとしたクソアマめ。
「その少女の取調べと身柄を私にお任せ頂きたい」
「ほぅ。それはなぜじゃ?」
「我が国の魔法技術を発展させる為でございます」
ここからは、私の口八丁だけで戦わなければいけない。父を含めて、周りの貴族を納得させる事が出来なければ、少女は処刑されるだろう。
さすがに同郷の前世を持つ者だけあって、それだと目覚めが悪い。
「皆様もご存知の通り、私は王位継承権を持っておりますが、野心はございません。それを示す為に、側近も貴族家との繋がりも持たぬようにして参りました」
そう、私には傍付きの侍女すらいない。完全に権力のない第2王子様として振舞っている。
「その分、魔法に関して力を注ぐ事が出来て、魔法の天才などと言われておりますが、最近は1人で魔法の研究をするのに限界を感じておりました」
何を隠そう! いや、別に隠す事でもなく、異世界転生して、一番興味を持ったのが魔法だった。たぶん、異世界転生者の殆どが興味を持つだろう。そのおかげで、自称ではなく、本当にこの世界における魔法の天才の名をほしいままにしている。
そして、その事を理由に普段は魔法研究馬鹿を装っているというのが、私の第2王子としての仮の姿だ。
「うむ。少女が何の権力も持たない魔力を持つ者だから、手伝いに丁度良いという訳だな」
「はい。陛下」
一応、それっぽい理由を述べたが、まだ処刑する者を助命する理由に足りていないのは会場の雰囲気で分かる。
「私は魔法の発展には好奇心こそが最重要と考えておりますので、このような行動を取った少女の好奇心に興味が湧きました」
ついでに、私の婚約者候補はご令嬢のような方々に興味はないと言っておいた。これで私への令嬢たちのアピールも減るだろう。うん。良い事だ。
魔法一筋の馬鹿ですよというアピールも兼ねて、なかなか良い言い訳が出来ていると思う。
「少女を追跡した際にも、薔薇の香りのする庭園の近くでの少女とのやり取りに感銘を覚えまして、是非この少女を私の助手にしたいと思った次第です」
実際に起こったやり取りは、ただのエロトークにしか聞こえないが、あの場にいたものたちは兵たちには内容を口止めしてあるし、隠し通路の周りにいた者たちはある事情でその事を口外する事は出来ない。
あの場所は、薔薇の咲き誇る庭園で、大人たちにとっては暗黙の了解の場所であった。
平たく言えば「逢引場」だ。
私の発言は一見すると、王子である私の我侭を言っているように聞こえるが………。
「おぅおぅ。心当たりのある方々。浮気はいけないぜ? こっちはちゃんとお前達の事を知っているんだよ?」というハッタリというのが、この発言の裏の意味で、私と少女の叫んだやり取りをしても、近づいてくるのではなく、遠ざかっていったのは浮気の密会現場だったという証拠だ。
現に私が薔薇の香りと口にした事で、8人の男女が視線を逸らしていた………。
おいおい、この国のお家事情は本当に大丈夫か?
そう思える程に、視線を逸らした8人はいずれも………ごにょごにょなお方たちだった。
「うむ。さすがに私も何もしていない少女を処刑するのは忍びない」
私の「浮気現場を目撃しちゃったよ」発言の有効性を理解してくれた父が、私をフォローしてくれる。
先ほど、視線を逸らした方々は、かなりの有力者だ。えぇ、それはもうお家事情がドロドロの!
「滅多に我侭を言わなかった息子の気持ちに応えてやりたい父としての気持ちもある。どうだろう? 諸君」
王族としての振る舞いより魔法研究に没頭する息子を我侭と言わない当たり、相当に意地悪である。
父は、「今日は何も起こらなかった」という事を言うついでに、王家に文句があるか?とも言っているように聞こえなくも無い。
まあ、その「何も」には当然、誰かの浮気についても入っているので文句を言える人はいないだろう。
例え、その事実に気付いた人たちがいてもだ………。
有力者と王族を同時に敵に回したい人なんて極少数だ。
そして、本来であれば、反対しなくてはいけない有力貴族たちが揃って沈黙をした事で、何とか少女の助命は何とかなったような雰囲気になる。
王家としても、失態をなかった事にして、関係ない貴族たちからの責任追求は浮気していたであろう方々へと向けられる。
子供の侵入騒ぎなどよりも、浮気の口止めの方が、後々有益なのだから、他に黙っている貴族たちも、中々に損得勘定が上手いようだ。
「うむ。誰も異論はなさそうだな。この件は第2王子ロレンツァへ預ける事とする。危険がないように十分に注意せよ」
「ありがとうございます。陛下」
最終的に、父より浮気現場の事を口止めをしっかりするように釘を刺された事で、表向きはこれで解決だ。浮気現場なんて実際に見ていないんだけどね。
王家特有の………いや、権力のある者たち特有の面倒事はこれからも多少はあるのだが、それ以上に心あたりのある面倒事を回避する為にも、気が抜けない状況が続くだろう。
………それにしても王子様に転生しても、ロマンなんて全くないな。
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