標識上のユートピア

さとう

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二章

三十一話

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    目覚めてまず目に入ったのは、清々しいまでに青い空だった。
北欧のコテージにワープしたのかと錯覚しかけて、自分がただの家出少年であるのを思い出した。
学校はどうしようか。カバンがあるから行けないこともない。金もある。
仕方がない。一応行こうか。
深層意識では、まだ板垣のことが気になっていたのかもしれない。 
カバンを手にして、俺はふらふらと歩き出した。

 
 
 
 昨晩はずっと近所にいたので、クラスの誰かに見られていないか心配だった。
しかし、そのことに関しては誰にも言われずじまいだった。
そして、案の定板垣は来なかった。あのあと彼女はどこに行ったのだろうか。家庭的な問題もありそうだ。もしかして、今日板垣が来ないのは俺のせい?
色々な思考が複雑に絡み合う。
みんなは板垣のことを気にする素振りを見せない。彼女はクラスでも孤立していた。毎朝挨拶してたのも俺だけだ。隣席がぱっかりと空白になり、しっくりこない気分を味わっているのも俺だけだろう。 
その日は結局、授業に身が入らなかった。
放課後には部活がある。授業同様に集中できないのは避けたいものだ。
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