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第五章 弟子
第124話 簡単だろ
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「さて。メンツもそろったし、そろそろ本題だな」
ニヤケ顔を浮かべる四人を背に、男性はそう切り出しました。僕を見つめる金色の瞳がギラリと光ります。
「ちょっと、お前さんに頼みがあるんだ」
「頼み?」
「ああ。それに成功すれば、お前を無傷で解放してやる。失敗したり、逃げ出したりしたら……言わなくても分かるよな」
その言葉に、僕の心臓が早鐘を打ち始めます。一体何をされてしまうのか。僕には容易に想像がつきました。
といっても、男性の言う頼みが、ろくでもないことであるのは明白です。何しろ、男性とその仲間たちは、師匠に復讐しようとしているのですから。
「頼みって……何ですか?」
ほんの少し語勢を強めながら尋ねる僕。悲しいかな、それが、僕にできる唯一の抵抗でした。
ですが、そんな僕の気持ちを男性は理解しているのでしょう。全く動揺するそぶりを見せず、こう告げました。
「なに。そこまで深く考えなくてもいい。あいつを刃物で刺すだけさ。簡単だろ」
「……………………は?」
「要するに、あいつを殺せってこと。まあ、失敗した時のために、お前には爆弾か何かを持ってもらうことになるだろうが。成功すれば、お前が死ぬことはないさ」
思わず唾を飲み込む僕。先ほど以上に速度を増す心臓の鼓動。背筋をつたう冷や汗。
師匠を殺す? そんなの、できるわけがない。でも、失敗すれば、僕が……。
「ち、ちなみに、それを断ったら……」
「ん。そうだな。それなら、お前は用済みだから殺して……。いや、人質としては使えるか……。なあ、お前ら、どう思う?」
男性は、後ろを振り返り、四人組にそう問いかけました。
「俺は殺してもいいと思うんだがな」
「うーん。人質として生かしといたほうがいいんじゃないか?」
「俺も生かしておくのに賛成だ。あの野郎とやり合う時、こいつを盾にすれば都合がよさそうだ」
「といっても、断った罰くらいは与えるべきだよな」
「ふむ。両手と両足の骨くらいは折っとくか?」
繰り広げられる話し合い。それがどう転んだとしても、僕にとっていい結果にならないことは明白でした。
ニヤケ顔を浮かべる四人を背に、男性はそう切り出しました。僕を見つめる金色の瞳がギラリと光ります。
「ちょっと、お前さんに頼みがあるんだ」
「頼み?」
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その言葉に、僕の心臓が早鐘を打ち始めます。一体何をされてしまうのか。僕には容易に想像がつきました。
といっても、男性の言う頼みが、ろくでもないことであるのは明白です。何しろ、男性とその仲間たちは、師匠に復讐しようとしているのですから。
「頼みって……何ですか?」
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ですが、そんな僕の気持ちを男性は理解しているのでしょう。全く動揺するそぶりを見せず、こう告げました。
「なに。そこまで深く考えなくてもいい。あいつを刃物で刺すだけさ。簡単だろ」
「……………………は?」
「要するに、あいつを殺せってこと。まあ、失敗した時のために、お前には爆弾か何かを持ってもらうことになるだろうが。成功すれば、お前が死ぬことはないさ」
思わず唾を飲み込む僕。先ほど以上に速度を増す心臓の鼓動。背筋をつたう冷や汗。
師匠を殺す? そんなの、できるわけがない。でも、失敗すれば、僕が……。
「ち、ちなみに、それを断ったら……」
「ん。そうだな。それなら、お前は用済みだから殺して……。いや、人質としては使えるか……。なあ、お前ら、どう思う?」
男性は、後ろを振り返り、四人組にそう問いかけました。
「俺は殺してもいいと思うんだがな」
「うーん。人質として生かしといたほうがいいんじゃないか?」
「俺も生かしておくのに賛成だ。あの野郎とやり合う時、こいつを盾にすれば都合がよさそうだ」
「といっても、断った罰くらいは与えるべきだよな」
「ふむ。両手と両足の骨くらいは折っとくか?」
繰り広げられる話し合い。それがどう転んだとしても、僕にとっていい結果にならないことは明白でした。
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