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第五章 弟子

第123話 どうして今更……

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「で、でも、あなたの復讐はもう終わってるんですよね。じゃあ、どうして今更……」

 僕は、心の中に次々と沸き上がり続ける黒い何かを抑えながら、男性に向かって質問しました。今までの話を聞く限り、男性は師匠に対しての復讐を終えているはずです。それなのになぜ、師匠に再度の復讐をしようとしているのでしょうか。

 僕の質問に、男性の目が、ほんの少し吊り上がりました。

「あいつがいなくなってからしばらくして、今度は俺や仲間たちが軍から追い出されたんだ。嘘の話で軍の士気を下げたって言われてな。せっかく戦争で稼いだ金も全額没収。きっと、あのクソ野郎が、仕返しで俺たちのことを上の人間に告げ口しやがったんだ。だから、もう一回復讐してやるのさ。今度は、前よりももっと残虐にな」

 荒々しくなる男性の口調。もう、この様子では、話し合いでどうにかなるとは思えません。

 …………って、あれ? 師匠が……告げ口?

 男性の話に、ほんの少し違和感を感じる僕。師匠と僕は、長い付き合いがあるわけではありません。ですが、師匠がどういった人であるかは、弟子として把握しているつもりです。そして少なくとも、僕の知る師匠は、他人の不幸を望んで告げ口をするような人ではありません。絶対に。そう、絶対に。

「えっと……」

 僕が男性に声をかけようとしたその時でした。

 ガラガラガラ。

 大きな音とともに一瞬だけ明るくなる倉庫の中。おそらく、倉庫の扉を開けて、誰かが入ってきたのでしょう。ガヤガヤとうるさい話し声。現れたのは、男四人組。

「おー。見張り、ご苦労さん。昼飯、食ってきたぜ」

「ほい。お前の分の昼飯」

「ん? そいつ、やっと起きたのか。結構眠ってたな。二時間くらいか?」

「すまん。やっぱり、もう少し軽い睡眠魔法を使っとけばよかったな。あの野郎の弟子って聞いてたから、張り切りすぎちまったよ」

 口々に言葉を放つ四人。僕を見下ろす彼らの顔には、気持ちの悪いニヤケ顔が浮かんでいました。
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