124 / 164
第五章 弟子
第123話 どうして今更……
しおりを挟む
「で、でも、あなたの復讐はもう終わってるんですよね。じゃあ、どうして今更……」
僕は、心の中に次々と沸き上がり続ける黒い何かを抑えながら、男性に向かって質問しました。今までの話を聞く限り、男性は師匠に対しての復讐を終えているはずです。それなのになぜ、師匠に再度の復讐をしようとしているのでしょうか。
僕の質問に、男性の目が、ほんの少し吊り上がりました。
「あいつがいなくなってからしばらくして、今度は俺や仲間たちが軍から追い出されたんだ。嘘の話で軍の士気を下げたって言われてな。せっかく戦争で稼いだ金も全額没収。きっと、あのクソ野郎が、仕返しで俺たちのことを上の人間に告げ口しやがったんだ。だから、もう一回復讐してやるのさ。今度は、前よりももっと残虐にな」
荒々しくなる男性の口調。もう、この様子では、話し合いでどうにかなるとは思えません。
…………って、あれ? 師匠が……告げ口?
男性の話に、ほんの少し違和感を感じる僕。師匠と僕は、長い付き合いがあるわけではありません。ですが、師匠がどういった人であるかは、弟子として把握しているつもりです。そして少なくとも、僕の知る師匠は、他人の不幸を望んで告げ口をするような人ではありません。絶対に。そう、絶対に。
「えっと……」
僕が男性に声をかけようとしたその時でした。
ガラガラガラ。
大きな音とともに一瞬だけ明るくなる倉庫の中。おそらく、倉庫の扉を開けて、誰かが入ってきたのでしょう。ガヤガヤとうるさい話し声。現れたのは、男四人組。
「おー。見張り、ご苦労さん。昼飯、食ってきたぜ」
「ほい。お前の分の昼飯」
「ん? そいつ、やっと起きたのか。結構眠ってたな。二時間くらいか?」
「すまん。やっぱり、もう少し軽い睡眠魔法を使っとけばよかったな。あの野郎の弟子って聞いてたから、張り切りすぎちまったよ」
口々に言葉を放つ四人。僕を見下ろす彼らの顔には、気持ちの悪いニヤケ顔が浮かんでいました。
僕は、心の中に次々と沸き上がり続ける黒い何かを抑えながら、男性に向かって質問しました。今までの話を聞く限り、男性は師匠に対しての復讐を終えているはずです。それなのになぜ、師匠に再度の復讐をしようとしているのでしょうか。
僕の質問に、男性の目が、ほんの少し吊り上がりました。
「あいつがいなくなってからしばらくして、今度は俺や仲間たちが軍から追い出されたんだ。嘘の話で軍の士気を下げたって言われてな。せっかく戦争で稼いだ金も全額没収。きっと、あのクソ野郎が、仕返しで俺たちのことを上の人間に告げ口しやがったんだ。だから、もう一回復讐してやるのさ。今度は、前よりももっと残虐にな」
荒々しくなる男性の口調。もう、この様子では、話し合いでどうにかなるとは思えません。
…………って、あれ? 師匠が……告げ口?
男性の話に、ほんの少し違和感を感じる僕。師匠と僕は、長い付き合いがあるわけではありません。ですが、師匠がどういった人であるかは、弟子として把握しているつもりです。そして少なくとも、僕の知る師匠は、他人の不幸を望んで告げ口をするような人ではありません。絶対に。そう、絶対に。
「えっと……」
僕が男性に声をかけようとしたその時でした。
ガラガラガラ。
大きな音とともに一瞬だけ明るくなる倉庫の中。おそらく、倉庫の扉を開けて、誰かが入ってきたのでしょう。ガヤガヤとうるさい話し声。現れたのは、男四人組。
「おー。見張り、ご苦労さん。昼飯、食ってきたぜ」
「ほい。お前の分の昼飯」
「ん? そいつ、やっと起きたのか。結構眠ってたな。二時間くらいか?」
「すまん。やっぱり、もう少し軽い睡眠魔法を使っとけばよかったな。あの野郎の弟子って聞いてたから、張り切りすぎちまったよ」
口々に言葉を放つ四人。僕を見下ろす彼らの顔には、気持ちの悪いニヤケ顔が浮かんでいました。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
ぼくとぼくたち
ちみあくた
児童書・童話
大好きなおばあちゃんが急な病気で亡くなり、明くんへ残してくれたもの。
それは、山奥で代々守られてきたという不思議な鏡でした。
特別なおまじないをし、角度を付けて覗くと、鏡の中には「覗いた人」の、少しだけ違う姿が映し出されます。
人生の様々な場面で、「覗いた人」が現実とは違う選択をし、違う生き方をした場合の姿を見ることが出来るのです。
おばあちゃんは、鏡の中にいる自分と話したり、会ったりしてはいけない、と言い残していました。
でも、ある日、その言いつけを破ってしまった事から、明くんは取り返しのつかないトラブルへ巻き込まれてしまうのです……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
林間学校に待ち受ける異次元のワナ
Ryo
児童書・童話
今日は待ちに待った林間学校の日。
小学三年生のマサキは仲良し五人組で行動班を作り、バスに乗り込んで山中湖へと出発した。
けれどもその途中、深い山の中でバスが立ち往生してしまい……そこから何かが少しずつおかしくなり始めた。
君にキュンして恋をした
今宵恋世
児童書・童話
片瀬乃愛は
「”キュン”は少女漫画だけで十分!」
と思っている少女漫画大好き中学1年生。
ある日。
クラスメイトの超絶イケメン 松村綾斗も
同じ少女漫画を読んでいる事が判明!
しかも…松村は、
漫画のヒーロー・茶ノ宮くんにそっくりで…!?
そして…松村の方も、
乃愛を漫画のヒロイン・リズムちゃんに
そっくりだ!と思っていて…!?
2人の”恋”に…
───”キュン”が止まらない────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる