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第三章 旅の魔女

第76話 うがあああああ!

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「うう」

 その時、突然聞こえるうめき声。見ると、そこには、下を向いて体をブルブルと震わせる旅人さん。何だか、似たような光景を一時間くらい前にも見たような。

「た、旅人さん?」

「ううう」

「大丈夫ですか? まだ痛いところとか……」

「ううううう」

 僕の言葉に、旅人さんはうめき声で返します。

 どうすればいいか分からない僕。助けを求めるように、チラリと師匠の方に視線を向けます。すると、同じくこちらに視線を向けている師匠が目に映りました。

「えっと……」

 師匠は、困惑した表情でそう呟きます。どうやら、師匠もどうすればいいか分からないようです。完全に手詰まりですね。

 とりあえず、今は様子見を……。

 僕が、旅人さんに視線を戻した時でした。

「うがあああああ!」

 勢いよく椅子から立ち上がる旅人さん。左右の握り拳を天井に向かって突き上げ、叫び声をあげます。その声は、リビングの空気をビリビリと振動させました。

「ど、どうしたんですか!?」

「ど、どうしたの!?」

 僕と師匠の声が重なります。旅人さんの突然の変わり様に、僕たちは全くついていけません。

「…………よし!」

 何かを決心するように、旅人さんは力強くそう言いました。天井に突き上げていた両手を下ろし、ビシッと姿勢を正します。海を思わせる瑠璃色の瞳が、まっすぐに僕たちを捉えていました。
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