14 / 164
第一章 森の魔女
第13話 何だか照れちゃうね
しおりを挟む
翌日。朝食を食べた後、僕と師匠は湖へと向かいました。町の外れにあるそこは、僕たちの家からほうきを走らせて二十分ほど。いつも通り、三角帽子に変身した師匠は、僕の頭の上でのんびりとしています。
「師匠。僕、水質調査なんてやったことないんですが……」
「うーん。まあ、私もないけどさ。一応、魔法が関わっているなら何とかなるかもね」
「そうなんですか?」
「ふっふっふ。私を誰だと思ってるの? 森の魔女だよ」
きっと今、師匠はものすごいドヤ顔を浮かべているんでしょうね。
目的の場所に到着し、僕はほうきを降りました。その瞬間、頭の上が少し軽くなる感覚。横を見ると、両手を上にあげて伸びをする師匠の姿。
「うーん。疲れたー」
「疲れたって……師匠、何もしてないじゃないですか」
「何もしないっていうのも、結構疲れるものだよ」
「じゃあ、これからは自分のほうきに乗って移動してください」
「やだ!」
「ええ……」
そんな会話をしながら、僕たちは湖のすぐそばまで足を運びます。
足元には透き通った水。通常の湖であれば、何かしらの生き物が住んでいるものですが、この湖には生き物が全く住んでいません。聞いた話では、水の純度が高すぎるせいで、生き物を入れてもストレス過剰で死んでしまうんだとか。綺麗すぎる部屋に入った人がソワソワしてしまうのと同じ原理なのでしょうか。
「そういえば、ここの水ってどうしてこんなに綺麗なんですか?」
「この湖は人工的に作られたものなんだよ。魔法薬の材料にするためにね。周りの木から出る魔力を触媒にして、水を浄化するように魔法がかけられてるんだ」
「木の魔力?」
僕は、湖の周りを見渡しました。
湖から数メートル離れた所には、湖を取り囲むように何本もの木が植えられています。木の向こう側は何もないただの平地。配置だけ見れば、湖の周りにわざと木を生やしたように見えなくもありません。
「植物っていうのは、絶えず魔力を放出してるんだよ。呼吸みたいなものかな。まあ、魔力なんて実態があるものじゃないから、それを感じ取るのは無理だけど」
この時、僕は素直に感心していました。僕の質問に、師匠は迷うそぶりも見せず、すぐさま答えてくれたのです。だからでしょう。こんな言葉が、僕の口から漏れてしまったのは。
「師匠はやっぱりすごいですね」
「……え?」
僕の言葉に、目を丸くする師匠。そんな師匠を見て、僕はハッとしました。このままでは、師匠は調子に乗ってしまうに違いありません。そして、「もっと言ってくれていいんだよ」とでも言いながらしつこく絡んできて……。
「……エへへ。弟子君にそう言ってもらえると、何だか照れちゃうね」
ですが、僕の予想に反して、師匠は照れたように顔を赤らめていました。少しだけうつむきながら、チラチラとこちらを見る師匠。その口元は、フニャリと緩み切っています。
「し、師匠? どうしたんですか?」
「エへへへへ」
この調子は、しばらくの間続くのでした。
師匠なら、「すごい」なんて言葉、たくさんの人から言われているはずなのに……。
「師匠。僕、水質調査なんてやったことないんですが……」
「うーん。まあ、私もないけどさ。一応、魔法が関わっているなら何とかなるかもね」
「そうなんですか?」
「ふっふっふ。私を誰だと思ってるの? 森の魔女だよ」
きっと今、師匠はものすごいドヤ顔を浮かべているんでしょうね。
目的の場所に到着し、僕はほうきを降りました。その瞬間、頭の上が少し軽くなる感覚。横を見ると、両手を上にあげて伸びをする師匠の姿。
「うーん。疲れたー」
「疲れたって……師匠、何もしてないじゃないですか」
「何もしないっていうのも、結構疲れるものだよ」
「じゃあ、これからは自分のほうきに乗って移動してください」
「やだ!」
「ええ……」
そんな会話をしながら、僕たちは湖のすぐそばまで足を運びます。
足元には透き通った水。通常の湖であれば、何かしらの生き物が住んでいるものですが、この湖には生き物が全く住んでいません。聞いた話では、水の純度が高すぎるせいで、生き物を入れてもストレス過剰で死んでしまうんだとか。綺麗すぎる部屋に入った人がソワソワしてしまうのと同じ原理なのでしょうか。
「そういえば、ここの水ってどうしてこんなに綺麗なんですか?」
「この湖は人工的に作られたものなんだよ。魔法薬の材料にするためにね。周りの木から出る魔力を触媒にして、水を浄化するように魔法がかけられてるんだ」
「木の魔力?」
僕は、湖の周りを見渡しました。
湖から数メートル離れた所には、湖を取り囲むように何本もの木が植えられています。木の向こう側は何もないただの平地。配置だけ見れば、湖の周りにわざと木を生やしたように見えなくもありません。
「植物っていうのは、絶えず魔力を放出してるんだよ。呼吸みたいなものかな。まあ、魔力なんて実態があるものじゃないから、それを感じ取るのは無理だけど」
この時、僕は素直に感心していました。僕の質問に、師匠は迷うそぶりも見せず、すぐさま答えてくれたのです。だからでしょう。こんな言葉が、僕の口から漏れてしまったのは。
「師匠はやっぱりすごいですね」
「……え?」
僕の言葉に、目を丸くする師匠。そんな師匠を見て、僕はハッとしました。このままでは、師匠は調子に乗ってしまうに違いありません。そして、「もっと言ってくれていいんだよ」とでも言いながらしつこく絡んできて……。
「……エへへ。弟子君にそう言ってもらえると、何だか照れちゃうね」
ですが、僕の予想に反して、師匠は照れたように顔を赤らめていました。少しだけうつむきながら、チラチラとこちらを見る師匠。その口元は、フニャリと緩み切っています。
「し、師匠? どうしたんですか?」
「エへへへへ」
この調子は、しばらくの間続くのでした。
師匠なら、「すごい」なんて言葉、たくさんの人から言われているはずなのに……。
0
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる