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第一章 森の魔女

第10話 湖の水質調査……ですか?

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「湖の水質調査……ですか?」

「そうです」

 大きく頷く町長さん。その表情は、真剣そのものでした。

「何だか変な依頼ですね。てっきり魔法関係かと……」

 僕の口から、思わずそんな言葉が漏れてしまいました。ですが、無理もないでしょう。これまで、師匠のところに来る依頼は、その全てが魔法関係だったのですから。水質調査なら、魔法を扱わない一般の業者でも行うことができます。それなのに……。

「お弟子様が疑問に思われるのも当然です。ですが、この依頼は、魔法が関わっているかもしれないのです」

「……どういうことですか?」

 首を傾げる僕。町長さんは、そんな僕を見てゆっくりと説明を始めました。

「我が町では、魔法薬を作る際、町外れの湖から汲んだ水を使用しています。湖の水は、不純物がとても少なく、魔法薬を作るのに最適なのです」

「知ってます。以前、僕が魔法薬を作ったときにも、湖から汲んだ水を使いましたし。いいですよね、あの水」

「ありがとうございます。ですが最近、湖の水を使うと、ことごとく魔法薬作りに失敗してしまうのです。一度や二度そういったことが起こったとしても、作り手が悪かったのだろうで話は終わります。ですが、それが何十回となると……」

 どうやら、事態はかなり深刻なようです。話をする町長さんの顔には、はっきりと影が差していました。

「何か特別な魔法薬を作り始めた……とか?」

「いえ。作っているのは、これまでと全く変わらないものです。だからこそ、いきなりこんなに失敗が続くなんてことは……」

「要するに、あれかな?」

 突然、横で黙って話を聞いていた師匠が口を開きました。

「町長は、こう考えてるんだね。湖の水に何か細工をされたんじゃないかって。それも、通常の水質調査では原因が分からない魔法を使って」

「…………はい」

 師匠の言葉に、町長さんは、力なく返事をするのでした。
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