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第二章

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 端整な顔が近付いてきて、アシュリーは目を閉じる。くちびるが重なると、そこから新たな熱が生まれた。
 ヴィルヘルムが自身の着ているものに手を掛ける、衣擦れの音が室内に響く。

「ふ……ぁあ」

 足を広げられ、濡れそぼったアシュリーの割れ目に熱いものが押し当てられた。
 ゆっくりと、それ──ヴィルヘルムの雄芯は割れ目を上下に擦ってくる。

「あ……あぁ、やぁ……っ」

 溢れた蜜をまぶすように擦られ、時折花芽を突かれると、アシュリーはびくびくと腰を震わせる。
 何度か割れ目を往復させるとヴィルヘルムは蜜口に雄芯を触れさせ、そして愛液を零す蜜口に、先端をのめり込ませた。

「は……あ……ぁ……っいっ」

 慣らされたとは言え、指よりも遥かに圧迫感のあるものが未通だった場所を押し広げていく。その痛みに、アシュリーは悲鳴を上げた。
 熱くて、苦しい。半分に裂けてしまうんじゃないかと思う痛みが襲ってくる。

「っぁ、あ……」

 閉じていた瞳が自然と見開かれ、涙が溢れてシーツを濡らす。開いた瞳は覆い被さっているヴィルヘルムに向き、そこで目にしたのは、苦しそうに息を吐き出す彼の姿だった。
 ぽとり、とヴィルヘルムの肌を伝って、汗が落ちる。

「……っすまない」

 苦しげな表情で、それでも申し訳なさそうに顔を歪めたヴィルヘルムが口にしたのは、謝罪の言葉だった。
 苦しいのは、アシュリーだけではない。ヴィルヘルムだって苦しいはずだ。
 一度は解けてしまった腕を、ヴィルヘルムの首元にそっと伸ばす。そして、アシュリーは自分からくちびるを寄せた。
 ──この人が、愛おしい。

「ぁ、は……ぁ……ヴィル、ヘルム、さま……」
「……っあまり可愛いことを、するな」
「ぇ……ひぁあ……っ!」

 無防備な花芽を摘まれて、アシュリーの背中がびくんとしなった。力が抜けたその隙に、ヴィルヘルムの雄芯は隘路へと侵入していく。
 アシュリーを気遣いながらヴィルヘルムはゆっくりと行為を進めてくれた。力を抜かせるために優しく体に触れて愛撫し、宥めるように口付けられる。
 それでも痛みや苦しみが完全になくなるわけではなかったが、それ以上にヴィルヘルムのその優しさがアシュリーには嬉しかった。
 雄芯が全て収まると、お互いの腰がぴったりと重なり、すぐ間近にヴィルヘルムの体温や匂いを感じてしまい、アシュリーの胸が高鳴る。

「ヴィ、ルヘルム、さま、ぁ……んんッ」

 名前を呼ぶと、口を塞がれた。唾液の絡まる音が気持ちを昂らせる。
 くちびるが離れると、涙でぼやけた視界に何か言いたげなヴィルヘルムの姿が映った。口を開こうとして、そして何も言わず閉ざしてしまう。

「今、何を……」
「何でもない。……あなたが気にするようなことじゃない」
「……っ」

 そう返されてしまうと、アシュリーは何も言えなくなってしまう。思わずくちびるを噛んで目を伏せると、何かに気付いたようなヴィルヘルムが、小さな声で謝ってきた。

「すまない、突き放した言い方を、し過ぎた。俺の気持ちの問題なだけで、あなたに非はない。……今はまだ言えないが、次会ったときには必ず伝える。それまで待って欲しい」

 叶う約束かはわからないけれど、その言葉はあまりに真っ直ぐで。

「は、い」

 アシュリーは小さく頷いていた。その返事に、ヴィルヘルムの表情が緩む。
 愛おしげに、優しく目尻に口付けが落とされる。

「必ず言うと、約束する」

 それはアシュリーへの約束とともに、ヴィルヘルム自身にも言い聞かせるような言葉だった。

「っはい」

 降ってくる触れるだけの口付けがくすぐったくて、痛みで強張っていたアシュリーの表情に、少しだけ笑みが浮かぶ。
 その表情を目にしたヴィルヘルムが一瞬固まり、眉根を寄せ、そして苦しげに息を吐き出した。

「──そろそろいいか」

 問い掛けられたその言葉が何を示しているのかわからないほど、アシュリーは無知ではない。
 それどころか、痛みが落ち着くまで待っていてくれたヴィルヘルムにとても苦しい思いをさせてしまっていたことにも気付いてしまった。
 こくこくと頷くと、微かに笑い声が耳に届いて。

「ひ、ん、ぅあ……っ」

 ヴィルヘルムが腰を引く。
 その途端に、引き攣ったような痛みが走った。
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