28 / 64
第二章
(16)※
しおりを挟む
胸を愛撫されながら、くちびるを塞がれる。口付けられて、触れ合った箇所から湿った音が響いた。
厭らしい水音が鼓膜から伝わり、体の熱がじわりじわりと上がっていく。
──もっとちゃんと、触って欲しい。
高められた体で、アシュリーがそう感じ始めるのは当たり前のことだった。
けれどヴィルヘルムの口付けは止まず、感じた言葉を口にすることはできない。
だから、アシュリーにできるのはそう願いながら自分からヴィルヘルムに口付け、舌を絡ませて誘惑することだけだった。
目を僅かに開くと、驚いたような顔をするヴィルヘルムの表情が見える。気付いてくれただろうか、と思った次の瞬間、触れ合っていたくちびるは離れ、ぬくもりも遠ざかっていった。
アシュリーが頭に疑問符を浮かべた次の瞬間、ヴィルヘルムはアシュリーのドレスの肩口に手をかけ、一気に引き下げた。残っているのは、久し振りに締め付けるように付けられたコルセットだけ。
それを目にして険しい顔をしたヴィルヘルムにアシュリーは不安になった。
──ヴィルヘルム様も、胸の大きいほうが好き……?
コルセットはドレスを着るときの淑女の嗜みだ。少しでも腰回りを細く、盛って胸を大きく見せて魅力的に見せるために付けられる。
もちろん外したあとの個人差はあるが、少なくとも今のアシュリーの胸元は作られたものだ。コルセットを外してしまえば、途端に元の慎ましやかな胸に戻ってしまう。
だからコルセットを外したら、ヴィルヘルムも自分に興味がなくなってしまうのではと不安になった。そう考え始めてしまうと、思考は悪い方へと向かうばかりだ。
だが、アシュリーの思考の進行を止めたのは、ヴィルヘルムからの予想外の言葉だった。
「……こんなに締め付けて、苦しくはないのか」
「え?」
「俺は、自然体のあなたのほうが好ましい。──外すが構わないだろうか?」
次いでそう、伺うように問いかけられる。
驚いたけれど、気付けばアシュリーは首を縦に振っていた。コルセットが外しやすいように体の位置を変えようとしたら、ヴィルヘルムの腕が伸びてきて、簡単にひっくり返されてしまう。
四つん這いになったアシュリーの腰をヴィルヘルムの大きな手のひらが掴む。もう片方の手で、背中に流れていた髪を掬われ、肩越しに前へと流された。
「ぁ……んん……っ」
露わになった首筋に、ヴィルヘルムが口付けてくる。びくりと体が揺れ、媚びるような吐息が溢れてしまい、アシュリーははっと口を押さえた。
乱されたドレスを剥ぎ取られ、締め付けていたコルセットの紐を解かれる。
締め付けがなくなり、やっと息ができると思ったのも束の間で、素肌の晒された背中に熱いくちびるが触れた。
ちゅ、ちゅ、と何度も優しいキスをされる。
くすぐったくて身動ぎをするけれど、ヴィルヘルムの手に腰をしっかりと掴まれていて動けない。
「ヴィ、ル、ヘルム……ぁ……さ、ま……っ」
名前を呼びながら、アシュリーはヴィルヘルムの様子を伺おうと、顔を背後に向けようとする。
「っひゃあ!」
何とかヴィルヘルムと視線が合う位置まで背後を振り向けたと思ったら、目が合った途端、腹部に腕が回り、一気に抱き寄せられた。
厭らしい水音が鼓膜から伝わり、体の熱がじわりじわりと上がっていく。
──もっとちゃんと、触って欲しい。
高められた体で、アシュリーがそう感じ始めるのは当たり前のことだった。
けれどヴィルヘルムの口付けは止まず、感じた言葉を口にすることはできない。
だから、アシュリーにできるのはそう願いながら自分からヴィルヘルムに口付け、舌を絡ませて誘惑することだけだった。
目を僅かに開くと、驚いたような顔をするヴィルヘルムの表情が見える。気付いてくれただろうか、と思った次の瞬間、触れ合っていたくちびるは離れ、ぬくもりも遠ざかっていった。
アシュリーが頭に疑問符を浮かべた次の瞬間、ヴィルヘルムはアシュリーのドレスの肩口に手をかけ、一気に引き下げた。残っているのは、久し振りに締め付けるように付けられたコルセットだけ。
それを目にして険しい顔をしたヴィルヘルムにアシュリーは不安になった。
──ヴィルヘルム様も、胸の大きいほうが好き……?
コルセットはドレスを着るときの淑女の嗜みだ。少しでも腰回りを細く、盛って胸を大きく見せて魅力的に見せるために付けられる。
もちろん外したあとの個人差はあるが、少なくとも今のアシュリーの胸元は作られたものだ。コルセットを外してしまえば、途端に元の慎ましやかな胸に戻ってしまう。
だからコルセットを外したら、ヴィルヘルムも自分に興味がなくなってしまうのではと不安になった。そう考え始めてしまうと、思考は悪い方へと向かうばかりだ。
だが、アシュリーの思考の進行を止めたのは、ヴィルヘルムからの予想外の言葉だった。
「……こんなに締め付けて、苦しくはないのか」
「え?」
「俺は、自然体のあなたのほうが好ましい。──外すが構わないだろうか?」
次いでそう、伺うように問いかけられる。
驚いたけれど、気付けばアシュリーは首を縦に振っていた。コルセットが外しやすいように体の位置を変えようとしたら、ヴィルヘルムの腕が伸びてきて、簡単にひっくり返されてしまう。
四つん這いになったアシュリーの腰をヴィルヘルムの大きな手のひらが掴む。もう片方の手で、背中に流れていた髪を掬われ、肩越しに前へと流された。
「ぁ……んん……っ」
露わになった首筋に、ヴィルヘルムが口付けてくる。びくりと体が揺れ、媚びるような吐息が溢れてしまい、アシュリーははっと口を押さえた。
乱されたドレスを剥ぎ取られ、締め付けていたコルセットの紐を解かれる。
締め付けがなくなり、やっと息ができると思ったのも束の間で、素肌の晒された背中に熱いくちびるが触れた。
ちゅ、ちゅ、と何度も優しいキスをされる。
くすぐったくて身動ぎをするけれど、ヴィルヘルムの手に腰をしっかりと掴まれていて動けない。
「ヴィ、ル、ヘルム……ぁ……さ、ま……っ」
名前を呼びながら、アシュリーはヴィルヘルムの様子を伺おうと、顔を背後に向けようとする。
「っひゃあ!」
何とかヴィルヘルムと視線が合う位置まで背後を振り向けたと思ったら、目が合った途端、腹部に腕が回り、一気に抱き寄せられた。
0
お気に入りに追加
3,410
あなたにおすすめの小説
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
【R18】副騎士団長のセフレは訳ありメイド~恋愛を諦めたら憧れの人に懇願されて絆されました~
とらやよい
恋愛
王宮メイドとして働くアルマは恋に仕事にと青春を謳歌し恋人の絶えない日々を送っていた…訳あって恋愛を諦めるまでは。
恋愛を諦めた彼女の唯一の喜びは、以前から憧れていた彼を見つめることだけだった。
名門侯爵家の次男で第一騎士団の副団長、エルガー・トルイユ。
見た目が理想そのものだった彼を眼福とばかりに密かに見つめるだけで十分幸せだったアルマだったが、ひょんなことから彼のピンチを救いアルマはチャンスを手にすることに。チャンスを掴むと彼女の生活は一変し、憧れの人と思わぬセフレ生活が始まった。
R18話には※をつけてあります。苦手な方はご注意ください。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」
「え、じゃあ結婚します!」
メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。
というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。
そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。
彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。
しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。
そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。
そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。
男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。
二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。
◆hotランキング 10位ありがとうございます……!
――
◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ
【R18】ヤンデレに囚われたお姫様
京佳
恋愛
攫われたヒロインが何処かおかしいイケメンのヤンデレにめちゃくちゃ可愛がられます。狂おしい程の彼の愛をヒロインはその身体に刻みつけられるのです。
一方的な愛あり
甘ラブ
ゆるゆる設定
※手直し修整しました
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる