【R18】恋情

貴水

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35.無理矢理

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 もうすぐ夏休みだというのに一行に梅雨明けする気配がなかった。

 今日も朝からしとしとと降り続く雨……

 最近の京子は、喋るのを忘れてしまったのかほとんどと言っていい程無言だった。

 明が毎日話題を振るが、言葉ではなく目と顔で相槌を打つ京子……

そんなやりとりが続くと決まって明は何とか声を出させようと躍起になり無駄な私語が増える。京子は初め明の話を聞いているが、いつの間にか二人で無言になっていることに気付くのだ。

「…………」

「…………」

「ごめんね……明……」

 京子には分かっていた。明が必死になって慰めようとしてくれている事……

 余計なことは言わずに、聞かずに、そっと近くにいてくれる事……

 それでもこの沈んだ気持ちを元気にする術をしらない自分にはどうすることも出来なかった。

 誰にもどうすることができないし、自分で解決する以外ないのだった。

 せめて一緒にいる相手に不快な気持ちを与えないようにすることが精いっぱいの相手への思いやりだと思った。

「明……暫く、別々に通学しよう……」

「な…に、言ってんだよ! ダメだ!」

「……だって」

「お前の考え何てお見通しだからな! 今まで通り一緒に登校する。それだけは変わらねーからな」

「…………」

 ……優しい明。

 いつも元気がない時、慰めてくれる人……

「…………」

「…………」

「……早く、梅雨明けるといいな。夏休みになったら、また皆で祭行こうぜ」

「……」

 京子は俯いていた。ただ、ぼーっと電車の窓から見える外の雨を眺めていた。

 明は居たたまれない気持ちを感じながら自分の無力さを痛感していた。














 放課後、雨が強まり外の部活動であるサッカー部もミーティング後中止になった。

 明は朝の様子も気になり京子と一緒に帰ろうと京子のクラスに向かった。

 既に鞄はなく、帰ったのかと思い京子の上履きを確認をしに下足箱へと足を運んだ。

「……靴あるじゃん。何処だ?」

 京子の行きそうな所を捜し歩く。

 

 

 2年生の教室。多教室を探し回った。

 まさかとは思ったが、誠との思い出の多い新校舎までも探したが一向に見つからない。

 ふと立ち止まり考えてみる。

(京子あいつの行きそうな所といったら、普通に考えて図書室……だよな。本好きだもんな……)

 もう一度、新校舎の図書室を調べた。

 そこにいたのは勉強をしている生徒数人だけだった。

「……もう一回、行ってみるか」

 既に見終わっている旧校舎の図書室に再度足を運ぶ。

「……京子」

 読んでも返事はない。人影もなかった。

 こちらの図書室は1年生の生徒が主に使用している所だ。

 新校舎の図書室に比べたら本も少なく古いせいか寂しい雰囲気を感じさせた。

 入り組んだ本棚の配置になっている図書室のため、部屋に入って探してみる。

「……京子?」

 誰もいない……そう思いかけた時だった。

 図書室の一番奥の一角に足を踏み入れた時だった、人の気配を感じる。

「?」

 本棚が四方に囲まれた空間スペースがあった。その出窓に京子は座っていた。

 初めて見る場所だった。

 こんな隠れた場所があったとは……

「……京子」

 ハッとしたかのように京子が振り返った。

「…………」

 一瞬驚いたのか、目を見開き、明を見つめた。

 数秒見つめた後、明だと自覚すると残念そうに俯き、ポロリポロリと涙を流した。

「!」

 何故、京子が涙を流すのか、明は戸惑いながらも原因は誠あいつ以外ないと思った。

「……誠あいつのこと考えていたのか?」

「…………」

 京子は涙を流すのみで返答しなかった。

「~~っ」 

 その様子を見た明は苛立つ衝動に駆られ、力強く一歩京子に近寄るとぐいと肩を掴んだ。

「もういい加減~~忘れろ!!!」

 ピクリと京子が反応する。

「忘れろ!!」

 京子が明を見つめる。

 瞬きもせずに涙を目元に溜め、真っ直ぐ明を見つめた。

 こんな風に反応を見せる京子はいつ以来だろうか。

 必死になって明を見つめ、嫌だ! と哀願するように左右に首を振る。

「馬鹿野郎!!!!」

「誠あいつはもういないんだぞ! お前を置いて行ったんだ! いい加減っ諦めろっ!!!!」

「~~~~ぅ~~ふぅ」

 ぼろりぼろりと一気に涙が溢れ出た。

「忘れるんだ!!」

「い…や! 嫌よ……出来ない。出来ないわ……好き、なの。好きなのよ!」

 必死に追い縋るかのように京子は涙目で明を見つめた。

「……」

そんな表情を見るのは初めてだった。

 ――そんなに誠あいつが好きか?

 ――そんなに誠あいつがいいのか?

「……~~っ~~何で、分かんねーんだよ」

「ううっ~~~~っ」

 涙は滝のように流れ京子の顔を崩す。

「ううっ~~っ~~く、るしい。苦しい……よ。明……っ」

 か細い震えた声だった。

『苦しい、苦しい――』と掠れた声で泣きながら言う京子……

どうすればいいのかなんて判らない。女の扱い何て知らない。それでもこうするほか思いつかなかった。

「~~~っ~」

 明は京子を抱き締めた。

「俺が忘れさせてやるっ!」

 突然だった。

 明は京子を床に押し倒したのだ。

「!」

「俺が誠あいつを忘れさせてやる」

 そう言って京子の唇に唇を重ねた。

「!」

 ぎこちない接吻だった。

 ただ唇と唇が触れただけの接吻。

「……あ、きら?」

 京子は驚きのあまり明を凝視する。

 涙は止まっていた。

 明は京子の目元の滴を愛おしそうに舐める。

「……明、どうしたの?」

 滴を舐めた明の舌は京子の唇へと戻って来た。

「んっ……ふ……」

 再び重なり開いた口に強引に舌が侵入する。

 ぎこちない舌の動きが相手は経験がないのだと訴えていた。

「明……?」

「……好きだ。お前が好きだ!」

 明は耳元で小さく囁いた。

「!」

 そのまま耳朶をチュウッと舐め愛撫する。

「……っ」

 京子は何がどうなってしまったんだ! と思考が回らなくなっていた。

 耳を愛撫していた舌が首筋へと移動する。

 ゾクリとした感覚が京子を襲った。

「明っ! やめて!」

 京子は明に止めてもらおうともがき始める。

 逆に明は京子の両の手首を掴み、あっという間に頭上に片手で抑え込んでしまった。

「明!」

「やめないよ。京子が何を言っても、やめない!」

 そこにはいつも優しくて自分の事よりも京子を優先する明とは違った、今まで見たことがない強い意志を通す男の明がいた。

「…………あ、きら?」

 プチプチと前ボタンを外す音。

 明が下着を剥がすと簡単に京子の前は露わになった。

「あ……!」

 外気に晒された胸はすぐに明の口と手によって温められた。

 ぬちゃりとした感触と摘まれた感触に体がすぐに反応した。

 京子はゴクリと生唾を飲む。

 明が本気だとやっと理解する。

「やめて、明……!」

 もがこうと抵抗を試みるが、明に両手首を抑え込まれてしまっているのでビクともしない。

「やめてよっ! 明!」

「やめない!」

 叫ぶと再び接吻で黙らせられた。

「……っ……」

「……ん」

 先程よりも舌の動きが滑らかになっている。

「………ふ…」

 あろうことか明は、京子を押さえつけ接吻しながら片方の胸を弄り始めた。

 さわさわと乳房を弄られる。頂を指先で捏ね繰らされた。

「……っ!」

 次第に乳首は立ち、むず痒い感覚が京子の中で起き始める。

「明! 正気に戻って!!」

 明は止めるどころか舌を使って乳首を刺激し始めた。

「……綺麗だ」

「や、やだっ!!! 誰か!!!!!」

 思いっきり大声で叫ぶ。

 けれど……今は放課後、もうほとんどの生徒が大雨のため帰宅しつつある。例え大声を張り上げようとも、誰もいないこの広い図書室で大声を張り上げたとしても誰にも聞こえはしないだろう。

 明は夢で見た通りに動いた。

「好きだ……京子。」

 愛を囁いて……

 優しく接吻して……

 唇、耳、首筋、胸……腹、そして……。

 滑るように京子の太腿に手を這わせた。

 内腿を触るとピクピクと震えているのがわかった。

「……っあ、きら……や、めて……お願い」

 強気の発言から少し弱々しく懇願し始めた。

 逆に明が煽られるとは京子は思いもしないで……

 下着の上からスーッと割れ目をなぞられる。

「っ……!」

「………………濡れてる」

 瞬間、京子は顔を背けた。

「……すごい、どろどろだ……」

 誠ではない男に触れられ愛液を溢れさせた自分に嫌悪感を抱いていた。

 ――恥ずかしい。自分はこんな女なのだろうか……?

 京子は目を閉じた。

 明は下着の中に手を入れ直接京子の性器に触れる。

 そして京子は花陰部を優しく、強く押され、弄られ、波が来るとあっという間に声は漏れた。

「……っ………あ…あああっ!!!!」

 びくびくと体が震える。

 ピクピクと足や腰や膣が痙攣し動けなくなった。

「…………」

 明は京子の下着を脱がすと夢の時のように獣のように京子の身体を舐めた。

 京子は抵抗した疲労と久しぶりの刺激の疲労で思うように力が入らなかった。

 半ばもうどうなってもいいという思いになっていたのだろう。

 明がベルトに手を掛ける。

 それさえも冷めた目で見ていた。

 抵抗しなくなった京子に明が口づけを交わす。

「好きだ……」

 明の告白も、ただ遠くで囁かれているようで頭に入ってはこなかった。

 次の瞬間、めりめりとした久しぶりの感触にびくっと体が反応した。

「あああっ!!!!」

「京子……きょう、こっ」

 切なげな明の表情……。

「くっ……」

「あっ……あ、ああ」

 オカシイ。オカシイ。オカシイ。

 感じるなんて。

 オカシイ。

「……っ!」

 自分の身体がぎゅうぎゅうと明のモノを締め付けているのが分かった。

 身体が喜んでいるのが分かった。

 ――自分の身体がオカシイ。どうして……感じるの?

 ――誠(あの人)を思い出してるの? 誠(あの人)を感じてるの?

「京子!!」

 当然の怒鳴り声だった。

 驚いて声の方、明の顔を見た。

「俺を見ろ!」

「お前を抱いてるのは俺だ! 俺を見ろよ! 誠あいつじゃない!」

「……」

 そうだ。明……

 今、私を抱いているのは明だ……

「…………あ、きら」

「そうだ……俺だ……俺を、俺を見てくれ……」

「………明…」

 不意に涙が流れた。

 ――何故だろう?




 ――ああ、誠(あの人)の声が聞こえる気がする。

『――……心はあげられないけど、身体ならいいよ。』

『――体は正直だよ』








 京子は目を閉じた。








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