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25.余韻
しおりを挟む――会いたい……。
ただ、その思いでこんなにも早く学校に来てしまった。
ここ2週間程、誠に会えていないのだ……。
いつもメールで連絡を待つだけ……。
自分からお願いしたことはない……。
(だって彼は忙しい人だから……。学校の生徒会長で、西園寺財閥の長男で……)
「はあ……はあっ」
息が上がってしまった。
1秒でも無駄にしたくなくて、早く誠に会いたくて……駅からずっと走って来た。
今は7時10分を回ったところ。
いつも彼は朝早く登校していると言っていた。朝の学校が好きだと、本を読んだり生徒会の仕事をしたりしていると言っていた……。
約束した訳ではないけれど、会いたい、彼に会いたい、その一心で来てしまった。
迷惑だろうか……? それでも来ずにはいられなかった。
――トントン。生徒会長室の扉をノックする。
「…………誰……?」
少しして返事が返って来た。
「……京子……です」
緊張して思わず裏声のような、変な声になってしまった。
「……」
俯いていると、扉の開く音と一緒に部屋からの光が照らされた。
「おはよう。早いね……」
「あっ……おはようございます」
胸がどくんどくんと躍り出す。いつも誠と会う時はそうだ。初めて会った時のように……胸が躍るのだ。初めて話したわけでもないのに、彼に会う時は胸の鼓動が速くなる。
2週間ぶりに彼を間近に感じる――嬉しい……。胸のドキドキに熱が加わった。
誠は朝日が照らされて黒髪に艶がまし、男の人なのに綺麗な肌が一層、艶っぽく京子は思わず見惚れた。
「どうしたの……?」
「…………ずっと……お会いしていなかったから、会いたくて……」
胸の鼓動が落ち着かない……。
「……嬉しいよ」
優しく微笑まれた。
(本当に……?)
嬉しい気持ちが先立つが、やはり来てはいけなかったのではないかと問いてしまう……。
「おいで」
――パタンと扉の閉まる音……。生徒会長室に入る……。
誠に手を絡められ、ますます心臓は早くなる。
「ここからの朝の眺めは中々だよ」
とまどいながらも誠の後に続き、視線の先を辿った……。
「清々しい気持ちになる……」
校庭の隣にある森林公園が見渡せた。かなり大きい公園で、学校は緑に囲まれた環境だということを再認識することが出来た。一帯に広葉樹林が広がりお日様に照らされ本当に緑が清々しい。
「そうですね……」
それでも誠様の方が綺麗です――そう心に思った。
「君から会いに来るなんて初めてだね」
「…………会いたくて……いけませんでしたか?」
「そんな事はない……」
ぽんと肩に誠の手が置かれた。
――ドクン、ドクン……。誠の一つ一つの行動に一喜一憂する……。
「……」
耳元のすぐ側で誠の吐息を感じた。
誠がすぐ隣に来て顔を近づけたのだ――。
艶っぽい瞳が自分を射る。
「京子が、かわいいこと言うから……どうしようか」
「え?」
「こんなに外は清々しいのに、いけない気持ちになってしまったよ……」
(え……?)
誠に低い声で囁かれ、ぞくりと背中に電流が走った。
「……あっ……」
ぎゅっと後ろから抱き締められる。
そうすると京子の鼓動はますます勢いを増した。
チュウっと誠の唇の触れた音が間近で聞こえる。
――トクントクントクン。
さらさらで艶のある黒髪がすぐ目の端にあった。
頬に口付けされると、ねっとりと唾液を絡ませた舌が自分の肌をなぞる。そしてそのまま耳に触れた……。
身体が震える……。誠に触れられている部分全体が熱を持ち、じくじくと火照り始める。
耳元に息を吹き掛けられペロリと甘噛みされると、もうクラクラとして立ってなんかいられない……。
「……ぁ」
窓際から離れ、誠が京子の唇を奪う。
「……ん……っ」
レロレロと荒々しく口内を弄り舌を絡めてきた。
「……んっ……ん……」
「……はあ……っ」
朝から思いのほかの行為に戸惑い、京子は誠に合わせるのでいっぱいいっぱいだった。
「んんっ……っ」
「……は……ん」
唾液が零れる。その蜜さえも誠はペロリと舐めとった。
唾液の糸が二人の間を伝う……。
京子は誠と見つめ合った。
(恥ずかしい……)
京子の顔が赤くなる。
「……」
再び誠が唇を繋げてきた。
「ん……んっ」
精いっぱい答える。
(誠様……誠さまっ…………)
ぷつんぷつんと制服のボタンが外され下着のホックも外されると胸が露わになった。
何度も見られているのにいつにも増して恥ずかしい。朝日が部屋を照らしているから余計に見られているような気がするのだ。
その乳首に誠が触れる……。
(んっ……)
クチュっと口に含む音がすると、突起を舌で転がされているのが分かった。
同時にもう片方の乳首は優しく手で摘まれている。
「………ぁ…」
じんじんとした甘い感覚が自分の中で生まれ始める。時より痛い位に甘噛みされるとビクビクと小刻みに震えた……。そして、じわりと下腹部に熱を持ち濡れているのが自分でもわかった。
(身体がおかしくなる……!)
快楽が自分を襲ってくる。息を吐くことでしか逃がす術を知らない。
「っはぁ……」
身体が後ろの机にぶつかりそのまま倒された。誠が京子を組敷いた形になった。
口を離せば唾液で濡れた乳首は日で光りぷくりと乳立ち上を向いている。
「白い肌にピンク色の乳首……。とても綺麗だよ……」
「恥ずかしい……!」
「くすっ、恥ずかしがらずに目を開けてごらん。本当に綺麗だよ……。ほら……もっとよく見せて……」
そう言って再び乳首を摘み始める。
恥ずかしすぎてとても目なんて開けてられない。
それでも誠の手はお構いなしに刺激を与えてくる。
「はぁ……」
すると甘い吐息が自分の口から洩れた。
誠から与えられる刺激に夢中になっていて気付けば、スカートが捲り上げられ誠の手が太腿に触れていた。
――ゾクリ……。再び背筋に電流が走った。
さわさわと撫でられると、一気に下着を脱がされて下半身が露わになった。
秘部に誠の手が伸びる。
「濡れてる……。日の光に照らされて光って見えるよ……とても、いやらしい……ね」
するとベルトの金具を外す音がした。
「もう、君の中に侵入はいりたい……」
ヌチャリと音がしたと思った途端、ズズズっと中に一気に誠の隆起した雄が押し込められた。
「ああああっ!」
ずんずんと中に中に入って来る。
熱く熱く猛った雄ものが……。
身体が欲して欲してやまない誠の欲が……。
京子は強く強く誠に抱きついた。離れたくないと言うように……きゅうきゅうと抱き締めた。
「あああっ!」
「はあ……っ」
――今、この瞬間でさえも、その寂しげな瞳はどこを見ているんだろう……?
――私と言う存在を、見てくれてますか?
「せ、い、さま……」
(好き、です……)
じわりと涙が滲んだ……。
「はぁ…あ……っ」
「ああっ」
誠が京子の足を持ち上げ激しく腰を動かす。
ヌチャヌチャと卑猥な音を立て、二人はすぐそこに迫った快楽を得ようと激しく貪りあった……。
*
長谷川明は読み終えた本を返そうと新校舎2階の図書室へと足を踏み入れていた。
朝の予鈴が聞こえ、自分の教室へ戻ろうと廊下に出た時だった。
数メートル先の生徒会長室からよく知った顔の人物が現れた。
「よっ!」
その瞬間ビクッと京子の肩が上がった。京子は驚いた表情をしている。
「なんで生徒会長室から出て来たんだ?」
一般生徒が出入禁止の領域から出てきたのだから普通に思う疑問だった。
「! うん、ちょっと……」
いきなりの事で、京子は返答に困っている様子だ。
「?」
京子は何か慌てている……?
「そ、そうだ……朝、メール見てくれた?」
2人は毎朝一緒に登校している為「今日、先に学校へ行く」というメールを京子は 朝一に明に送っていたのだ。
「ああ、そうか。図書委員の仕事か何かで生徒会室に来てたのか……。だから朝も早かったんだな」
明はどうやら勝手に納得してしまったようだ。京子はホッとしている。
「……なんか……お前、顔赤くね?」
「え?」
意表を突かれた。
……先程の余韻だろうか? 情事の後なので仕方がないとはいえ、京子は思い出して顔の赤みがますます増してしまう。
「大丈夫かよ。熱でもあるんじゃねーか……?」
「う、ううん。大丈夫だよ」
手をおでこに近づけようとする明の手を退けようと京子は身体を動かした。
「……」
すると生徒会長室からドアの開く音が聞こえ振り向くと、誠がこちらに向かって歩いて来るではないか……。
「そろそろ始業のベルが鳴るよ……」
誠はチラリとだけこちらを向く……。
京子は火照った顔をして誠を見つめ、小さくぺこりとお辞儀をした。
その時だった。一瞬だけ誠が京子に微笑んだように見えた。
「!」
誠が階段を上り見えなくなるまで京子は見つめている。
隣でその様子を見ていた明は何か腑に落ちない顔を浮かべていた……。
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