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13.切ない想い
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誠との行為が真実であったのだと、まざまざと感じさせる下腹部の痛みも引き、胸についたキスマークも次第に薄れた。あれから……3週間。
誠かれとは1度も会っていなかった。
図書室にも行ってみたものの誠の姿はどこにもなかった。
まるで自分と会うことを避けているかのように……。
何度か、誠の姿は学園内で見つけることはできたが、いつも誠の周りには生徒会やら女生徒達がいて近づくことは叶わなかった。
もちろん、わかっていた。理解していたことである。
誠は遠い存在の人なのだと……。
――明日から夏休みという日だった。
全校集会が終わり、渡り廊下を歩いていた時の事である。
周りには数人の男女の生徒たち、その中でも一際目立つその姿。
前方から誠の姿が近づくのがわかった。
一歩、一歩、近づく。
誠かれは気づいてくれるだろうか? 密かな淡い期待を持った。
ドクドクと、血流が早くなるのがわかった。
誠とすれ違う……。
しかし誠かれは一瞬たりともこちらを見なかった。
京子を見ようともしなかったのだ。
まるで、あの事は夢だったのかと思わせるような素振りで……。
一目も京子に目を呉れることはなかったのである。
(苦しい……。苦し……い。胸が……いた……い)
ホロリ、ホロリと涙を流す。
(どう……して……)
分かっていた事ではないのか……?
(誠様にとって……わたし……は……)
そもそも自分の事を覚えているのか……?
あの日、あの時、交わったのは自分だけど、誰でも同じだったのではないのか……?
(そうよ。私の名前さえも、誠様は知らない……!)
――それでもよかったのだ……。
分かっていた事……。
誠かれの陰りのある瞳が気になった。
誠のことを知りたかった。近づきたかった。
慰み者になってでもいい。誠に近づきたかったのだ。
誠を1人にはしたくなかった。
誠の心の闇に、自分は近づくことはできたのだろうか?
誠を慰めることはできたのだろうか?
いずれにせよ誠が自分を抱いたのは事実、それだけで幸せではないのか?
二人で身体を貪りあった。快楽に身を委ねた。二人で同じ瞬間ときを同じ気持ちで感じた。
その時間ときは確かに誠に近づけたのだ。
交わったのだ。
あの遠い人に……。
(好き……です……誠……様。)
苦しくて、苦しくて、切ない思いが京子を痛めつけた。
誠かれが好きだと、誠が欲しいと、身体が叫びを上げている。
以前まえは見ているだけで幸せだった。
見つめることができて心が躍った。色を褪せた。
なのに……今は欲しいと、誠が欲しいと、心が、身体が、血が……身体の全てが悲鳴を上げている!
誠が欲しい! 欲しい! と……!
(誠……さ……ま……)
京子は頬を濡らした。止めどもなく溢れてくる涙を流して誠を思った。
苦しい、苦しい。
切ない思い。
16歳の夏。初めて人を愛した。
熱くて、暑くて、外はセミの鳴き声が聞こえた。
明日からは夏休み……誠に会えない……夏休み……だ。
誠かれとは1度も会っていなかった。
図書室にも行ってみたものの誠の姿はどこにもなかった。
まるで自分と会うことを避けているかのように……。
何度か、誠の姿は学園内で見つけることはできたが、いつも誠の周りには生徒会やら女生徒達がいて近づくことは叶わなかった。
もちろん、わかっていた。理解していたことである。
誠は遠い存在の人なのだと……。
――明日から夏休みという日だった。
全校集会が終わり、渡り廊下を歩いていた時の事である。
周りには数人の男女の生徒たち、その中でも一際目立つその姿。
前方から誠の姿が近づくのがわかった。
一歩、一歩、近づく。
誠かれは気づいてくれるだろうか? 密かな淡い期待を持った。
ドクドクと、血流が早くなるのがわかった。
誠とすれ違う……。
しかし誠かれは一瞬たりともこちらを見なかった。
京子を見ようともしなかったのだ。
まるで、あの事は夢だったのかと思わせるような素振りで……。
一目も京子に目を呉れることはなかったのである。
(苦しい……。苦し……い。胸が……いた……い)
ホロリ、ホロリと涙を流す。
(どう……して……)
分かっていた事ではないのか……?
(誠様にとって……わたし……は……)
そもそも自分の事を覚えているのか……?
あの日、あの時、交わったのは自分だけど、誰でも同じだったのではないのか……?
(そうよ。私の名前さえも、誠様は知らない……!)
――それでもよかったのだ……。
分かっていた事……。
誠かれの陰りのある瞳が気になった。
誠のことを知りたかった。近づきたかった。
慰み者になってでもいい。誠に近づきたかったのだ。
誠を1人にはしたくなかった。
誠の心の闇に、自分は近づくことはできたのだろうか?
誠を慰めることはできたのだろうか?
いずれにせよ誠が自分を抱いたのは事実、それだけで幸せではないのか?
二人で身体を貪りあった。快楽に身を委ねた。二人で同じ瞬間ときを同じ気持ちで感じた。
その時間ときは確かに誠に近づけたのだ。
交わったのだ。
あの遠い人に……。
(好き……です……誠……様。)
苦しくて、苦しくて、切ない思いが京子を痛めつけた。
誠かれが好きだと、誠が欲しいと、身体が叫びを上げている。
以前まえは見ているだけで幸せだった。
見つめることができて心が躍った。色を褪せた。
なのに……今は欲しいと、誠が欲しいと、心が、身体が、血が……身体の全てが悲鳴を上げている!
誠が欲しい! 欲しい! と……!
(誠……さ……ま……)
京子は頬を濡らした。止めどもなく溢れてくる涙を流して誠を思った。
苦しい、苦しい。
切ない思い。
16歳の夏。初めて人を愛した。
熱くて、暑くて、外はセミの鳴き声が聞こえた。
明日からは夏休み……誠に会えない……夏休み……だ。
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