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Ⅳ 魔王の娘
7節 活動限界 ⑤
しおりを挟む「情報院への伝達は終わったな。ふむ、二つの部署が固まっていたのか? それは好都合」
「うん。これ、秘書ズの下へ。さて君たち、移動してもらうよ~。この部屋にヒトはいなくていいからね~」
宰相と、その側近二名も消え、淋しくなった部屋で。ノクトとベリアルは、エイジのいなくなった穴を埋めるように、次々と指示を下していた。
そして人が掃け、部屋は二人だけとなる。用の無くなり閑散とした部屋を後にしようと、ノクトが扉に手をかけた。
「さて、ではノクト。そろそろ話してもらおうか」
呼び止められ、彼の動きが止まった。内心、肝が冷える。
「はい? なんでしょ~」
「何を隠している」
「ッ!」
息が詰まる。
「ア、ハハ…ハ……やっぱりベリアル様には敵わないなぁ」
言い逃れはできそうにない。なにより最初から、見抜かれたなら包み隠さず話すつもりだった。
「エイジくんは過労。そう言いましたね」
「ああ。それが?」
「実は……誤診なんです」
ノクトの告白に驚き……はしないが、不思議ではある。
「ほう? どういうことだ。意図的に間違えたと?」
「…………エイジくんが倒れた原因は、僕の呪いです。呪術で、彼を昏倒させたんです」
「何故そんなことを」
「彼のためだ。身を削って働き続ける彼を見ていることが耐えられなくなった。だから……!」
誰かの為に、そしてこれほど地の感情を見せるノクトは稀有であり、やはり彼も人の子かと親しみを催す。
「僕を独房に入れてください。提案したのは別の方ですが、実行したのは僕だ。そして、宰相に危害を加え、その業務を妨害して国家の混乱を招いた。その罪は重い……」
「彼のため。なのだろう? だったら今することは、そんなことではないはずだ。彼のいない穴を埋めてでこそ彼のため、償いである」
威厳がありつつ、それでいて責める様子もない寛容な言葉。こんな自分でさえ忠誠を誓う、主君の姿がそこにあった。
「寛大なる処置に感謝を。陛下」
「やめてくれ。お前に陛下なんて言われると、むず痒くてたまらんわ。では、仕事だ仕事。奴が新しいことを始めるには、今溜まっているものを清算する必要があるからな」
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