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Ⅳ 魔王の娘
6節 宰相単位 ①
しおりを挟む不可思議な夢から目が覚める。
「おはようございます、エイジさま」
「……ああ、おはよう」
いつものように、メイド達がすぐ側に侍っていた。だが、その表情は普段と違う。
「ところで、抱えていらっしゃるその不思議な棒は、一体なんなのですか?」
「ん、これは……はっ、時期の早えサンタさんだこと」
気付くと、墓所なんかで王を象った像のように、ステンレスの1m定規を大切そうに抱えていた。
「アイツ、律儀だな」
本当に持ってきてくれるとは。少しは信用してやってもいいかな、と思えるように。ただ、裏があることは疑い続けるが。
「だったら……よし、急いで幹部達を集めてくれ! 特に、フォラスは絶対呼ぶこと!」
いつもの寝起きの悪さが嘘の様に跳ね起きて、一瞬で身支度を整える。その目はギラギラしていて、召使たちは恐怖を覚える程だった。
さて、会議室。全員ではないが、主要な人物たちが集まる。そんな彼らの前で、エイジは__
「ふっ、ふふっ、ふふふふふ。フハハハハ‼︎」
「ど、どうした宰相⁉︎」
「よっしゃあ。遂に……遂に手に入れたぞ‼︎ 1メートル定規‼︎ こいつがあれば、オレは無敵だ‼︎」
彼は異様に興奮しているが、皆は何故こんな状態になったのか分からないらしく、ドン引きしていた。
「おいフォラス! 今すぐ魔力をできる限り含まない水と水銀、そしてガラスを用意してくれ‼︎ 実験室に行くぞ!」
待ち切れない様子で、皆を急かす。だが、これほど昂った彼は魔術の存在を知った時以来。ということは、またしても何か面白いことをしてくれるのではないか。そう期待する皆もまた、彼に釣られたのか楽しみにしていた。
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