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Ⅲ 帝魔戦争
6節 戦争開幕 ③
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『もしもし、こちら魔王ベリアル。行動予備隊αに増援を求む。敵の抵抗が思ったより激しい。どうかなレイヴン?』
『恐らく大丈夫でしょうが……こちらは順調。エイジ、押されているところはないか?』
「ん~、特に苦戦してるところはないようだけど……うん、ノクトの部隊が少々分散しすぎている点以外は問題ない。敵も必死に抵抗しているんだろうが、それでも魔王軍には敵わないということだな」
『こちらエリゴス。発言してもよいだろうか。吾らの侵攻も順調である。敵の武器庫を見つけたが、有用な物資が多い。荷車を回してくれ』
『A隊了解しました。輸送隊を回します。こちらはハズレでした』
『こちらB隊。敵駐屯基地が集中している箇所を発見し、残存戦力を殲滅しておりますが、抵抗は激しくありません。投降兵も多い』
この通信をしているときエイジ、それよりも魔王国軍隊長達は強く思った。通信ができると極めて便利であるな、と。提案した宰相、そして作ってみせた魔導院の者達に内心敬意を表していた。
『いいだろう。行動予備隊α、動け」
『承知いたしました。行動予備隊α、増援に向かいます』
「いや、待てよ? 敵が決死の覚悟で戦っているというよりは、多分レイヴンやエリゴス、ABC隊を無視して正面の大隊に集中しているのではないだろうか?」
『ふむ、であれば予備隊は全てベリアル様の下へ向かわせた方がいいな』
『はいはーい、こちらノクト。人いなくなっちゃったんだけど、指示ある?』
『総司令レイヴンだ。ああ、中央に向かってから反時計回りに動け。撤退の用意だ』
『はーい、遅れない程度に気ままに行きまーす』
「こちら宰相。レイヴン、エリゴスの両名は、兵力の半分ほどを、すぐに手元に戻せる範囲で街中に散開させてくれ。予備の通信機を使ってくれても構わないよ。敵は正面に集中しているようだから、そちらに注意を向けさせて。向かなくても破壊工作の効率は上がるかな」
『こちらエリゴス、了解である』
『将軍、了解。そして、魔王様は兵を一旦下げて態勢を立て直して下さい。そこへ行動予備隊を全て正面大隊に加勢させます。さあ、動け!』
一時的に多くの情報が飛び交い、回線がかなり混線しかけた。それでも処理落ちせず、発言が被って重要なことを聞き落とすことがなかったのは、流石幹部の連携といったところ。息が合っている。
「さて、この調子なら、もう何の問題もないだろうな。……だが、何か忘れているような?」
考える。思い出す。以前、何かをしなければと思ったはずなのだ。
『少々ヨロシイカ』
「エレンさんですね? どうぞ」
『中央区ヲ焼キ払イ、ソノ後経過ヲ観察シテイタノダガ、ナニカガオカシイ』
「ふむ、なんです? 具体化をお願いします」
『ウム……城下ガコンナニモ騒ガシイノニモカカワラズ、城ガ静カスギル。近衛ノ増援も見当タラヌ』
「なるほ__……ッ‼︎ ああ、そうだ。思い出したぞ……テミス!」
十日前、彼女と逢った時、エイジは思ったのだ。このオレの正体を明かしてやる! と。
思い出したエイジは、凶悪な、邪悪な笑みを浮かべつつ、通信機を強く握る。
「すまない、君たち。やりたい事ができてしまった。あとは大丈夫だろ? ちと、単独行動させてもらうよ」
『な……おい、何をするつもりだ⁉︎』
「ちょっと、皇帝サマ達に謁見してくるよ」
『恐らく大丈夫でしょうが……こちらは順調。エイジ、押されているところはないか?』
「ん~、特に苦戦してるところはないようだけど……うん、ノクトの部隊が少々分散しすぎている点以外は問題ない。敵も必死に抵抗しているんだろうが、それでも魔王軍には敵わないということだな」
『こちらエリゴス。発言してもよいだろうか。吾らの侵攻も順調である。敵の武器庫を見つけたが、有用な物資が多い。荷車を回してくれ』
『A隊了解しました。輸送隊を回します。こちらはハズレでした』
『こちらB隊。敵駐屯基地が集中している箇所を発見し、残存戦力を殲滅しておりますが、抵抗は激しくありません。投降兵も多い』
この通信をしているときエイジ、それよりも魔王国軍隊長達は強く思った。通信ができると極めて便利であるな、と。提案した宰相、そして作ってみせた魔導院の者達に内心敬意を表していた。
『いいだろう。行動予備隊α、動け」
『承知いたしました。行動予備隊α、増援に向かいます』
「いや、待てよ? 敵が決死の覚悟で戦っているというよりは、多分レイヴンやエリゴス、ABC隊を無視して正面の大隊に集中しているのではないだろうか?」
『ふむ、であれば予備隊は全てベリアル様の下へ向かわせた方がいいな』
『はいはーい、こちらノクト。人いなくなっちゃったんだけど、指示ある?』
『総司令レイヴンだ。ああ、中央に向かってから反時計回りに動け。撤退の用意だ』
『はーい、遅れない程度に気ままに行きまーす』
「こちら宰相。レイヴン、エリゴスの両名は、兵力の半分ほどを、すぐに手元に戻せる範囲で街中に散開させてくれ。予備の通信機を使ってくれても構わないよ。敵は正面に集中しているようだから、そちらに注意を向けさせて。向かなくても破壊工作の効率は上がるかな」
『こちらエリゴス、了解である』
『将軍、了解。そして、魔王様は兵を一旦下げて態勢を立て直して下さい。そこへ行動予備隊を全て正面大隊に加勢させます。さあ、動け!』
一時的に多くの情報が飛び交い、回線がかなり混線しかけた。それでも処理落ちせず、発言が被って重要なことを聞き落とすことがなかったのは、流石幹部の連携といったところ。息が合っている。
「さて、この調子なら、もう何の問題もないだろうな。……だが、何か忘れているような?」
考える。思い出す。以前、何かをしなければと思ったはずなのだ。
『少々ヨロシイカ』
「エレンさんですね? どうぞ」
『中央区ヲ焼キ払イ、ソノ後経過ヲ観察シテイタノダガ、ナニカガオカシイ』
「ふむ、なんです? 具体化をお願いします」
『ウム……城下ガコンナニモ騒ガシイノニモカカワラズ、城ガ静カスギル。近衛ノ増援も見当タラヌ』
「なるほ__……ッ‼︎ ああ、そうだ。思い出したぞ……テミス!」
十日前、彼女と逢った時、エイジは思ったのだ。このオレの正体を明かしてやる! と。
思い出したエイジは、凶悪な、邪悪な笑みを浮かべつつ、通信機を強く握る。
「すまない、君たち。やりたい事ができてしまった。あとは大丈夫だろ? ちと、単独行動させてもらうよ」
『な……おい、何をするつもりだ⁉︎』
「ちょっと、皇帝サマ達に謁見してくるよ」
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