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Ⅱ 魔王国の改革
5節 エイジの肉体改造計画 ②
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「うわぁ、やっぱコワイ!」
あの提案から準備があるからという理由で、数時間後。エイジは手術台の上にいた。上半身裸で台にしっかり固定されているから暴れられないが、ともかく非常に怖い。彼は手術の経験とかないから尚更に。
「なあ、寝てて良いか⁉︎」
「激痛で寝れないと思いますよぉ」
「鎮痛系魔術は?」
「解けたとき慣れてないから辛いですヨォー!」
興奮している術者が、更に恐怖を煽る。
「いいや、麻酔系魔術かけよう。手術中暴れて、手がつけられなくなるからな」
「ではそれで! 掛けますよぉ~、そおれ!」
そこで魔術がかけられ、意識が途絶えた。
「……………。ううん? なっ、う、うぐああああ!!」
起きた瞬間、痛い、とは少し違った、体の中で様々なものがひしめき合う違和感、圧迫感、そして苦痛。そういったものが、エイジの体を走り抜ける。その苦しみのあまり飛び起きようとした、が、固定されていて動けない。今の彼にできるのは絶叫し身悶えしながら、新たな性質が体に定着し、安定するまで苦痛に耐えることだけである。
「あがあああああ! しゅ、手術は、終わったんだよなあああああああ!!?」
「ええ、終わりましたが、まあ、こうなるでしょうから、しっかり固定させていただきました。ああ、手術はなかなか面白い体験でしたよぉ!」
「うぐ、うぐおお、うがああ、あああああああ!!!」
それから約二十分。
「あがあああ……はぁはぁ………ぁぁぁ。よ、よおし、ようやく引いてきた……」
あまりに見苦しかったのか、途中からフォラスが鎮痛のような作用のある魔術を使用し、ノクトやベリアルを呼び込んでは、体に手をつけて魔力のコントロールの手伝いをしてくれた。その甲斐あって、随分楽にはなったが、声が枯れるほど暴れ狂ったように叫んでいた。
「ふむ、大丈夫そうですね。では、拘束具を外します」
「……鏡はあるか? 変わったところを確認したい」
「うん? ええどうぞ。鏡は隣の部屋にあります」
言われた通り移動し、隣の部屋の大きな鏡で自分の出で立ちを確認する。
「ん、何コレ?」
背中と尻に何かついている。それは、翼と尻尾であった。蝙蝠のような、皮膜のある翼に、堕天使の羽の二対がついている。尻尾は先が三角に尖っているのと、猫の尻尾みたいなのが。頭には猫だか犬だかのような三角耳、そして側頭部からはやや上に曲がった角が。さらに頭の上には所々が崩れかけ朽ちたような、くすんだ輪っかがあった。そして左目に違和感があり見てみると__
「あれ、色が変わってる?」
右目は紅く、左目は紫色に変わっている。更によく覗くと、奥に紋様らしきものが確認できる。そして、口にも違和感があり、見てみると__
「これは……牙?」
人間のものとは思えない、大きな犬歯が生えていた。
「そうか、魔族になったんだ……って、オイ‼︎」
あることに気づき、手術室に飛び込む。
「ん、そんなに慌ててどうかしましたか?」
「どうかしたかも何も、まさか要求したもの全部同時にやりやがったのか⁉︎」
「ええ、何か問題でも?」
「オレは! 順番に! 徐々に加えていくって言ったよな⁉︎」
「えぇ? そうでしたっけ? まあ、無事に終わったのでいいではありませんか」
「う、うぐぐ……」
徐々に加えていく苦しみに比べれば、とは思うが。それでもコレはちょっと酷い、と不満げである。何せ、死にかけた思いをしたのだから。
「そういえば……」
気になったことがある。魔眼になった方の目は千里眼が使えるのか。左目だけを瞑り、能力を発動させる。すると、きちんと城内を見渡すことができた。
「ようし、大丈夫だ!」
「そうですか、それは良かっ………………」
「ん、どうし__あっ」
千里眼を使う時、目に意識を集中させた。そして同時に、つい魔力も込めたのだった。そりゃ魔眼が発動して、目があったフォラスは石化するだろう。動きが完全に止まっている。
「ええっと、どうすればいい……そうだ!」
もう一度目に魔力を込めてフォラスを見つめる。すると彼の硬直が解け、蹌踉(よろ)めき、転んだ。
「はあ、解除できたな」
「な、何をするんですか!」
「え、えっと、ざまあみろ?」
「状態異常に耐性がある私でも硬直するなんて……なかなか強力でよかったじゃないですか」
「うん、そうだな。ところでこれ、石化じゃなくて硬直の魔眼なのか?」
「いいえ、ちゃんと石になるはずですよ。私は耐性があるので。魔力を込める度合いで停止や石化など、効果の度合いも変わるでしょう」
「……ともかく、酷い目には遭ったが、手術は成功という訳か。じゃあ、新たに手に入れた力を使いこなせるよう、鍛錬しなければな!」
あの提案から準備があるからという理由で、数時間後。エイジは手術台の上にいた。上半身裸で台にしっかり固定されているから暴れられないが、ともかく非常に怖い。彼は手術の経験とかないから尚更に。
「なあ、寝てて良いか⁉︎」
「激痛で寝れないと思いますよぉ」
「鎮痛系魔術は?」
「解けたとき慣れてないから辛いですヨォー!」
興奮している術者が、更に恐怖を煽る。
「いいや、麻酔系魔術かけよう。手術中暴れて、手がつけられなくなるからな」
「ではそれで! 掛けますよぉ~、そおれ!」
そこで魔術がかけられ、意識が途絶えた。
「……………。ううん? なっ、う、うぐああああ!!」
起きた瞬間、痛い、とは少し違った、体の中で様々なものがひしめき合う違和感、圧迫感、そして苦痛。そういったものが、エイジの体を走り抜ける。その苦しみのあまり飛び起きようとした、が、固定されていて動けない。今の彼にできるのは絶叫し身悶えしながら、新たな性質が体に定着し、安定するまで苦痛に耐えることだけである。
「あがあああああ! しゅ、手術は、終わったんだよなあああああああ!!?」
「ええ、終わりましたが、まあ、こうなるでしょうから、しっかり固定させていただきました。ああ、手術はなかなか面白い体験でしたよぉ!」
「うぐ、うぐおお、うがああ、あああああああ!!!」
それから約二十分。
「あがあああ……はぁはぁ………ぁぁぁ。よ、よおし、ようやく引いてきた……」
あまりに見苦しかったのか、途中からフォラスが鎮痛のような作用のある魔術を使用し、ノクトやベリアルを呼び込んでは、体に手をつけて魔力のコントロールの手伝いをしてくれた。その甲斐あって、随分楽にはなったが、声が枯れるほど暴れ狂ったように叫んでいた。
「ふむ、大丈夫そうですね。では、拘束具を外します」
「……鏡はあるか? 変わったところを確認したい」
「うん? ええどうぞ。鏡は隣の部屋にあります」
言われた通り移動し、隣の部屋の大きな鏡で自分の出で立ちを確認する。
「ん、何コレ?」
背中と尻に何かついている。それは、翼と尻尾であった。蝙蝠のような、皮膜のある翼に、堕天使の羽の二対がついている。尻尾は先が三角に尖っているのと、猫の尻尾みたいなのが。頭には猫だか犬だかのような三角耳、そして側頭部からはやや上に曲がった角が。さらに頭の上には所々が崩れかけ朽ちたような、くすんだ輪っかがあった。そして左目に違和感があり見てみると__
「あれ、色が変わってる?」
右目は紅く、左目は紫色に変わっている。更によく覗くと、奥に紋様らしきものが確認できる。そして、口にも違和感があり、見てみると__
「これは……牙?」
人間のものとは思えない、大きな犬歯が生えていた。
「そうか、魔族になったんだ……って、オイ‼︎」
あることに気づき、手術室に飛び込む。
「ん、そんなに慌ててどうかしましたか?」
「どうかしたかも何も、まさか要求したもの全部同時にやりやがったのか⁉︎」
「ええ、何か問題でも?」
「オレは! 順番に! 徐々に加えていくって言ったよな⁉︎」
「えぇ? そうでしたっけ? まあ、無事に終わったのでいいではありませんか」
「う、うぐぐ……」
徐々に加えていく苦しみに比べれば、とは思うが。それでもコレはちょっと酷い、と不満げである。何せ、死にかけた思いをしたのだから。
「そういえば……」
気になったことがある。魔眼になった方の目は千里眼が使えるのか。左目だけを瞑り、能力を発動させる。すると、きちんと城内を見渡すことができた。
「ようし、大丈夫だ!」
「そうですか、それは良かっ………………」
「ん、どうし__あっ」
千里眼を使う時、目に意識を集中させた。そして同時に、つい魔力も込めたのだった。そりゃ魔眼が発動して、目があったフォラスは石化するだろう。動きが完全に止まっている。
「ええっと、どうすればいい……そうだ!」
もう一度目に魔力を込めてフォラスを見つめる。すると彼の硬直が解け、蹌踉(よろ)めき、転んだ。
「はあ、解除できたな」
「な、何をするんですか!」
「え、えっと、ざまあみろ?」
「状態異常に耐性がある私でも硬直するなんて……なかなか強力でよかったじゃないですか」
「うん、そうだな。ところでこれ、石化じゃなくて硬直の魔眼なのか?」
「いいえ、ちゃんと石になるはずですよ。私は耐性があるので。魔力を込める度合いで停止や石化など、効果の度合いも変わるでしょう」
「……ともかく、酷い目には遭ったが、手術は成功という訳か。じゃあ、新たに手に入れた力を使いこなせるよう、鍛錬しなければな!」
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