魔王国の宰相

佐伯アルト

文字の大きさ
上 下
13 / 235
I 宰相始動

4節 未来の宰相の鍛錬 ③

しおりを挟む
 講義後、食堂に向かうと、厨房には見知った顔が。

「あれ? あんたら?」
「はっ、ご、ご主人様⁉︎」

 フィリシアが叫び、それに釣られて複数人のメイドがエイジを見る。そこには、ハインリヒとフェルトもいた。だが、そんなことより、彼の視線は彼女達の手元へと向けられていた。


「これは、こうするんじゃい!」

 そのあと、エイジは厨房にズカズカと入り込み、食材と調味料を調べた。そして、自ら調理を始めたのだ。昨日の食事はクソ不味かったが、原因が分かった。それは、そもそも魔族には活動のエネルギーを周囲の魔力から得られるため食事があまり必要ではなく、調理という文化があまり根付かなかった結果、味など殆ど気にしていないことだ。つまり昨日のは、料理などではなかったということである。ノクトが不思議そうな顔をしていた理由が分かる。だがエイジはまだ魔力の吸収がうまく出来ず、少なくとも彼はその味に耐えられない。故に、調理をすべくメイド達の群れに割り込んだ訳だ。因みに彼女達の大半は、下寄りの中流階級の悪魔族系らしい。

 三十分後__

「これでよし」

 調理完了。今日の食材は川魚と野草だったが、美味しく食べられるものを判別し、適切な下処理をし、調味料をかけたり、ドレッシングを有り合わせで自作することで、なんとか食べられるようになった。一応、彼は一人暮らしで自炊の経験もある。

__オレは美食民族日本人だ。より良い味を追求する__

 そして、この持論だ。

 しかし、圧倒的に使用できる食材、調味料が少ない。主食がパンだけなのもいただけない。食の改革は、早めにすべきだと考える。因みに、調理された魚とサラダを食べたメイド達は目を丸くしていた。

 それからというもの、この城のメイドたちは、代わる代わるエイジの下にやってきては指導を請うようになり、メイド達の仕事の精度は、見違えるように向上したとして評価されたという。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 0

あなたにおすすめの小説

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

勇者(代理)のお仕事……ですよねコレ?

高菜あやめ
恋愛
実家の提灯屋を継ぐつもりだったのに、家出した兄の帰還によって居場所を失ってしまったヨリ。仕方なく職を求めて王都へやってきたら、偶然出会ったお城の王子様にスカウトされて『勇者(代理)』の仕事をすることに! 仕事仲間であるルイーズ王子の傍若無人ぶりに最初は戸惑っていたが、ある夜倒れていたルイーズを介抱したことをきっかけに次第に打ち解けていく……異世界オフィスラブ?ストーリーです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...