魔王国の宰相

佐伯アルト

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I 宰相始動

4節 未来の宰相の鍛錬 ③

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 講義後、食堂に向かうと、厨房には見知った顔が。

「あれ? あんたら?」
「はっ、ご、ご主人様⁉︎」

 フィリシアが叫び、それに釣られて複数人のメイドがエイジを見る。そこには、ハインリヒとフェルトもいた。だが、そんなことより、彼の視線は彼女達の手元へと向けられていた。


「これは、こうするんじゃい!」

 そのあと、エイジは厨房にズカズカと入り込み、食材と調味料を調べた。そして、自ら調理を始めたのだ。昨日の食事はクソ不味かったが、原因が分かった。それは、そもそも魔族には活動のエネルギーを周囲の魔力から得られるため食事があまり必要ではなく、調理という文化があまり根付かなかった結果、味など殆ど気にしていないことだ。つまり昨日のは、料理などではなかったということである。ノクトが不思議そうな顔をしていた理由が分かる。だがエイジはまだ魔力の吸収がうまく出来ず、少なくとも彼はその味に耐えられない。故に、調理をすべくメイド達の群れに割り込んだ訳だ。因みに彼女達の大半は、下寄りの中流階級の悪魔族系らしい。

 三十分後__

「これでよし」

 調理完了。今日の食材は川魚と野草だったが、美味しく食べられるものを判別し、適切な下処理をし、調味料をかけたり、ドレッシングを有り合わせで自作することで、なんとか食べられるようになった。一応、彼は一人暮らしで自炊の経験もある。

__オレは美食民族日本人だ。より良い味を追求する__

 そして、この持論だ。

 しかし、圧倒的に使用できる食材、調味料が少ない。主食がパンだけなのもいただけない。食の改革は、早めにすべきだと考える。因みに、調理された魚とサラダを食べたメイド達は目を丸くしていた。

 それからというもの、この城のメイドたちは、代わる代わるエイジの下にやってきては指導を請うようになり、メイド達の仕事の精度は、見違えるように向上したとして評価されたという。
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