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獣王との戦い
原始の記憶
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「あの時みたいに、干渉は出来なそうだな」
20階層で、偽の世界に飛ばされた時と違い、シン達はこのよ世界に干渉は出来なかった。
近くにある小さな石ころひとつ動かす事は出来ず、体ごとすり抜けるようになってしまう。
「微妙に浮いているね。不思議な感覚だ」
ロイズが言う通り、シン達の体は僅かながらに宙に浮いている。
歩いていても地面を踏む感覚はなく、違和感だらけである。
「世界の始まりってどういう事だ?」
世界の始まりを知れ、この70階層の試練はその始まりを知らなければ突破出来ないのだろう。
だが、干渉出来ない状態では、何をすれば良いのかわからない。
「妾は改めて知る必要はないがの」
シン達と違い、この世界で全てを経験しているティナには、世界の始まりも知っている。
ティナにとっては今更と言った感情だろう。
「でも、興味はあるわね」
自分達の生まれた世界が、どのようにして生まれたのか。
それは殆どの者が興味を持つ事である。
ユナの言葉に、他の者も同意を示している。
ロイズなどは、森の世界の住人が、何故混じり者として生まれるのかなど、知りたく事が多くあるようであった。
「この時は、まだ争いが終わっておらんの、妾は何をしたいたか、覚えとらん」
ティナの言葉のあとにシン達に変化が訪れた。
「おっ?勝手に進んでくぞ?」
シン達は、集まった状態のまま、空中を浮き、移動していく。
自分の意思と関係なく進む事に違和感を感じたが、慣れてくると不思議と面白く感じられた。
「あれは、ノアか?それに似てる人もいるな」
シン達の向かった先には、見慣れた美しい白髪の神、そしてその神に似た1人の女性がいた。
「あれはノアの姉、忘れ去られた8番目の神、起源にして頂点の神クラウ・ディアス。この世界を創り出した、唯一神だ」
「誰よ、聞いた事がないわ」
ティナの紹介した神の存在をユナ達はノアの姉の存在を知らないのであろう。
ユナ達7つの世界の住人は幼少より、伝承もしくは教育の過程で、7人の神により世界は創造されたと教えられている。
もう1人の神がいるなど知る由もなく、その神が元の1つの世界を創ったなどと言われても簡単に信じる事が出来ないのだ。
だが、シンだけはその事が信じられる。
前にティナからノアの姉の存在を聞いた事がある。
それに、ユナ達と違い先入観はない。
魔王であるティナが言うのならば、それが事実だと素直に受け止められるのだ。
「その唯一神が、なんで今いないのよ?凄いんでしょ?」
ユナの疑問は誰もが思う事である。
唯一神と言うからには、格が違うものと思われる。
その頂点にいる神が、存在すら認知されていない訳がない。
「それを知るのが、この試練の内容であろうの」
ティナの声に、若干の怒気が感じられた。
その事を感じ取った一同は、この話題を続ける事が出来なかった。
そんな時、物事は動き始める。
「姉さん、ボクは姉さんのような立派な神になるよ」
「そう、ノアなら私よりも良い神になれるわ」
ノアの表情は、今と変わらず豊かな印象を受ける。
姉妹の仲は悪いように思えない、寧ろ良好な関係を築いている事が感じられる。
「また移動か?」
ノア達の会話は続いているが、シン達はまたも移動を始める。
先ほどと違い高速の移動になり、景色を楽しむ余裕はない。
「あれは、人が戦ってるのか?」
シン達の目線の先には、無数の人影が武装して集まっている。
辺りには怒号が響き、それは次第に勝利したと思われる人達の雄叫びに変わる。
「嫌なものを見せおるわ」
ティナの表情は、厳しさを増す。
先ほどと違い、怒気を隠す事はない。
「あれが、魔族か?」
歓声をあげる人族に囲まれ、2人ほどの女性が捕らえられていた。
ティナと似た翼を持つ事から、捕らえられている女性が、魔族だと察する事が出来る。
「氷の世界で、ティナが言ってたのがこれか」
創世に、魔族を羨む人族が魔族を捕らえ、魔力を得ようとしたと聞いていたシン達は、すぐに状況を理解する。
自分達の先祖となる者達の行動に、良い気分はしない。
「また、移動か」
次に向った先は、灼熱の溶岩に覆われた火山地帯であった。
そこに佇む1匹の龍の姿に、シン達は固唾をのむ。
赤黒い鱗を持つ若い龍は、迫り来る人族の軍勢をたった1匹で、圧倒している。
接近する人族の剣や槍は、その鱗を傷つける事なく砕け、灼熱の息吹が人族を焼き尽くす。
「ボルリス様!撤退を!」
軍勢の後方、ユナと似た深紅の髪の女性に、指揮官と思われる男が報告をする。
人族の敗北は確定的であり、これ以上の戦闘は、無駄死にを増やすだけであった。
「退くぞ、次こそは龍族を我が支配下におく」
深紅の髪を持つ神は、悔しさを表すように表情を歪め、撤退を支持する。
神々の争いに優位に立つ為、ボルリスは龍族を支配下に置こうと、争いを繰り返していた。
「ボルリスは気が強い奴だからの、相当悔しかろう」
それぞれの神と親しい関係を築いていたティナは、シン達にわかりやすいよう説明をする。
火の神ボルリスは、その苛烈な性格ゆえ、神の中で誰より負けず嫌いであり、強者である事にこだわりを持っていた。
「次はどこ行くんだ?」
ここまでシン達は短時間の移動を繰り返している。
ゆっくりとする時間もなく、入り込む情報の多さに飽き飽きとしていた。
「ウリスとサリスか、奴らが始まりだ。良く見ておくと良い」
ティナからの助言で、シン達は集中を高める。
この試練の本題となる物事を見極めようとしているのだ。
「あれが、神か?随分イメージと違うな」
美しい蒼色の髪を持つ女性が、海の神ウリスだとすぐに察する事は出来た。
だがもう1人の女性は、今まで見た神と違い、とても美しいとは言えない容姿をしていた。
肥大した体は、だらしなく感じられ、バサバサの髪をした女性が、とても神には思えない。
「私が一番だって、なんで気づかないのか」
お世辞にも美しいなどと言う事の出来ないサリスは、不満げな言葉を口にする。
その見た目ゆえ、彼女に味方する者達は、皆無といえるほど、殆ど存在しない。
「あんな白髪の奴らの何が良いんだか」
原始の世界でノアは圧倒的な人気を誇っていた。
唯一神の妹である事も関係あるのだが、その愛くるしい容姿に惹かれる者達も多く存在したのだ。
自分と真逆の存在であるノアに、サリスは妬みを持ち続けていた。
ノアと接触している時は抑えていたが、2人の仲は決して良いとは言えない間柄であり、話す事は滅多にない。
それゆえ、ノアは現在もサリスの事がわからないのだ。
そんなサリスの言葉を、ウリスが黙って頷き続けていた。
他人目線で見るシン達からしたら、ウリスの態度は冷たい印象を受ける。
サリスの事を全く相手にしていないと感じられるからだ。
だが、不満を漏らす事をしているサリスにはわからないのだろう。
ウリスの本心はシン達にもわからないが、話を聞いていないウリスに、一方的に愚痴を言い続けている。
「サリス、不満があるならば、あなたも努力をしたらどうなのです?」
「神にそんな事は必要ない」
嫌気がさしたウリスは、サリスに対し指摘をするが、サリスは全く聞き入れる事をしない。
「なら、せめてノアに何かしたらどうなのですか?」
「何をするんだ?」
「それは、自分で考えて下さい」
サリスは不満気な表情をするが、ウリスは相手をしない。
だが、その返答からサリスが乗り気であるのを感じ取っていた。
「そうですね、ノアを陥れたらどうなのです?」
「ほう、なかなか良さそうだな」
「では、まずはあなたにしてもらいたい事があります」
怪しく微笑むウリスの言葉を、シン達が聞く事は叶わなかった。
何が起こるのかわからぬまま、またしても高速の移動が始まる。
20階層で、偽の世界に飛ばされた時と違い、シン達はこのよ世界に干渉は出来なかった。
近くにある小さな石ころひとつ動かす事は出来ず、体ごとすり抜けるようになってしまう。
「微妙に浮いているね。不思議な感覚だ」
ロイズが言う通り、シン達の体は僅かながらに宙に浮いている。
歩いていても地面を踏む感覚はなく、違和感だらけである。
「世界の始まりってどういう事だ?」
世界の始まりを知れ、この70階層の試練はその始まりを知らなければ突破出来ないのだろう。
だが、干渉出来ない状態では、何をすれば良いのかわからない。
「妾は改めて知る必要はないがの」
シン達と違い、この世界で全てを経験しているティナには、世界の始まりも知っている。
ティナにとっては今更と言った感情だろう。
「でも、興味はあるわね」
自分達の生まれた世界が、どのようにして生まれたのか。
それは殆どの者が興味を持つ事である。
ユナの言葉に、他の者も同意を示している。
ロイズなどは、森の世界の住人が、何故混じり者として生まれるのかなど、知りたく事が多くあるようであった。
「この時は、まだ争いが終わっておらんの、妾は何をしたいたか、覚えとらん」
ティナの言葉のあとにシン達に変化が訪れた。
「おっ?勝手に進んでくぞ?」
シン達は、集まった状態のまま、空中を浮き、移動していく。
自分の意思と関係なく進む事に違和感を感じたが、慣れてくると不思議と面白く感じられた。
「あれは、ノアか?それに似てる人もいるな」
シン達の向かった先には、見慣れた美しい白髪の神、そしてその神に似た1人の女性がいた。
「あれはノアの姉、忘れ去られた8番目の神、起源にして頂点の神クラウ・ディアス。この世界を創り出した、唯一神だ」
「誰よ、聞いた事がないわ」
ティナの紹介した神の存在をユナ達はノアの姉の存在を知らないのであろう。
ユナ達7つの世界の住人は幼少より、伝承もしくは教育の過程で、7人の神により世界は創造されたと教えられている。
もう1人の神がいるなど知る由もなく、その神が元の1つの世界を創ったなどと言われても簡単に信じる事が出来ないのだ。
だが、シンだけはその事が信じられる。
前にティナからノアの姉の存在を聞いた事がある。
それに、ユナ達と違い先入観はない。
魔王であるティナが言うのならば、それが事実だと素直に受け止められるのだ。
「その唯一神が、なんで今いないのよ?凄いんでしょ?」
ユナの疑問は誰もが思う事である。
唯一神と言うからには、格が違うものと思われる。
その頂点にいる神が、存在すら認知されていない訳がない。
「それを知るのが、この試練の内容であろうの」
ティナの声に、若干の怒気が感じられた。
その事を感じ取った一同は、この話題を続ける事が出来なかった。
そんな時、物事は動き始める。
「姉さん、ボクは姉さんのような立派な神になるよ」
「そう、ノアなら私よりも良い神になれるわ」
ノアの表情は、今と変わらず豊かな印象を受ける。
姉妹の仲は悪いように思えない、寧ろ良好な関係を築いている事が感じられる。
「また移動か?」
ノア達の会話は続いているが、シン達はまたも移動を始める。
先ほどと違い高速の移動になり、景色を楽しむ余裕はない。
「あれは、人が戦ってるのか?」
シン達の目線の先には、無数の人影が武装して集まっている。
辺りには怒号が響き、それは次第に勝利したと思われる人達の雄叫びに変わる。
「嫌なものを見せおるわ」
ティナの表情は、厳しさを増す。
先ほどと違い、怒気を隠す事はない。
「あれが、魔族か?」
歓声をあげる人族に囲まれ、2人ほどの女性が捕らえられていた。
ティナと似た翼を持つ事から、捕らえられている女性が、魔族だと察する事が出来る。
「氷の世界で、ティナが言ってたのがこれか」
創世に、魔族を羨む人族が魔族を捕らえ、魔力を得ようとしたと聞いていたシン達は、すぐに状況を理解する。
自分達の先祖となる者達の行動に、良い気分はしない。
「また、移動か」
次に向った先は、灼熱の溶岩に覆われた火山地帯であった。
そこに佇む1匹の龍の姿に、シン達は固唾をのむ。
赤黒い鱗を持つ若い龍は、迫り来る人族の軍勢をたった1匹で、圧倒している。
接近する人族の剣や槍は、その鱗を傷つける事なく砕け、灼熱の息吹が人族を焼き尽くす。
「ボルリス様!撤退を!」
軍勢の後方、ユナと似た深紅の髪の女性に、指揮官と思われる男が報告をする。
人族の敗北は確定的であり、これ以上の戦闘は、無駄死にを増やすだけであった。
「退くぞ、次こそは龍族を我が支配下におく」
深紅の髪を持つ神は、悔しさを表すように表情を歪め、撤退を支持する。
神々の争いに優位に立つ為、ボルリスは龍族を支配下に置こうと、争いを繰り返していた。
「ボルリスは気が強い奴だからの、相当悔しかろう」
それぞれの神と親しい関係を築いていたティナは、シン達にわかりやすいよう説明をする。
火の神ボルリスは、その苛烈な性格ゆえ、神の中で誰より負けず嫌いであり、強者である事にこだわりを持っていた。
「次はどこ行くんだ?」
ここまでシン達は短時間の移動を繰り返している。
ゆっくりとする時間もなく、入り込む情報の多さに飽き飽きとしていた。
「ウリスとサリスか、奴らが始まりだ。良く見ておくと良い」
ティナからの助言で、シン達は集中を高める。
この試練の本題となる物事を見極めようとしているのだ。
「あれが、神か?随分イメージと違うな」
美しい蒼色の髪を持つ女性が、海の神ウリスだとすぐに察する事は出来た。
だがもう1人の女性は、今まで見た神と違い、とても美しいとは言えない容姿をしていた。
肥大した体は、だらしなく感じられ、バサバサの髪をした女性が、とても神には思えない。
「私が一番だって、なんで気づかないのか」
お世辞にも美しいなどと言う事の出来ないサリスは、不満げな言葉を口にする。
その見た目ゆえ、彼女に味方する者達は、皆無といえるほど、殆ど存在しない。
「あんな白髪の奴らの何が良いんだか」
原始の世界でノアは圧倒的な人気を誇っていた。
唯一神の妹である事も関係あるのだが、その愛くるしい容姿に惹かれる者達も多く存在したのだ。
自分と真逆の存在であるノアに、サリスは妬みを持ち続けていた。
ノアと接触している時は抑えていたが、2人の仲は決して良いとは言えない間柄であり、話す事は滅多にない。
それゆえ、ノアは現在もサリスの事がわからないのだ。
そんなサリスの言葉を、ウリスが黙って頷き続けていた。
他人目線で見るシン達からしたら、ウリスの態度は冷たい印象を受ける。
サリスの事を全く相手にしていないと感じられるからだ。
だが、不満を漏らす事をしているサリスにはわからないのだろう。
ウリスの本心はシン達にもわからないが、話を聞いていないウリスに、一方的に愚痴を言い続けている。
「サリス、不満があるならば、あなたも努力をしたらどうなのです?」
「神にそんな事は必要ない」
嫌気がさしたウリスは、サリスに対し指摘をするが、サリスは全く聞き入れる事をしない。
「なら、せめてノアに何かしたらどうなのですか?」
「何をするんだ?」
「それは、自分で考えて下さい」
サリスは不満気な表情をするが、ウリスは相手をしない。
だが、その返答からサリスが乗り気であるのを感じ取っていた。
「そうですね、ノアを陥れたらどうなのです?」
「ほう、なかなか良さそうだな」
「では、まずはあなたにしてもらいたい事があります」
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