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氷の世界
決着のあとに
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「ちょっとシン、結構危なかったじゃない!」
決闘が終了すると同時にユナがシンに向け走る。
ミアが出て来る前までは余裕だったが、罠にかけられ身動きの取れない状況になった時は負ける可能性もあった。
「ほんとだな、さすがに鎌の特性をあんなすぐ見抜かれるとは思わなかったよ」
幾度も様々な魔獣達、対人戦闘を積んでいたセレス達は1度の攻防でシンの大鎌の特性を見抜いた。
そして魔術が効果ないと判断したミアの多重罠には追い詰められた。
虚無の大鎌を鎧に変形させ、対応する事が出来たが、あれも同じように槍の形状を変化させるエルリックを真似て実行してみたものの、全身に消滅能力を持たせた鎧は消耗が激しく長時間の維持は出来なかった。
”双蒼の烈刃”との戦いは傍目には余裕で勝利したように見えるのだが、実際にはシンも追い詰められていた。
「まあ、新しい戦い方も覚えられそうだし良い経験だな」
腕輪を変化させる事がシンにも可能だったという事は、これからの戦いで状況に合わせ武器を変え戦闘する事が可能だ。
エルリックの戦いを見るまでは考えもしなかった方法をこの戦いで試せた。
「シンさん、私達の完敗です」
意識を取り戻したセレスがシン達の所に来る。
足取りはまだふらついているが、じきに正常に戻るだろう。
「セレス、これからはお前がパーティーリーダーだ」
シンに同行するアイナの代わりにリーダーとなるのはセレスになる。
この決闘で”双蒼の烈刃”を指揮していたのはセレスだった。
アイナは自分のいなくなったパーティーの役割をこの決闘で見極めていた。
「私はここでガレイ達が意識を取り戻すのを待ちます。アイナ、またいつの日かお会いしましょう」
「ああ、お前達の成長を楽しみにしているぞ」
アイナとセレスはここで別れとなる。
未だ納得のいかない様子のルルをララが落ち着かせ、それぞれアイナとの別れを告げていた。
「師よ、いつスーリアから出立するのです?」
アイナは同行する為に支度もしなくてはならないだろう。
必要な物は魔導具の袋に詰め込む必要もあるので、2、3日は余裕を持たせるつもりであった。
「ねえ、アイナはセレス達よりも強いのよね?」
ユナはシンにだけに聞こえるように話をする。
これまでの話の中でアイナが”双蒼の烈刃”の中で一番の強者である事は理解出来る。
だがユナであっても彼女の力を測ることは出来なかった。
時折、その実力を伺えるような気配は感じるが、かつて”天帝”からも感じたような威圧感などが普段は全く察知出来ない。
普段の立ち振る舞いは堂々としており、隙なども見当たらない。
ユナはシンとの決闘でセレス達の実力を把握し、アイナの実力を想像しようとしたが、どの程度の実力差があるのかはわからない。
ただセレス達の先制攻撃にもアイナは動じる事なく、魔術による被害も受けていなかった。
「アイナの事はティナも何か知っているようだったしな、詳しいのはこれからわかるよ」
ティナからもアイナの事はそのうちわかると言われている。
これからシン達と共に長い旅にアイナは同行する事となる。
その実力についても自ずと分かる事だろう。
「アイナはこれからどうする?俺達は宿に戻るけど」
「では屋敷に戻り、急ぎ支度を整えます。必要な物を買い揃えるので、準備出来次第お迎えにあがります」
決闘に巻き込まれないよう遠くに待機していた竜車まで戻ったシンはスーリアまでの道のりを体力の回復に努めた。
なれない形状での消滅能力の使用は思っていたよりも消耗が激しく、完全に回復するまで少し時間がかかりそうだった。
スーリアの街に到着すると、城壁に囲まれた街は何やら騒がしくなっており、門周辺には屈強な冒険者達が集まり防御を固めるようにしている。
「何かあったのか?」
竜車の運転手が門番の者に何が起きているのかを確認する。
彼としても何かの魔獣などの襲撃が予知されたのならば、運送の商売にも影響がある。
「知らないのか?ルノー雪原の方から何か暴れていると証言があったらしいぞ、恐らくタイランクラスの魔獣が近くにいるんだ」
門番の1人の説明にシン達は冷や汗をかいてしまう。
まさかそこまで大事になっているとは思わなかったのだ。
「俺は悪くないよな?」
集まっている冒険者達は各々武器の手入れをし、いつ魔獣が現れても対応出来るように戦略を何通りも練り続けている。
そんな中で、自分達のせいとは言えないシン達はルノー雪原に残ったセレス達に責任を押し付ける事を決めた。
こういう事態になったのはセレス達が大規模魔術を行使したせいであり、シン達に責任はないと判断したのだ。
もともと決闘を申し出たのはセレス達であり、その場所がルノー雪原であると説明していないのも悪い。
襲撃に備え、ルノー雪原の方向に集まる武装した者達から逃げるように宿屋へと向かったシン達は騒動が収まるのを待つ事にした。
だが重傷を負ったガレイが中々目を覚まさなかったのか、その日スーリアの街に住む者達は眠る事なく、存在しない魔獣に備えていた。
決闘が終了すると同時にユナがシンに向け走る。
ミアが出て来る前までは余裕だったが、罠にかけられ身動きの取れない状況になった時は負ける可能性もあった。
「ほんとだな、さすがに鎌の特性をあんなすぐ見抜かれるとは思わなかったよ」
幾度も様々な魔獣達、対人戦闘を積んでいたセレス達は1度の攻防でシンの大鎌の特性を見抜いた。
そして魔術が効果ないと判断したミアの多重罠には追い詰められた。
虚無の大鎌を鎧に変形させ、対応する事が出来たが、あれも同じように槍の形状を変化させるエルリックを真似て実行してみたものの、全身に消滅能力を持たせた鎧は消耗が激しく長時間の維持は出来なかった。
”双蒼の烈刃”との戦いは傍目には余裕で勝利したように見えるのだが、実際にはシンも追い詰められていた。
「まあ、新しい戦い方も覚えられそうだし良い経験だな」
腕輪を変化させる事がシンにも可能だったという事は、これからの戦いで状況に合わせ武器を変え戦闘する事が可能だ。
エルリックの戦いを見るまでは考えもしなかった方法をこの戦いで試せた。
「シンさん、私達の完敗です」
意識を取り戻したセレスがシン達の所に来る。
足取りはまだふらついているが、じきに正常に戻るだろう。
「セレス、これからはお前がパーティーリーダーだ」
シンに同行するアイナの代わりにリーダーとなるのはセレスになる。
この決闘で”双蒼の烈刃”を指揮していたのはセレスだった。
アイナは自分のいなくなったパーティーの役割をこの決闘で見極めていた。
「私はここでガレイ達が意識を取り戻すのを待ちます。アイナ、またいつの日かお会いしましょう」
「ああ、お前達の成長を楽しみにしているぞ」
アイナとセレスはここで別れとなる。
未だ納得のいかない様子のルルをララが落ち着かせ、それぞれアイナとの別れを告げていた。
「師よ、いつスーリアから出立するのです?」
アイナは同行する為に支度もしなくてはならないだろう。
必要な物は魔導具の袋に詰め込む必要もあるので、2、3日は余裕を持たせるつもりであった。
「ねえ、アイナはセレス達よりも強いのよね?」
ユナはシンにだけに聞こえるように話をする。
これまでの話の中でアイナが”双蒼の烈刃”の中で一番の強者である事は理解出来る。
だがユナであっても彼女の力を測ることは出来なかった。
時折、その実力を伺えるような気配は感じるが、かつて”天帝”からも感じたような威圧感などが普段は全く察知出来ない。
普段の立ち振る舞いは堂々としており、隙なども見当たらない。
ユナはシンとの決闘でセレス達の実力を把握し、アイナの実力を想像しようとしたが、どの程度の実力差があるのかはわからない。
ただセレス達の先制攻撃にもアイナは動じる事なく、魔術による被害も受けていなかった。
「アイナの事はティナも何か知っているようだったしな、詳しいのはこれからわかるよ」
ティナからもアイナの事はそのうちわかると言われている。
これからシン達と共に長い旅にアイナは同行する事となる。
その実力についても自ずと分かる事だろう。
「アイナはこれからどうする?俺達は宿に戻るけど」
「では屋敷に戻り、急ぎ支度を整えます。必要な物を買い揃えるので、準備出来次第お迎えにあがります」
決闘に巻き込まれないよう遠くに待機していた竜車まで戻ったシンはスーリアまでの道のりを体力の回復に努めた。
なれない形状での消滅能力の使用は思っていたよりも消耗が激しく、完全に回復するまで少し時間がかかりそうだった。
スーリアの街に到着すると、城壁に囲まれた街は何やら騒がしくなっており、門周辺には屈強な冒険者達が集まり防御を固めるようにしている。
「何かあったのか?」
竜車の運転手が門番の者に何が起きているのかを確認する。
彼としても何かの魔獣などの襲撃が予知されたのならば、運送の商売にも影響がある。
「知らないのか?ルノー雪原の方から何か暴れていると証言があったらしいぞ、恐らくタイランクラスの魔獣が近くにいるんだ」
門番の1人の説明にシン達は冷や汗をかいてしまう。
まさかそこまで大事になっているとは思わなかったのだ。
「俺は悪くないよな?」
集まっている冒険者達は各々武器の手入れをし、いつ魔獣が現れても対応出来るように戦略を何通りも練り続けている。
そんな中で、自分達のせいとは言えないシン達はルノー雪原に残ったセレス達に責任を押し付ける事を決めた。
こういう事態になったのはセレス達が大規模魔術を行使したせいであり、シン達に責任はないと判断したのだ。
もともと決闘を申し出たのはセレス達であり、その場所がルノー雪原であると説明していないのも悪い。
襲撃に備え、ルノー雪原の方向に集まる武装した者達から逃げるように宿屋へと向かったシン達は騒動が収まるのを待つ事にした。
だが重傷を負ったガレイが中々目を覚まさなかったのか、その日スーリアの街に住む者達は眠る事なく、存在しない魔獣に備えていた。
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