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十章
53話 理の指輪2
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53話 理の指輪2
「そんな事があったんですね…」
カインから経緯を聞きジャスティスは顔を少し曇らせた。それは脱獄を手助けした後悔ではなくただ単にカインの身を案じた心配の気持ちが露わになった表情である事はカインもよく分かっていた。
「これは伝説級の代物らしくて、今や世界中の斡旋所で捜索の対象になっているらしい」
「ちょっとそれ見せてもらっていいですか」
ジャスティスがそう言うとカインは黙って指輪をジャスティスに手渡した。
「この宝玉は橄欖石(かんらんせき)ですね」
指輪を一目見てジャスティスがそう言うと、
「え、ジャスティスちゃん宝石の名前すぐに分かるの?」
今まで黙って聞いていたルキナが少し驚いたように言う。
「あ、はい。僕そういうの大好きで」
ジャスティスが頷けば――
「そうそうコイツ鍛治とか物作りが得意みたいだぜ」
そう言いつつ、カインは腰からジャスティスが以前ドラゴンの爪で作り出したダガーを取り出して見せた。
「俺のこの盾もジャスティスに作ってもらった」
と。ウルーガまでもが盾をドンと目の前に掲げて見せてきた。
「ジャスティスちゃんすごいじゃないの! こんな才能あるなんて!」
ルキナは目を輝かせてそう言うとジャスティスの頭を自分の胸に抱き寄せて少し乱暴に『いいこいいこ』と撫でる。
「え、あ、いえ…才能ってほどじゃ……」
ルキナの突然の抱擁(ほうよう)にジャスティスは気が動転してしまい言葉が上手く出てこなかった。
「おいルキナ。本人が困ってるからやめてやれ……」
その様子に呆れたカインがすぐさま助け舟を出すと、
「あらやだ、あたしったら! ごめんなさいね!」
そう言いルキナはパッとジャスティスを解放した。
「……い、いえ」
ジャスティスは小さく呟いてルキナに乱されたであろう髪をサッと撫でて整える。
「で。カーくんこれが報酬ってわけ?」
ルキナはジャスティスの手から素早く指輪をつまみ取り自分の目の前でクルリと一周させて見る。
「いや。それは報酬じゃねえ」
カインは首を軽く横に振るう。
「『伝説級』の代物だって言ったろ。それを手にしたって事は……」
カインがそこで言葉を止めるとルキナが続けた。
「……この先が厄介ってこと?」
「そういう事だ」
静かに頷くカインとルキナの間には何やら緊張した空気がはしり、それを意図せず感じ取ったジャスティスがコクリと唾を飲み込む。
「そういう事ね」
カインと同じように納得したルキナは軽い溜息を吐いて興味深げに指輪を眺めてふと気づいたように、
「あら? ここに何か掘られているわね」
指輪の内側に刻まれた文字らしきものを見つけた。
「ああ気づいたか。それ失われた言語(カオスワーズ)っていうらしいな」
「カオスワーズ?」
ジャスティスは興味が湧いたようで、ルキナが持っていた指輪を再び受け取る。親指と人差し指で指輪を挟んで持ちじっくりと眺めて見ると宝玉が埋め込まれた場所と対面した内側に複雑な紋様の文字が刻まれているのが見えた。
「そんな事があったんですね…」
カインから経緯を聞きジャスティスは顔を少し曇らせた。それは脱獄を手助けした後悔ではなくただ単にカインの身を案じた心配の気持ちが露わになった表情である事はカインもよく分かっていた。
「これは伝説級の代物らしくて、今や世界中の斡旋所で捜索の対象になっているらしい」
「ちょっとそれ見せてもらっていいですか」
ジャスティスがそう言うとカインは黙って指輪をジャスティスに手渡した。
「この宝玉は橄欖石(かんらんせき)ですね」
指輪を一目見てジャスティスがそう言うと、
「え、ジャスティスちゃん宝石の名前すぐに分かるの?」
今まで黙って聞いていたルキナが少し驚いたように言う。
「あ、はい。僕そういうの大好きで」
ジャスティスが頷けば――
「そうそうコイツ鍛治とか物作りが得意みたいだぜ」
そう言いつつ、カインは腰からジャスティスが以前ドラゴンの爪で作り出したダガーを取り出して見せた。
「俺のこの盾もジャスティスに作ってもらった」
と。ウルーガまでもが盾をドンと目の前に掲げて見せてきた。
「ジャスティスちゃんすごいじゃないの! こんな才能あるなんて!」
ルキナは目を輝かせてそう言うとジャスティスの頭を自分の胸に抱き寄せて少し乱暴に『いいこいいこ』と撫でる。
「え、あ、いえ…才能ってほどじゃ……」
ルキナの突然の抱擁(ほうよう)にジャスティスは気が動転してしまい言葉が上手く出てこなかった。
「おいルキナ。本人が困ってるからやめてやれ……」
その様子に呆れたカインがすぐさま助け舟を出すと、
「あらやだ、あたしったら! ごめんなさいね!」
そう言いルキナはパッとジャスティスを解放した。
「……い、いえ」
ジャスティスは小さく呟いてルキナに乱されたであろう髪をサッと撫でて整える。
「で。カーくんこれが報酬ってわけ?」
ルキナはジャスティスの手から素早く指輪をつまみ取り自分の目の前でクルリと一周させて見る。
「いや。それは報酬じゃねえ」
カインは首を軽く横に振るう。
「『伝説級』の代物だって言ったろ。それを手にしたって事は……」
カインがそこで言葉を止めるとルキナが続けた。
「……この先が厄介ってこと?」
「そういう事だ」
静かに頷くカインとルキナの間には何やら緊張した空気がはしり、それを意図せず感じ取ったジャスティスがコクリと唾を飲み込む。
「そういう事ね」
カインと同じように納得したルキナは軽い溜息を吐いて興味深げに指輪を眺めてふと気づいたように、
「あら? ここに何か掘られているわね」
指輪の内側に刻まれた文字らしきものを見つけた。
「ああ気づいたか。それ失われた言語(カオスワーズ)っていうらしいな」
「カオスワーズ?」
ジャスティスは興味が湧いたようで、ルキナが持っていた指輪を再び受け取る。親指と人差し指で指輪を挟んで持ちじっくりと眺めて見ると宝玉が埋め込まれた場所と対面した内側に複雑な紋様の文字が刻まれているのが見えた。
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