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109:真実が明らかになる時①
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大声ではっきりとそう言ったソフィアは、ジャックを見た。
すると目が合ったジャックは、なんと笑ったのだ。
(ジャック様……。最後の悪あがきを見ていて下さいね!)
ソフィアはジャックの笑顔に勇気を貰う。
「何を言っているの! 言いがかりよ!」
急に火の粉が降りかかって来た第二王子夫人の顔からは、先程までの余裕の笑みはすっかり消えている。
「食事会直前に私の部屋を訪ねて来て、あの指輪を私の指へはめたのは、第二王子夫人です。私に国王陛下へグラスを渡させたのも、第二王子夫人です。私以外に、グラスへ何かを混入させることが出来るのは、第二王子夫人しかいません」
「いいえ、ソフィア様がしたのでしょう!?」
蛇のような眼でソフィアを睨む第二王子夫人を見て、(本性を現したわね)そうソフィアは思った。
「私はしていないので、第二王子夫人がしたのです」
「一度罪を認めておいて……最後に私への嫌がらせのつもり!?」
夫人は顔を真っ赤にして激高している。
「陛下、私ではありません! ソフィア様は嘘をついています! ソフィア様の侍女も、私は部屋を訪ねていないと言っているのですから!」
その瞬間、国王は眉をピクッと上げた。
「何故そのことを知っている? 捜査内容は公開していないはずだが?」
国王の言葉に、夫人は”ハッ”とした顔をして青ざめる。
その様子を見ながら、冷ややかに国王は続ける。
「それとも、そなたが命じたから知っているのか?」
”ザワッ”
ソフィアは一体何が起こっているのかと、ポカンとしてしまう。
ただ、風向きが明らかに変わったことだけは、確かだった。
ジャックを見ると、目が合い微笑みを返してくれる。
『大丈夫だ』
そう言われているように、ソフィアは感じた。
すると今度は、ジャックが険しい表情で口を開く。
「ソフィアの侍女も白状し、ソフィアの発言が正しいことを認めました。そして、あなたにずっと脅されていたことも。家族を路頭に迷わせたくなければ言うことを聞けと、あなたはこの手口でよく使用人を利用していたそうですね。そして不要になった者は口封じも兼ねて、難癖を付けてクビにしていた」
ジャックは軽蔑の眼差しで、顔面蒼白の夫人を見ながら続ける。
「また、ヴァイオレット・リッチィの証言もあります。与えた情報と物を、勝手にこのように悪用されたことを知って驚いていましたよ」
「えっ……まさか、ヴァイオレット様が? ……あのお方は思慮深く、そのように軽々しく口を割るお方ではないはず……」
夫人は驚きから、つい呟いてしまう。
ヴァイオレットは今、自分の選んだ養子の子にぞっこんで、幸せな日々を送っているのだ。
そんなヴァイオレットは、どんどん毒気を抜かれている。
今ではすっかり”優しい祖母”だ。
そのため、自分の知らないところで勝手に悪用されたことを知り、いくら旧友の娘だとは言え不快に思った。
おまけに、今では過去の自分の言動に対して『申し訳なかった』とさえ思っている、元嫁ソフィアを嵌めるために利用されたことを知り、心底腹を立てた。
だから、ヴァイオレットは全てを話したのだ。
聞かれていないことまで、自ら……
すると目が合ったジャックは、なんと笑ったのだ。
(ジャック様……。最後の悪あがきを見ていて下さいね!)
ソフィアはジャックの笑顔に勇気を貰う。
「何を言っているの! 言いがかりよ!」
急に火の粉が降りかかって来た第二王子夫人の顔からは、先程までの余裕の笑みはすっかり消えている。
「食事会直前に私の部屋を訪ねて来て、あの指輪を私の指へはめたのは、第二王子夫人です。私に国王陛下へグラスを渡させたのも、第二王子夫人です。私以外に、グラスへ何かを混入させることが出来るのは、第二王子夫人しかいません」
「いいえ、ソフィア様がしたのでしょう!?」
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「私はしていないので、第二王子夫人がしたのです」
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夫人は顔を真っ赤にして激高している。
「陛下、私ではありません! ソフィア様は嘘をついています! ソフィア様の侍女も、私は部屋を訪ねていないと言っているのですから!」
その瞬間、国王は眉をピクッと上げた。
「何故そのことを知っている? 捜査内容は公開していないはずだが?」
国王の言葉に、夫人は”ハッ”とした顔をして青ざめる。
その様子を見ながら、冷ややかに国王は続ける。
「それとも、そなたが命じたから知っているのか?」
”ザワッ”
ソフィアは一体何が起こっているのかと、ポカンとしてしまう。
ただ、風向きが明らかに変わったことだけは、確かだった。
ジャックを見ると、目が合い微笑みを返してくれる。
『大丈夫だ』
そう言われているように、ソフィアは感じた。
すると今度は、ジャックが険しい表情で口を開く。
「ソフィアの侍女も白状し、ソフィアの発言が正しいことを認めました。そして、あなたにずっと脅されていたことも。家族を路頭に迷わせたくなければ言うことを聞けと、あなたはこの手口でよく使用人を利用していたそうですね。そして不要になった者は口封じも兼ねて、難癖を付けてクビにしていた」
ジャックは軽蔑の眼差しで、顔面蒼白の夫人を見ながら続ける。
「また、ヴァイオレット・リッチィの証言もあります。与えた情報と物を、勝手にこのように悪用されたことを知って驚いていましたよ」
「えっ……まさか、ヴァイオレット様が? ……あのお方は思慮深く、そのように軽々しく口を割るお方ではないはず……」
夫人は驚きから、つい呟いてしまう。
ヴァイオレットは今、自分の選んだ養子の子にぞっこんで、幸せな日々を送っているのだ。
そんなヴァイオレットは、どんどん毒気を抜かれている。
今ではすっかり”優しい祖母”だ。
そのため、自分の知らないところで勝手に悪用されたことを知り、いくら旧友の娘だとは言え不快に思った。
おまけに、今では過去の自分の言動に対して『申し訳なかった』とさえ思っている、元嫁ソフィアを嵌めるために利用されたことを知り、心底腹を立てた。
だから、ヴァイオレットは全てを話したのだ。
聞かれていないことまで、自ら……
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