87 / 113
86:監視
しおりを挟む
「俺の思慮が足りなかった。驚かせてしまい、すまない」
今日はここに泊まるようにと通された客間で、ジャックはソフィアとブライトに平謝りだ。
しかし、ブライトは城に泊まれることに明らかにウキウキしているし、ソフィアも気にしておらず、笑顔で言う。
「驚きましたけど、仕方のないことです。それほどまでに謝らないで下さい」
「国王陛下のご子息の体調が優れないのが続いているのだ。にも関わらず第二王子殿下の子供は元気に鳴き声が響き渡っていて……。わざと国王夫妻の目のつく所を散歩したりしているのだ……。だから余計にピリピリしていて……。普段はあそこまであからさまに目の敵にはしないのだが……」
ジャックの全身が『参った』と言っている。
疲れた様子のジャックに、ブライトが抱きつきにいく。
「あー、癒される! ブライトー!!!」
「わー!!!」
ギューッと抱きつぶさんばかりにジャックに抱き締められているブライトは、嬉しそうに笑っている。
その様子を微笑ましく思いながらも、ソフィアは冷静だった。
(普段はあそこまであからさまではない……か。どちらにしろ、ブライトの存在が不愉快だということね……)
「私達を監視したいから、城に住まわせるということですよね?」
ソフィアのその言葉に、ジャックは顔を上げ苦笑いを浮かべる。
「……目の届くところに置いておいて、安心なさりたいのさ……」
ソフィアはジャックの心労の多さに胸が痛くなる。
「ジャック様のお父上である前国王陛下へは、ご挨拶するのですか?」
「国王陛下に、今は体調が優れないから報告はやめておくようにと言われたよ」
苦笑いが張り付いたままになってしまっているジャックに、ソフィアも顔を顰める。
(私たちに結婚して欲しくないし、ブライトの存在を大っぴらにはしたくないから、賛成し後押しするであろう前国王陛下には知られたくないのね……)
我が国の後継者争いがこれほど黒いことになっていたとは、ソフィアは今まで考えたこともなかった。
しかしソフィアは、気持ちを切り替える。
「遅かれ早かれここに住むことになっていたことでしょう。早く慣れることが出来るように、ブライトと頑張ります」
これはソフィアの本心だった。
(ジャック様の逃れられない運命、一緒に戦うしかないわ! ブライトがここに住みたくないと言い出すまで、ここで頑張るわよ!)
ソフィア自信が、親子三人での生活を望んだのだ。
ソフィアは『やれるだけやろう』そう思っていた。
(ジャック様の心労を少しでも軽く出来たら良いのだけれど……)
こうも考えていたのだった……
今日はここに泊まるようにと通された客間で、ジャックはソフィアとブライトに平謝りだ。
しかし、ブライトは城に泊まれることに明らかにウキウキしているし、ソフィアも気にしておらず、笑顔で言う。
「驚きましたけど、仕方のないことです。それほどまでに謝らないで下さい」
「国王陛下のご子息の体調が優れないのが続いているのだ。にも関わらず第二王子殿下の子供は元気に鳴き声が響き渡っていて……。わざと国王夫妻の目のつく所を散歩したりしているのだ……。だから余計にピリピリしていて……。普段はあそこまであからさまに目の敵にはしないのだが……」
ジャックの全身が『参った』と言っている。
疲れた様子のジャックに、ブライトが抱きつきにいく。
「あー、癒される! ブライトー!!!」
「わー!!!」
ギューッと抱きつぶさんばかりにジャックに抱き締められているブライトは、嬉しそうに笑っている。
その様子を微笑ましく思いながらも、ソフィアは冷静だった。
(普段はあそこまであからさまではない……か。どちらにしろ、ブライトの存在が不愉快だということね……)
「私達を監視したいから、城に住まわせるということですよね?」
ソフィアのその言葉に、ジャックは顔を上げ苦笑いを浮かべる。
「……目の届くところに置いておいて、安心なさりたいのさ……」
ソフィアはジャックの心労の多さに胸が痛くなる。
「ジャック様のお父上である前国王陛下へは、ご挨拶するのですか?」
「国王陛下に、今は体調が優れないから報告はやめておくようにと言われたよ」
苦笑いが張り付いたままになってしまっているジャックに、ソフィアも顔を顰める。
(私たちに結婚して欲しくないし、ブライトの存在を大っぴらにはしたくないから、賛成し後押しするであろう前国王陛下には知られたくないのね……)
我が国の後継者争いがこれほど黒いことになっていたとは、ソフィアは今まで考えたこともなかった。
しかしソフィアは、気持ちを切り替える。
「遅かれ早かれここに住むことになっていたことでしょう。早く慣れることが出来るように、ブライトと頑張ります」
これはソフィアの本心だった。
(ジャック様の逃れられない運命、一緒に戦うしかないわ! ブライトがここに住みたくないと言い出すまで、ここで頑張るわよ!)
ソフィア自信が、親子三人での生活を望んだのだ。
ソフィアは『やれるだけやろう』そう思っていた。
(ジャック様の心労を少しでも軽く出来たら良いのだけれど……)
こうも考えていたのだった……
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。
Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。
政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。
しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。
「承知致しました」
夫は二つ返事で承諾した。
私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…!
貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。
私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――…
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる