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86:監視

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「俺の思慮が足りなかった。驚かせてしまい、すまない」

今日はここに泊まるようにと通された客間で、ジャックはソフィアとブライトに平謝りだ。
しかし、ブライトは城に泊まれることに明らかにウキウキしているし、ソフィアも気にしておらず、笑顔で言う。

「驚きましたけど、仕方のないことです。それほどまでに謝らないで下さい」

「国王陛下のご子息の体調が優れないのが続いているのだ。にも関わらず第二王子殿下の子供は元気に鳴き声が響き渡っていて……。わざと国王夫妻の目のつく所を散歩したりしているのだ……。だから余計にピリピリしていて……。普段はあそこまであからさまに目の敵にはしないのだが……」

ジャックの全身が『参った』と言っている。
疲れた様子のジャックに、ブライトが抱きつきにいく。

「あー、癒される! ブライトー!!!」

「わー!!!」

ギューッと抱きつぶさんばかりにジャックに抱き締められているブライトは、嬉しそうに笑っている。
その様子を微笑ましく思いながらも、ソフィアは冷静だった。

(普段はあそこまであからさまではない……か。どちらにしろ、ブライトの存在が不愉快だということね……)

「私達を監視したいから、城に住まわせるということですよね?」

ソフィアのその言葉に、ジャックは顔を上げ苦笑いを浮かべる。

「……目の届くところに置いておいて、安心なさりたいのさ……」

ソフィアはジャックの心労の多さに胸が痛くなる。

「ジャック様のお父上である前国王陛下へは、ご挨拶するのですか?」

「国王陛下に、今は体調が優れないから報告はやめておくようにと言われたよ」

苦笑いが張り付いたままになってしまっているジャックに、ソフィアも顔を顰める。

(私たちに結婚して欲しくないし、ブライトの存在を大っぴらにはしたくないから、賛成し後押しするであろう前国王陛下には知られたくないのね……)

我が国の後継者争いがこれほど黒いことになっていたとは、ソフィアは今まで考えたこともなかった。

しかしソフィアは、気持ちを切り替える。

「遅かれ早かれここに住むことになっていたことでしょう。早く慣れることが出来るように、ブライトと頑張ります」

これはソフィアの本心だった。

(ジャック様の逃れられない運命、一緒に戦うしかないわ! ブライトがここに住みたくないと言い出すまで、ここで頑張るわよ!)

ソフィア自信が、親子三人での生活を望んだのだ。
ソフィアは『やれるだけやろう』そう思っていた。

(ジャック様の心労を少しでも軽く出来たら良いのだけれど……)

こうも考えていたのだった……

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