86 / 113
85:国王(第一王子)と王妃との初対面
しおりを挟む
「陛下、これは一体どういうことですか!?」
ソフィアとブライトが城へ着くとすぐに、ジャックも呼ばれた。
国王の間へ入室したジャックは、そこに居るはずのないソフィアとブライトの姿を確認して驚く。
普段は滅多に声を荒げないジャックも、さすがに動揺せずにはいられなかった。
「ジャッカーソン、水臭いではないか。何故私に報告しないのだ?」
国王と王妃は、壇上の国王・王妃の座に腰を下ろして3人を見下ろしている。
微笑みを浮かべながら言う国王に、ジャックは言葉を詰まらせた。
「……ご存じだったのですか?」
「ああ、もとは父上の持ち物だったあの屋敷に人が住みだしたと聞けば、どういうことか当然調べるさ。一カ月待ったが報告に来る気配が全くなかったから、こちらからセッティングしてあげたよ」
国王の変わらない冷たい微笑みに、ジャックはバツの悪さを感じる。
「……報告せずに申し訳ありませんでした」
ジャックが謝罪し頭を下げたので、ソフィアも一緒に頭を下げる。
するとそれを見て、ブライトも頭を下げた。
「ははっ。微笑ましいね。まさか、天涯孤独宣言をしていたジャッカーソンに子供がいたなんて。彼女は随分美人だね。遊び相手に子供が出来ちゃったパターンか。父上と同じで驚くね」
国王の表情は全く変わらず、微笑みを浮かべたままで話している。
隣にいる王妃は何も言わずに、ずっと伏し目がちにソフィアとブライトを見ている。
(お二人共、怒っていらっしゃるわ……)
ソフィアは、国王と王妃の静かな怒りを感じていた。
「……報告が遅くなったこと、申し訳ありません。私は前国王陛下とは状況が違います。私に妻はおらず、彼女は愛人ではありませんから。今後、正式に婚姻を結びたいと考えております」
ジャックは怯むことなく、堂々としている。
この独特な雰囲気に圧倒されているソフィアだったが、はっきりと言ってくれたジャックを嬉しく思った。
「……そう。まずはこの城に住んで、慣れてからにした方が良い。今日からここに住むように。隠れてこそこそされたのでは堪らないよ。私に忠誠を誓ってくれているのだろ? ジャッカーソン、君は王位継承権のある第三王子だ。よって、王家の人間としてちゃんとしないとね?」
国王はブライトを見た。
ブライトを見る国王は微笑みを浮かべたままだが、国王の瞳は決して笑ってはいない。
(監視をするために城に住まわせたいのね……)
ソフィアは”ゴクッ”とつばを飲み込み、そして思った。
(ブライトは王家の血を引く子供だということを、改めて実感するしかないわね……)
ソフィアとブライトが城へ着くとすぐに、ジャックも呼ばれた。
国王の間へ入室したジャックは、そこに居るはずのないソフィアとブライトの姿を確認して驚く。
普段は滅多に声を荒げないジャックも、さすがに動揺せずにはいられなかった。
「ジャッカーソン、水臭いではないか。何故私に報告しないのだ?」
国王と王妃は、壇上の国王・王妃の座に腰を下ろして3人を見下ろしている。
微笑みを浮かべながら言う国王に、ジャックは言葉を詰まらせた。
「……ご存じだったのですか?」
「ああ、もとは父上の持ち物だったあの屋敷に人が住みだしたと聞けば、どういうことか当然調べるさ。一カ月待ったが報告に来る気配が全くなかったから、こちらからセッティングしてあげたよ」
国王の変わらない冷たい微笑みに、ジャックはバツの悪さを感じる。
「……報告せずに申し訳ありませんでした」
ジャックが謝罪し頭を下げたので、ソフィアも一緒に頭を下げる。
するとそれを見て、ブライトも頭を下げた。
「ははっ。微笑ましいね。まさか、天涯孤独宣言をしていたジャッカーソンに子供がいたなんて。彼女は随分美人だね。遊び相手に子供が出来ちゃったパターンか。父上と同じで驚くね」
国王の表情は全く変わらず、微笑みを浮かべたままで話している。
隣にいる王妃は何も言わずに、ずっと伏し目がちにソフィアとブライトを見ている。
(お二人共、怒っていらっしゃるわ……)
ソフィアは、国王と王妃の静かな怒りを感じていた。
「……報告が遅くなったこと、申し訳ありません。私は前国王陛下とは状況が違います。私に妻はおらず、彼女は愛人ではありませんから。今後、正式に婚姻を結びたいと考えております」
ジャックは怯むことなく、堂々としている。
この独特な雰囲気に圧倒されているソフィアだったが、はっきりと言ってくれたジャックを嬉しく思った。
「……そう。まずはこの城に住んで、慣れてからにした方が良い。今日からここに住むように。隠れてこそこそされたのでは堪らないよ。私に忠誠を誓ってくれているのだろ? ジャッカーソン、君は王位継承権のある第三王子だ。よって、王家の人間としてちゃんとしないとね?」
国王はブライトを見た。
ブライトを見る国王は微笑みを浮かべたままだが、国王の瞳は決して笑ってはいない。
(監視をするために城に住まわせたいのね……)
ソフィアは”ゴクッ”とつばを飲み込み、そして思った。
(ブライトは王家の血を引く子供だということを、改めて実感するしかないわね……)
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。
Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。
政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。
しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。
「承知致しました」
夫は二つ返事で承諾した。
私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…!
貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。
私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――…
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。
【完結】さいこん!〜最悪の政略結婚から始まる(かもしれない)愛〜
しゃでぃや
恋愛
聖王国第四皇女セラスティアは、突然の勅命に驚いた。
兄である聖王猊下から、自身の婚姻が発表されたのだ。
セラスティアが一度は嫁いだ小国は兄王の統治する祖国によって滅ぼされ、出戻って来たばかりだというのに。
しかも相手はよからぬ噂の絶えない筆頭宰相ザカリアス。
曰く付きの皇女を下賜することにより、宰相の力を削ごうというのが王の狙いだった。
お互い意に染まぬ政略結婚。
宰相と皇女は反目しすれ違いながらも、しかし少しずつ心を通わせ合う……
※葦(奇数話)としゃでぃや(偶数話)の合作小説です。
葦 →https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/680880394
しゃでぃや →https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/467163294
※合作の為、文体などに多少の違いがあります。奇数話は宰相寄り、偶数話は皇女寄りの視点です。
※ほぼ打合せなし、見切り発車ではじめたので設定にはいい加減なところがあります。“ぽさ”を重視しています。
※完結済みハッピーエンドです。全22話。
※なろうにも同じものをあげています。
イラストは炉鳩様(@rohatomura )に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる