【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜

ひかり芽衣

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85:国王(第一王子)と王妃との初対面

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「陛下、これは一体どういうことですか!?」

ソフィアとブライトが城へ着くとすぐに、ジャックも呼ばれた。

国王の間へ入室したジャックは、そこに居るはずのないソフィアとブライトの姿を確認して驚く。
普段は滅多に声を荒げないジャックも、さすがに動揺せずにはいられなかった。

「ジャッカーソン、水臭いではないか。何故私に報告しないのだ?」

国王と王妃は、壇上の国王・王妃の座に腰を下ろして3人を見下ろしている。
微笑みを浮かべながら言う国王に、ジャックは言葉を詰まらせた。

「……ご存じだったのですか?」

「ああ、もとは父上の持ち物だったあの屋敷に人が住みだしたと聞けば、どういうことか当然調べるさ。一カ月待ったが報告に来る気配が全くなかったから、こちらからセッティングしてあげたよ」

国王の変わらない冷たい微笑みに、ジャックはバツの悪さを感じる。

「……報告せずに申し訳ありませんでした」

ジャックが謝罪し頭を下げたので、ソフィアも一緒に頭を下げる。
するとそれを見て、ブライトも頭を下げた。

「ははっ。微笑ましいね。まさか、天涯孤独宣言をしていたジャッカーソンに子供がいたなんて。彼女は随分美人だね。遊び相手に子供が出来ちゃったパターンか。父上と同じで驚くね」

国王の表情は全く変わらず、微笑みを浮かべたままで話している。
隣にいる王妃は何も言わずに、ずっと伏し目がちにソフィアとブライトを見ている。

(お二人共、怒っていらっしゃるわ……)

ソフィアは、国王と王妃の静かな怒りを感じていた。

「……報告が遅くなったこと、申し訳ありません。私は前国王陛下とは状況が違います。私に妻はおらず、彼女は愛人ではありませんから。今後、正式に婚姻を結びたいと考えております」

ジャックは怯むことなく、堂々としている。
この独特な雰囲気に圧倒されているソフィアだったが、はっきりと言ってくれたジャックを嬉しく思った。

「……そう。まずはこの城に住んで、慣れてからにした方が良い。今日からここに住むように。隠れてこそこそされたのでは堪らないよ。私に忠誠を誓ってくれているのだろ? ジャッカーソン、君は王位継承権のある第三王子だ。よって、王家の人間としてちゃんとしないとね?」

国王はブライトを見た。
ブライトを見る国王は微笑みを浮かべたままだが、国王の瞳は決して笑ってはいない。

(監視をするために城に住まわせたいのね……)

ソフィアは”ゴクッ”とつばを飲み込み、そして思った。

(ブライトは王家の血を引く子供だということを、改めて実感するしかないわね……)


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