113 / 113
112:最終話 ぴったりの指輪
しおりを挟む
一週間後、ソフィアは永遠の愛を誓っていた。
森の中の小さな教会には、ソフィアとジャック、そしてブライトの三人だけがいる。
神父役はブライトだ。
指輪のサイズ直しが済んだことをジャックが伝えると、ブライトが『結婚式をしよう!』と言い出したのだ。
二人の盛大な結婚式を前国王が張り切って計画中だが、ひとまず三人で誓いを立てることにしたのだった。
「ジャッカーソン・ド・シュタインは、ソフィア・モードンを妻とし、生涯愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います」
神父になりきって紙を読み上げるブライトを、ジャックは微笑ましく思いながら返事をする。
「ソフィア・モードンは、ジャッカーソン・ド・シュタインを夫とし、生涯愛し続けることを誓いますか?」
「ふふっ。はい、誓います」
ソフィアもブライトが可愛くて仕方がない。
「もう、お母様、笑わないでよー!」
「はいはい、ごめんね」
少し頬を膨らませながらブライトは、二つの指輪が載った入れ物を両手で掲げた。
まだソフィアの指輪しかないため、ジャックの指輪はブライトが紙で作った物だ。
「では、指輪の交換を。……お、お父様……どうぞ!!!」
それを聞いた瞬間、ソフィアとジャックは驚いてブライトを見る。
指輪をジャックへ差し出しながら、顔を真っ赤にして下を向いているブライトは、急にジャックに強く抱きしめられた。
「……っ」
初めて呼ばれる"お父様"という呼称に、ジャックは何も言葉が出て来ず、ただ涙を流しながらブライトを抱きしめた。
そしてソフィアは、その大きな体を包み込むようにそっと抱きしめる。
「……お父様、早くお母様に指輪を嵌めてあげて!」
ブライトの言葉で三人は離れ、そっとジャックはソフィアの指に指輪を嵌めた。
ソフィアの瞳と同じ綺麗なブルーの指輪は、金属の部分が付け替えられ、内側に”共に”と新たに刻まれたのだった。
この誓いの通り、ソフィアとジャックは命ある限り共に過ごした。
ジャックはずっと、縁の下の力持ちとして国王を支えた。
そしてソフィアは、そんなジャックを支え続けた。
幸福は時に恐怖心を煽りもする。
「ソフィアに何かあれば俺は生きてはいけない」
ジャックのその想いは、更に強くなったのだ。
ソフィアもジャックの想いを尊重し、二人はもう子供を作らなかった。
三人家族でずっと仲良く暮らし、ブライトは幼い頃の志を貫き、騎士となる。
ソフィアは生涯二度と、指輪を首輪だと感じることはなかったのだった……
【完】
※最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次は『双子の伯爵令嬢と許嫁達の物語』の修正・追記をしたいと考えております。
修正後、もしよければ読んでみていただけたら嬉しいです(^^)/
森の中の小さな教会には、ソフィアとジャック、そしてブライトの三人だけがいる。
神父役はブライトだ。
指輪のサイズ直しが済んだことをジャックが伝えると、ブライトが『結婚式をしよう!』と言い出したのだ。
二人の盛大な結婚式を前国王が張り切って計画中だが、ひとまず三人で誓いを立てることにしたのだった。
「ジャッカーソン・ド・シュタインは、ソフィア・モードンを妻とし、生涯愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います」
神父になりきって紙を読み上げるブライトを、ジャックは微笑ましく思いながら返事をする。
「ソフィア・モードンは、ジャッカーソン・ド・シュタインを夫とし、生涯愛し続けることを誓いますか?」
「ふふっ。はい、誓います」
ソフィアもブライトが可愛くて仕方がない。
「もう、お母様、笑わないでよー!」
「はいはい、ごめんね」
少し頬を膨らませながらブライトは、二つの指輪が載った入れ物を両手で掲げた。
まだソフィアの指輪しかないため、ジャックの指輪はブライトが紙で作った物だ。
「では、指輪の交換を。……お、お父様……どうぞ!!!」
それを聞いた瞬間、ソフィアとジャックは驚いてブライトを見る。
指輪をジャックへ差し出しながら、顔を真っ赤にして下を向いているブライトは、急にジャックに強く抱きしめられた。
「……っ」
初めて呼ばれる"お父様"という呼称に、ジャックは何も言葉が出て来ず、ただ涙を流しながらブライトを抱きしめた。
そしてソフィアは、その大きな体を包み込むようにそっと抱きしめる。
「……お父様、早くお母様に指輪を嵌めてあげて!」
ブライトの言葉で三人は離れ、そっとジャックはソフィアの指に指輪を嵌めた。
ソフィアの瞳と同じ綺麗なブルーの指輪は、金属の部分が付け替えられ、内側に”共に”と新たに刻まれたのだった。
この誓いの通り、ソフィアとジャックは命ある限り共に過ごした。
ジャックはずっと、縁の下の力持ちとして国王を支えた。
そしてソフィアは、そんなジャックを支え続けた。
幸福は時に恐怖心を煽りもする。
「ソフィアに何かあれば俺は生きてはいけない」
ジャックのその想いは、更に強くなったのだ。
ソフィアもジャックの想いを尊重し、二人はもう子供を作らなかった。
三人家族でずっと仲良く暮らし、ブライトは幼い頃の志を貫き、騎士となる。
ソフィアは生涯二度と、指輪を首輪だと感じることはなかったのだった……
【完】
※最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次は『双子の伯爵令嬢と許嫁達の物語』の修正・追記をしたいと考えております。
修正後、もしよければ読んでみていただけたら嬉しいです(^^)/
20
お気に入りに追加
81
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
長編完結お疲れ様でした!
面白かったです!
実はひかりさんの作品は初めて読んだのですが、他のも読んでみます!
そして、新作も楽しみにしていますね!
本当にお疲れ様でした!!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
他の作品も、是非読んでみていただけたら嬉しいです^ ^
ついに……良かった!
けどあれ?これで終わりではないんですね!!!
最後まで楽しみに読みます!
ずっと読んで下さっていてありがとうございます!
もう少し続きます!
良ければ最後まで読んでくれたら嬉しいです^ ^
まさかのジェームズが良い人になるなんて……
人には色々な一面がありますよね。
そして、付き合う人によって大きく影響を受ける。
そんなことを改めて考えました!
続けて読んで下さってありがとうございます!
周りの人の影響力って大きいですよね。