【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜

81：再び指輪をはめる時

いきなりソフィアがブライトに真実を告げ、ジャックは驚きつつも嬉しかった。

「今まで君と母上を放っておいてすまなかった」

ジャックは、ソフィアのそばにいるブライトを真っ直ぐ見て言う。

「え、お父様……？」

ブライトは始めは戸惑った様子だったが、抱いていた自分の希望が現実となったことを理解した途端、嬉しそうにはにかんだ。

その様子にホッとしたジャックは、そっと立ち上がりソフィアとブライトの側へ行くと、膝をつく。
そして、二人の様子を伺いながら”そっ”と二人を抱き寄せた。
二人から拒否がないことがわかると、抱きしめる腕の力を更に強くする……

ソフィアとブライトの反応を見ながら、恐る恐る手を差し出して来たジャックに、ソフィアはジャックの真心を感じた。
そして、ジャックを信じようと決める。

（とても温かいわ……）

それは、ソフィアがずっと懐かしみ、欲していた温もりだ……

するとブライトが、笑顔でジャックを抱きしめ返しながら大きな声をあげた。

「今までずっと、お母様と僕を守ってくれてありがとうございました！」

ジャックは何のことかわからずにキョトンとしてしまう。

(ふふっ。可愛い表情……)

ソフィアは微笑ましく想いながら、ジャックの腕の中でもぞもぞとネックレスから指輪を取り外し、ジャックに手渡した。

「ずっと、お守りとして大切にしていました。私たちはいつもジャック様に見守られていると思って、辛い時も頑張ることが出来ました。……今までずっと私たちに希望を与え続けて下さって、ありがとうございます」

ソフィアは笑顔でそう言った。
これが終わりではなくスタートのため、最後のお礼は過去形にはしなかった。

「俺は何も……」

「存在そのものが、私たちにとって救いだったのです」

戸惑うジャックの言葉をソフィアは遮る。

(今までを申し訳なく思って欲しくないわ)

その気持ちを込めて。

ソフィアの気持ちをそのまま受け取ることにしたジャックは、笑顔を返す。
そしてソフィアの左手をとり、その指輪をソフィアの薬指に嵌めた。

「……少し大きいな」

「サイズを直しをます」

「いや、新しい結婚指輪を買おう」

「いいえ、私はこれが良いのです」

そう言ったソフィアの笑顔は、ジャックが記憶していたどのソフィアの笑顔よりも綺麗だった。

「ソフィア、短期間などと言わずに、正式に婚姻を結んでくれるな？」

微笑みながらそう言うジャックに、ソフィアはそっと頷いた。
その頷きを確認したブライトが、大喜びで急にジャックに抱きついたため、バランスを崩した三人は床に転げてしまう。
そして三人で、泣きながら大笑いをしたのだった。



因みに、やりとりをずっと見守っていたマリナとマッケンは、嗚咽を漏らしながら大号泣していた……




こうしてソフィアは、今度は自ら左手の薬指に指輪を嵌めたのである。

（この指輪が首輪に感じるようなことにならないように、いつまでも家族三人で仲良く暮らせますように……）

ソフィアは居場所の変わった指輪を見ながら、そう強く願った……