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80:真実を知る時
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ジャックは瞳が滲むのを誤魔化すように、微笑んだ。
「ソフィア、俺は大事なことを言っていなかったことに今気づいたよ。色恋沙汰には疎いのだ、許してくれ」
想いを口にしたことで脱力し、頭の中が真っ白になっているソフィアは、ジャックの言葉にジャックへ意識を戻す。
隣でブライトも、ドキドキしながら一緒にジャックに注目している。
「ソフィア、愛している。……ずっと忘れられなかった」
少し頬を赤らめて言うジャックに、ソフィアは再び頭が真っ白になる。
しかしソフィアは、ジャックがそのような嘘をつく人ではないと分かっている。
「リッチィ伯爵と離婚したのを知らなかったのだ……。来るのが遅くなってしまい、すまない」
今度は申し訳なさそうな表情を浮かべるジャックに、ソフィアは胸が締め付けられる。
そして、再びハラハラと溢れ出す涙を止めることが出来なかった。
「お母様……えっと……」
ソフィアを抱きしめながらジャックを見たブライトは、ジャックに話し掛けようとしたが名前を知らずに言い淀んだ。
目が合っているのに何も言わないブライトに、自己紹介をしていなかったことに気付いたジャックが口を開く。
「ジャック・リヒターと普段は名乗っている」
「えっ?」
ジャックの言葉に、今度はソフィアが驚いた声を上げる。
(”普段は名乗っている”ですって……?)
急に不安そうに表情が曇ったソフィアに、ジャックは渋い表情をする。
「ソフィア、先に話すべきだったな。順序が逆になってしまい申し訳ない。今日の俺は駄目だな……。俺の本当の名前は、ジャッカーソン・ド・シュタインだ。ジャックは愛称で、リヒターは母の姓だ」
ジャックは完全に身分を明かすタイミングを逃していたことを、反省した。
(しまった。全て明かしてからプロポーズをするべきだった……。本当のことを言って受け入れて貰えるか……)
ジャックは不安そうな目でソフィアを見る。
「えっ……シュタインって……えっ……赤い瞳……前国王陛下は赤い瞳で……」
ソフィアは目を見開き、混乱しながらブライトをギュッと抱きしめる。
「ああ、その通りだ。俺は前国王と愛人との子供で、10歳の時に母が亡くなったのを機に養子として引き取られ、第三王子となったのだ」
「……!?」
「第三王子殿下!?」
声にならないソフィアの代わりに、ブライトが声を発してくれた。
「ああ、そうなのだ。他の王子たちは腹違いの兄だ。今は新国王となった第一王子殿下の手伝いをしている」
さっきまで号泣だったソフィアの涙は一瞬で止まり、今は顔が真っ青になっている。
「なんてこと……」
やっとのことで、ソフィアの口から出た言葉だった。
愛の言葉に高鳴っていた胸の鼓動が、この衝撃の事実に一気に鳴りを顰める。
(まさか王子殿下だったなんて! えっ……私、王子殿下からの求婚を受け入れたということ……?)
ソフィアがパニックになっているのに対し、ブライトは無邪気だ。
「わー! 前国王陛下と第三王子殿下と同じ瞳の色ってこと!? 僕、凄いね!」
喜ぶブライトに、ソフィアは頭痛を覚える。
「ソフィア、"やっぱりやめた"は無しで頼むぞ」
ソフィアの表情に不安を抱きながらも、ソフィアの本心を知った今、もうジャックは引き下がるつもりはなかった。
それはソフィアも同じだ。
(もう後戻りは出来ないわ。前進あるのみ! 家族三人で暮らせるなんて、それもジャック様と両想いだなんて……。もう覚悟を決めるしかないわよ、ソフィア!)
ソフィアは、覚悟を決めるのには慣れている。
今までも中々無茶をしてきた自覚もある。
”ふうっ”と一つ息を吐いて、ブライトを真正面から見て言った。
「ブライト、この人があなたのお父様よ」
「ソフィア、俺は大事なことを言っていなかったことに今気づいたよ。色恋沙汰には疎いのだ、許してくれ」
想いを口にしたことで脱力し、頭の中が真っ白になっているソフィアは、ジャックの言葉にジャックへ意識を戻す。
隣でブライトも、ドキドキしながら一緒にジャックに注目している。
「ソフィア、愛している。……ずっと忘れられなかった」
少し頬を赤らめて言うジャックに、ソフィアは再び頭が真っ白になる。
しかしソフィアは、ジャックがそのような嘘をつく人ではないと分かっている。
「リッチィ伯爵と離婚したのを知らなかったのだ……。来るのが遅くなってしまい、すまない」
今度は申し訳なさそうな表情を浮かべるジャックに、ソフィアは胸が締め付けられる。
そして、再びハラハラと溢れ出す涙を止めることが出来なかった。
「お母様……えっと……」
ソフィアを抱きしめながらジャックを見たブライトは、ジャックに話し掛けようとしたが名前を知らずに言い淀んだ。
目が合っているのに何も言わないブライトに、自己紹介をしていなかったことに気付いたジャックが口を開く。
「ジャック・リヒターと普段は名乗っている」
「えっ?」
ジャックの言葉に、今度はソフィアが驚いた声を上げる。
(”普段は名乗っている”ですって……?)
急に不安そうに表情が曇ったソフィアに、ジャックは渋い表情をする。
「ソフィア、先に話すべきだったな。順序が逆になってしまい申し訳ない。今日の俺は駄目だな……。俺の本当の名前は、ジャッカーソン・ド・シュタインだ。ジャックは愛称で、リヒターは母の姓だ」
ジャックは完全に身分を明かすタイミングを逃していたことを、反省した。
(しまった。全て明かしてからプロポーズをするべきだった……。本当のことを言って受け入れて貰えるか……)
ジャックは不安そうな目でソフィアを見る。
「えっ……シュタインって……えっ……赤い瞳……前国王陛下は赤い瞳で……」
ソフィアは目を見開き、混乱しながらブライトをギュッと抱きしめる。
「ああ、その通りだ。俺は前国王と愛人との子供で、10歳の時に母が亡くなったのを機に養子として引き取られ、第三王子となったのだ」
「……!?」
「第三王子殿下!?」
声にならないソフィアの代わりに、ブライトが声を発してくれた。
「ああ、そうなのだ。他の王子たちは腹違いの兄だ。今は新国王となった第一王子殿下の手伝いをしている」
さっきまで号泣だったソフィアの涙は一瞬で止まり、今は顔が真っ青になっている。
「なんてこと……」
やっとのことで、ソフィアの口から出た言葉だった。
愛の言葉に高鳴っていた胸の鼓動が、この衝撃の事実に一気に鳴りを顰める。
(まさか王子殿下だったなんて! えっ……私、王子殿下からの求婚を受け入れたということ……?)
ソフィアがパニックになっているのに対し、ブライトは無邪気だ。
「わー! 前国王陛下と第三王子殿下と同じ瞳の色ってこと!? 僕、凄いね!」
喜ぶブライトに、ソフィアは頭痛を覚える。
「ソフィア、"やっぱりやめた"は無しで頼むぞ」
ソフィアの表情に不安を抱きながらも、ソフィアの本心を知った今、もうジャックは引き下がるつもりはなかった。
それはソフィアも同じだ。
(もう後戻りは出来ないわ。前進あるのみ! 家族三人で暮らせるなんて、それもジャック様と両想いだなんて……。もう覚悟を決めるしかないわよ、ソフィア!)
ソフィアは、覚悟を決めるのには慣れている。
今までも中々無茶をしてきた自覚もある。
”ふうっ”と一つ息を吐いて、ブライトを真正面から見て言った。
「ブライト、この人があなたのお父様よ」
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