10 / 113
9:嘘と懇願②
しおりを挟む
緊張した面持ちで言うソフィアに、ジャックは目を見開く。
表情から本気だと思ったジャックは、真顔で問う。
「……何故だ?」
「私は今バカンス中なのです。我が儘を聞いて貰って、ずっとしてみたかった一人旅をしています。ただ行く当てがなくて少し心細く思っていたところなのです」
スラスラと言葉が出て来る自分に驚きながらも、ソフィアは冷静を装い真っ直ぐにジャックを見る。
「……」
ソフィアの眼を見たまま真顔で考え込んでいるジャックを見て、昨日のデジャヴだとソフィアは思った。
「……二日続けて困らせてしまって、ごめんなさい」
結果的に困らせてしまっているが、ソフィアは決して困らせたい訳でも迷惑を掛けたい訳でもない。
心からの謝罪を口にしながらも、譲れない自己主張を続ける。
「でも、指輪は見つかっていません。指輪がみつかるまで置いてくれる約束です」
「指輪は探さないで良いと言いながら、勝手だな」
「……ごめんなさい」
はっきりと勝手だと言われ、呆れられたかとソフィアは少し悲しい気持ちになる。
でも、めげる訳にはいかなかった。
(お願いジャック様、私の初恋なの。もう少し幸せな気持ちに浸らせて……。これからの人生を生きていけるくらいの、幸せを貯蓄させて……)
そう思うとソフィアは、自然に目から一筋の涙が零れた。
「あれっ?」
自分でも驚いて、慌てて涙を拭う。
そのソフィアの様子を見たジャックは、更に考え込んでいる。
すぐに否定をしないジャックに、ソフィアは少しの希望を抱く。
「……あと12日だけ、お願いできませんか?」
「12日? 何だその中途半端な数字は」
「私の我儘一人旅の期限です」
ソフィアは真剣な想いが伝わるように願って、”ジッ”とジャックを見続けた。
(訳ありのようだな……)
そう思ったジャックは天井を見上げ、”はぁー”っと大きな溜め息をついてから降参した。
「わかったよ」
表情から本気だと思ったジャックは、真顔で問う。
「……何故だ?」
「私は今バカンス中なのです。我が儘を聞いて貰って、ずっとしてみたかった一人旅をしています。ただ行く当てがなくて少し心細く思っていたところなのです」
スラスラと言葉が出て来る自分に驚きながらも、ソフィアは冷静を装い真っ直ぐにジャックを見る。
「……」
ソフィアの眼を見たまま真顔で考え込んでいるジャックを見て、昨日のデジャヴだとソフィアは思った。
「……二日続けて困らせてしまって、ごめんなさい」
結果的に困らせてしまっているが、ソフィアは決して困らせたい訳でも迷惑を掛けたい訳でもない。
心からの謝罪を口にしながらも、譲れない自己主張を続ける。
「でも、指輪は見つかっていません。指輪がみつかるまで置いてくれる約束です」
「指輪は探さないで良いと言いながら、勝手だな」
「……ごめんなさい」
はっきりと勝手だと言われ、呆れられたかとソフィアは少し悲しい気持ちになる。
でも、めげる訳にはいかなかった。
(お願いジャック様、私の初恋なの。もう少し幸せな気持ちに浸らせて……。これからの人生を生きていけるくらいの、幸せを貯蓄させて……)
そう思うとソフィアは、自然に目から一筋の涙が零れた。
「あれっ?」
自分でも驚いて、慌てて涙を拭う。
そのソフィアの様子を見たジャックは、更に考え込んでいる。
すぐに否定をしないジャックに、ソフィアは少しの希望を抱く。
「……あと12日だけ、お願いできませんか?」
「12日? 何だその中途半端な数字は」
「私の我儘一人旅の期限です」
ソフィアは真剣な想いが伝わるように願って、”ジッ”とジャックを見続けた。
(訳ありのようだな……)
そう思ったジャックは天井を見上げ、”はぁー”っと大きな溜め息をついてから降参した。
「わかったよ」
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる