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11:残りの日々

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ソフィアは目を見開いたが、すぐに微笑んだ。

「ジャック様のお母様は、どの様な方だったのですか?」

「んー……そうだな……俺の母も明るい人だったな」

この後二人は、お互いの母親の話をしながら朝食を食べた。

「そう言えばジャック様は、ご結婚はされていないのですか? ……居座っておいて今更ですが……」

さらっと質問したが、ソフィアは内心ドキドキだった。
実は密かにずっと気になっていたことなのだ。

「ああ、俺は独身主義だ」

「そうなのですね……」

ジャックの躊躇ない答えに、ソフィアはほっとする。
しかしすぐに、何故だか寂しい気持ちが胸の中に広がっていくのを感じた。

「……それは何故ですか?」

モヤっとした思いを、ソフィアは思わず尋ねてしまう。
踏み込んでしまったことを自覚したソフィアは、咄嗟に(しまった)という顔をした。
そんなソフィアをて見て微笑んでから、ジャックは口を開いた。

「母は、俺の弟を死産すると同時に命を落としたのだ。幼い俺は、すごい量の出血を目の当たりにした。……大切な人が出来て結婚をしたら、妊娠出産の問題が纏わりついてくる。俺は大切な人に出産をして欲しくないのだ。命を賭けて出産するくらいなら、俺は子供はいらないと思っている」

ソフィアは再び目を見開く。そして、自然と言葉を発した。

「……私の母も、弟を出産した時に出血多量で亡くなったのです……」

ソフィアの言葉を聞いたジャックは、心底ショックな顔をする。

(会ったこともない私の母のことを思って、こんな表情をしてくれるなんて……。独身主義になるほど、お母様の死がショックだったのね……)

「……でも私は、好きな人との子供なら、命を賭けてみたいと思っています」

毅然とした態度で言うソフィアを見て、ジャックは苦笑いする。

「そうか。……妊娠出産は、男には何も出来ずどうしようもないことだから、尚更に拒否反応が強いのかもしれない」

悲しそうに笑うジャックの表情に、ソフィアはそれ以上を尋ねることはしなかった。

(深入りしても良いことはないわ……)

ソフィアはジャックの背景を何も知らない。
同じように、ジャックもソフィアの背景を何も知らない。
今回のように話の流れで時折自分たちのことを話すことはあったが、ソフィアもジャックも自分のことは基本的には話さない。
ただ、今を噛み締めるように二人で同じ時を過ごしたのだった……



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