【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜

ひかり芽衣

文字の大きさ
上 下
12 / 113

11:残りの日々

しおりを挟む
ソフィアは目を見開いたが、すぐに微笑んだ。

「ジャック様のお母様は、どの様な方だったのですか?」

「んー……そうだな……俺の母も明るい人だったな」

この後二人は、お互いの母親の話をしながら朝食を食べた。

「そう言えばジャック様は、ご結婚はされていないのですか? ……居座っておいて今更ですが……」

さらっと質問したが、ソフィアは内心ドキドキだった。
実は密かにずっと気になっていたことなのだ。

「ああ、俺は独身主義だ」

「そうなのですね……」

ジャックの躊躇ない答えに、ソフィアはほっとする。
しかしすぐに、何故だか寂しい気持ちが胸の中に広がっていくのを感じた。

「……それは何故ですか?」

モヤっとした思いを、ソフィアは思わず尋ねてしまう。
踏み込んでしまったことを自覚したソフィアは、咄嗟に(しまった)という顔をした。
そんなソフィアをて見て微笑んでから、ジャックは口を開いた。

「母は、俺の弟を死産すると同時に命を落としたのだ。幼い俺は、すごい量の出血を目の当たりにした。……大切な人が出来て結婚をしたら、妊娠出産の問題が纏わりついてくる。俺は大切な人に出産をして欲しくないのだ。命を賭けて出産するくらいなら、俺は子供はいらないと思っている」

ソフィアは再び目を見開く。そして、自然と言葉を発した。

「……私の母も、弟を出産した時に出血多量で亡くなったのです……」

ソフィアの言葉を聞いたジャックは、心底ショックな顔をする。

(会ったこともない私の母のことを思って、こんな表情をしてくれるなんて……。独身主義になるほど、お母様の死がショックだったのね……)

「……でも私は、好きな人との子供なら、命を賭けてみたいと思っています」

毅然とした態度で言うソフィアを見て、ジャックは苦笑いする。

「そうか。……妊娠出産は、男には何も出来ずどうしようもないことだから、尚更に拒否反応が強いのかもしれない」

悲しそうに笑うジャックの表情に、ソフィアはそれ以上を尋ねることはしなかった。

(深入りしても良いことはないわ……)

ソフィアはジャックの背景を何も知らない。
同じように、ジャックもソフィアの背景を何も知らない。
今回のように話の流れで時折自分たちのことを話すことはあったが、ソフィアもジャックも自分のことは基本的には話さない。
ただ、今を噛み締めるように二人で同じ時を過ごしたのだった……



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

処理中です...