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73:きっと別人
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「ただいま帰りました!」
ブライトは元気いっぱいに帰宅した。
出迎えたソフィアの元へ駆け寄るとすぐに、ブライトは指輪のついたネックレスをソフィアへ返す。
「失くさないかドキドキだったよ~~~」
笑いながら言うブライトから、ソフィアも笑顔で受け取る。
(良い笑顔。楽しかったようね。ジャック様、見守って下さってありがとうございます)
ソフィアは手元に戻って来た指輪をギュッと握る。
指輪を首にかけていなかったこの数日、ソフィアは落ち着かずにずっとソワソワしていた。
リッチィ伯爵家へ嫁ぐ日に首に下げて以来、身に付けなかった日は今までに1日もなかったのだ。
「楽しかったみたいで良かったわ」
「はい! あっ……僕と同じ赤い瞳の人に初めて会いました!」
「えっ……」
ブライトのその言葉にジャックを思い出して一瞬固まったソフィアだったが、すぐに思い直した。
(王都で王家が主催の入学試験だもの。王族の血を引く赤い瞳の方がいらっしゃったのよ、きっと)
「……そう、良かったわね」
「うん! 髪も同じ金髪のくせ毛だったし、お父様かもって思っちゃった!」
ブライトは『えへへっ』と、ペロッと舌を出した。
(金髪のくせ毛も珍しくはないわ……)
ソフィアはそう思いながら、少し胸が痛んだ。
ブライトは当然、父親であるジャックの容姿を知らない。
これからも赤い瞳の大人の男性を見る度に、ブライトは"自分の父親かもしれない"と思うのかと考えたのだ。
その後も、ブライトは楽しそうに報告を続ける。
しかし一通り試験の話を終えると、再び"赤い瞳の男性"の話になった。
(余程その赤い瞳の男性のことが印象に残っているのね。どのような方なのかしら?)
ソフィアが実際に知っている赤い瞳の人物は少ない。
ジャック以外には、前国王陛下と出先で見かけた平民1人だけだ。
「何て名前の方なの?」
「えー、聞かなかったから分からないや。先生たちと一緒に試験を見ていたよ。試験管の先生たちよりも偉い人そうだった」
あの一件以来、ブライトはジャックを試験の合間にずっと目で追っていた。
初めての自分と同じ瞳の色を持つ人物に、興味津々だったのだ。
「そう……」
(ほら、別人よ! ジャック様ではないわ!)
ソフィアはそう思うと同時に、孤児院へ視察に来ていたジャックを思い出した。
(地位は高そうだったけれど……。……きっと別人よ!)
ソフィアは首を左右に振って自分の思考を否定する。
「本当に格好良かったんだ。オーラが他の人たちとは違った! 堂々としていて……。僕、赤い瞳で良かったなって思ったんだ」
「赤い瞳で良かったって思ったの?」
ソフィアは意外なブライトの発言に驚く。
「うん、だってその人と同じ瞳の色は僕だけだったんだよ! 僕も頑張って、あの人みたいに立派な大人になる!」
ブライトの満面の笑顔を見て、ソフィアは誰だかわからないその人に感謝の気持ちが芽生える。
「その人にまた会えると良いわね」
「うん! 学校に入学出来たら、また会えるかなぁ?」
「会えるかもしれないわね。私も会えないかしら? 会ってみたいなー」
ソフィアが少しふざけて言うと、ブライトも楽しそうに満面の笑みで言う。
「また会いたいなー!」
その翌日、ソフィアはその赤い瞳の人物を知ることとなる。
ブライトは元気いっぱいに帰宅した。
出迎えたソフィアの元へ駆け寄るとすぐに、ブライトは指輪のついたネックレスをソフィアへ返す。
「失くさないかドキドキだったよ~~~」
笑いながら言うブライトから、ソフィアも笑顔で受け取る。
(良い笑顔。楽しかったようね。ジャック様、見守って下さってありがとうございます)
ソフィアは手元に戻って来た指輪をギュッと握る。
指輪を首にかけていなかったこの数日、ソフィアは落ち着かずにずっとソワソワしていた。
リッチィ伯爵家へ嫁ぐ日に首に下げて以来、身に付けなかった日は今までに1日もなかったのだ。
「楽しかったみたいで良かったわ」
「はい! あっ……僕と同じ赤い瞳の人に初めて会いました!」
「えっ……」
ブライトのその言葉にジャックを思い出して一瞬固まったソフィアだったが、すぐに思い直した。
(王都で王家が主催の入学試験だもの。王族の血を引く赤い瞳の方がいらっしゃったのよ、きっと)
「……そう、良かったわね」
「うん! 髪も同じ金髪のくせ毛だったし、お父様かもって思っちゃった!」
ブライトは『えへへっ』と、ペロッと舌を出した。
(金髪のくせ毛も珍しくはないわ……)
ソフィアはそう思いながら、少し胸が痛んだ。
ブライトは当然、父親であるジャックの容姿を知らない。
これからも赤い瞳の大人の男性を見る度に、ブライトは"自分の父親かもしれない"と思うのかと考えたのだ。
その後も、ブライトは楽しそうに報告を続ける。
しかし一通り試験の話を終えると、再び"赤い瞳の男性"の話になった。
(余程その赤い瞳の男性のことが印象に残っているのね。どのような方なのかしら?)
ソフィアが実際に知っている赤い瞳の人物は少ない。
ジャック以外には、前国王陛下と出先で見かけた平民1人だけだ。
「何て名前の方なの?」
「えー、聞かなかったから分からないや。先生たちと一緒に試験を見ていたよ。試験管の先生たちよりも偉い人そうだった」
あの一件以来、ブライトはジャックを試験の合間にずっと目で追っていた。
初めての自分と同じ瞳の色を持つ人物に、興味津々だったのだ。
「そう……」
(ほら、別人よ! ジャック様ではないわ!)
ソフィアはそう思うと同時に、孤児院へ視察に来ていたジャックを思い出した。
(地位は高そうだったけれど……。……きっと別人よ!)
ソフィアは首を左右に振って自分の思考を否定する。
「本当に格好良かったんだ。オーラが他の人たちとは違った! 堂々としていて……。僕、赤い瞳で良かったなって思ったんだ」
「赤い瞳で良かったって思ったの?」
ソフィアは意外なブライトの発言に驚く。
「うん、だってその人と同じ瞳の色は僕だけだったんだよ! 僕も頑張って、あの人みたいに立派な大人になる!」
ブライトの満面の笑顔を見て、ソフィアは誰だかわからないその人に感謝の気持ちが芽生える。
「その人にまた会えると良いわね」
「うん! 学校に入学出来たら、また会えるかなぁ?」
「会えるかもしれないわね。私も会えないかしら? 会ってみたいなー」
ソフィアが少しふざけて言うと、ブライトも楽しそうに満面の笑みで言う。
「また会いたいなー!」
その翌日、ソフィアはその赤い瞳の人物を知ることとなる。
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