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72:sideジャック:愛しい想い

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「俺は少し休む。一人にしてくれ」 

ちょうど昼休憩だったので、ジャックはそのまま自分の控室へ直行する。
人祓いをして窓際へ立つと、窓を開けて空を見上げた。
秋晴れで風もなく、窓を開けると気持ち良い。
今日の空も、綺麗な明るい青色だ。

「ソフィア……」

名前を口にすると、ジャックは自然と瞳から涙が零れ出した。

(すまない、ソフィア……。今まで何も知らずにいて……)

この涙は、悔し涙だった。
しかしすぐに、寂しい涙に変わる。

(孤児院で会った時には身籠っていたか、もう出産していたか……。何故教えてくれなかったのだろうか? 俺に教えたくはなかったということか……? 頼りにならないと思われたのだろうか……?)

次に、安堵の涙も混ざる。

(なにより一番は、無事に出産を終えてくれたということだ。母上やソフィアの母上のようなことにならずに、本当に良かった……)

そして最後は、嬉し涙だった。

(ブライトに……俺たちの子供に、指輪の贈り人を父親だと伝えてくれていることが嬉しい……。そして、今でもあの指輪を持っていてくれていることも……)

ジャックはブライトを思い浮かべる。

(とても綺麗な顔立ちだった。ソフィアに似たのだな。瞳の色は俺に似てしまって、辛い想いをすることもあるだろう……。申し訳ないな……)

ジャックは様々な感情が入り乱れていた。

自分の血が流れる子。
自分の遺伝子が受け継がれている子。
それも、自分とソフィアの遺伝子が半分ずつだ……

愛人の子でただの平民だったジャックは、正式に前国王の養子にして貰えたことで良い教育を受けさせて貰った。
良い暮らしをさせて貰った。
母が亡くなって絶望していたジャックを、父である前国王は見捨てなかった。

一度は逃げ出し自由に暮らしたりもしたが、今は恩返しに自分に出来ることに自分の生涯をかけると誓った。

一生家庭を持つつもりなんてなかった。
母の死の原因なのもあり、自分が子どもをもつなんて考えもしなかった。

(ブライト……)

……しかし、ジャックはブライトをとても可愛いと思った。

(俺とソフィアの愛の結晶だ。愛しくない訳がない……)

ジャックはここでやっと、涙を拭った。

「泣いている場合ではない。それでなくても俺は、今まで何も知らずに呑気に暮らして来たのだから。ソフィアはどれだけ大変だったか……」

再び空を見上げたジャックは、ソフィアが恋しくて恋しくて仕方がなかった。
そしてつい、溢れ出した想いは口をついて出てしまう。

「ソフィア、会いたい……」





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