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63:sideジャック: 第三王子は縁の下の力持ち

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ジャックは孤児院でソフィアと再会した後も、変わらず国王に仕え日々奮闘していた。



「ジャッカーソン、一度腹を割って話したいと思っていた。どうか本音を聞かせてほしい。お前は、本当に王位に興味はないのか?」

ジャックの行動をずっとみていた第一王子は、ジャックを呼び出しそう尋ねた。

「はい、本当に王位継承の希望は全くございません。私は、国王陛下の手助けをずっとしていけたらと思っております」

椅子に深く腰掛け足を組み、お茶を啜っている第一王子から2m程の距離に直立し、ジャックは迷いのない声色でそう答える。

「次の国王になってもか?」

「次期国王陛下が、私がそばにいることを望んで下さるのであれば」

「……次期国王について、お前はどう考えている?」

顔色一つ変えずに、第一王子は問う。
幼い頃から対立していた第一王子と第二王子にとって、ジャックはずっと"目の上のたんこぶ"だった。
とにかく鬱陶しい存在だったのだ。
王位に興味がないと言いながらも、現在も国王の右腕となって尽くしており、取り入っている様にも見える。

「……今から言うことを、王妃殿下の実子である第一王子殿下に申し上げることをお許しください。私は、私と私の母を愛して下さった陛下に感謝をしていて、恩返しをさせていただいているのです。決して、王子殿下がたや王妃殿下を煩わせたい訳ではありません。寧ろ、母亡きあと私が城で暮らすことを許して下さり、感謝をしております」

「……」

何も言わずにジッとジャックを見ている第一王子は、ジャックの真意をはかっているようだ。

(上辺だけの言葉と捉えられてしまっているな……)

ジャックは第一王子の様子に、覚悟を決めて発言する。

「私は、次期国王には第一王子殿下がふさわしいと思っております」

ジャックのその言葉に、第一王子は初めて表情を変えた。
目を見開き、驚いた顔をしている。
ジャックは今まで、一貫して決定的な発言はして来なかった。
中立の立場を示していたのだ。

「第二王子殿下は、自分の気持ちを第一に優先しがちです。大事な決断を迫られた時にこの国を任せられるのは、第一王子殿下だと私は思っております。もし第一王子殿下が次期国王となられた暁には、もし望んで下さるのであれば、現国王陛下と変わらぬ忠誠を尽くすことを誓います」

ジャックは片膝をつき、頭を低くして忠誠の気持ちを表した。

ずっと対立していた二人の王子だが、二択なら迷わず第一王子が次期国王にふさわしいとジャックはずっと思っていた。
第二王子は自分優先で、何をしでかすかわからずに危険だ。
第一王子の方が物の分別がある。
政治にはあまり強くないが周りが助ければ良いし、今からでも勉強すれば良い。

「……お前の気持ちを初めて聞いたな。いつも何を考えているのかわからない、食えない奴だった」

苦笑いで言う第一王子に、ジャックも苦笑いで返す。

「幼い私なりの処世術でした」

「そうか……。城へ来たのは10の時だったな……。わかった。取り敢えずは信じるとしよう、弟よ」

始めて第一王子に”弟”と呼ばれ、ジャックはむず痒かった。

(俺を家族だと思って下さるのか……?)

第一王子はただ、取り敢えずジャックを味方に付けようとしているだけだろう。
ジャックへの信用も半信半疑のはずだ。

「ジャッカーソン、お前に将来の夢はあるのか?」

唐突な第一王子からの問いだったが、ジャックはすぐに答える。
答えはずっと決まっているのだ。

「この国の安定の手伝いをすること……縁の下の力持ちになることです」

「ははっ。縁の下の力持ちか。これからが楽しみだ」





現国王は目に見えて弱って来ている。
しかしまだ、ジャックはこの国の役に立ちたかった。

(俺はこれからも天涯孤独だ。国のために命を賭けても惜しくない。ソフィアや国民が安心して暮らせるように、ずっと平和を維持出来るようにして行きたい)

そのためにも、時期国王からの信用を得たかったのだ。

(信用して貰えるように、頑張ろう)

第一王子から初めて向けられる笑顔に、ジャックはそう思ったのだった。









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