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39:この子は私が守る

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(この子をジャック様に見られなくて良かったわ……)

帰りの馬車に揺られながら、ソフィアはギュッと子供を抱き締める。

(もしこの子の赤い瞳を見たら、気づいたかしら? 責任を感じるかしら? 何にしろ私は既婚者で、彼は地位の高い人。彼の邪魔にならないようにしないと……。迷惑をかけないと約束したもの)

ジャックに相談すれば何か良い案を出してくれるかもしれない。
しかし自分の子だと知れば、ソフィアが嵌めたと思われるかもしれない。
また地位の高い人なら、子供だけ奪われる可能性もある。
ジャックは独身主義で子供を作る気もないと言っていたから、跡取りが必要な家系であれば、この男の子は喜ばれるだろう。
ソフィアはこの子を奪われる恐れが少しでもあることを、今は一切何もしたくなかった。

(この子は私が守る)

ソフィアの胸の中ですやすやと眠る我が子を見ながら、ソフィアはそう誓う。






「奥様、これからどうなさいますか?」

両手でしっかりと子供を抱いているソフィアに、マリナは膝掛をしながら心配そうに尋ねる。

「マリナ、ありがとう。あなた達のおかげでこの子を取り戻せたわ。現実を考えると、リッチィ伯爵家で育てて行けるのならそれが一番良いと思うの。まずはこの子をちゃんと育てることが最優先だから……」

離縁しても実家に受け入れてもらうことは難しいだろう。
残念ながら今のソフィアの居場所は、リッチィ伯爵家が最善のように思えた。
子供を飢えさせないために……

ソフィアは胸元の指輪を子供と一緒にギュッと抱きしめると、覚悟を決めた瞳をする。

「マリナ、どこかでこの子を見ていてくれる? 旦那様と話をして来るわ」




こうしてソフィアは、一旦赤ん坊をマリナに預けて一人屋敷へ戻った。
勿論子供と離れる事は不安だったが、冷静に落ち着いて話し合い……いや、懇願をすために、ソフィアはそうしだ。

(さて、どうやって説得するか……。私は自分の夫のことを本当に何も知らないわ……)

今までジェームズとは、話し合いどころか必要最低限の用事連絡しかしてこなかったため、ソフィアは頭を抱える。




屋敷へ戻るとジェームズは来客対応中であり、ソフィアは落ちついて待つために中庭へ向かう。
すると、ベンチにハンナが座っていることにすぐに気付いたのだった……






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