40 / 113
39:この子は私が守る
しおりを挟む
(この子をジャック様に見られなくて良かったわ……)
帰りの馬車に揺られながら、ソフィアはギュッと子供を抱き締める。
(もしこの子の赤い瞳を見たら、気づいたかしら? 責任を感じるかしら? 何にしろ私は既婚者で、彼は地位の高い人。彼の邪魔にならないようにしないと……。迷惑をかけないと約束したもの)
ジャックに相談すれば何か良い案を出してくれるかもしれない。
しかし自分の子だと知れば、ソフィアが嵌めたと思われるかもしれない。
また地位の高い人なら、子供だけ奪われる可能性もある。
ジャックは独身主義で子供を作る気もないと言っていたから、跡取りが必要な家系であれば、この男の子は喜ばれるだろう。
ソフィアはこの子を奪われる恐れが少しでもあることを、今は一切何もしたくなかった。
(この子は私が守る)
ソフィアの胸の中ですやすやと眠る我が子を見ながら、ソフィアはそう誓う。
「奥様、これからどうなさいますか?」
両手でしっかりと子供を抱いているソフィアに、マリナは膝掛をしながら心配そうに尋ねる。
「マリナ、ありがとう。あなた達のおかげでこの子を取り戻せたわ。現実を考えると、リッチィ伯爵家で育てて行けるのならそれが一番良いと思うの。まずはこの子をちゃんと育てることが最優先だから……」
離縁しても実家に受け入れてもらうことは難しいだろう。
残念ながら今のソフィアの居場所は、リッチィ伯爵家が最善のように思えた。
子供を飢えさせないために……
ソフィアは胸元の指輪を子供と一緒にギュッと抱きしめると、覚悟を決めた瞳をする。
「マリナ、どこかでこの子を見ていてくれる? 旦那様と話をして来るわ」
こうしてソフィアは、一旦赤ん坊をマリナに預けて一人屋敷へ戻った。
勿論子供と離れる事は不安だったが、冷静に落ち着いて話し合い……いや、懇願をすために、ソフィアはそうしだ。
(さて、どうやって説得するか……。私は自分の夫のことを本当に何も知らないわ……)
今までジェームズとは、話し合いどころか必要最低限の用事連絡しかしてこなかったため、ソフィアは頭を抱える。
屋敷へ戻るとジェームズは来客対応中であり、ソフィアは落ちついて待つために中庭へ向かう。
すると、ベンチにハンナが座っていることにすぐに気付いたのだった……
帰りの馬車に揺られながら、ソフィアはギュッと子供を抱き締める。
(もしこの子の赤い瞳を見たら、気づいたかしら? 責任を感じるかしら? 何にしろ私は既婚者で、彼は地位の高い人。彼の邪魔にならないようにしないと……。迷惑をかけないと約束したもの)
ジャックに相談すれば何か良い案を出してくれるかもしれない。
しかし自分の子だと知れば、ソフィアが嵌めたと思われるかもしれない。
また地位の高い人なら、子供だけ奪われる可能性もある。
ジャックは独身主義で子供を作る気もないと言っていたから、跡取りが必要な家系であれば、この男の子は喜ばれるだろう。
ソフィアはこの子を奪われる恐れが少しでもあることを、今は一切何もしたくなかった。
(この子は私が守る)
ソフィアの胸の中ですやすやと眠る我が子を見ながら、ソフィアはそう誓う。
「奥様、これからどうなさいますか?」
両手でしっかりと子供を抱いているソフィアに、マリナは膝掛をしながら心配そうに尋ねる。
「マリナ、ありがとう。あなた達のおかげでこの子を取り戻せたわ。現実を考えると、リッチィ伯爵家で育てて行けるのならそれが一番良いと思うの。まずはこの子をちゃんと育てることが最優先だから……」
離縁しても実家に受け入れてもらうことは難しいだろう。
残念ながら今のソフィアの居場所は、リッチィ伯爵家が最善のように思えた。
子供を飢えさせないために……
ソフィアは胸元の指輪を子供と一緒にギュッと抱きしめると、覚悟を決めた瞳をする。
「マリナ、どこかでこの子を見ていてくれる? 旦那様と話をして来るわ」
こうしてソフィアは、一旦赤ん坊をマリナに預けて一人屋敷へ戻った。
勿論子供と離れる事は不安だったが、冷静に落ち着いて話し合い……いや、懇願をすために、ソフィアはそうしだ。
(さて、どうやって説得するか……。私は自分の夫のことを本当に何も知らないわ……)
今までジェームズとは、話し合いどころか必要最低限の用事連絡しかしてこなかったため、ソフィアは頭を抱える。
屋敷へ戻るとジェームズは来客対応中であり、ソフィアは落ちついて待つために中庭へ向かう。
すると、ベンチにハンナが座っていることにすぐに気付いたのだった……
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
【完結】政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる