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36:sideジャック : 夢のような時間の終わり
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「ジャックさん、おはようございます! 今日も良い天気ですよ!」
ジャックが寝床で目を覚ますと、先に起きて朝食の準備をしてくれていたソフィアに、笑顔でそう声を掛けられた。
”ドキッ”
ジャックは胸が大きく脈打つのを感じる。
(……日に日に綺麗になっていっている気がするな……)
ボーっとソフィアを見ながら、ジャックも挨拶を返す。
(元気そうだな。昨日のことは憶えていないのだろうか?)
一見いつもと変わらない様子のソフィアにジャックはそう思ったが、すぐにそうではないことがわかった。
目を合わさず、耳を真っ赤にしているのだ。
(なかったことにしたいのだな……。最後一日、俺も気まずく過ごしたくはない……)
ソフィアと同様にジャックも、昨夜の口づけについては触れないことにした。
最後の日はソフィアと二人で過ごしたくて、ジャックは用事をいれなかった。
マッケンにも町へは来ない様に伝えている。
穏やかで幸せな時間はあっという間に過ぎ去り、あっという間に夜となった。
ジャックは緊張しながら、指輪をソフィアへ渡す。
ジャックは、母親以外の女性へ贈り物をするのは勿論、装飾品を贈ることも初めてだった。
指輪のプレゼントは何か意味を憶測されそうで迷ったが、石の色がソフィアの瞳の色で、どうしてもこれが良いと思ってしまったのだ。
ソフィアへの説明は嘘ではなかった。
ジャックは、自分が誰かと幸せになる未来を考えたことはない。
ソフィアが幸せになるよう、ただそれだけを心の底から願っている。
その”相手”については考えても良いことは何もないため、考えないようにしていた。
”ソフィアがもうすぐ結婚する”
という事実が、ジャックを冷静にさせてくれる。
しかしジャックもただの男だ。
恋慕う相手との最後の夜に、その相手に誘惑され、一時の感情に流されてしまった……
(ソフィアの言葉を信じて流されたい)
自分に都合の良いように解釈し、そう思ってしまったのだ。
ソフィアの様子から、希望しない仕方のない結婚だということは感じていた。
しかし貴族の結婚ではよくあることだし、”恋愛結婚は幸せになることが出来て、それ以外は幸せになれない”とも限らない。
結婚はスタートだ。
そこから”どのような関係性を夫婦で築いて行くか”にかかっている。
"ソフィアが結婚を決めている"
その事実が、ジャックにとっては全てだった。
そしてジャックに出来るのは、彼女の幸せをただただ願うことだけなのだ。
だから、ソフィアの勇気を無碍に出来なかったのもある。
だがそれだけではなく、ジャックもソフィアの肌の温もりを感じたいと思ってしまったのも、確かだった……ーーー
翌朝ソフィアが静かに小屋を後にするのを、ジャックは目を閉じたまま耳を澄ませて聞いていた。
「大好きでした」
ソフィアは寝ているはずのジャックにそう囁き、頬に口づけをしてから去って行った……
ソフィアの足音がどんどん遠のき、気配が完全に消えてからジャックは身体を起こす。
「……俺も大好きだった……」
ジャックは唇の感触の残る左頬に手をやり、自分の潤む瞳に気づかないフリをして立ち上がる。
そして何事もなかったかのように、ソフィアが来る前の生活に戻ったのだった……
ジャックが寝床で目を覚ますと、先に起きて朝食の準備をしてくれていたソフィアに、笑顔でそう声を掛けられた。
”ドキッ”
ジャックは胸が大きく脈打つのを感じる。
(……日に日に綺麗になっていっている気がするな……)
ボーっとソフィアを見ながら、ジャックも挨拶を返す。
(元気そうだな。昨日のことは憶えていないのだろうか?)
一見いつもと変わらない様子のソフィアにジャックはそう思ったが、すぐにそうではないことがわかった。
目を合わさず、耳を真っ赤にしているのだ。
(なかったことにしたいのだな……。最後一日、俺も気まずく過ごしたくはない……)
ソフィアと同様にジャックも、昨夜の口づけについては触れないことにした。
最後の日はソフィアと二人で過ごしたくて、ジャックは用事をいれなかった。
マッケンにも町へは来ない様に伝えている。
穏やかで幸せな時間はあっという間に過ぎ去り、あっという間に夜となった。
ジャックは緊張しながら、指輪をソフィアへ渡す。
ジャックは、母親以外の女性へ贈り物をするのは勿論、装飾品を贈ることも初めてだった。
指輪のプレゼントは何か意味を憶測されそうで迷ったが、石の色がソフィアの瞳の色で、どうしてもこれが良いと思ってしまったのだ。
ソフィアへの説明は嘘ではなかった。
ジャックは、自分が誰かと幸せになる未来を考えたことはない。
ソフィアが幸せになるよう、ただそれだけを心の底から願っている。
その”相手”については考えても良いことは何もないため、考えないようにしていた。
”ソフィアがもうすぐ結婚する”
という事実が、ジャックを冷静にさせてくれる。
しかしジャックもただの男だ。
恋慕う相手との最後の夜に、その相手に誘惑され、一時の感情に流されてしまった……
(ソフィアの言葉を信じて流されたい)
自分に都合の良いように解釈し、そう思ってしまったのだ。
ソフィアの様子から、希望しない仕方のない結婚だということは感じていた。
しかし貴族の結婚ではよくあることだし、”恋愛結婚は幸せになることが出来て、それ以外は幸せになれない”とも限らない。
結婚はスタートだ。
そこから”どのような関係性を夫婦で築いて行くか”にかかっている。
"ソフィアが結婚を決めている"
その事実が、ジャックにとっては全てだった。
そしてジャックに出来るのは、彼女の幸せをただただ願うことだけなのだ。
だから、ソフィアの勇気を無碍に出来なかったのもある。
だがそれだけではなく、ジャックもソフィアの肌の温もりを感じたいと思ってしまったのも、確かだった……ーーー
翌朝ソフィアが静かに小屋を後にするのを、ジャックは目を閉じたまま耳を澄ませて聞いていた。
「大好きでした」
ソフィアは寝ているはずのジャックにそう囁き、頬に口づけをしてから去って行った……
ソフィアの足音がどんどん遠のき、気配が完全に消えてからジャックは身体を起こす。
「……俺も大好きだった……」
ジャックは唇の感触の残る左頬に手をやり、自分の潤む瞳に気づかないフリをして立ち上がる。
そして何事もなかったかのように、ソフィアが来る前の生活に戻ったのだった……
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