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12:初めて青に囲まれる

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ジャックはよくいなくなった。
そもそも、いつから、何故ここで一人で生活しているのか……
貴族疑いは今も晴れていない。

しかし、何も知らないのはジャックも一緒だ。
楽しく過ごしながらもお互いに一線を引いている。
そんな表面上だけの関係に、ソフィアは少し寂しさを抱くようにもなってしまっていた……




一緒に暮らすようになって10日目の午後、ジャックは今日も留守にしている。

「小屋の掃除も周辺の散歩も、灯台の掃除もしたわ。海岸の漂流物の掃除もしたし……んー。もうしようと思ったことをやり尽くしてしまったわ!」

あっという間に過ぎる幸せで穏やかな時間は、ソフィアの心をどんどん洗ってくれている。
だからソフィアは、最後の最後までマイナスな気持ちにならないようにしようと決めていた。

「よしっ! 今日は海で泳ぎましょう!」

ソフィアは海に入ったことはないのだ。
いつもジャックが海に潜って魚や貝を取って来てくれるのを、羨ましく思いながら見ていた。

「ジャック様はまだ水温が低くて風邪をひくから駄目だと言っていたけれど、今回を逃したら一生入れないかもしれないわ」

ソフィアは、小屋からここへ来た翌日に町へ行き購入したタオルと着替えの服を持って来た。
それを大きな石の上へ置き、飛ばされないように石で重しをする。

「ふふっ。ここには滅多に人は来ないとジャック様が言っていたし、大丈夫でしょ!」

ソフィアはワクワクしながら外服を脱ぎ、中の肌着だけになった。

そっと波打ち際に足をつけ、そこから少しずつ海へ入って行く。

「うっ……本当に少し冷たいわね」

特に水面が腹部まで来た時、内臓が一気に冷える感じがした。
早く身体を慣らすために、一気にしゃがんで首まで水に浸かる。

「うーーー、ジャック様の言うことを聞くべきだったかしら。本当に寒いわ」

気付くとガタガタ震えている。

「でも……言うことを聞いていたら、この景色も開放感も味わうことは出来なかったわね……」

ソフィアはガタガタと震えながらも、心は清々しかった。
大好きな青に囲まれ、果てなく続く空と海の中にソフィアは今立っている。

「……よしっ、頑張ろう。頑張れる。頑張る!」

ソフィアがそう息巻いた瞬間、急に大きな波に襲われた。

「キャッ!!!」

体制を崩したソフィアは海に飲み込まれたのだった……







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