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1:辱め

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「やめて下さい!!! どうか、結婚までお待ち下さい!!!」

ベッドへ押し倒されたソフィアは、目の前にいる未来の夫へ慌てて大声を上げる。

「2週間後には嫁入りするのだ。先程、代々受け継がれている指輪も渡した。何も問題ないだろう?」 

「問題はあります! この国の貴族で、結婚初夜に純潔ではないことが知られたらおおごとです! お願いですから、あと2週間辛抱して下さいませ!」

ソフィアは腰までの緩いウェーブの金髪に青い瞳、そしてぱっちり二重で誰が見ても美人と答えるであろう美貌の持ち主だった。
ソフィアの美貌は、ここリッチィ伯爵領内では有名だ。
その美貌のおかげで……いや、”せい”で、今押し倒されているジェームズ・ド・リッチィの母親に気に入られてしまったのだ。
そして、伯爵家と親族になることに目が眩んだ父であるモードン男爵は、喜んで娘を差し出した。

本日ソフィアは、嫁入り前の挨拶に父と共にリッチィ伯爵邸を訪れた。
しかし何故かソフィアは一人で、義母となるヴァイオレットにジェームズの部屋へ連れて来られたのだ。
そして代々女主人に受け継がれる指輪を手渡された後に、ヴァイオレットに席を外され二人きりになった途端の出来事が冒頭だ。

「ああ、だから手を出すのだ。逃げ出せない様に」

目の前のジェームズは、血色の悪いような色白の肌に真っ黒なストレートの髪、そして真っ黒の瞳がソフィアには冷たい印象にうつる。
男性にしては華奢な体躯だが、これまた華奢なソフィアの力ではビクともしない。

「そのようなことをなさらなくても、私は逃げ出しません!」

(ヴァイオレット様から、お父様はもう既に多額の金銭を受け取っているのですもの。逃げられる訳がないじゃない……)

ソフィアは、自分の存在意義に空しい気持ちになってしまう。

「それでもだ。母上からの命令だ。諦めろ」

一切表情を変えずに淡々と言うジェームズに、ソフィアは人としての温かさを感じなかった。

「なっ……あなたは、お母上の言いなりなのですか!?」

突然のことに気が動転しているソフィアは、つい思ったことを口にしてしまう。


次の瞬間ーーー



”バシッ”


ソフィアはジェームズに頬を叩かれていた。

「口を慎め。俺は生意気な妻はいらない。俺の性欲処理がお前のこれからの仕事だ。母上は美形の孫をマスコットにご所望だ。自分の立ち位置を勘違いするな。これからもずっと、この家の女主人は母上だ」



ソフィアはこれ以上見開けないほどに目を見開き、何も言葉が出て来なかった。
そして後はただただ、苦痛に耐えるだけだった……


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