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最終章 ずっと変わらない気持ち
2:キャサリンとスターリン(sideキャサリン)
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スターリンは愛人男についての報告のために、本日の午後リチャードを来訪予定であった。
そのため、キャサリンは窓から正門を見ながら、スターリンを待っている。
以前はこの窓からいつも、スターリンが来るのを”今か今か”と待ちわびながら眺めていたものだ……
そんな時間も幸せだった。
(……まだかしら? 緊張で胸が苦しくて、心臓が壊れそうだわ……)
心を落ち着けようと、キャサリンは何度目かわからない深呼吸をした。
その時……
「あっ!!!」
停まった馬車から、スターリンが降りてくるのが見えたのだ。
すると、スターリンがキャサリンのいる窓の方を見上げた。
キャサリンの心臓は、”ドキッ”と大きく鼓動を打つ。
(目が合った気がしたわ……気のせいかしら?)
キャサリンはドキドキと煩い胸を抑え、もう一つ大きな深呼吸した。
距離や窓への光の反射もある。
事実は不明だが、スターリンがキャサリンを気に掛けてくれているように感じ、キャサリンは背中を押された気がした。
(お父様との話が終わり、部屋から出て来たところで話しかけるわよ! ……よしっ!)
キャサリンはスターリンを捕まえるべく、スターリンとリチャードが話している応接間の前で待つこととした。
待ち始めて30分が経った頃、応接間のドアが開いた。
出て来た使用人が、キャサリンの姿を見て驚いた顔をする。
「あっ、お嬢様! ちょうど今、呼びに行こうとしていたのです!」
「えっ?」
キャサリンが驚いていると、中からリチャードの声が聞こえた。
「何っ? キャサリンがいるのか?」
バタバタと足音がすると、扉からリチャードが顔を出す。
「スターリンを待っていたのか?」
「……はい、お父様……」
キャサリンの肯定の返事に、リチャードは嬉しそうに微笑んだ。
「そうか。私たちの話はもう終わった。部屋へ入りなさい。使用人も皆下げよう」
緊張の面持ちのキャサリンに、リチャードは穏やかな笑顔でそう言ったのだった……
リチャード含め皆が部屋を出てから、キャサリンはそっと扉から中を覗いた。
リチャードはすれ違い際に、『自分の心に素直にな』と、それだけを言った。
覗いた部屋の真ん中のソファには、いつも通りの黒い服を着たスターリンが座っている。
こちらをずっと見ていた様で、キャサリンはすぐに目が合った。
”ドキッ”
またしても煩く弾む心臓に、キャサリンは動悸を感じずにはいられない。
何とか入室しドアを閉めたが、入ってすぐの所に立ち尽くしてしまう。
ずっと目が合ったままのスターリンを見ているだけで、涙が込み上げて来そうになった。
「キャサリン、こちらへ来て座らないか?」
スターリンは真顔のままだが、優しい瞳をしているのがキャサリンにはわかった。
(頑張るのよ、私! 後悔しないように……)
キャサリンは頑張って足を動かし、何とかスターリンの前に座る。
「よかった、今日は座ってくれた」
優しく少し目を細めたスターリンに、キャサリンは胸が締めつけられる。
そして、それと同時に涙が一粒零れた。
「……スターリン様、以前の約束はもう無効でしょうか?」
キャサリンは、不安そうな顔でスターリンを見つめている。
頬に一筋の涙の跡を残したまま……
「キャサリンとの約束は、全て無期限だ」
スターリンはスッと立ち上がると、キャサリンの斜め前にひざまづいた。
キャサリンは目を見開き、可愛い瞳をむき出しにして驚いている。
スターリンは一瞬かすかに微笑むと、小さな箱をポケットから取り出す。
そして、そっと蓋を開けた。
「結婚しよう。もう断るのはなしだ」
輝くダイヤのついた指輪を掲げながら、スターリンはいつも通りの真顔で言う。
まるで王子様のように格好良くきめたスターリンだが、キャサリンはスターリンの耳が赤いことに気付いて、思わず微笑んだ。
そして、どうしようもないほどの愛しい感情が、キャサリンの身体中を物凄い速さで支配していく。
”ドンッ”
キャサリンは、思いっきり勢いよくスターリンに抱きついた。
そして、一言だけ口にした。
「はい……」
そのため、キャサリンは窓から正門を見ながら、スターリンを待っている。
以前はこの窓からいつも、スターリンが来るのを”今か今か”と待ちわびながら眺めていたものだ……
そんな時間も幸せだった。
(……まだかしら? 緊張で胸が苦しくて、心臓が壊れそうだわ……)
心を落ち着けようと、キャサリンは何度目かわからない深呼吸をした。
その時……
「あっ!!!」
停まった馬車から、スターリンが降りてくるのが見えたのだ。
すると、スターリンがキャサリンのいる窓の方を見上げた。
キャサリンの心臓は、”ドキッ”と大きく鼓動を打つ。
(目が合った気がしたわ……気のせいかしら?)
キャサリンはドキドキと煩い胸を抑え、もう一つ大きな深呼吸した。
距離や窓への光の反射もある。
事実は不明だが、スターリンがキャサリンを気に掛けてくれているように感じ、キャサリンは背中を押された気がした。
(お父様との話が終わり、部屋から出て来たところで話しかけるわよ! ……よしっ!)
キャサリンはスターリンを捕まえるべく、スターリンとリチャードが話している応接間の前で待つこととした。
待ち始めて30分が経った頃、応接間のドアが開いた。
出て来た使用人が、キャサリンの姿を見て驚いた顔をする。
「あっ、お嬢様! ちょうど今、呼びに行こうとしていたのです!」
「えっ?」
キャサリンが驚いていると、中からリチャードの声が聞こえた。
「何っ? キャサリンがいるのか?」
バタバタと足音がすると、扉からリチャードが顔を出す。
「スターリンを待っていたのか?」
「……はい、お父様……」
キャサリンの肯定の返事に、リチャードは嬉しそうに微笑んだ。
「そうか。私たちの話はもう終わった。部屋へ入りなさい。使用人も皆下げよう」
緊張の面持ちのキャサリンに、リチャードは穏やかな笑顔でそう言ったのだった……
リチャード含め皆が部屋を出てから、キャサリンはそっと扉から中を覗いた。
リチャードはすれ違い際に、『自分の心に素直にな』と、それだけを言った。
覗いた部屋の真ん中のソファには、いつも通りの黒い服を着たスターリンが座っている。
こちらをずっと見ていた様で、キャサリンはすぐに目が合った。
”ドキッ”
またしても煩く弾む心臓に、キャサリンは動悸を感じずにはいられない。
何とか入室しドアを閉めたが、入ってすぐの所に立ち尽くしてしまう。
ずっと目が合ったままのスターリンを見ているだけで、涙が込み上げて来そうになった。
「キャサリン、こちらへ来て座らないか?」
スターリンは真顔のままだが、優しい瞳をしているのがキャサリンにはわかった。
(頑張るのよ、私! 後悔しないように……)
キャサリンは頑張って足を動かし、何とかスターリンの前に座る。
「よかった、今日は座ってくれた」
優しく少し目を細めたスターリンに、キャサリンは胸が締めつけられる。
そして、それと同時に涙が一粒零れた。
「……スターリン様、以前の約束はもう無効でしょうか?」
キャサリンは、不安そうな顔でスターリンを見つめている。
頬に一筋の涙の跡を残したまま……
「キャサリンとの約束は、全て無期限だ」
スターリンはスッと立ち上がると、キャサリンの斜め前にひざまづいた。
キャサリンは目を見開き、可愛い瞳をむき出しにして驚いている。
スターリンは一瞬かすかに微笑むと、小さな箱をポケットから取り出す。
そして、そっと蓋を開けた。
「結婚しよう。もう断るのはなしだ」
輝くダイヤのついた指輪を掲げながら、スターリンはいつも通りの真顔で言う。
まるで王子様のように格好良くきめたスターリンだが、キャサリンはスターリンの耳が赤いことに気付いて、思わず微笑んだ。
そして、どうしようもないほどの愛しい感情が、キャサリンの身体中を物凄い速さで支配していく。
”ドンッ”
キャサリンは、思いっきり勢いよくスターリンに抱きついた。
そして、一言だけ口にした。
「はい……」
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