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#13 旅行
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「えぇっ!?今月の21日!?」
俺の大声に驚いた川原が目を丸くしてコクコクと頷いた。
「そ。再来週で俺24になるん。」
「待て待て待て。俺17日な。来週23になる。」
「は、、はぁ!?うそ、和倉も今月!?っつーか誕生日ちっか!え、ガチのやつ?」
「ガチ。やば、すごくね?奇跡的な4日間じゃん」
「うわ、4日間だけ同じ歳ってこと?」
11月の中旬。季節はそろそろ冬を迎えようとしていた。
いつものように家庭教師の仕事を終えた川原が店でポテトを食べていて、なんとなくお互いもうすぐ誕生日という話題になったのだ。
俺と川原の関係は相変わらずだ。恋人として一緒にいることにもだいぶ慣れて、俺たちは一緒に過ごす時間も増えた。川原は相変わらず真っ直ぐで優しくて、俺も川原からのストレートな愛情に浸かっているうち、少し素直に考えられるようになったかもしれない。
「店長、ちょうどそこ平日ですよ。有給も使って旅行でも行ったらどうです?」
長い黒髪を一本に束ねてキャップをかぶる琴音が厨房から顔を出す。
「琴音さん、良いこと言う!俺も家庭教師ずらせるよ」
和倉が琴音の思いつきに乗って嬉しそうな笑顔を見せる。
俺たちの事を知っているのは隣人の歩とその恋人アキさん、ここのスタッフで俺の元カノ(一瞬)の琴音。あとは最近川原の兄貴にも疑われているらしい。
川原は“素直に生きる”が信条なだけあって、知られても意外と平気そうだ。ただ俺が自分の事を受け入れられてるか微妙だから、それでバレないようにしている部分も大きい。
まぁ、琴音の場合は女の鋭い勘で、俺たちの雰囲気が変わったことに速攻気がついたのだ。
「ん~、店の定休日が火曜で18日、俺の休みが木曜で20日?」
「ほら、店長が水曜に有給とれば二泊三日で旅行とかいけるでしょ?あ、別にもっと休んでも私が店出るから平気です!」
「和倉行こう!旅行。俺旅行って子供の頃しか行った事ないんだ」
川原のこの手の台詞に俺は異様に弱い。川原が喜ぶならどうにかして叶えてやりたくなる。
、、にしても本当に、店や俺自身の休みを考えても、こんな偶然はもうないかも知れない。それに旅行なんて俺だって行ってない。社会人になれば恋人でもいない限りあまり機会が無いもんなんだな。
「うん、、、行こうか旅行。」
俺の返事に、川原だけじゃなく何故か琴音まで喜んで、2人は謎にハイタッチをしている。
そうして俺たちは互いの誕生日を祝う為、奇跡的な4日間を一緒に過ごす為に旅行に出たのだった。
東京より南に行ったことが無いという川原の言葉で、大阪に1泊京都に1泊することになった。
初日に大阪のどでかいテーマパークを訪れた。俺ももちろんだったけど、家族以外と旅行やテーマパークの類も来たことがないという川原は子どものようにはしゃいだ。
何度も「すっごい楽しいな!」と笑顔を見せる彼に俺は誰かを愛おしいと思う気持ちを何度も味わった。
「な、川原、心臓大丈夫なの?アトラクションとか、“心臓弱い人はご遠慮下さい”って書いてるけど」
俺が心配して言うと川原はカラカラと笑う。
「いまだに心配だよね?俺も自分でまだ鼓動の確認する癖抜けないんだ。でも、大丈夫だよ。」
「なら良いけど、たまに不安になる」
「でもこんなに楽しいなら、今死んでも後悔ないなぁ」
「おい、、」
「行こう、和倉!俺アレ入りたい!」
曇りのない笑顔を作り俺の手を引く。
ふいに、この手をずっと離したくないと思って俺も握り返す。
平日なのにテーマパークには人が多く、それぞれが自分が楽しむ事だけに集中しているみたいだった。ほんのひと時手を引き合う男たちのことなんて誰も気にしていなかった。
「やっば、疲れたぁ、、」
「くそほど歩いたな、、だる、、」
一日中遊びまくって、夕食を食べてからホテルに入る。ベッドが2台のツインの部屋に入るとそれぞれがベッドに倒れ込んだ。
「あーあ修学旅行、行ってみたかったな、、」
うつ伏せに寝転がって目を閉じたまま川原がそう呟いて俺を驚ろかせた。彼は自分の過去への不満なんかを殆ど言ったことがないからだ。
「普通に健康だったらさ、当たり前の楽しい経験が出来たのに、、」
「川原?」
「なんてなー。楽しすぎて感傷的になったわ」
ハハっと自嘲しているけれどなんとなくそれは川原が普段口にしないだけの一番大きな感情の気がする。彼はそのままスマホを眺めだしたので俺もそれ以上その話をするのはやめておいた。
「なぁ川原、風呂どうする?大浴場もあるよ。温泉じゃないけど。」
「あー、、うん、、どうしよ、、」
「そう言えば、、川原に謝らないとならないことあった。」
「え、なに急に?怖いんだけど」
「歩の店に行った日のこと、」
「あ、何?女の子に声かけられてごめんなさいって?」
「いや違うわ」
ふざける川原の横に行って座る。
「あの日、俺おまえの家に送ってったじゃん。川原は覚えてないかもだけどベッドに寝かせたんだよ。」
「うーん覚えてない、、ごめん」
「いや、謝るのこっち。、、、俺おまえのシャツ、脱がそうとした」
「は、えっろ、、」
「ごめん」
俺が謝ると川原はベッドに座り直し自分の手のひらを胸にあてた。俺の言っている意味がわかったのだ。
「あぁそっか。コレね。、、見て気持ちの良いものじゃないし、それに、和倉が同情するだろうなとか変に考えることあって」
「違うな、、同情じゃなくて、川原の命懸けで闘った跡だと思った。なんか俺悔しかった。」
川原は「悔しい?」と不思議そうな顔をして俺を見た。
「更にごめんだけど、川原の兄貴に、お前の東京で入院してた頃の話聞いた。精神的にギリギリだったって。」
「うわ、いつの間に兄貴、、」
「川原と付き合う前だよ。おまえの家で皆で飲んだ時。」
「あぁ、、はっず、、俺がめちゃくちゃ和倉の存在にすがってたのを聞いたってこと、、」
恥ずかしがっているような怒っているような、低く呟いて俯いたまま髪の毛をくしゃりと握る。
「川原は今俺と居てくれんのに、川原が必死で闘ってる時俺側に居られなかったのがなんか悔しくて、、」
「いや、そんな事ない、、でも、、うん、たぶん和倉にはわかんないかも。和倉と高校の時あんな感じで知り合って、あの頃の俺にとったら和倉の存在は大きかった、、些細な言葉も何でもない時間もあの約束も全部がさ、どん底だった時にずっと俺の支えだったわけな。」
「、、うん、、」
「だから和倉が悔しがることは全然なくて、むしろ“俺のおかげで乗り越えられただろ”って言ってほしい。ほんとに。和倉と高校の時に知り合えて命拾いしたのは俺の方なんだよね」
照れたように少しだけ笑う川原が高校の頃の川原に重なる。高校の制服を着て川辺の草むらに座って少しだけ笑う川原に重なる。
俺は川原の耳元に手を伸ばしてサラサラとした栗色の髪の毛に触れた。そのまま彼を引き寄せてぎゅっと抱きしめる。
「それでも。過去の川原のそばにも居たかったって思っちゃうわ。言葉ではうまいこと言えないんだけど、本気で悔しくなるくらいには俺にとっても川原の存在ってでかいんだよ。」
川原も俺に手を回す。
「うん、同じだね。高校のとき変な知り合い方したせいかな。」
そう答えた川原は手を緩めると俺の顔を覗き込んだ。そしてキスをする。
熱く濡れた舌と舌が、まるでそれで思いが伝わると信じているように絡み合う。混ざり合う唾液も呼吸を奪われるわずかな苦しさも心地良かった。
暫く2人はキスの心地よさを味わっていたけれど、思い出したように川原がふっと笑った。
「なんか最初大浴場の話?してなかった?」
「ああ、このホテル大浴場あるよってやつな。もしかして川原人前で脱ぎたく無いのかなと思って、、」
「あ、そういう話ね。いや、和倉に見せたくなかっただけだから平気。あ、でもやっぱ和倉とは大浴場行きたくない」
「え!?ひどくね?なんで?」
「いや、不安すぎる。お前と風呂とか入って勃たなかったことある?他にも人いるのに絶対無理。頼むから別々に入ってくれ。」
川原の訴えにもっともだと俺は笑った。
何てったって舌を絡ませ合ったキスだけで互いの股間は反応し始めていたからだ。
「オッケー。じゃあ俺部屋のシャワーでも良いよ。下半身が思春期の川原の為に」
「は?よく言うよ。おまえだって下半身思春期だろ?半勃ちのくせに」
笑いながら殴る真似をする川原に蹴りで応酬する。
「おまえなんて完勃ちだろ?キスだけで」
「あ、ムカついた。俺部屋のシャワーはいる。今すぐひとりで抜いてやる」
「おいこら待て俺が使う」
そうして俺たちはシャワーを取り合ってバタバタとした挙句、狭いシャワールームに一緒に入ったのだった。
備え付けのルームウェアに着替えて2人でビールを飲んでいる時川原が言った。
「和倉、明日のホテルは温泉だよ。しかもさ、部屋に露天風呂付いてんだって!」
「え!?すっげぇ楽しみ。」
「だから明日は人の目気にしないでゆっくり温泉入ろう。」
「だな。明日京都観光の時、、どうしても寄りたいとこあるんだ。今日ガッツリ遊んだ分、明日はのんびり観光して美味しいもの食べようぜ」
「オッケー。はぁ、ほんっと旅行って最高だ」
川原は酒が入った少し赤い顔で嬉しそうにふにゃっと笑った。
その顔を見ながら俺は、自分が日に日に川原を好きになっていることに畏れつつも、川原をそんな笑顔にできる自分を誇りに思ったりもしていた。
俺の大声に驚いた川原が目を丸くしてコクコクと頷いた。
「そ。再来週で俺24になるん。」
「待て待て待て。俺17日な。来週23になる。」
「は、、はぁ!?うそ、和倉も今月!?っつーか誕生日ちっか!え、ガチのやつ?」
「ガチ。やば、すごくね?奇跡的な4日間じゃん」
「うわ、4日間だけ同じ歳ってこと?」
11月の中旬。季節はそろそろ冬を迎えようとしていた。
いつものように家庭教師の仕事を終えた川原が店でポテトを食べていて、なんとなくお互いもうすぐ誕生日という話題になったのだ。
俺と川原の関係は相変わらずだ。恋人として一緒にいることにもだいぶ慣れて、俺たちは一緒に過ごす時間も増えた。川原は相変わらず真っ直ぐで優しくて、俺も川原からのストレートな愛情に浸かっているうち、少し素直に考えられるようになったかもしれない。
「店長、ちょうどそこ平日ですよ。有給も使って旅行でも行ったらどうです?」
長い黒髪を一本に束ねてキャップをかぶる琴音が厨房から顔を出す。
「琴音さん、良いこと言う!俺も家庭教師ずらせるよ」
和倉が琴音の思いつきに乗って嬉しそうな笑顔を見せる。
俺たちの事を知っているのは隣人の歩とその恋人アキさん、ここのスタッフで俺の元カノ(一瞬)の琴音。あとは最近川原の兄貴にも疑われているらしい。
川原は“素直に生きる”が信条なだけあって、知られても意外と平気そうだ。ただ俺が自分の事を受け入れられてるか微妙だから、それでバレないようにしている部分も大きい。
まぁ、琴音の場合は女の鋭い勘で、俺たちの雰囲気が変わったことに速攻気がついたのだ。
「ん~、店の定休日が火曜で18日、俺の休みが木曜で20日?」
「ほら、店長が水曜に有給とれば二泊三日で旅行とかいけるでしょ?あ、別にもっと休んでも私が店出るから平気です!」
「和倉行こう!旅行。俺旅行って子供の頃しか行った事ないんだ」
川原のこの手の台詞に俺は異様に弱い。川原が喜ぶならどうにかして叶えてやりたくなる。
、、にしても本当に、店や俺自身の休みを考えても、こんな偶然はもうないかも知れない。それに旅行なんて俺だって行ってない。社会人になれば恋人でもいない限りあまり機会が無いもんなんだな。
「うん、、、行こうか旅行。」
俺の返事に、川原だけじゃなく何故か琴音まで喜んで、2人は謎にハイタッチをしている。
そうして俺たちは互いの誕生日を祝う為、奇跡的な4日間を一緒に過ごす為に旅行に出たのだった。
東京より南に行ったことが無いという川原の言葉で、大阪に1泊京都に1泊することになった。
初日に大阪のどでかいテーマパークを訪れた。俺ももちろんだったけど、家族以外と旅行やテーマパークの類も来たことがないという川原は子どものようにはしゃいだ。
何度も「すっごい楽しいな!」と笑顔を見せる彼に俺は誰かを愛おしいと思う気持ちを何度も味わった。
「な、川原、心臓大丈夫なの?アトラクションとか、“心臓弱い人はご遠慮下さい”って書いてるけど」
俺が心配して言うと川原はカラカラと笑う。
「いまだに心配だよね?俺も自分でまだ鼓動の確認する癖抜けないんだ。でも、大丈夫だよ。」
「なら良いけど、たまに不安になる」
「でもこんなに楽しいなら、今死んでも後悔ないなぁ」
「おい、、」
「行こう、和倉!俺アレ入りたい!」
曇りのない笑顔を作り俺の手を引く。
ふいに、この手をずっと離したくないと思って俺も握り返す。
平日なのにテーマパークには人が多く、それぞれが自分が楽しむ事だけに集中しているみたいだった。ほんのひと時手を引き合う男たちのことなんて誰も気にしていなかった。
「やっば、疲れたぁ、、」
「くそほど歩いたな、、だる、、」
一日中遊びまくって、夕食を食べてからホテルに入る。ベッドが2台のツインの部屋に入るとそれぞれがベッドに倒れ込んだ。
「あーあ修学旅行、行ってみたかったな、、」
うつ伏せに寝転がって目を閉じたまま川原がそう呟いて俺を驚ろかせた。彼は自分の過去への不満なんかを殆ど言ったことがないからだ。
「普通に健康だったらさ、当たり前の楽しい経験が出来たのに、、」
「川原?」
「なんてなー。楽しすぎて感傷的になったわ」
ハハっと自嘲しているけれどなんとなくそれは川原が普段口にしないだけの一番大きな感情の気がする。彼はそのままスマホを眺めだしたので俺もそれ以上その話をするのはやめておいた。
「なぁ川原、風呂どうする?大浴場もあるよ。温泉じゃないけど。」
「あー、、うん、、どうしよ、、」
「そう言えば、、川原に謝らないとならないことあった。」
「え、なに急に?怖いんだけど」
「歩の店に行った日のこと、」
「あ、何?女の子に声かけられてごめんなさいって?」
「いや違うわ」
ふざける川原の横に行って座る。
「あの日、俺おまえの家に送ってったじゃん。川原は覚えてないかもだけどベッドに寝かせたんだよ。」
「うーん覚えてない、、ごめん」
「いや、謝るのこっち。、、、俺おまえのシャツ、脱がそうとした」
「は、えっろ、、」
「ごめん」
俺が謝ると川原はベッドに座り直し自分の手のひらを胸にあてた。俺の言っている意味がわかったのだ。
「あぁそっか。コレね。、、見て気持ちの良いものじゃないし、それに、和倉が同情するだろうなとか変に考えることあって」
「違うな、、同情じゃなくて、川原の命懸けで闘った跡だと思った。なんか俺悔しかった。」
川原は「悔しい?」と不思議そうな顔をして俺を見た。
「更にごめんだけど、川原の兄貴に、お前の東京で入院してた頃の話聞いた。精神的にギリギリだったって。」
「うわ、いつの間に兄貴、、」
「川原と付き合う前だよ。おまえの家で皆で飲んだ時。」
「あぁ、、はっず、、俺がめちゃくちゃ和倉の存在にすがってたのを聞いたってこと、、」
恥ずかしがっているような怒っているような、低く呟いて俯いたまま髪の毛をくしゃりと握る。
「川原は今俺と居てくれんのに、川原が必死で闘ってる時俺側に居られなかったのがなんか悔しくて、、」
「いや、そんな事ない、、でも、、うん、たぶん和倉にはわかんないかも。和倉と高校の時あんな感じで知り合って、あの頃の俺にとったら和倉の存在は大きかった、、些細な言葉も何でもない時間もあの約束も全部がさ、どん底だった時にずっと俺の支えだったわけな。」
「、、うん、、」
「だから和倉が悔しがることは全然なくて、むしろ“俺のおかげで乗り越えられただろ”って言ってほしい。ほんとに。和倉と高校の時に知り合えて命拾いしたのは俺の方なんだよね」
照れたように少しだけ笑う川原が高校の頃の川原に重なる。高校の制服を着て川辺の草むらに座って少しだけ笑う川原に重なる。
俺は川原の耳元に手を伸ばしてサラサラとした栗色の髪の毛に触れた。そのまま彼を引き寄せてぎゅっと抱きしめる。
「それでも。過去の川原のそばにも居たかったって思っちゃうわ。言葉ではうまいこと言えないんだけど、本気で悔しくなるくらいには俺にとっても川原の存在ってでかいんだよ。」
川原も俺に手を回す。
「うん、同じだね。高校のとき変な知り合い方したせいかな。」
そう答えた川原は手を緩めると俺の顔を覗き込んだ。そしてキスをする。
熱く濡れた舌と舌が、まるでそれで思いが伝わると信じているように絡み合う。混ざり合う唾液も呼吸を奪われるわずかな苦しさも心地良かった。
暫く2人はキスの心地よさを味わっていたけれど、思い出したように川原がふっと笑った。
「なんか最初大浴場の話?してなかった?」
「ああ、このホテル大浴場あるよってやつな。もしかして川原人前で脱ぎたく無いのかなと思って、、」
「あ、そういう話ね。いや、和倉に見せたくなかっただけだから平気。あ、でもやっぱ和倉とは大浴場行きたくない」
「え!?ひどくね?なんで?」
「いや、不安すぎる。お前と風呂とか入って勃たなかったことある?他にも人いるのに絶対無理。頼むから別々に入ってくれ。」
川原の訴えにもっともだと俺は笑った。
何てったって舌を絡ませ合ったキスだけで互いの股間は反応し始めていたからだ。
「オッケー。じゃあ俺部屋のシャワーでも良いよ。下半身が思春期の川原の為に」
「は?よく言うよ。おまえだって下半身思春期だろ?半勃ちのくせに」
笑いながら殴る真似をする川原に蹴りで応酬する。
「おまえなんて完勃ちだろ?キスだけで」
「あ、ムカついた。俺部屋のシャワーはいる。今すぐひとりで抜いてやる」
「おいこら待て俺が使う」
そうして俺たちはシャワーを取り合ってバタバタとした挙句、狭いシャワールームに一緒に入ったのだった。
備え付けのルームウェアに着替えて2人でビールを飲んでいる時川原が言った。
「和倉、明日のホテルは温泉だよ。しかもさ、部屋に露天風呂付いてんだって!」
「え!?すっげぇ楽しみ。」
「だから明日は人の目気にしないでゆっくり温泉入ろう。」
「だな。明日京都観光の時、、どうしても寄りたいとこあるんだ。今日ガッツリ遊んだ分、明日はのんびり観光して美味しいもの食べようぜ」
「オッケー。はぁ、ほんっと旅行って最高だ」
川原は酒が入った少し赤い顔で嬉しそうにふにゃっと笑った。
その顔を見ながら俺は、自分が日に日に川原を好きになっていることに畏れつつも、川原をそんな笑顔にできる自分を誇りに思ったりもしていた。
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