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四章【九条ゆい】※R18含む
7 この先どうする?
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駅から出ると久しぶりの景色の中を走った。
「まさか」とは思う。思うけれど確かめなければならない。
こんな時間に駅から走り出た俺を、仕事を終えて家へ帰る人たちが驚いて振り返る。
駅の後方を見れば自分の実家があるマンションが見えるだろう。駅前のこの道を大学に合格した日にも走っていた。宮城さんとやっと同じ土俵に立てた気がして嬉しくて仕方なかった。
➖小鳥遊は初めて穂積に出会った橋の上のベンチで穂積が残した落書きを見つけた➖
なんで宮城さんがストーリーに俺との出来事を描き入れたのか、、それはたぶん彼の壮大なイタズラであって賭けなのだ。
俺が見るのを前提に、俺が時間を経てから宮城さんの言葉に辿り着くように。
そしてそれはやっぱり、彼のささやかな復讐だったんだと思う。
今は街灯に照らされたサイクリングロード、去年までは毎日のようにここを歩いた。あおい書店へ通い、その先の宮城さんの家へ通うために。
街灯の下の自販機、その横にあるベンチ。この場所だ、と周りを見渡して確信する。
息を大きく吐きながら、ベンチをぐるりと見回すと背もたれの裏にそれがあった。手に取る。
➖誰がいつ書いたかもわからないベンチの落書きが、穂積が残したものだと小鳥遊はすぐにわかった。
小鳥遊は指でその落書きをなぞりながら、声をたてて笑った➖
俺はベンチの裏にセロテープでとめられた付箋を手にとった。ふっと笑いが漏れる。
見覚えのある字だ。
➖『あんなことで嫌いになると思うなバーカ』➖
クスクスと笑いが漏れた。
サイクリングロードを自転車に乗って帰路を急ぐ人が、ギョッとして振り返りながら通り過ぎて行く。
笑いながら涙が溢れて来た。
、、なんだよ、小鳥遊と同じ反応しか出来ないじゃん。何やってんだよ宮城さん。
付箋を握り締めてしゃがみ込み自分の意思を確認する。俺はあの人にもう一度会えるか?あの人の目を見ることが出来るのか?
俺はポケットからスマホを取り出して、一度も削除する事もかける事も出来なかった電話番号に電話をかける。
「はい」
「、、蒼です、、、」
「、、そのまま、そこに居て」
懐かしい声がしたかと思うとすぐに電話は切られてしまったが、これから宮城さんがここへ来るのはわかっている。
暗いサイクリングロードのベンチに座って10分ほどで足音が近づいて来た。
俺は振り返らずに座っていた。
近づいて来た足音の人物は何も言わずに俺の隣へ座った。
「ー宮城さん、、」
「、、久しぶりだね」
「ごめんなさい」
顔を上げることが出来ずに頭を下げると、小さなため息が聞こえた。
「、、あんな事で嫌いになると思うなよ」
「ごめんなさいっ」
ふっと宮城さんが笑う。恐る恐る顔を上げて彼の顔を見る。
眼鏡もマスクもしていない懐かしい顔が笑顔で俺を見ていた。
「ちゃんとここに辿り着いたね」
「だって、、最後のページの景色、、」
「アングル違うから気がついてくれるか心配した。」
最後のシーン。
初めて2人が出会ってその後も何度も待ち合わせしたベンチで、小鳥遊が穂積の落書きまがいのメッセージに気が付いた。
いつからそのメッセージがあるのかわからなかったが小鳥遊は笑って、そして泣きながら電話をかける。
その電話のシーンから会話の吹き出しは一つもない。そうして最後の見開きのページでベンチに座る小鳥遊の前へ歩み寄る穂積の姿が描かれていた。
その背景の、見開きに綺麗におさまっていたのは、このサイクリングロードとベンチだった。
俺と宮城さんがプライベートで初めて話した場所だ。九条ゆいだとバレて宮城さんが俺を口止めするために追ってきたのだ。
「もう、、一生会えないと思ってました。、、あの、、俺の事、恨んでないんですか?」
「恨んでたよ。一方的に終わらせようとしたこと」
「、、どうして漫画に、、?」
「我ながらまわりくどいやり方だとは思った。でも、あの時はさ、俺にも蒼くんにも時間必要だったから。」
「宮城さん、、」
宮城さんは俺の顔を見て苦笑した。懐かしい笑顔だ。
「ほら、涙ふきな。こんな所で泣いてると目立つよ。蒼くんの家どこ?」
「隣の、駅の、、あれ?、、、」
ベンチから立ち上がりながら俺を振り返ると、あたりまえだと言うように肩をすくませる。
「前にハヤトに聞いた。」
「あ、、じゃあ、今日の事も?」
「蒼くんより先に電話もらった。“蒼くんちゃんと気が付いたみたいだ”って」
あぁ。なるほど。それで宮城さんの為に、今日中に俺が最終回を読むようにしたかったのか。そう、宮城さんのためだったんだ。
まさかそこまで連絡取り合っていたとは、、。
けど、、この人たちらしい。
「蒼くん、話しても良い?」
「はい」
俺の家へ戻った2人はぎこちなく座っていた。狭いワンルームのアパートで、くつろぐ場所なんて特に無く、しかもどんな距離感で居れば良いかもよくわからない。
「あの日の事だけど、、」
彼の言葉に心臓がぎゅっと苦しくなる。
「今更の話だし、ハヤトから聞いたことあるかも知れないけど、俺が引っ越したのは蒼くんとのことだけが理由じゃないからね。」
「、、、」
「実はあの日より少し前から、担当の人とかに引っ越し勧められてて、、俺としては大学普通に行きたかったし、蒼くんの家もバイト先も近かったからすごく迷ってた。結局決心したのはあの日だけど、もう自分の中では決まってたんだ」
ハヤトさんから宮城さんが引越しをしたと聞いて、俺にもう会わないという意思表示だと思った。まぁ宮城さんがあのマンションで暮らしていても俺は近づかなかったと思うけれど、、
ふと宮城さんは声のトーンを落とした。
「あの日のことって、夜中に女の人とお酒飲んでたから?それが理由だった?」
じっと俺の目を見る。
あまりあの日の事は思い出したくなかった。だけど宮城さんはあの日の事を今ここで終わりにさせたいのかも知れない。
「俺は、、たぶん状況が変わって行くことに気持ちが追い付かなかった、、あなたがどんどん離れて行って見えなくなって、もうあなたの生活の中に自分の場所が見出せなくなりそうでした、、。ワガママなこどもみたいな理由で、手に入らない物をいっそ壊してしまう子どもみたいに、あなたを、、」
「うん、、俺も蒼くんの気持ちには多少なりとも気が付いてた。でも俺もわりといっぱいいっぱいのタイミングで気遣えなかった。ごめん。」
「やめて下さい!!宮城さんが謝るなんて、、!俺宮城さんに酷いことしたんですよ!?」
彼の謝罪の言葉に弾かれたように顔を上げた。その俺の目を宮城さんは真っ直ぐに見返して言う。
「そうだね。でもそれはもう俺なりの手段で飲み込んだから。もういい。それに、、」
宮城さんはあれからのことを話してくれた。
引っ越してプロとして仕事場を用意し、アシスタントをいれた。
それまでずっとハヤトさんや俺との関わりの中で、大学生としての生活の中で描いてきた。だからこの時初めて1人のプロとして描こうと思ったのだ。
私生活と仕事をどうにか切り分けたかった。
「“小鳥遊と穂積”は俺の中では蒼くんとの時間を犠牲にして描いたようなものだった。だから、犠牲を払って描いた分、俺が九条ゆいだと胸を張って世間に送り出さなきゃならない気がした。人に言って恥かしいような行いの為に蒼くんを犠牲にしたんじゃないと思いたかった。」
それがSNSで顔出しをした理由だと彼は言う。「それが過去の自分のためでもあった」と。
「今になって、やっと自分の足で立てた気がしてる。ハヤトとのことも、蒼くんとのことも、ちゃんと九条ゆいの一部になって、いろんな経験が俺を九条ゆいにしてくれたと思う。、、ごめん言葉にすると曖昧な、よく分からないものだけど、、」
俺は彼の話を噛み締めるように黙ってきいた。宮城さんらしい思考だと思った。きっと彼自身が思っている以上に過去の自分のためだったんじゃないだろうか。
「蒼くん、小鳥遊と穂積はあのあとどうなったと思う?」
宮城さんの描いたあの2人は再会したところで終わった。
「もちろんお互い誤解がとけて上手くいくと、、」
「だよね。そうだったら良いって俺も思う。、、じゃあ、俺たちは?この先はどうする?ー俺は、蒼くんがまだ俺を思ってくれてると嬉しいんだけど」
彼はそう言いながら、俺の頬へ手を伸ばす。
少しひんやりする細い指で頬に触れる。真っ直ぐに見つめられて、俺はたまらず目を伏せた。
「宮城さんを簡単に忘れるわけありません。」
「うん」
「俺は、、今もあなたが、大好きです。ーでも、、」
「でも?」
「俺はあなたのように何かを得て成長したり出来てないから、、まだ全然ガキで、仕事の邪魔になる」
「バカだね。俺は3歳とし上なんだから俺の方が大人で何の不思議もないんだって。蒼くんはゆっくり時間をかけて進めば良い」
宮城さんは頬を包んだまま、俺にキスをした。
そして俺を抱きしめる。
「俺も蒼くんが好きだよ。隣に戻るのに1年もかかった。また会えて良かった。」
「っ、宮城さんっごめんなさい、、見捨てないでくれて、ありがとうっ」
彼をぎゅっと抱きしめ返す。
宮城さんにもう一度気持ちを伝えることを許される日が来るなんて思わなかった、、
「また泣いてる?やめてよ、つられるから」
俺を抱きしめたまま、宮城さんは笑った。
その声も少しだけ震えている気がした。
「まさか」とは思う。思うけれど確かめなければならない。
こんな時間に駅から走り出た俺を、仕事を終えて家へ帰る人たちが驚いて振り返る。
駅の後方を見れば自分の実家があるマンションが見えるだろう。駅前のこの道を大学に合格した日にも走っていた。宮城さんとやっと同じ土俵に立てた気がして嬉しくて仕方なかった。
➖小鳥遊は初めて穂積に出会った橋の上のベンチで穂積が残した落書きを見つけた➖
なんで宮城さんがストーリーに俺との出来事を描き入れたのか、、それはたぶん彼の壮大なイタズラであって賭けなのだ。
俺が見るのを前提に、俺が時間を経てから宮城さんの言葉に辿り着くように。
そしてそれはやっぱり、彼のささやかな復讐だったんだと思う。
今は街灯に照らされたサイクリングロード、去年までは毎日のようにここを歩いた。あおい書店へ通い、その先の宮城さんの家へ通うために。
街灯の下の自販機、その横にあるベンチ。この場所だ、と周りを見渡して確信する。
息を大きく吐きながら、ベンチをぐるりと見回すと背もたれの裏にそれがあった。手に取る。
➖誰がいつ書いたかもわからないベンチの落書きが、穂積が残したものだと小鳥遊はすぐにわかった。
小鳥遊は指でその落書きをなぞりながら、声をたてて笑った➖
俺はベンチの裏にセロテープでとめられた付箋を手にとった。ふっと笑いが漏れる。
見覚えのある字だ。
➖『あんなことで嫌いになると思うなバーカ』➖
クスクスと笑いが漏れた。
サイクリングロードを自転車に乗って帰路を急ぐ人が、ギョッとして振り返りながら通り過ぎて行く。
笑いながら涙が溢れて来た。
、、なんだよ、小鳥遊と同じ反応しか出来ないじゃん。何やってんだよ宮城さん。
付箋を握り締めてしゃがみ込み自分の意思を確認する。俺はあの人にもう一度会えるか?あの人の目を見ることが出来るのか?
俺はポケットからスマホを取り出して、一度も削除する事もかける事も出来なかった電話番号に電話をかける。
「はい」
「、、蒼です、、、」
「、、そのまま、そこに居て」
懐かしい声がしたかと思うとすぐに電話は切られてしまったが、これから宮城さんがここへ来るのはわかっている。
暗いサイクリングロードのベンチに座って10分ほどで足音が近づいて来た。
俺は振り返らずに座っていた。
近づいて来た足音の人物は何も言わずに俺の隣へ座った。
「ー宮城さん、、」
「、、久しぶりだね」
「ごめんなさい」
顔を上げることが出来ずに頭を下げると、小さなため息が聞こえた。
「、、あんな事で嫌いになると思うなよ」
「ごめんなさいっ」
ふっと宮城さんが笑う。恐る恐る顔を上げて彼の顔を見る。
眼鏡もマスクもしていない懐かしい顔が笑顔で俺を見ていた。
「ちゃんとここに辿り着いたね」
「だって、、最後のページの景色、、」
「アングル違うから気がついてくれるか心配した。」
最後のシーン。
初めて2人が出会ってその後も何度も待ち合わせしたベンチで、小鳥遊が穂積の落書きまがいのメッセージに気が付いた。
いつからそのメッセージがあるのかわからなかったが小鳥遊は笑って、そして泣きながら電話をかける。
その電話のシーンから会話の吹き出しは一つもない。そうして最後の見開きのページでベンチに座る小鳥遊の前へ歩み寄る穂積の姿が描かれていた。
その背景の、見開きに綺麗におさまっていたのは、このサイクリングロードとベンチだった。
俺と宮城さんがプライベートで初めて話した場所だ。九条ゆいだとバレて宮城さんが俺を口止めするために追ってきたのだ。
「もう、、一生会えないと思ってました。、、あの、、俺の事、恨んでないんですか?」
「恨んでたよ。一方的に終わらせようとしたこと」
「、、どうして漫画に、、?」
「我ながらまわりくどいやり方だとは思った。でも、あの時はさ、俺にも蒼くんにも時間必要だったから。」
「宮城さん、、」
宮城さんは俺の顔を見て苦笑した。懐かしい笑顔だ。
「ほら、涙ふきな。こんな所で泣いてると目立つよ。蒼くんの家どこ?」
「隣の、駅の、、あれ?、、、」
ベンチから立ち上がりながら俺を振り返ると、あたりまえだと言うように肩をすくませる。
「前にハヤトに聞いた。」
「あ、、じゃあ、今日の事も?」
「蒼くんより先に電話もらった。“蒼くんちゃんと気が付いたみたいだ”って」
あぁ。なるほど。それで宮城さんの為に、今日中に俺が最終回を読むようにしたかったのか。そう、宮城さんのためだったんだ。
まさかそこまで連絡取り合っていたとは、、。
けど、、この人たちらしい。
「蒼くん、話しても良い?」
「はい」
俺の家へ戻った2人はぎこちなく座っていた。狭いワンルームのアパートで、くつろぐ場所なんて特に無く、しかもどんな距離感で居れば良いかもよくわからない。
「あの日の事だけど、、」
彼の言葉に心臓がぎゅっと苦しくなる。
「今更の話だし、ハヤトから聞いたことあるかも知れないけど、俺が引っ越したのは蒼くんとのことだけが理由じゃないからね。」
「、、、」
「実はあの日より少し前から、担当の人とかに引っ越し勧められてて、、俺としては大学普通に行きたかったし、蒼くんの家もバイト先も近かったからすごく迷ってた。結局決心したのはあの日だけど、もう自分の中では決まってたんだ」
ハヤトさんから宮城さんが引越しをしたと聞いて、俺にもう会わないという意思表示だと思った。まぁ宮城さんがあのマンションで暮らしていても俺は近づかなかったと思うけれど、、
ふと宮城さんは声のトーンを落とした。
「あの日のことって、夜中に女の人とお酒飲んでたから?それが理由だった?」
じっと俺の目を見る。
あまりあの日の事は思い出したくなかった。だけど宮城さんはあの日の事を今ここで終わりにさせたいのかも知れない。
「俺は、、たぶん状況が変わって行くことに気持ちが追い付かなかった、、あなたがどんどん離れて行って見えなくなって、もうあなたの生活の中に自分の場所が見出せなくなりそうでした、、。ワガママなこどもみたいな理由で、手に入らない物をいっそ壊してしまう子どもみたいに、あなたを、、」
「うん、、俺も蒼くんの気持ちには多少なりとも気が付いてた。でも俺もわりといっぱいいっぱいのタイミングで気遣えなかった。ごめん。」
「やめて下さい!!宮城さんが謝るなんて、、!俺宮城さんに酷いことしたんですよ!?」
彼の謝罪の言葉に弾かれたように顔を上げた。その俺の目を宮城さんは真っ直ぐに見返して言う。
「そうだね。でもそれはもう俺なりの手段で飲み込んだから。もういい。それに、、」
宮城さんはあれからのことを話してくれた。
引っ越してプロとして仕事場を用意し、アシスタントをいれた。
それまでずっとハヤトさんや俺との関わりの中で、大学生としての生活の中で描いてきた。だからこの時初めて1人のプロとして描こうと思ったのだ。
私生活と仕事をどうにか切り分けたかった。
「“小鳥遊と穂積”は俺の中では蒼くんとの時間を犠牲にして描いたようなものだった。だから、犠牲を払って描いた分、俺が九条ゆいだと胸を張って世間に送り出さなきゃならない気がした。人に言って恥かしいような行いの為に蒼くんを犠牲にしたんじゃないと思いたかった。」
それがSNSで顔出しをした理由だと彼は言う。「それが過去の自分のためでもあった」と。
「今になって、やっと自分の足で立てた気がしてる。ハヤトとのことも、蒼くんとのことも、ちゃんと九条ゆいの一部になって、いろんな経験が俺を九条ゆいにしてくれたと思う。、、ごめん言葉にすると曖昧な、よく分からないものだけど、、」
俺は彼の話を噛み締めるように黙ってきいた。宮城さんらしい思考だと思った。きっと彼自身が思っている以上に過去の自分のためだったんじゃないだろうか。
「蒼くん、小鳥遊と穂積はあのあとどうなったと思う?」
宮城さんの描いたあの2人は再会したところで終わった。
「もちろんお互い誤解がとけて上手くいくと、、」
「だよね。そうだったら良いって俺も思う。、、じゃあ、俺たちは?この先はどうする?ー俺は、蒼くんがまだ俺を思ってくれてると嬉しいんだけど」
彼はそう言いながら、俺の頬へ手を伸ばす。
少しひんやりする細い指で頬に触れる。真っ直ぐに見つめられて、俺はたまらず目を伏せた。
「宮城さんを簡単に忘れるわけありません。」
「うん」
「俺は、、今もあなたが、大好きです。ーでも、、」
「でも?」
「俺はあなたのように何かを得て成長したり出来てないから、、まだ全然ガキで、仕事の邪魔になる」
「バカだね。俺は3歳とし上なんだから俺の方が大人で何の不思議もないんだって。蒼くんはゆっくり時間をかけて進めば良い」
宮城さんは頬を包んだまま、俺にキスをした。
そして俺を抱きしめる。
「俺も蒼くんが好きだよ。隣に戻るのに1年もかかった。また会えて良かった。」
「っ、宮城さんっごめんなさい、、見捨てないでくれて、ありがとうっ」
彼をぎゅっと抱きしめ返す。
宮城さんにもう一度気持ちを伝えることを許される日が来るなんて思わなかった、、
「また泣いてる?やめてよ、つられるから」
俺を抱きしめたまま、宮城さんは笑った。
その声も少しだけ震えている気がした。
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