11 / 14
十一話 男
しおりを挟む
秋。
今年の夏も例年に違わず酷い暑さで、川辺の草地で密かに過ごすことが多かったオレに、家族も教師も何も言わなかった。いや、家族は“人目に着くところに居てくれ”と和倉と同じことを言っていたか、、。
その和倉とも川辺では何度か会った。それは去年と同じで全く偶然のこと。別に友だちというほど楽しく過ごした事も無く、少し話したりそれぞれが音楽を聴いたり昼寝をしたり、同じ場所と時間を共有したにすぎない。
けれどその日は少し違った。
初めてオレと和倉以外にその場所に他人が介入したのだ。
涼しい風が吹いてて、そろそろ家に帰ろうかと考えながらも水面をぼんやり眺めていた時だ。背中を向けている小高いサイクリングロードの方から言い争う声が聞こえて、それは乱暴に草を踏む足音と共に近づいて来た。
「っついて来るな!」
「じゃあ止まれよ。話しあんだよ誉!」
「話なんかねーよ。終わってんだよ」
「オレは終わってない。この1年何度連絡したと思ってる?」
「やっめろ離せ。っっ!触んな!」
振り返ったオレの少し先で和倉が誰か知らない男と揉めていた。彼らからは草の中にいるオレが見えていないようで、まさか見られているとは思っていなかっただろう。
相手の男が和倉の腕を掴んで至近距離で睨むとそのまま乱暴にキスをした。
ー、、キスを?どうして?
「やめっ、、触んな」
「なぁ、もうここ誰かに触らした?誰かとやった?」
ー、、あ、なんか聞いちゃいけない気がする、、いや、それとも助けた方が良いのか?いや、でも本気で逃げようと思えば殴るなり出来るよな?
しばらく身動きが取れなくてじっとしていたのに、2人はあろうことかオレのいる方へやってきた。
そりゃそうだろう、和倉の目的地はここなんだから。
逃げる様にオレのいる場所へ踏み込んだ和倉を追って、その男が和倉を背後から掴む。そのまま和倉を抱きしめたが、和倉はオレを見ていた。
「っ!!川、原、、、」
「ぅわ、マジ?」
オレに気がついて男は和倉からパッと離れてオレと和倉を交互に睨む。
「あーあぁ。そういう事?誉、もう相手いんだ?しかもこんな外でやってんの?」
怒りのこもった目で嘲り笑う人は、歳上に見えた。目つきは悪いが背が高くて端正な顔立ちをしている。
「先輩、帰れよ」
「つめてーな。あ、そうだ、オレは別に3人でもー、」
「帰れよっ!頼むからっ!!」
「っ、、」
和倉に“先輩”と呼ばれたその男はじっと和倉を睨んだあと、あからさまな舌打ちをして「また連絡する」と言い捨てて帰って行った。
「川原、、ごめん、、今の誰にも、ー」
「まぁ立ってないで座んなよ。」
「、、、」
「別に和倉が秘密にしたい事なんだったら誰にも言わないけど。」
「、、、、頼む」
「了解」
暫く気まずそうに突っ立っていた和倉はやがて少しオレから距離をとって座った。
今年の夏も例年に違わず酷い暑さで、川辺の草地で密かに過ごすことが多かったオレに、家族も教師も何も言わなかった。いや、家族は“人目に着くところに居てくれ”と和倉と同じことを言っていたか、、。
その和倉とも川辺では何度か会った。それは去年と同じで全く偶然のこと。別に友だちというほど楽しく過ごした事も無く、少し話したりそれぞれが音楽を聴いたり昼寝をしたり、同じ場所と時間を共有したにすぎない。
けれどその日は少し違った。
初めてオレと和倉以外にその場所に他人が介入したのだ。
涼しい風が吹いてて、そろそろ家に帰ろうかと考えながらも水面をぼんやり眺めていた時だ。背中を向けている小高いサイクリングロードの方から言い争う声が聞こえて、それは乱暴に草を踏む足音と共に近づいて来た。
「っついて来るな!」
「じゃあ止まれよ。話しあんだよ誉!」
「話なんかねーよ。終わってんだよ」
「オレは終わってない。この1年何度連絡したと思ってる?」
「やっめろ離せ。っっ!触んな!」
振り返ったオレの少し先で和倉が誰か知らない男と揉めていた。彼らからは草の中にいるオレが見えていないようで、まさか見られているとは思っていなかっただろう。
相手の男が和倉の腕を掴んで至近距離で睨むとそのまま乱暴にキスをした。
ー、、キスを?どうして?
「やめっ、、触んな」
「なぁ、もうここ誰かに触らした?誰かとやった?」
ー、、あ、なんか聞いちゃいけない気がする、、いや、それとも助けた方が良いのか?いや、でも本気で逃げようと思えば殴るなり出来るよな?
しばらく身動きが取れなくてじっとしていたのに、2人はあろうことかオレのいる方へやってきた。
そりゃそうだろう、和倉の目的地はここなんだから。
逃げる様にオレのいる場所へ踏み込んだ和倉を追って、その男が和倉を背後から掴む。そのまま和倉を抱きしめたが、和倉はオレを見ていた。
「っ!!川、原、、、」
「ぅわ、マジ?」
オレに気がついて男は和倉からパッと離れてオレと和倉を交互に睨む。
「あーあぁ。そういう事?誉、もう相手いんだ?しかもこんな外でやってんの?」
怒りのこもった目で嘲り笑う人は、歳上に見えた。目つきは悪いが背が高くて端正な顔立ちをしている。
「先輩、帰れよ」
「つめてーな。あ、そうだ、オレは別に3人でもー、」
「帰れよっ!頼むからっ!!」
「っ、、」
和倉に“先輩”と呼ばれたその男はじっと和倉を睨んだあと、あからさまな舌打ちをして「また連絡する」と言い捨てて帰って行った。
「川原、、ごめん、、今の誰にも、ー」
「まぁ立ってないで座んなよ。」
「、、、」
「別に和倉が秘密にしたい事なんだったら誰にも言わないけど。」
「、、、、頼む」
「了解」
暫く気まずそうに突っ立っていた和倉はやがて少しオレから距離をとって座った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
やくびょう神とおせっかい天使
倉希あさし
青春
一希児雄(はじめきじお)名義で執筆。疫病神と呼ばれた少女・神崎りこは、誰も不幸に見舞われないよう独り寂しく過ごしていた。ある日、同じクラスの少女・明星アイリがりこに話しかけてきた。アイリに不幸が訪れないよう避け続けるりこだったが…。
無敵のイエスマン
春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

鍵の海で踊る兎
裏耕記
青春
君の演奏を聴いたから、僕の人生は変わった。でもそれは嬉しい変化だった。
普通の高校生活。
始まりは予定通りだった。
ちょっとしたキッカケ。ちょっとした勇気。
ほんの些細なキッカケは僕の人生を変えていく。
どこにでもある出来事に偶然出会えた物語。
高一になってからピアノなんて。
自分の中から否定する声が聞こえる。
それを上回るくらいに挑戦したい気持ちが溢れている。
彼女の演奏を聴いてしまったから。
この衝動を無視することなんて出来るはずもなかった。
平衡ゴーストジュブナイル――この手紙を君が読むとき、私はこの世界にいないけれど
クナリ
青春
生きていたいと願うべきだと分かっている。
でも心からそう思える瞬間が、生きているうちに、何度あるだろう。
五月女奏は、不登校の高校生。
彼はある日、幽体離脱のように、自分の「幽霊」を体の外に出せるようになった。
ただし、幽霊がいけるのは自分のいる世界ではなく、それとよく似た並行世界。
そして並行世界では、彼の幽霊は、けが人や病人に触れることで、そのけがや病気を吸い取ることができた。
自分の世界ではなくても、人を癒すことには意味があると信じて「治療」を続ける奏だったが、ある雨の日、彼は自分の世界で、誰かの「幽霊」らしきものを見る。
その「幽霊」の本体は、奏の幽霊がいける並行世界に暮らす、ある女子高生だった。
名前は、水葉由良。
彼らは幽霊を「ゴースト」と呼ぶことにして、お互いの世界の病院で人々を治し続ける。
いくつかの共通点と、いくつかの違いを感じながら。
次第に交流を深めていく奏と由良だったが、それによって奏は、由良の身に何が起きていたのかを知る。
二つの世界に住む二人の交流と決断を描いた、現代ファンタジーです。

燦歌を乗せて
河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。
久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。
第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。
お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
桜井 恵里菜
青春
今から数年後。
少子高齢化対策として、
政府はハチャメチャな政策を打ち出した。
高校3年生に課せられた必須科目の課外活動
いわゆる『お試しデート』
進学率トップの高校に通う結衣は、
戸惑いながらも単位の為に仕方なく取り組む。
それがやがて、
純粋な恋に変わるとは思いもせずに…
2024年5月9日公開
必須科目の『お試しデート』
結衣のペアになったのは
学年トップの成績の工藤くん
真面目におつき合いを始めた二人だが
いつしかお互いに惹かれ合い
励まし合って受験に挑む
やがて『お試しデート』の期間が終わり…
𓈒 𓂃 𓈒𓏸 𓈒 ♡ 登場人物 ♡ 𓈒𓏸 𓈒 𓂃 𓈒
樋口 結衣 … 成績2位の高校3年生
工藤 賢 … 成績トップの高校3年生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる